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「僕とリヒャルトと一緒に、王都でダンジョン攻略をしませんか?」
全くもって予想外の提案に面くらってしまう。俺はとりあえず卵を飲み込むと、相変わらずの穏やかな糸目顔へ尋ねた。
「ダンジョンって、なんで俺が…?」
「これからの旅の資金を調達できますよ」
「そんな事言ったって……すんげー命懸けだろ?」
「確かに危険な場所だね。サンカヨウ跡地のもどきとは違う、本物のダンジョンだから」
王都の近隣にあるダンジョンは、森の中にぽっかりと聳え立つ巨塔だそうだ。
500年前の手記にも載っていたのなら、当時の魔境より長生きしてるって事じゃん。そんなガチな所に行けってのか?一体何を言い出すんだこいつは!
「あのなぁ、イアニス。分かってくれてると思うけど、俺はそういうの素人だよ。冒険者登録はしていても、冒険者と呼べるような技量は全く無い。そんな危険な場所には行かれないよ」
俺は首に下げたギルドカードを突きつけた。刮目しろ、このEランクの証を!
「もちろん、シマヤさんを魔物の闊歩するダンジョンへただ放り込むなんて事はしません。貴方にはそのスキルで、僕らのサポートをしてもらいたいんです」
曰く、魔物と対峙したり罠を潜り抜けたりは全て二人が請け負う。その代わり、ナビの地図でルートを確保しつつ、ステルスモードの車をセーフティエリアとして提供してもらいたいと。
「無茶はさせません。こうして誘ったからには、レダート家の名にかけて貴方の身を守ります。そもそも共にダンジョンへ潜る時点で、僕らには下位ランクの者を補助する義務が発生するんだ。これはギルドの決まりなので、途中でシマヤさんを見捨てる、なんて事はできないんです。破った場合、僕らは冒険者を名乗れなくなります」
本来、王都にあるダンジョンへ挑めるのはCランク以上の者に限られている。D・Eランクの者が入るには、上位ランクの者の付き添いが必要だという。いわゆる、冒険者チームだ。
要するにリヒャルトとイアニスが付き添えば、俺でもダンジョンに入れてしまうらしい。
だけど……ギルドの決まり、ねぇ…。
俺がおはぎなら「じゃあ安心!」となるのだろう。しかし、とてもそんな風には思えなかった。
「とはいえ、出現する魔物やトラップなどは命の危険が伴う。それらの中を安全に進むため、僕らの指示には従って欲しい。…この提案は、僕から貴方へのお願いです。引き受けてくれるなら、それに対しての依頼料を僕がお支払いします。その上で、ダンジョンで入手した物も山分けして差し上げます」
「い、いや…せっかくだけど」
突然どうしてそんな事を言い出したのか気になるが、ひとまずそれは置いとこう。お断りせねば。
ベラトリアでは、信頼に足るラスタさんがいたから勇気を振り絞って魔境をうろつくことができた。しかし、とてもじゃないが目の前の糸目くんに同じ信頼は抱けなかった。脅してきたしな、こいつ。
というか、イアニスはまだいい。問題はもう一人だ。一歩間違えれば命を落としかねない危険な場所で、リヒャルトのような奴と行動を共にするのは非常に不安だった。
「イアニス。何だかんだで、お前らがそんなに悪い奴じゃないのは分かってるんだけどさ。だからって命を預けられるかといえば別だ。正直な。そりゃあ、先立つものは欲しいけど、ここでうっかり死んだら元も子もないだろ?」
「……うん。それも当然だね」
静かな声に、俺は内心身構える。また脅されるんだろうか…。
「無茶を言っているのは重々承知だが、それでも、もう一度考えてくれないだろうか。一度試してみて、こんなの無理だと判断したらそれ以上は引き止めないと約束するよ」
意に反して、彼は頼み込む姿勢を崩さずお願いしてきた。しつこく食い下がるな。
「そうはいっても、絶対安全とは言い切れないんだろう?」
「可能な限りの護衛は果たす、としか言えないです。ダンジョンという場所柄、安全を保証はできないからね」
「安請け合いの返事でないとこは、多少信頼できるけど……。大体、リヒャルトにはこの話通してるのか?」
「いいや、まだだよ。あいつも乗るとは思うけどね。貴方のスキルを目の当たりにしたし」
「そうなの?うーん。そもそもあの車、言うほどダンジョンで役立つか?使いどき難しい気がするんだけど」
「…とんでもない。とんでもないよ、シマヤさん」
イアニスは冷めかけてきたスープをひとさじ口に運び、滔々と語りだした。
「ダンジョンは一度入れば容易には引き返せない。準備に当てた労力を考えるとね。なのに、ひとたび食料や装備が尽きれば予期せぬ退却を強いられる。最悪それもできずに死ぬ。そんな環境でも、シマヤさんのスキルがあれば魔物を素通りできる。内部の地図が表示されるだけでなく、指定場所までの道順まで示してくれる」
ああなるほど。地図か。
そういえばラスタさんにも「魔境の全景マップ出るなんてすごい」みたいな事を言われたな。
「でも、魔物を素通りできるかは、中の道幅によるぞ。狭い道はステルスで通れないんだから。それに、車に隠れてるだけじゃ魔物を倒せないだろ?ドロップアイテム貰えないよ」
「そこはリヒャルトと僕の出番だ。道中の魔物を回避して進み、消耗ゼロの状態でエリアボスに挑む。その間シマヤさんは、安全なクルマで待機しててもらう。ボスが落とすドロップ品は格別だ。繰り返せば、いい稼ぎになる」
「いやいやいや…そんな上手くいく?」
「いけば、サンカヨウの復興費がだいぶ賄える」
ここで山荷葉が出てきた。どうやらそれが目的だったようだ。
あのボロボロ廃墟を復活させるって…。え?そんな額稼げるの?
「道幅は問題ない。多少狭い通路があるかなってくらいだ」
「でも、一緒に行くのがあのリヒャルトってのがちょっと。あいつっていなきゃダメか?」
「ぷっ………。残念だけど、僕の力だけでボスを倒しきるのは無理だ」
あまりの言われように吹き出しつつ、イアニスはそう答える。
全くもって予想外の提案に面くらってしまう。俺はとりあえず卵を飲み込むと、相変わらずの穏やかな糸目顔へ尋ねた。
「ダンジョンって、なんで俺が…?」
「これからの旅の資金を調達できますよ」
「そんな事言ったって……すんげー命懸けだろ?」
「確かに危険な場所だね。サンカヨウ跡地のもどきとは違う、本物のダンジョンだから」
王都の近隣にあるダンジョンは、森の中にぽっかりと聳え立つ巨塔だそうだ。
500年前の手記にも載っていたのなら、当時の魔境より長生きしてるって事じゃん。そんなガチな所に行けってのか?一体何を言い出すんだこいつは!
「あのなぁ、イアニス。分かってくれてると思うけど、俺はそういうの素人だよ。冒険者登録はしていても、冒険者と呼べるような技量は全く無い。そんな危険な場所には行かれないよ」
俺は首に下げたギルドカードを突きつけた。刮目しろ、このEランクの証を!
「もちろん、シマヤさんを魔物の闊歩するダンジョンへただ放り込むなんて事はしません。貴方にはそのスキルで、僕らのサポートをしてもらいたいんです」
曰く、魔物と対峙したり罠を潜り抜けたりは全て二人が請け負う。その代わり、ナビの地図でルートを確保しつつ、ステルスモードの車をセーフティエリアとして提供してもらいたいと。
「無茶はさせません。こうして誘ったからには、レダート家の名にかけて貴方の身を守ります。そもそも共にダンジョンへ潜る時点で、僕らには下位ランクの者を補助する義務が発生するんだ。これはギルドの決まりなので、途中でシマヤさんを見捨てる、なんて事はできないんです。破った場合、僕らは冒険者を名乗れなくなります」
本来、王都にあるダンジョンへ挑めるのはCランク以上の者に限られている。D・Eランクの者が入るには、上位ランクの者の付き添いが必要だという。いわゆる、冒険者チームだ。
要するにリヒャルトとイアニスが付き添えば、俺でもダンジョンに入れてしまうらしい。
だけど……ギルドの決まり、ねぇ…。
俺がおはぎなら「じゃあ安心!」となるのだろう。しかし、とてもそんな風には思えなかった。
「とはいえ、出現する魔物やトラップなどは命の危険が伴う。それらの中を安全に進むため、僕らの指示には従って欲しい。…この提案は、僕から貴方へのお願いです。引き受けてくれるなら、それに対しての依頼料を僕がお支払いします。その上で、ダンジョンで入手した物も山分けして差し上げます」
「い、いや…せっかくだけど」
突然どうしてそんな事を言い出したのか気になるが、ひとまずそれは置いとこう。お断りせねば。
ベラトリアでは、信頼に足るラスタさんがいたから勇気を振り絞って魔境をうろつくことができた。しかし、とてもじゃないが目の前の糸目くんに同じ信頼は抱けなかった。脅してきたしな、こいつ。
というか、イアニスはまだいい。問題はもう一人だ。一歩間違えれば命を落としかねない危険な場所で、リヒャルトのような奴と行動を共にするのは非常に不安だった。
「イアニス。何だかんだで、お前らがそんなに悪い奴じゃないのは分かってるんだけどさ。だからって命を預けられるかといえば別だ。正直な。そりゃあ、先立つものは欲しいけど、ここでうっかり死んだら元も子もないだろ?」
「……うん。それも当然だね」
静かな声に、俺は内心身構える。また脅されるんだろうか…。
「無茶を言っているのは重々承知だが、それでも、もう一度考えてくれないだろうか。一度試してみて、こんなの無理だと判断したらそれ以上は引き止めないと約束するよ」
意に反して、彼は頼み込む姿勢を崩さずお願いしてきた。しつこく食い下がるな。
「そうはいっても、絶対安全とは言い切れないんだろう?」
「可能な限りの護衛は果たす、としか言えないです。ダンジョンという場所柄、安全を保証はできないからね」
「安請け合いの返事でないとこは、多少信頼できるけど……。大体、リヒャルトにはこの話通してるのか?」
「いいや、まだだよ。あいつも乗るとは思うけどね。貴方のスキルを目の当たりにしたし」
「そうなの?うーん。そもそもあの車、言うほどダンジョンで役立つか?使いどき難しい気がするんだけど」
「…とんでもない。とんでもないよ、シマヤさん」
イアニスは冷めかけてきたスープをひとさじ口に運び、滔々と語りだした。
「ダンジョンは一度入れば容易には引き返せない。準備に当てた労力を考えるとね。なのに、ひとたび食料や装備が尽きれば予期せぬ退却を強いられる。最悪それもできずに死ぬ。そんな環境でも、シマヤさんのスキルがあれば魔物を素通りできる。内部の地図が表示されるだけでなく、指定場所までの道順まで示してくれる」
ああなるほど。地図か。
そういえばラスタさんにも「魔境の全景マップ出るなんてすごい」みたいな事を言われたな。
「でも、魔物を素通りできるかは、中の道幅によるぞ。狭い道はステルスで通れないんだから。それに、車に隠れてるだけじゃ魔物を倒せないだろ?ドロップアイテム貰えないよ」
「そこはリヒャルトと僕の出番だ。道中の魔物を回避して進み、消耗ゼロの状態でエリアボスに挑む。その間シマヤさんは、安全なクルマで待機しててもらう。ボスが落とすドロップ品は格別だ。繰り返せば、いい稼ぎになる」
「いやいやいや…そんな上手くいく?」
「いけば、サンカヨウの復興費がだいぶ賄える」
ここで山荷葉が出てきた。どうやらそれが目的だったようだ。
あのボロボロ廃墟を復活させるって…。え?そんな額稼げるの?
「道幅は問題ない。多少狭い通路があるかなってくらいだ」
「でも、一緒に行くのがあのリヒャルトってのがちょっと。あいつっていなきゃダメか?」
「ぷっ………。残念だけど、僕の力だけでボスを倒しきるのは無理だ」
あまりの言われように吹き出しつつ、イアニスはそう答える。
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