「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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二人きりの夜

 お皿に盛られた厚切りステーキに目を戻し、レオノールは素早くフォークとナイフを手に取った。

 ざっと切り分け、2人分を取り分ける。

 これにもまた、クラウディオは面食らっていた。

「こんな気遣いまでしてくれるのか」

「そんなに驚かないでくださいよ。これくらいは冒険時代からしてましたよ。みんなで食べると美味しいでしょ。いただきます! んん! 美味しい! 贅沢なボリューム。クラウディオ様も食べて」

 一口食べたレオノールは幸せの吐息をこぼした。

 ごろっとカットされた分厚い肉質の噛みごたえ。ジューシーな脂が溢れ出してくる。

 味付けはシンプルで、塩味が濃く、ソースの酸味が鼻腔を抜ける。

 クラウディオもフォークを取り、レオノールは夢中になって次々と料理を口に運んだ。

 コールヴァンのリザレクションは体力や気力の回復はしてくれても、空腹までは満たしてくれない。

 ノーキエへ向かう最中は携行食を騎乗しながら食べるとか、味気ないものばかりだったので、久しぶりの至福の時だ。

「ほんとうに美味しそうに食べるんだな」

 しばしの間、ひたすら食事に集中していた。

 クラウディオは目を細め、レオノールを見ていた。

 視線に気づいて上目遣いになると、穏やかな視線を送られている。

 クラウディオはもうフォークを持っていない。

 グラスを片手に、頬杖をついていた。その瞳は蕩けそうなほどに、優しい。

 どうしてそんな目を向けられるのかわからず、レオノールは目を泳がせる。

 そっちに気を取られて、ろくに咀嚼せぬまま肉塊を飲み込んでしまい、慌てて胸を叩く。

「詰まらせたのか? これを飲んで」

 クラウディオは心配そうに眉を寄せ、ワイングラスを握らせた。

 わざわざ席を立って背中を擦ってくれる。

 食い意地を咎められてもおかしくないのに、思いがけない優しさに胸が温かくなる。

 ワインを流し込み、喉に詰まりそうだった肉を嚥下すると、レオノールはふう、と息を吐いた。

 ホッとすると、じんわりとした手の温もりが背中に伝わってくる。

「ありがとうございます……」

 本当はもう大丈夫と付け足すべきだ。

 けれど他人に、それもクラウディオに触れられているのが心地よくて、レオノールは次の言葉を探さなかった。

 黙ってされるまま、クラウディオの行動を無言で受け入れる。

(クラウディオ様は覚えてるかな。あの夜、かなりいい雰囲気だったんだけど……)

 食欲がほどよく満たされたおかげか、今まで我慢していた反動か。

 レオノールは急に人肌恋しいような、甘えたいような、独特の衝動に駆られ始めた。
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