お飾りドールのあぶない日常 〜神の力と仲間は最強です〜

ケイソウ

文字の大きさ
21 / 38

20話 パーティー

しおりを挟む

 アゲハとの対戦は何とか乗り越えた。話している限りでは普通の女の子と何ら変わりはない。
 それでも家族にとっては兇器だった。おそらく、アゲハの中に後ろめたさや悔悟かいごの念といったものは存在しないのだろう。

 私は直斗にメールで桜ちゃんの電話番号を教えてもらい、桜ちゃんに電話を掛けて事のあらましを話した。

「桜ちゃんごめんな、勝手なことして。それと、依頼にあった幹部候補の内戦って、來斗と西鎌の事だろ? 西鎌はボスであってもオーナーじゃない、西鎌は東側も狙ってる、それがボス戦だ、違う?」
 
『フフフ、その通りさ、先ずは來斗の安全を最優先にしたかったんだよ。それにしても、アゲハが來斗のマンションへ行っていたとはねえ……』

 さすがに桜ちゃんも知らなかったようだ。

「ただアゲハはポリスの内側に入り込もう考えている。もし西鎌と繋がりあるとしたら状況は悪化するだろうなあ、そこで確認なんだけど、西鎌は私を請負人と知っているのかな?」
 
『請負人の存在自体は知ってるだろうね。でもそれがキーナさんであることは知らないと思うよ。あ、そうなると、來斗達に口止めしなくちゃだね』
 
「それは大丈夫だろ、來斗と直斗は西鎌の資料を読んでいる、それなりに分かってると思うよ」
 
『そうかい……孫には良い爺ちゃんでいて欲しかったんだけど、あの子達も一人前になったってことなんだろう。早く引退しなきゃだね……』

 世代交代は必ずやって来る。桜ちゃんは來斗にバトンを託した、それには西側をクリーンにしたい思惑もあるんだろう、だから來斗を巻き込んだ。

「それでなんだけど、西鎌に本当の依頼を話してはどうかと思うんだ、牽制けんせいだよ、私達はここまで知っているんだよっていうアピールさ。もちろん幹部は來斗と西側の誰かってことにしてね」
 
『それはいいけど、來斗が襲われたらどうしよう、アタシはそれが心配だよ』
 
「そこで請負人の登場だ。依頼先が請負人と知ればそう簡単に手を出してくるとは思えない、こっちに居れば遅かれ早かれバレるんだ、知名度は有効活用しないとな。その辺の話しは桜ちゃんに任せた。ああ悪いけど來斗にもそう説明してくれる? 私からだと角が立ちそうなんでね、じゃあよろしく」
 
『待っておくれよ、アゲハは野放しで良いのかい? キーナさんはそれで良いの?』

 今度はアゲハがまとわり付くのか……。

「その辺は好きにさせるさ。なあ桜ちゃん、最終的に決めるのは來斗だ、じゃあ切るよ」

 桜ちゃんとの会話を終えて私は直斗の家に向かった。途中で薬局店とスーパーにも寄った。
 車を近くの駐車場に駐めて、家のチャイムを鳴らす。

「あ、おかえり。奴らは寝てるから静かにな、丁度珈琲を淹れたところだ。ほら、早く上がれよ」

 ここでも珈琲の良い香りに迎えられて何故かホッとする。部屋へ入ると座敷部屋の布団の上でふたりが横たわっていた。安堵したのか寝息が聞こえる。

「さっき桜ちゃんに電話で説明してきた。お叱りは受けなかったよ、私も直斗もね。それと住む家も見つかった。多分、入居できるのは2~3日後だ、それまで悪いが私も厄介になるよ、いいだろ?」
 
「そりゃいいけどよ、別にここでも良くない? 部屋は余ってんだしさ」
 
「あ、言い忘れてた。さっき義妹さんが家の前をうろついてたよ」
 
「えっ、アゲハが? 何で……あっ、まさか!」
 
「そう、そのまさかだ。彼らの雇い主は義妹さんだよ、だからこの家には居られないんだ」

 直斗の顔が曇る――

「あいつ、そこまで……オレが捻り潰してやる!」

 任せた、と言いたいところだが、相手は身内、安易に応えることはできない。

「なあ直斗、いちおう家族だ、良く考えろよ」
 
「俺はずっと考えてきたよ、何であいつが家族の顔で居られるのかってね。アゲハは拾われた可哀想な猫なんかじゃない、ただの泥棒猫だ。キーナよ、二度と立ち上がれないようにしてやろうぜ!」
 
「泥棒猫ねえ、確かにそうかも」

 そこへ隣りの部屋から呻き声が――

「クァァ……ハァ……ぬるいなあ……」

「「えっ、ヒッ!」」

 座敷から、包帯ぐるぐるモンスターのルートが起き上がった。急に怖いってば……。

「お前なあ、急に背後から声を掛けるなよ……」
 
「ああ、ビビったぁ……おいキーナよ、オレはもう彼らとパーティーを組んだのだよ、ワッハッハ!」
 
 こいつ……直斗ワールド全開だな。

「直斗、その冒険者モードをやめろ。あ、唐突で悪いんだけど、そのリーフにルートって名前、誰に付けてもらったんだ?」

 リーフは"葉"、ルートは"根"を意味する。闇組織がこんな洒落た名を付けるとは思えなかった。

「えっ? 親じゃないのか?」
 
「バカ直斗、アサシンは仕事名をもらうんだよ」

 隣りで寝ていたリーフも起き上がった。

「ふう、キーナさんには敵わないなあ。この名前は有名なソルジャーの方に付けてもらったんです、だからとても気に入ってるんです」

 ということは、アサシンの名は持っていたが、敢えて使わない、彼らなりの抵抗なんだろう、ならここは聞かずにおこう。

「そっか、良かったな」

「よーし、これで4人組のパーティーができたわけだ、さっそくゲーム開始と行こうぜ」

 ゲーム。感覚的にそのほうが気持ちの上でやり易いのかもしれない、特に直斗にとっては――

「その前に腹ごしらえだ。近くで買い物してきたんだけど、主に肉系が多いかな、怪我の回復に良いと思って。なあ直斗、お前料理とかできる?」

 直斗は鼻息荒く言う。

「まっかせなさい! オレはいつも自炊なんでね、婆ちゃんから貰った野菜もあるしな」
 
「じゃあ後はよろしくお願いしますね~」
 
「こいつ、絶対に美味いと言わせてやる!」

 直斗が料理を作っている間に、リーフとルートにアゲハとの出会いと、雇われた経緯を聞いた。

 3人は幼い頃、難民キャンプで出会い、闇組織に誘拐されアサシンとして訓練を受けた。
 リーフとルートは逃げ出したが、アゲハは付いて来なかった。それからふたりは山奥の森林でソルジャーに助けられ、しばらくは一緒に生活をしていた。そんなある時、戦争が勃発してソルジャーとは離ればなれになった。そしてまた闇組織に捕まり、アサシンを続けることになった。

 それから年月が経ち、約2年前、アゲハがふたりの前に突如現れて、一緒に仕事をするようになった。
 今の組織とはまた別で、個人的に連んでいたと言う。そして今回の依頼を持ち掛けられた。
 内容は、今の家族はとても冷たく、唯一好きになった人を魔の手から救い出したい、だから助けて欲しいという理由だとか。
 正に彼らは悪魔の語部かたりべに落ちた、といったところか。
 
 謎の多い話だが、彼らが嘘をついているとは思えない。ポリス側を相手に、わざわざリスクを負う必要が彼らにあるだろうか、それと、組織を抜けてまで、頼る相手がアゲハではなく私であること、ここに罠があるとは考え難い。

 この話の中で欠けているピースは、アゲハがふたりと離れた理由だ。おそらくその理由を知るのは奴しかいないだろう――
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

処理中です...