俺とダークサイドファミリア 〜仕組まれた転生と異世界事情〜

ケイソウ

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2話 ファイターズクラブ

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 両親から離れて早10年、レクスは相変わらずのイケメン執事で激愛も半端ない。
 ここはヴェルデという王国で、王都フィデスには近代的な建物が並び、裕福な人々で賑わっている。
 
 そうそう、俺の領地なんだけど、王都から少し離れた、絶対に誰も近寄らないであろう樹海の中央にある屋敷だった。
 完璧といっていい俺のオアシスである。
 
 そしてシルヴァ母さんの真似をして、死霊ネクロを召喚し結界を張った。
 死霊ネクロを召喚する意味は、魔素を吐き出させ魔力と結界を温存させるためだと、シルヴァ母さんが言っていた。
 空に浮かぶ空母要塞とまではいかないけど、樹海の秘密基地くらいにはなったと思う。
 怪しさ半端なく、実に快適だ。

 朝食を終えてまったりしていると、レクスが制服を片手にやってきた。

「坊ちゃま、そろそろクラブのお時間です」
「ああ、クラブかあ……」

 クラブとは、武術や剣術を身に付けさせるための戦士育成教室だ。この大国では10歳から15歳まで教室に通うのが必須条件となっている。
 特に、微弱ながらでも魔力保有者は特待生として優遇され、王国機動隊の仮隊員として雇われる。
 
 シルヴァ母さんいわく、ダンジョンが消滅したことによる冒険者やギルドの廃止、そして魔力の減少で継承者も減ったからなんだとか。
 つまり、魔力があるなら隊員、無いなら拳闘士や剣士になって治安維持に貢献しろって話だ。
 もちろん俺は普通の生徒を装う。だって俺はダークファミリーの一員だからね。

「ねえレクス~、行かないとダメ?」
「坊ちゃま、いい加減に諦めてください、この国の決まりなのですから」
「だって弱者を演じるのも疲れるんだよ~」
「お気持ちはわかります、でも最後まで居た試しがないではありませんか。それに、今は他の案件が御座いますのでご辛抱を」

 ということで、王都にある「青少年ファイターズクラブ」へやって来た。流石にここまでショボい名だと逆に清々すがすがしい。
 さてと、憂鬱ゆううつなクラブで今日も基礎練習だ。

 ――――――

 時は過ぎ、退屈でくだらない稽古も終わるころ、そろそろ退散しようとこっそり帰る準備をしていると、講師が大声で号令を掛けた。

「今日はこれから全員と模擬戦を行う、準備しろ」

 聞き慣れない声に振り返ると、知らない講師が腰に手を当て立っている、臨時か?
 それよりも、模擬戦とはなんだろう――

 俺は魔力のの字も無いモブAに近寄り訊いた。

「ねえ、あの先生は誰? 模擬戦って?」
「あ、ジニアスくん。あのね、昨日の終礼で講師の先生が、明日は護衛隊の隊長さんに講師を頼んだ、だから頑張るようにって言われたんだよ」

 なるほど、講師もやっと重い腰を上げたかあ、まあ低レベルの集まりだからね、当然か。
 
「それで護衛隊の隊長かあ――」
「そう。皆んな無理くりこの場に留まってるって感じ。ところで、いつもは速攻で帰るジニアスくんがなんで残ってるの?」

 流石はモブくん、観察力はピカイチだ。そこは上手く誤魔化して――

「ええっと……執事のお迎え待ちさ、ハハ……」
「ふ~ん、ジニアスくんも災難だね、早く帰ってれば巻き添え喰わずに済んだのに」
「うん、お互いにね」

 そう言われたモブAはみるみるしおれていく。仕方がないのでなぐさめていると、低レベル貴族のメネスがここぞとばかりに揶揄からかいに来た。未だ腐れ貴族は健在である、やれやれ。

「よう、弱者のジニアスじゃないか、甘々の執事はどうした? あいつがいないから逃げ出せなかったのか? 女々しい奴め、どうせお前の世話に飽きて女と楽しんでんだろうよ、ギャハハ!」

 レクスを引き合いに出すとは、流石の俺もカチンときた。

「まあ君より優秀で良い男だからね、そりゃもうモテモテさ。やっぱ男は顔だね、ククッ」
「な、なんだと! 貴族の俺を侮辱する気か!」
「おお、正解だよ、意外と賢いんだな」
「貴様ー!」

 そこへ隊長の怒号が飛ぶ――

「おいそこ! 無駄口叩いてないで列に並べ!」

 まったく、俺まで怒られてしまったじゃないか、こんなところで目立ちたくないのに……。

「「はい! すみません!」」

 俺たちは慌てて列に並ぶが、俺は最後尾に、メネスは仲間の間に割り込んだ。まあどうでもいいけど、さっさと終わらせてほしいものだ。

 俺は順番を待ちながらウトウトとしていると、いつの間にか俺の番、見渡せば生徒全員が床で昏倒していた。まあそうなるよね。

「よろしくお願いしま~す」

 と、あくびを噛み殺して隊長の前に立つと、いきなり鉄拳が飛んできたので、俺は瞬時に身を屈め下段回し蹴りで足を払い、浮いた隊長の体にボディーブローを喰らわし、魔力で壁に吹っ飛ばした。

「あっ……」

 と思わず声が出るも、時すでに遅しで、隊長は息を詰まらせて何度も嗚咽おえつのような咳払いをする。やってしまった……。

 俺は隊長に駆け寄りしゃがんで容態を聞く。

「あの……だ、大丈夫ですか?」
「グホッ、ゴホッ――ハァ、君はええっと……」

 俺は咄嗟とっさに嘘をつく――
 
「――モブです」
「……そうか、ジニアスくん……だったな」

「チッ」と思わず舌打ちをする、わかっているなら聞かないでほしい。
 さて、この場をどう切り抜けるかだが――

「ハァ、ジニアスくんは特待生だったかな?」
「い、いえ、普通の生徒です……」
「んー、確かいま魔力の波動を感じたんだが……」

 おいでなすった――
 
「ああえっとそれは……火事場の馬鹿力ってやつですよ、ハハ……」
「火事場の馬鹿力? よくわからんが、俺を倒したことに間違いない」

 いや、だから間違いなんだってば……。
 
「……まぐれです、たまたまです、奇跡です」
土壇場どたんばで奇跡を起こせるなら強い戦力だ!」

 わかってないなあ、奇跡は起こらないから奇跡なんだよ。よし、とっとと退散しよう。

「あっ、執事の迎えが来たので失礼しまーす!」
「えっ、おい待てー! まだ昇進の話がー!」

 これぞ正真正銘逃げるが勝ち。さてと、後は野となれ山となれで、例の場所へ急ごう――

 
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