「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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助っ人/セレス視点

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 追い打ちをかけるように、昨晩は執務室にベラスコ公爵令嬢が侵入。

 クラウディオは正当な手段を講じているにもかかわらず、四面楚歌の状況に陥っている。

 それでも気を荒立てるでもなく、淡々となすべき政務をこなす姿勢を崩さない。

 直面する問題への対処と同時並行で、未来を見据えた課題の解消への一手も欠かさない。

 レオノールの幸福を願うセレスには、クラウディオに協力しない理由がなかった。

 クラウディオからの指示を受け、セレスは数日前から旧友に連絡を取っていた。

 コンコン

 噂をすればなんとやらだ。

 タイミング良く扉がノックされた。

「殿下、恐れ入ります。このような時間ですが、訪問者がありお知らせに上がりました」

 扉越しに、控えめな門兵の声がかけられる。

 まずあり得ない時間帯の訪問だ。

 クラウディオからの通達は未着なのだから、本来なら門前払いが関の山だ。

 しかし、ノーキエへ出立したレオノールを見送っているのだから、今は緊急の時だとわかっているのだろう。

 門兵はまずクラウディオに伺いを立てることを選んだらしい。

「アグイレ子爵とお連れの方が、殿下に取り次ぎを申し出ています」

「通してくれ。この部屋へ直接、案内を頼む。……だが、2人だと?」

 扉へ向けて返事をしつつ、クラウディオは首を傾げた。

 クラウディオが助力を求めるよう指示した人物は1人だけだったからだろう。

 頼もしい仲間の早すぎる到着に、セレスは思わず口角を上げ、伝えた。

「コールヴァン・アグイレ子爵と、ブルネン・イアーノでしょう。勇者パーティの立役者です」

 セレスが連絡を取った男はコールヴァン1人だが、コールヴァンはパーティの全員に声を掛けてくれたようだ。



 ***



 ポタリ、ポタリ。

 南国特有の高温多湿な気候ゆえか、ノーキエ王城の地下空間にはじっとりとした湿気が満ちていた。

 広大な城塞にふさわしい地下牢と呼ぶべき空間の内部は薄暗く、湿気に侵食され朽ちかけた石壁には苔が生い茂る。

 地下牢というよりも、出口のない洞穴に閉じ込められているようだと、エルネスト・ガライは薄く笑った。

 湿度のせいと、あちこちから染み出す水で床の所々に水溜りができているから、飲み水には困らない。

 命を繋ぐだけであれば、あと7日は生きられるだろう。

 だが、負傷した者たちは危うい。エルネストもその1人だ。

 この悪夢はマナ溜まりとの遭遇から始まった。

 しかし今思えばあの遭遇は偶然ではなかった。

 まるで惹き合ったのではと思うほど、その時のアルヴァロの行動は滑らかだった。

 復路におけるノーキエ使節団一行の内訳は以下の通りだった。

 もともとノーキエが使節団に付けた護衛が20人、使節団員が21名。

 エルネスト率いるエルグランの騎士が30名。

 身内に刺客がいるかもしれない不安を抱くアルヴァロに、充分な配慮がなされていた。

 配置も隊列の前・中・後と満遍なく散らばり、他国人が一箇所に固まらないよう考慮されている。

 全てはクラウディオの采配によるものだ。

 後の証言によると、先頭集団が通過した時はその場所はまだ、単なる大地の窪みに過ぎなかった。
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