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火蓋
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「ご安心ください。この秘密は厳守します。……お差支えなければ、僭越ながら、私の方からご説明させていただきますが……」
マクシムは立ち上がり、アルダの指示を仰ぐ。
説明の過程でアシュレイの怒りをこれ以上煽らぬようにとの配慮だろう。
「そうしてくれ」
アルダは顎を引いて先を促す。
「畏まりました」
マクシムはアシュレイのために椅子を引き、自らも対面に腰を下ろした。
「包み隠さず申し上げますので、本日知り得た内容は、どうぞご内密にお願いします」
マクシムは真剣そのものの表情で、アシュレイに向き合った。
「まず、アルダと名乗っていたそうですが、こちらにいらっしゃるお方の真の名は、アルダシール・フェルドウス様。アラウァリア王国の第一王子であらせられます」
(やっぱり、そういうこと……)
衝撃の事実を聞かされたにもかかわらず、アシュレイはあまり驚愕しなかった。
「あまり驚かれないのですね」
「自分でも意外ですが、情報を小出しにされていたからでしょうか。答え合わせをしている気分です。続けていただけますか」
アシュレイの反応に、逆にマクシムが驚いたようだ。
アルダがこの国の王子。
茂みでそ会話を耳にして、俄かには信じ難かった。アルダにそう告白されたら、事実を疑ったかもしれない。
でも、これだけの複数人が口を揃えて言うのだから、アルダはアルダシール殿下なのだと認めざるを得ない。
その隣では、アルダ……改め、アルダシールが他人事のように紅茶を啜っている。
アシュレイが呆れた眼差しを向けても、どこ吹く風だ。
その後マクシムは、アルダシールが置かれた状況、人間関係について、順を追って説明してくれた。
アルダシールは前王妃の生んだ王子で、実母は他界している。
現王妃のタヒルは、自身の生んだキュロスを王座に就かせるため、アルダシールを失脚させる計画を進めていた。
動きが表面化したのはキュロスが15歳の誕生日を迎えた2年前からだ。
アラウァリアではごく僅かの例外を除いて、王位継承権を持つ男子は15歳で立太子の資格を得る。
「アルダシール様は陰謀が表面化するより以前に、タヒル王妃の動きに薄々疑問を持たれていました。王宮内の人事の采配、官僚団の刷新など、国政の重要な地位にいた重鎮たちが1人、2人と、不自然な人事異動で地方に飛ばされていたからです」
「それは……。でも、そんなこと、王妃一人の権限でどうにかなるものではないでしょう?」
「はい。ですが、王妃にはそれを実現できるだけの後ろ盾がございました」
「……というと、国王陛下が……? それほどの寵愛を賜っているの? 国王の寵愛がそれほど深いのに、あんなに沢山の妾妃を囲っているの」
本当なら、つい数日前にもう一人、アシュレイがそこへ追加されるはずだった。
女好きとの噂はあれど、愛妻家との評判は一つも聞いていない。
「ご寵愛、……とは、言えません。いえ、事実、国王陛下はタヒル王妃には頭が上がらないというか……」
マクシムは言いよどみ、一度口を噤んでしまった。
言葉を選んでいるというよりは、口に出すのを躊躇っているようだ。
「国王陛下はもう、まともではない。タヒルの傀儡と化している。……そう表現しても差し支えない」
マクシムは立ち上がり、アルダの指示を仰ぐ。
説明の過程でアシュレイの怒りをこれ以上煽らぬようにとの配慮だろう。
「そうしてくれ」
アルダは顎を引いて先を促す。
「畏まりました」
マクシムはアシュレイのために椅子を引き、自らも対面に腰を下ろした。
「包み隠さず申し上げますので、本日知り得た内容は、どうぞご内密にお願いします」
マクシムは真剣そのものの表情で、アシュレイに向き合った。
「まず、アルダと名乗っていたそうですが、こちらにいらっしゃるお方の真の名は、アルダシール・フェルドウス様。アラウァリア王国の第一王子であらせられます」
(やっぱり、そういうこと……)
衝撃の事実を聞かされたにもかかわらず、アシュレイはあまり驚愕しなかった。
「あまり驚かれないのですね」
「自分でも意外ですが、情報を小出しにされていたからでしょうか。答え合わせをしている気分です。続けていただけますか」
アシュレイの反応に、逆にマクシムが驚いたようだ。
アルダがこの国の王子。
茂みでそ会話を耳にして、俄かには信じ難かった。アルダにそう告白されたら、事実を疑ったかもしれない。
でも、これだけの複数人が口を揃えて言うのだから、アルダはアルダシール殿下なのだと認めざるを得ない。
その隣では、アルダ……改め、アルダシールが他人事のように紅茶を啜っている。
アシュレイが呆れた眼差しを向けても、どこ吹く風だ。
その後マクシムは、アルダシールが置かれた状況、人間関係について、順を追って説明してくれた。
アルダシールは前王妃の生んだ王子で、実母は他界している。
現王妃のタヒルは、自身の生んだキュロスを王座に就かせるため、アルダシールを失脚させる計画を進めていた。
動きが表面化したのはキュロスが15歳の誕生日を迎えた2年前からだ。
アラウァリアではごく僅かの例外を除いて、王位継承権を持つ男子は15歳で立太子の資格を得る。
「アルダシール様は陰謀が表面化するより以前に、タヒル王妃の動きに薄々疑問を持たれていました。王宮内の人事の采配、官僚団の刷新など、国政の重要な地位にいた重鎮たちが1人、2人と、不自然な人事異動で地方に飛ばされていたからです」
「それは……。でも、そんなこと、王妃一人の権限でどうにかなるものではないでしょう?」
「はい。ですが、王妃にはそれを実現できるだけの後ろ盾がございました」
「……というと、国王陛下が……? それほどの寵愛を賜っているの? 国王の寵愛がそれほど深いのに、あんなに沢山の妾妃を囲っているの」
本当なら、つい数日前にもう一人、アシュレイがそこへ追加されるはずだった。
女好きとの噂はあれど、愛妻家との評判は一つも聞いていない。
「ご寵愛、……とは、言えません。いえ、事実、国王陛下はタヒル王妃には頭が上がらないというか……」
マクシムは言いよどみ、一度口を噤んでしまった。
言葉を選んでいるというよりは、口に出すのを躊躇っているようだ。
「国王陛下はもう、まともではない。タヒルの傀儡と化している。……そう表現しても差し支えない」
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