「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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レオノール・エルグランを派遣せよ

 マントに誂えた内ポケットから音が鳴り響く。

 コロコロという鐘の音のような金属質な音で、時の経過と共に大きくなる。

 セレスから託された携帯用の鏡状の通信機器から発されている音だった。

「セレスからだ。すまないが出るぞ」

 レオノールに確認を取ってから、クラウディオは足早に裏道へ向かった。

 表通りには朝市ほどの騒がしさはないが、それなりに賑わっている。

 広間の噴水を迂回して人気のない裏路地に入る。

 もしも危険が発生したら、クラウディオからセレスに連絡をすることになっている。

 セレスからの接触は予定にない。となると、連絡の内容は急を要するものに決まっていた。

 鏡はコンパクトな折り畳みになっていて、通信時には鏡にが映るようになっていた。

 人目がないのを確認してから開くと、鏡に映ったのは自分ではない。

 ローブ姿のセレスと見慣れた執務室だった。

『せっかくの時間に、申し訳ありません』

 基本的に魔法使いが多くない世界だから、直接会話ができる通信機器の使用はクラウディオも初めてだ。

 鏡の映像は霞みもせず、そこにあるかのように姿形を映し、音声に乱れもない。

 こんなに便利な魔法があるとは驚きだ。

「いや、やむを得まい。こういうこともあるだろう。それで、何があった」

 飄々とした性格に似合わず、セレスはクラウディオと顔を合わせると一呼吸言い淀んだ。

 だが、ためらう時間は無駄だと理解していて、すぐに口を開いた。

 次にもたらされた報告に、凍りつく。

『急報が入りました。ノーキエの使節団を護送していた騎士団が襲撃に遭い壊滅した模様、アルヴァロ王子をはじめ、エルネスト副団長の行方も知れないそうです』



 ***



「……レオノール様。気分転換に、マッサージでもいかがでしょうか?」

 衝撃的な急報を受けた日を境に、レオノールの自室療養生活は終了した。

 常人が回復するだけの期間を充分に過ぎたとクラウディオが判断を下したからだ。

 それからは仮療養の生活とは打って変わって、にわかに城内は騒がしくなった。

 ノーキエの使節団と、護送していた騎士団が突如として消息を絶った。

 国賓であるアルヴァロ王子もだ。

 使節団の護衛を指揮していたのはエルネスト副団長で、問題の大きさは無論のこと、クラウディオは激しい衝撃を受けていた。

「……ありがとう。でも今日はいいや。私だけ気持ちよくなってるのも気が引けるし」

 よくは知らないが、クラウディオとガライ卿は同僚である以前に親しい友人だと聞いた。

 それにエルグラン側に落ち度がないとはいえ、ノーキエへの説明責任は欠かせない。

 生還したエルグランの騎士はたった一人。

 ノーキエの使節団のルイス・アンジェロスを伴っていた。
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