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ついに地上へ
辺りはしんと静まりかえり、今度こそ一人きりだ。
お土産の念押しされたよ。
何やかやと最後は魔境のボスらしい事言ってた気がするけど…やっぱりお土産目当てで俺を見逃している説あるぞ。
大変ありがたいので、別にいいけど。
さて、どうしよう。
夜明けまで何時間もある。このまま一歩も進まず、何時間もステルスモードで夜明けを待つとしたら、MPは残らない。
ラスタさんから貰った魔石があるから、それも手ではあるけど…勿体無いよな。
その時、チラリと上から影がさした。
もとから暗いので本当に微かにだが、何か黒いものが上を横切ったような気がする。
俺は大慌てで車に飛び乗り、ステルスモードへ移行させた。
ワイバーンってやつか?確かミニサイズのドラゴンもどき、てラスタさんは言っていた。空から襲ってくると。
ステルスを解いてほんの少しお喋りしてる間に、寄って来たのかもしれない。
「もう、行っちまうか」
本当は日の昇っている時間にしたかったのだが…。こうなったら、仕方ない。
最悪、ナビの地図がある。ピピピと行く先を地図でなぞり地形を確認してみると、降りられそうな平坦な箇所はいくつかあった。よし、ひとまずそこを目指そう。
念の為、崖沿いにその場から離れる。周囲をよく確認してからすかさず代行モードでジズを選択。ショートカット欲しいな。パソコンじゃないんだから、そんな機能ないよな。
いざ行かん。ギアをAに入れて上昇開始。
たまに雲の塊っぽい輪郭が現れるだけで、上下左右真っ暗闇だ。こうこうと明るいナビ画面が、ひどく心強いものに思えた。
ある程度進んだので、ギアをD3へ下げて地上を目指す。とんでもなく長い下り坂を、ひたすらまっすぐ下っていくのと同じだ。
フロントミラーに映る荒野の地面が、その先に続く暗闇が、ぐんぐんと遠のいていく。ベラトリアの広大な大地が、夜の中へ霞んで見えなくなった。
さよなら、ラスタさんとボスさん。
こうしてみるとあなたたち、とんでもねー所に住んでるよ。
無言でハンドルを握ることしばし、突然その暗闇がサッと晴れた。
まるで目隠しを急に外されたかのように、何も見えなかった視界へ一気に景色が飛び込んできた。
谷間のラインが蛇のように伸びる地上と、満点の星空だ。
思わず、わああ、と感嘆の声が出る。
キラキラ瞬く光の粒たちが、空一面にどこまでも広がっている。あまりの綺麗さに、思わずアクセルから足を離してまじまじと見入ってしまう。宇宙にいるみたいだ。
星明かりに照らされて、荒涼とした岩肌の大地がくっきり見える。巨大な裂け目が脈々と伸びていて、谷底は水の無い河のようだ。
地上がこんなによく見えるなら、朝を待たなくて正解だったな。
こぼれ落ちそうなほどの満天の星空を、野郎一人で飛び続ける。非常にロマンティックだ。
眼下の景色が流れるように過ぎていくおかげで、かなりの速さで移動しているのが分かった。さっきまでの右も左も見えない真っ暗闇は何だったのか。
首を曲げて振り返ると、黒い壁のような巨大な暗雲が目に入りぎょっとした。美しい星空の中に不釣り合いな、威圧感たっぷりの黒い塊がドカンと浮かんでいる。いかにも魔境です、て見た目だ。
あの雲の中から、自分は飛び出して来たようだ。
それから程なくして、星空を眺めたりナビを眺めたりしている内に、谷地を抜けた。
谷間はなくなり、ぽつぽつと草木が現れ始める。さらに進んで行くと平坦な草原へ変わっていき、葉の生い茂る木立が池のように点在する原っぱへ辿り着いた。
「ガソリンが半分か…そろそろ降りないとな」
せっかく明るいのだし、相変わらず人気もない。ベラトリアにいた時は真っ赤に表示されていた地図も、魔境から出た今は緑色になっている。「遭難・死亡事故多発区域」から外れているのだろう。
ここからは、ガソリンをガンガン消費するステルスや代行をなるべく控えたい。空の旅は思った以上に楽しかったが、燃料切れの事も考えないと。
前進しながらゆっくり下降してく。さながら飛行機の着陸風景だった。地面がぐんぐんと近づいてきて、木立の葉っぱが夜風にそよいでるのも見てとれた。
「うおー、着いたぜ…」
草原の地面にドシリと着陸すると、思わずそう呟いた。肩の力が抜けていく。
車を止めて星空を仰げば、遥か向こうの上空に黒雲の塊が浮かんでいるのが見えた。ここからでもベラトリアを覆う雲が見えるのだ。
「あんな所から降りてきたのか…はは…」
やべえな、異世界自動車。思わず乾いた笑いが上がる。
こうして無事に地上へ降り立った途端、己の所業に改めて慄いてしまう。免許取り立てが初の公道で高速道路をかっ飛ばすような暴挙だよ……いや、確実にそれ以上だ。
辺りは上からも見えた林が所々に広がっている。控え目な木立だから、充分迂回できるだろう。
「ルートを変更しました。およそ6キロメートル先、右方向です」
どれどれ、所要時間は8時間強か。伸びたな。しかし、空路から陸路に切り替わったのだからこんなものよな。予想通りだ。
夜空は相変わらず、星がキラキラだ。先ほどは目につかなかった雲が、薄墨のように広がっている所もあるけれど、とてもよく晴れている。
ちょいと休憩しよう。
お土産の念押しされたよ。
何やかやと最後は魔境のボスらしい事言ってた気がするけど…やっぱりお土産目当てで俺を見逃している説あるぞ。
大変ありがたいので、別にいいけど。
さて、どうしよう。
夜明けまで何時間もある。このまま一歩も進まず、何時間もステルスモードで夜明けを待つとしたら、MPは残らない。
ラスタさんから貰った魔石があるから、それも手ではあるけど…勿体無いよな。
その時、チラリと上から影がさした。
もとから暗いので本当に微かにだが、何か黒いものが上を横切ったような気がする。
俺は大慌てで車に飛び乗り、ステルスモードへ移行させた。
ワイバーンってやつか?確かミニサイズのドラゴンもどき、てラスタさんは言っていた。空から襲ってくると。
ステルスを解いてほんの少しお喋りしてる間に、寄って来たのかもしれない。
「もう、行っちまうか」
本当は日の昇っている時間にしたかったのだが…。こうなったら、仕方ない。
最悪、ナビの地図がある。ピピピと行く先を地図でなぞり地形を確認してみると、降りられそうな平坦な箇所はいくつかあった。よし、ひとまずそこを目指そう。
念の為、崖沿いにその場から離れる。周囲をよく確認してからすかさず代行モードでジズを選択。ショートカット欲しいな。パソコンじゃないんだから、そんな機能ないよな。
いざ行かん。ギアをAに入れて上昇開始。
たまに雲の塊っぽい輪郭が現れるだけで、上下左右真っ暗闇だ。こうこうと明るいナビ画面が、ひどく心強いものに思えた。
ある程度進んだので、ギアをD3へ下げて地上を目指す。とんでもなく長い下り坂を、ひたすらまっすぐ下っていくのと同じだ。
フロントミラーに映る荒野の地面が、その先に続く暗闇が、ぐんぐんと遠のいていく。ベラトリアの広大な大地が、夜の中へ霞んで見えなくなった。
さよなら、ラスタさんとボスさん。
こうしてみるとあなたたち、とんでもねー所に住んでるよ。
無言でハンドルを握ることしばし、突然その暗闇がサッと晴れた。
まるで目隠しを急に外されたかのように、何も見えなかった視界へ一気に景色が飛び込んできた。
谷間のラインが蛇のように伸びる地上と、満点の星空だ。
思わず、わああ、と感嘆の声が出る。
キラキラ瞬く光の粒たちが、空一面にどこまでも広がっている。あまりの綺麗さに、思わずアクセルから足を離してまじまじと見入ってしまう。宇宙にいるみたいだ。
星明かりに照らされて、荒涼とした岩肌の大地がくっきり見える。巨大な裂け目が脈々と伸びていて、谷底は水の無い河のようだ。
地上がこんなによく見えるなら、朝を待たなくて正解だったな。
こぼれ落ちそうなほどの満天の星空を、野郎一人で飛び続ける。非常にロマンティックだ。
眼下の景色が流れるように過ぎていくおかげで、かなりの速さで移動しているのが分かった。さっきまでの右も左も見えない真っ暗闇は何だったのか。
首を曲げて振り返ると、黒い壁のような巨大な暗雲が目に入りぎょっとした。美しい星空の中に不釣り合いな、威圧感たっぷりの黒い塊がドカンと浮かんでいる。いかにも魔境です、て見た目だ。
あの雲の中から、自分は飛び出して来たようだ。
それから程なくして、星空を眺めたりナビを眺めたりしている内に、谷地を抜けた。
谷間はなくなり、ぽつぽつと草木が現れ始める。さらに進んで行くと平坦な草原へ変わっていき、葉の生い茂る木立が池のように点在する原っぱへ辿り着いた。
「ガソリンが半分か…そろそろ降りないとな」
せっかく明るいのだし、相変わらず人気もない。ベラトリアにいた時は真っ赤に表示されていた地図も、魔境から出た今は緑色になっている。「遭難・死亡事故多発区域」から外れているのだろう。
ここからは、ガソリンをガンガン消費するステルスや代行をなるべく控えたい。空の旅は思った以上に楽しかったが、燃料切れの事も考えないと。
前進しながらゆっくり下降してく。さながら飛行機の着陸風景だった。地面がぐんぐんと近づいてきて、木立の葉っぱが夜風にそよいでるのも見てとれた。
「うおー、着いたぜ…」
草原の地面にドシリと着陸すると、思わずそう呟いた。肩の力が抜けていく。
車を止めて星空を仰げば、遥か向こうの上空に黒雲の塊が浮かんでいるのが見えた。ここからでもベラトリアを覆う雲が見えるのだ。
「あんな所から降りてきたのか…はは…」
やべえな、異世界自動車。思わず乾いた笑いが上がる。
こうして無事に地上へ降り立った途端、己の所業に改めて慄いてしまう。免許取り立てが初の公道で高速道路をかっ飛ばすような暴挙だよ……いや、確実にそれ以上だ。
辺りは上からも見えた林が所々に広がっている。控え目な木立だから、充分迂回できるだろう。
「ルートを変更しました。およそ6キロメートル先、右方向です」
どれどれ、所要時間は8時間強か。伸びたな。しかし、空路から陸路に切り替わったのだからこんなものよな。予想通りだ。
夜空は相変わらず、星がキラキラだ。先ほどは目につかなかった雲が、薄墨のように広がっている所もあるけれど、とてもよく晴れている。
ちょいと休憩しよう。
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