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本
しおりを挟む『ソフィー』
著:ガイ・バート
訳:黒原敏行
創元推理文庫&創元SF文庫 復刊フェア2025のリストをみて、あらすじからして絶対好きなやつだ!とわくわくしながら買った1冊。
マシューの回想で、ソフィーとの楽しい思い出にどこか引っ掛かるような違和感があって、じわじわと不穏さが増していき、ページをめくる手が止まらない。
好きだった文章
(本文引用4つ目から下はネタバレ注意)
本文
「よく子供時代の恐怖はいちばん強烈だと言うけど、それは正確じゃない。いちばん怖いのは、子供時代の恐怖が顔を持ちはじめるときなんだ」59P
マシューの言葉。
自覚してからぞっとすることってあるよねって確かに思う。
「ときどき、ぼくは自分の子供時代の意味を探すために、子供時代を過ごしたように思えるんだ。」149P
マシューの言葉。
自分自身も、エッセイを書くときとか、自分は一体どういう人間なんだろうと考え直すときに、自分がしたことや今していることに何でも意味を探している気がする。
マシューの言葉が今自分がしていることをぴったり言い当てていてしっくりきている。
「ときどき、だれも来ない場所でぼうっと坐ってるのって、いいものよ。ときどき、そんなことをしたほうがいいのよ」243P
ソフィーの言葉。
全くもってその通りだと思う。うまく言葉にできないけど本当にその通りだと思うとしか。
「理解してるつもりだったけど、そうじゃなかった。もう一度やり直したかったんだよ。もう一度チャンスがほしかった……。姉さんが行ってしまったあとで、そのことが大事になってきたんだ。」246P
マシューの言葉。
自分にも思い当たる節がある。そして、それがその人が行ってしまったあとに大事になってきたというのも刺さりまくる。
訳者あとがき
「東京のあたりでは、こういう子供の隠れ処を〈秘密基地〉というようだが、私が生まれ育った関西の田舎町では〈棲み処〉と呼んでいたものだ。ツリーハウスのような手のこんだ自作のものではなくて、廃屋とか、野山の木立のちょっとした閉鎖的空間などで、話をしたり、漫画を読んだりというたわいもない遊びだ。」295P
『ソフィー』の中で「棲み処」という言葉は本当にぴったりなような気がした。
ソフィーたちにとって家より「納屋」の方が誰にも侵されない適切な居場所だったのではないかと思わずにはいられない。
そして最後にはその納屋も燃えてなくなってしまう。
最後にはソフィーが最初の頃より幼く感じるような気がして不思議だ。
謎が全て明かされてすっきりするというタイプではなくて、何度も読み返したくなる。
最初は、謎が全て解明されることを期待して読んでいたけど、どこかすっきりしないところが、過去の不気味さをより感じられていいかもしれないと後から感じ始めた。
それから、川出正樹さんの解説を読んで、人との関わりは、すべてを理解することが目的ではなくて、理解し合おうと努力することこそが大切なのではないかと思えてきた。
解説ではさらに、『The Dandelion Clock』が近々東京創元社から訳出されることと、著者が新作を改稿中だということが記されていてわくわくしている。
他の作品も読んでみたい。
これはあんまり関係ないけど、解説の序盤にシャーリイ・ジャクスンの『ずっとお城で暮らしてる』の引用文があって、そういえば積ん読してたしなんなら売っちゃってたかもなとか思い出した。
これも今度こそちゃんと読みたい。
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