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新しい国
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「わかっている。いいからお前も下がっていてくれ」
椅子を律義に、ベッドサイドに移動させたのはリックだった。
「リックさん! ……良かった、貴方も無事だったのね」
「はい。アシュレイ様。……では殿下、お約束通り、手短にお願いします」
リックはアルダシールに頭を下げて、アシュレイにも一礼してから出て行った。
リックが退室すると、アルダシールはふぅと息を吐いてから、口を開いた。
「アシュレイに見張りをつけたのは俺だが、俺もギルフォード殿に見張りをつけられた」
「それは、放っておくと勝手に動き回るから?」
「そうだ。結局俺たちは似た者同士らしい」
釣られてアシュレイも……、笑いそうになったが、笑えない!
「それ、駄目なやつでしょ。やっぱり、相当悪いのね? どうして来たのよ」
「アシュレイに話があると言ったはずだ。……嬉しくないのか。俺が訪ねて来て」
「いや、それは、嬉しい、けど……」
びっくりするほど真面目な口調で質問されて、アシュレイも思わず素直に答える。
アルダシールは、今まで見せたことがないほど、甘やかな微笑みを浮かべた。
はにかんで、少し照れたような。まるで少年のように初々しい微笑み。
(何これっ! 急に、反則っ! なんか……か、可愛い)
アルダシールは常にどこか寂し気で、物事を達観し、冷めた目で見るような節があった。
そのアルダシールが見せた無邪気な表情に、アシュレイの胸は早鐘を打った。
「なら、いいだろう。少しだけならと、リックも許可した。それでここまでついて来たんだ」
「わかったわ。それで、話って……?」
アシュレイはなるべく平静を保とうと、先を促した。
「先ず……明るい話題ではないが、今回の内乱で国王陛下とタヒル王妃、第2王子のキュロスが死んだ」
一変して、表情を引き締めたアルダシールの口から語られたのは、この内乱の結末だった。
国王アルタクセルとタヒル王妃がどうなったのかは、話の成り行きで察していたが、これでその死は確かなものとなった。
アルダシールはあの火災の中で起きた一部始終を語った。
「父はタヒルに刺され、一時だが自我を取り戻した。手前勝手にはなるが、全ての責を負って自害されたと解釈し……皆にはそのように伝えた。タヒルの罪は、国王が命を持って償わせたと」
実の弟に父を人質に取られ、命を狙われる。
どれだけ切なく、心許ない心境だっただろうか。
耳を塞ぎたくなるような出来事を、アルダシールは淡々と話した。
アシュレイのほうが聞いていられないほど痛々しい内容だが、聞いて欲しかったのだろう。
アシュレイは涙を懸命に堪えて、相槌を打った。
いつの間にか、アルダシールはアルタクセルを「あの男」ではなく「父」と呼んでいた。
何某かの変化があったアルダシールの胸中を、アシュレイは真摯な気持ちで受け止めた。
椅子を律義に、ベッドサイドに移動させたのはリックだった。
「リックさん! ……良かった、貴方も無事だったのね」
「はい。アシュレイ様。……では殿下、お約束通り、手短にお願いします」
リックはアルダシールに頭を下げて、アシュレイにも一礼してから出て行った。
リックが退室すると、アルダシールはふぅと息を吐いてから、口を開いた。
「アシュレイに見張りをつけたのは俺だが、俺もギルフォード殿に見張りをつけられた」
「それは、放っておくと勝手に動き回るから?」
「そうだ。結局俺たちは似た者同士らしい」
釣られてアシュレイも……、笑いそうになったが、笑えない!
「それ、駄目なやつでしょ。やっぱり、相当悪いのね? どうして来たのよ」
「アシュレイに話があると言ったはずだ。……嬉しくないのか。俺が訪ねて来て」
「いや、それは、嬉しい、けど……」
びっくりするほど真面目な口調で質問されて、アシュレイも思わず素直に答える。
アルダシールは、今まで見せたことがないほど、甘やかな微笑みを浮かべた。
はにかんで、少し照れたような。まるで少年のように初々しい微笑み。
(何これっ! 急に、反則っ! なんか……か、可愛い)
アルダシールは常にどこか寂し気で、物事を達観し、冷めた目で見るような節があった。
そのアルダシールが見せた無邪気な表情に、アシュレイの胸は早鐘を打った。
「なら、いいだろう。少しだけならと、リックも許可した。それでここまでついて来たんだ」
「わかったわ。それで、話って……?」
アシュレイはなるべく平静を保とうと、先を促した。
「先ず……明るい話題ではないが、今回の内乱で国王陛下とタヒル王妃、第2王子のキュロスが死んだ」
一変して、表情を引き締めたアルダシールの口から語られたのは、この内乱の結末だった。
国王アルタクセルとタヒル王妃がどうなったのかは、話の成り行きで察していたが、これでその死は確かなものとなった。
アルダシールはあの火災の中で起きた一部始終を語った。
「父はタヒルに刺され、一時だが自我を取り戻した。手前勝手にはなるが、全ての責を負って自害されたと解釈し……皆にはそのように伝えた。タヒルの罪は、国王が命を持って償わせたと」
実の弟に父を人質に取られ、命を狙われる。
どれだけ切なく、心許ない心境だっただろうか。
耳を塞ぎたくなるような出来事を、アルダシールは淡々と話した。
アシュレイのほうが聞いていられないほど痛々しい内容だが、聞いて欲しかったのだろう。
アシュレイは涙を懸命に堪えて、相槌を打った。
いつの間にか、アルダシールはアルタクセルを「あの男」ではなく「父」と呼んでいた。
何某かの変化があったアルダシールの胸中を、アシュレイは真摯な気持ちで受け止めた。
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