王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら

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「それも含めて、引き続き調査が必要です。只今シュナイゼル殿下が手配した……待っ、アシュレイ様、お待ちを……」

「止めないで、マクシム。私、昨晩聞いてしまったの。アルダは世継ぎを授からずに悩んでいるって。そりゃあね、直系の王族は今やアルダ一人だもの。私に非がないとは言わない」

 マクシムは動揺を抑えきれないながらも、どうにかアシュレイのローブの裾にしがみついた。

「どうかお鎮まりを。はアシュレイ様の非ではありません。それに、いくら陛下に独断の気質があるとはいえ、女性と落ちのびて一国を放り投げるほど無責任をなさる方ではありません」

 アシュレイも裾を引っ張り返して振り払おうとするが、叶わない。

「そんなの、分かってるわよ! でも、だからって悠長に待っていられない。だって、やりようは他にいくらでもあったでしょう? もし……本当にアルダが不安で、ほっ、他に好きな人ができたなら、正々堂々と私に告げるべきよ。それだけの努力もせず、勝手に外堀を埋めようなんて、あんまりよ!」

 アルダシールがアシュレイたちに何も告げずにランドットに向かったなら、きっとそれだけの理由はある。

 反対を見越して、何かしらの先手を打ちに行ったに可能性が高い。

 大国アラウァリアから圧力をかければ、首長級の子女1人、ものにするくらいわけはない。

「アシュレイ様っ……! きっと、何かの間違いです。代表のローネッド・カウリウスはガロンド族の出身。ガロンド族は古の秘術を体得しているとか。娘のエステル様もその血を引いていますので、あるいは」

 裾を握りしめたままのマクシムが、一層動揺を強め、捲し立てた。

「あるいは? アルダがエステル様の術中にあるかもって? そんなの、慰めにならないわ」

 アシュレイの瞳から大粒の涙が、溢れたからだ。

 涙はポロンと、頬を勢いよく滑ってローブに落ちた。

「これは、決して慰めなどではありません。ですが、調べを進めないことには何とも……ですが直ぐに、間もなく」

 堪えようと思って眉間に皺を寄せたが、そんな動作では止まらない。

 唇を噛んでも、隙間から塩気のある水が入り込んでくるだけで、なんの効果もなかった。

 顔を背ける気にはなれず、大人しく、手の甲で目元をグイと拭った。

 怒っているのか、悲しんでいるのか。自分でも自分の感情が把握できない。

 ただ、ポロポロと涙がこぼれ出ているから、自分で把握している以上に、感情の振り幅は大きいのだと思う。

「ごめん、なさ……。うっ、アルダは、飽きちゃったのかしら?」

「えっ、いや、そんなはず」

「じゃあどうして? こんなに急に、昨日までずっと私だけだって甘々だったのに」

「ですからそれは、何か事情が」 
 
「私が女らしくないから? 生意気で、可愛げが足りないの? 昨日も制止を聞かずに、アルダたちに心配をかけたから?」

「アシュレイ様は、充分に女性らしいお方です。陛下がどれだけ夢中になっているか。傍で見ている私が、一番よくわかっております」

「でもね、現に女性と駆け落ちしてるのよ! 酷いわ、私はこんなにアルダを愛してるのに」

 一度、弱気が頭をもたげたら、堰を切ったように悲嘆があふれた。

 家臣の前なのに、わあっと号泣してしまった。

 両手で顔を覆っても、次から次へと涙が溢れて止まらない。

「わわっ、わかりました、アシュレイ様!」

 掌の隙間から流れる涙を拭き取ろうとローブの袖を手繰り寄せると、マクシムはやおら、裾を掴んでいた手を離した。

 何事かを決意した強い眼差しで、アシュレイを見据える。

 強すぎて、睨まれているのではと錯覚するほど強い眼だ。

「アシュレイ様は悪くありません。陛下を、追いかけましょう!」

「えっ?」

「全くもって、私の配慮が足りませんでした! アシュレイ様のご心痛はごもっとも、陛下の行動は目に余ります。私たちも陛下の捜索に、加わりましょう」

 アシュレイにハンカチを差し出しながら、マクシムはブンブンともげそうなほど強く首を振り、頷いた。

「……いいの? 私も、行っても」

 マクシムの提案が意外すぎて、ポカンとマクシムを見上げる。




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