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20話 パーティー
しおりを挟むアゲハとの対戦は何とか乗り越えた。話している限りでは普通の女の子と何ら変わりはない。
それでも家族にとっては兇器だった。おそらく、アゲハの中に後ろめたさや悔悟の念といったものは存在しないのだろう。
私は直斗にメールで桜ちゃんの電話番号を教えてもらい、桜ちゃんに電話を掛けて事のあらましを話した。
「桜ちゃんごめんな、勝手なことして。それと、依頼にあった幹部候補の内戦って、來斗と西鎌の事だろ? 西鎌はボスであってもオーナーじゃない、西鎌は東側も狙ってる、それがボス戦だ、違う?」
『フフフ、その通りさ、先ずは來斗の安全を最優先にしたかったんだよ。それにしても、アゲハが來斗のマンションへ行っていたとはねえ……』
さすがに桜ちゃんも知らなかったようだ。
「ただアゲハはポリスの内側に入り込もう考えている。もし西鎌と繋がりあるとしたら状況は悪化するだろうなあ、そこで確認なんだけど、西鎌は私を請負人と知っているのかな?」
『請負人の存在自体は知ってるだろうね。でもそれがキーナさんであることは知らないと思うよ。あ、そうなると、來斗達に口止めしなくちゃだね』
「それは大丈夫だろ、來斗と直斗は西鎌の資料を読んでいる、それなりに分かってると思うよ」
『そうかい……孫には良い爺ちゃんでいて欲しかったんだけど、あの子達も一人前になったってことなんだろう。早く引退しなきゃだね……』
世代交代は必ずやって来る。桜ちゃんは來斗にバトンを託した、それには西側をクリーンにしたい思惑もあるんだろう、だから來斗を巻き込んだ。
「それでなんだけど、西鎌に本当の依頼を話してはどうかと思うんだ、牽制だよ、私達はここまで知っているんだよっていうアピールさ。もちろん幹部は來斗と西側の誰かってことにしてね」
『それはいいけど、來斗が襲われたらどうしよう、アタシはそれが心配だよ』
「そこで請負人の登場だ。依頼先が請負人と知ればそう簡単に手を出してくるとは思えない、こっちに居れば遅かれ早かれバレるんだ、知名度は有効活用しないとな。その辺の話しは桜ちゃんに任せた。ああ悪いけど來斗にもそう説明してくれる? 私からだと角が立ちそうなんでね、じゃあよろしく」
『待っておくれよ、アゲハは野放しで良いのかい? キーナさんはそれで良いの?』
今度はアゲハがまとわり付くのか……。
「その辺は好きにさせるさ。なあ桜ちゃん、最終的に決めるのは來斗だ、じゃあ切るよ」
桜ちゃんとの会話を終えて私は直斗の家に向かった。途中で薬局店とスーパーにも寄った。
車を近くの駐車場に駐めて、家のチャイムを鳴らす。
「あ、おかえり。奴らは寝てるから静かにな、丁度珈琲を淹れたところだ。ほら、早く上がれよ」
ここでも珈琲の良い香りに迎えられて何故かホッとする。部屋へ入ると座敷部屋の布団の上でふたりが横たわっていた。安堵したのか寝息が聞こえる。
「さっき桜ちゃんに電話で説明してきた。お叱りは受けなかったよ、私も直斗もね。それと住む家も見つかった。多分、入居できるのは2~3日後だ、それまで悪いが私も厄介になるよ、いいだろ?」
「そりゃいいけどよ、別にここでも良くない? 部屋は余ってんだしさ」
「あ、言い忘れてた。さっき義妹さんが家の前をうろついてたよ」
「えっ、アゲハが? 何で……あっ、まさか!」
「そう、そのまさかだ。彼らの雇い主は義妹さんだよ、だからこの家には居られないんだ」
直斗の顔が曇る――
「あいつ、そこまで……オレが捻り潰してやる!」
任せた、と言いたいところだが、相手は身内、安易に応えることはできない。
「なあ直斗、いちおう家族だ、良く考えろよ」
「俺はずっと考えてきたよ、何であいつが家族の顔で居られるのかってね。アゲハは拾われた可哀想な猫なんかじゃない、ただの泥棒猫だ。キーナよ、二度と立ち上がれないようにしてやろうぜ!」
「泥棒猫ねえ、確かにそうかも」
そこへ隣りの部屋から呻き声が――
「クァァ……ハァ……緩いなあ……」
「「えっ、ヒッ!」」
座敷から、包帯ぐるぐるモンスターのルートが起き上がった。急に怖いってば……。
「お前なあ、急に背後から声を掛けるなよ……」
「ああ、ビビったぁ……おいキーナよ、オレはもう彼らとパーティーを組んだのだよ、ワッハッハ!」
こいつ……直斗ワールド全開だな。
「直斗、その冒険者モードをやめろ。あ、唐突で悪いんだけど、そのリーフにルートって名前、誰に付けてもらったんだ?」
リーフは"葉"、ルートは"根"を意味する。闇組織がこんな洒落た名を付けるとは思えなかった。
「えっ? 親じゃないのか?」
「バカ直斗、アサシンは仕事名をもらうんだよ」
隣りで寝ていたリーフも起き上がった。
「ふう、キーナさんには敵わないなあ。この名前は有名なソルジャーの方に付けてもらったんです、だからとても気に入ってるんです」
ということは、アサシンの名は持っていたが、敢えて使わない、彼らなりの抵抗なんだろう、ならここは聞かずにおこう。
「そっか、良かったな」
「よーし、これで4人組のパーティーができたわけだ、さっそくゲーム開始と行こうぜ」
ゲーム。感覚的にそのほうが気持ちの上でやり易いのかもしれない、特に直斗にとっては――
「その前に腹ごしらえだ。近くで買い物してきたんだけど、主に肉系が多いかな、怪我の回復に良いと思って。なあ直斗、お前料理とかできる?」
直斗は鼻息荒く言う。
「まっかせなさい! オレはいつも自炊なんでね、婆ちゃんから貰った野菜もあるしな」
「じゃあ後はよろしくお願いしますね~」
「こいつ、絶対に美味いと言わせてやる!」
直斗が料理を作っている間に、リーフとルートにアゲハとの出会いと、雇われた経緯を聞いた。
3人は幼い頃、難民キャンプで出会い、闇組織に誘拐されアサシンとして訓練を受けた。
リーフとルートは逃げ出したが、アゲハは付いて来なかった。それからふたりは山奥の森林でソルジャーに助けられ、しばらくは一緒に生活をしていた。そんなある時、戦争が勃発してソルジャーとは離ればなれになった。そしてまた闇組織に捕まり、アサシンを続けることになった。
それから年月が経ち、約2年前、アゲハがふたりの前に突如現れて、一緒に仕事をするようになった。
今の組織とはまた別で、個人的に連んでいたと言う。そして今回の依頼を持ち掛けられた。
内容は、今の家族はとても冷たく、唯一好きになった人を魔の手から救い出したい、だから助けて欲しいという理由だとか。
正に彼らは悪魔の語部に落ちた、といったところか。
謎の多い話だが、彼らが嘘をついているとは思えない。ポリス側を相手に、わざわざリスクを負う必要が彼らにあるだろうか、それと、組織を抜けてまで、頼る相手がアゲハではなく私であること、ここに罠があるとは考え難い。
この話の中で欠けているピースは、アゲハがふたりと離れた理由だ。おそらくその理由を知るのは奴しかいないだろう――
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