将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら

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事情

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 オリヴィエは羞恥から頬を染めるが、エリックの方は感心した様子で笑っているだけだ。

 ルーカスも食べる手を止めてじっとこちらを見ていたが、やがて彼も食事を再開する。

 2人とも、特に揶揄う気はなさそうだったので、オリヴィエも気にしないことにした。

「あの、団長……さっきのことなんですけど」

 食事を終えて一息つくと、彼女は切り出した。

 ルーカスの眉がぴくりと動く。

 話を切り出すタイミングが悪かったかもしれない。しかし、オリヴィエも引くに引けないのだ。

「団長は、どうして私のことを追い出したいんですか? 私がいると迷惑ですか?」

 ルーカスが怒るのだとしても、その理由を知りたい。

 彼の機嫌を取るためだけに黙っているわけにはいかなかった。

 ルーカスは皿にフォークを置くと、オリヴィエをねめ上げた。

「一つ、規律が乱れる、一つ、士気が乱れる、一つ、戦力が落ちる」

「私、何かを乱したりしません。それに、試験に受かったからここにいるんです。能力では他の新人と変わらない筈です」

「だが、お前のせいで他の団員は色めきだっている」

 オリヴィエは息を呑んだ。

(私のせい?)

 そんなはずない、と言いたかった。

 しかし、実際に食事の邪魔をするような事があったのかもしれないと思い至り、口ごもる。

「それに……お前は目立ちすぎる」

 ルーカスは呟くと、ぷいと顔を反らした。

 確かに唯一の女だ、目立ちはするだろう。

 だが、彼の視線にはそれ以上の意味が込められているような……そんな気がした。

「オリヴィエが美人で一番動揺してるのは、団長じゃないんですか?」

「エリック、誰に向かって口を利いている」

 図星だったのか、ルーカスは、カチャンとフォークを置いた。

「いつも冷静な団長らしくない、意見が矛盾だらけですよ。実力は証明されてるんだし、俺たちが見向きもしない不細工ならいいのかって話になるし、そんなの理由にならない。俺たちは団長の尊顔だって肴にしたくらいなのに」

 ククッ、とエリックは笑う。

「黙れ」

「さかな……?」

 オリヴィエは2人の会話を聞きながら、反芻した。

「俺と団長は同期なんだ。今でこそこんなだが、入団当時はまだ声も高くて可愛くってさ、娯楽の乏しい俺らにゃアイドルみたいなもんだったんだ」

「黙れと言っている」

(か、可愛い……)

 初めて聞く話に、オリヴィエは驚いて2人を見回した。

 確かにエリックの方が若干背も高いが、当時のルーカスはどんな感じだったのだろう。

 今の彼の姿からは想像もつかないが、幼いルーカスの姿を知っているオリヴィエには、何となく分かるような気がした。

「オリヴィエ、食事が済んだなら、さっさと部屋に帰れ」

 ルーカスは、苦虫を噛み潰したような顔で言うと、食べかけのプレートを持ってさっと立ち上がる。

 従う謂れはなかったのに、弾かれるように返事をしていた。

「はいっ、直ちに戻ります」

 とても些細な理由だった。ただ、嬉しかったから。

 再会してから「お前」としか呼ばれなかったのに、「オリヴィエ」と名前で呼んでくれた。

「職権乱用だぜ、従う必要ないだろ」

「いえ、もう食べ終えたので。ご馳走様でした」

 オリヴィエはさっと食器を片付け、ルーカスの背を追った。

 やっぱり、頑張って騎士団に入って良かった。

 空白の期間のルーカスについて、ここで一つ知ることができた。

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