染みてない大根11月

鯨骨

文字の大きさ
2 / 2

しおりを挟む

『ソフィー』
著:ガイ・バート
訳:黒原敏行

創元推理文庫&創元SF文庫 復刊フェア2025のリストをみて、あらすじからして絶対好きなやつだ!とわくわくしながら買った1冊。
マシューの回想で、ソフィーとの楽しい思い出にどこか引っ掛かるような違和感があって、じわじわと不穏さが増していき、ページをめくる手が止まらない。

好きだった文章
(本文引用4つ目から下はネタバレ注意)

本文

「よく子供時代の恐怖はいちばん強烈だと言うけど、それは正確じゃない。いちばん怖いのは、子供時代の恐怖が顔を持ちはじめるときなんだ」59P

マシューの言葉。
自覚してからぞっとすることってあるよねって確かに思う。

「ときどき、ぼくは自分の子供時代の意味を探すために、子供時代を過ごしたように思えるんだ。」149P

マシューの言葉。
自分自身も、エッセイを書くときとか、自分は一体どういう人間なんだろうと考え直すときに、自分がしたことや今していることに何でも意味を探している気がする。
マシューの言葉が今自分がしていることをぴったり言い当てていてしっくりきている。

「ときどき、だれも来ない場所でぼうっと坐ってるのって、いいものよ。ときどき、そんなことをしたほうがいいのよ」243P

ソフィーの言葉。
全くもってその通りだと思う。うまく言葉にできないけど本当にその通りだと思うとしか。

「理解してるつもりだったけど、そうじゃなかった。もう一度やり直したかったんだよ。もう一度チャンスがほしかった……。姉さんが行ってしまったあとで、そのことが大事になってきたんだ。」246P

マシューの言葉。
自分にも思い当たる節がある。そして、それがその人が行ってしまったあとに大事になってきたというのも刺さりまくる。

訳者あとがき

「東京のあたりでは、こういう子供の隠れ処を〈秘密基地〉というようだが、私が生まれ育った関西の田舎町では〈棲み処〉と呼んでいたものだ。ツリーハウスのような手のこんだ自作のものではなくて、廃屋とか、野山の木立のちょっとした閉鎖的空間などで、話をしたり、漫画を読んだりというたわいもない遊びだ。」295P

『ソフィー』の中で「棲み処」という言葉は本当にぴったりなような気がした。
ソフィーたちにとって家より「納屋」の方が誰にも侵されない適切な居場所だったのではないかと思わずにはいられない。
そして最後にはその納屋も燃えてなくなってしまう。
最後にはソフィーが最初の頃より幼く感じるような気がして不思議だ。

謎が全て明かされてすっきりするというタイプではなくて、何度も読み返したくなる。
最初は、謎が全て解明されることを期待して読んでいたけど、どこかすっきりしないところが、過去の不気味さをより感じられていいかもしれないと後から感じ始めた。
それから、川出正樹さんの解説を読んで、人との関わりは、すべてを理解することが目的ではなくて、理解し合おうと努力することこそが大切なのではないかと思えてきた。

解説ではさらに、『The Dandelion Clock』が近々東京創元社から訳出されることと、著者が新作を改稿中だということが記されていてわくわくしている。
他の作品も読んでみたい。
これはあんまり関係ないけど、解説の序盤にシャーリイ・ジャクスンの『ずっとお城で暮らしてる』の引用文があって、そういえば積ん読してたしなんなら売っちゃってたかもなとか思い出した。
これも今度こそちゃんと読みたい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...