「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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二人きりの夜

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 あの晩、相手をオーグレイルとは知らず、騎士団救出のために城を出た。

 あの日、レオノールは生まれて初めてのキスをした。

 この、クラウディオと……。

 カナリー嬢との一件は思い出したくもないが、あの日2人の距離はグッと近づいた。

 あの時の感情はまだ残っているのか。

 クラウディオの制止を振り払って城を出たから、愛想を尽かされても仕方ないと覚悟はしていた。

 でもオーグレイルに「命ある限りレオノールを諦めない」と啖呵を切ってくれていたから、もう怒っていないんだろうか。

 事後処理の間は何かとバタバタして、確認する機会を逸していた。

(用意してくれた部屋も別々だったし、みんな何かと世話を焼きに来てくれたし)

 ほとんどが人目に晒される時間だった。

 そうこう思いを巡らせていると、ふっとクラウディオの手が離れて、名残惜しい気持ちになる。

「料理は逃げないから、ゆっくり食べろ。セレスとの待ち合わせは明日だから時間ならある。今日は君が満足するまで付き合うよ」

「いいんですか? そんなこと言っちゃって。私まだまだいけますよ」

 レオノールは慌てて笑みを浮かべた。

 急に押し黙った理由がバレていないか、内心ヒヤヒヤする。

(ついさっきまで忙しかったじゃないですか。早く休んだほうがいいですよ。クラウディオ様は昨日もあんまり寝てないですし)

 そう言ってあげたいのに、自分を優先して欲しい欲求が先行する。

 まだもっと、こうして2人の時間を楽しみたい。

 エルグランに帰ったら帰ったで、片付けなければならない仕事は山積みのはずだ。

 レオノールは残っていたワインを飲み干すと、給仕を呼んだ。

 今度は自分用にエールと、クラウディオ用にワインのお替わりを注文する。

「もちろんだ。君の望みはできるだけ叶えたい。俺では満足に、君を支えきれないかもしれないが」

 追加の注文を終えるとレオノールがまだメニュー表を畳まないうちに、クラウディオは呟く。

 正面の席から、まっすぐにこちらを見つめている。

 随分と唐突な内容だ。

「急に話が飛躍しましたね。私が支えられないんじゃなくてクラウディオ様がですか?」

「俺は今まで、王子としての役割を完璧にこなしていると思い上がっていた。しかし、今回の戦いを目にして、自分の無力さを思い知らされた。オーグレイルの主張は悪意だけではなく、正しくもあった」

「無力なんて……オーグレイルに何言われたんですか」

「直接ではなく、正しくは奴が作り出した空間内とでも言うべきか。ノーキエ城の地下で魔物と交戦中に、幻を見せられた。君はエルグランでなくノーキエで暮らしたほうが幸せになれると」

 幻と聞いてピンと来た。

 レオノールも精神に干渉する魔法に囚われかけた時に問われた。

 レオノールがクラウディオを褒賞として求めた行為は、相手の意思を無視している。

 望まぬ相手を無理やり手篭めにするのと同じだろうと。

「アルヴァロにも指摘されていたのに、俺はろくに気にかけてやれなかった。オーグレイルとどうこうなるのは論外だが、形式ばかりを重視するエルグランで俺に縛りつけられる君は、本当の幸せを手に入れられるだろうか……」
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