「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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恋に落ちた勇者様

「俺も君を前にすると、胸が苦しくなったり、妙に落ち着きがなくなったりするんだ。同じなら、君は俺に恋をしていることになる」

 口にしながら自分でも、随分と浮ついたセリフだと自覚していた。

 まさか自分がこんな言葉を誰かに投げかける日が来るなんて、思いもしなかった。

”氷の彫像”の二つ名は伊達ではない。

 これまではどんな局面でも、顔色ひとつ変えずに乗り越えてきた。

 そういう意味ではひょっとしたら、レオノールとクラウディオはどこか似ているのかもしれない。

「恋なら……元々私はクラウディオ様が好きでしたけど。……って、今サラッとすごいセリフを言いました? クラウディオ様も私に!?」

 しかし、レオノールの前では難しい。

 こんなにも顔が火照るし、大きな声では言えないが手汗もひどい。

「好きと恋は、似ているようで同一ではない。俺も君を、人として好きだと言い聞かせていたが、たった今観念した。レオノール、俺は君に恋をしている」

 レオノールもクラウディオと同じで、真っ赤に赤面していた。

 何も言わずとも肩と胸が上下して、忙しなく呼吸をしているのが分かる。

「レオノール。君に触れても?」

 クラウディオが一歩分近づくと、レオノールはピクリと肩を跳ねさせた。

 先ほどは咄嗟に手を振り解いたからだろうか。

「……はい」

 警戒するように返事をしておきながらも、拒否はされない。

 クラウディオがそっと肩に触れる。

 レオノールの肩に宿る緊張が指先を通して伝わってくる。

 それでも構わない。

 触れた瞬間、何かが変わるわけでもない。

 ただ確かなことは、目の前にいるレオノールがクラウディオにとって特別な存在だということ。

「……苦しいか?」

「はい。とっても」

 直視を避けるためか、レオノールは目を瞑って呼吸を整えていた。

 前向きな姿勢はありがたい。

「……俺もだ」

 自分の中の逃げ出したい衝動と戦っているレオノールを前にして、またしてもフフッと失笑が漏れた。

「これからはゆっくりやって行こう。互いに知らないことが多いからな。君が俺に恋をしてるかどうかも、時間をかけて確かめてくれればいい」

「私が元から好きだったのは譲れませんし、いまいちよくわからないけど、クラウディオ様の言葉がほんとなら」

 その吐息がふと震えを帯びる。 

 レオノールは恐る恐る目を開けた。

「こんなに嬉しいことはないので、しっ、死ぬ気で頑張ります」

 物騒な宣言と共にクラウディオと視線が重なった。

 その瞬間、微かに笑みを浮かべる。

「良かった。それなら一緒に王都へ戻ろう。戻って……続きをしよう。デートの」

 クラウディオは、長くはばかっていた単語を自ら口にした。

 本当ならレオノールの手を取って、馬上まで導くまでが男性のエスコートだ。

 しかしレオノールは、当然ながら自分で馬上に収まった。

 そっと肩を支えるまでしかできずに残念だ。

 だが2人とも似た者同士なら、ゆっくりと距離を縮めていければいい。

 クラウディオはそう考えていたが、現実は往々にして思い通りにはならない。

 王都に戻った2人を待っていたのは、セレスからの緊急連絡だった。

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