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王都からほんの数キロの位置にある、名もなき巨塔。人々からは「王都のダンジョン」「モストルデンのダンジョン」と呼ばれている。
出現するのはゴブリンやゴーレムといった人型魔物たちで、上階へ登るごとに半人半魔の厄介な魔物が現れるらしい。
どの階も迷路のように入り組んでおり、人喰いの宝箱や落とし穴を始めとしたトラップが存在する。1~4階は上へと続く大階段があって、そこが魔物の出現しない「セーフティエリア」になっているそうだ。それ以降は6、10、17、20階にいるエリアボスを倒さないとセーフティエリアにはありつけない。
俺たちの目標は10階にいるエリアボス「アラクネ」が落とす魔石と糸を集めることだ。
「アラクネの糸は魔力が宿っていて、武器と防具両方の良い素材になるんだ」
「それが高値で売れるのか。人喰いじゃない普通の宝箱とかは無いの?」
「下層は取り尽くされているよ。あるとしたら20階より上だろう。あそこは入るたびに中の構造が変化するらしい」
「そ、そうか。俺たちは行かないよな?」
「安心して。無茶はしないと約束したろ」
最上階は25階で、待ち構えるラスボスのヴィーブルを倒しダンジョンを制したのは、これまでたった2組しかいない。88年前に一度と、およそ500年前に一度。最初の踏破者たちは、先代勇者イナーフィアと肩を並べたという強者集団だったらしい。
「シマヤさん。サンカヨウで見つけた手記に『テオドラ』という人物がよく上がっていたのを覚えてる?…彼女こそ、初めてあのダンジョンを踏破したチームのリーダーなんだよ」
…そういえば、あったなぁ。ダンジョン産の魔剣に付与を施す依頼が来て、その依頼主がテオドラさんだった、と書かれていたっけ。
「なんか聞いた覚えあるなと思ったけど、テオドラって御伽話の女騎士じゃなかった?」
「あれ。よく知ってるじゃないか」
「ドルトナに同じ名前の装備屋があってさ。そこのおばちゃんが教えてくれたんだよ」
風の女神の加護を受けた英雄だ、とか何とか…。どうもその御伽話の騎士と手記に出てくるテオドラさんは同一人物らしい。
咲良さんはえらい偉人と知り合いだったようだ。
当時ヴィーブルからドロップされた巨大なダイアモンドと魔剣「オルディバラ」は、現在王家が国宝として所持しているらしい。
「ドロップアイテムって武器も出るんだ」
「2度目の踏破時には流石に出なかったようだよ、魔剣は。レアドロップといって、同じ敵でも稀に珍しいアイテムを落とすことがあるんだ」
ふーん…ジズの羽根もそうだったのかな?あれはラスタさんが数回倒して、一度しか出なかった。
ダンジョンの周囲にはギルド職員や王都の兵士が駐屯しており、そこで受付を済ませてから入れるようになる。チーム名と攻略期間を控えおくのだ。しかし、その通りに戻らなかったからといって誰かが救出に来てくれる訳ではない。挑んだからには、全て自己責任なのだった…。
俺は基本的なことを知らなかったことにふと気づいて、二人に尋ねた。
「なあ。二人はいわゆる、魔法使いってやつなのか?剣士とか斥候とかではなく」
「フン、当然だ。剣などどこにもぶら下げていないだろう」
何をわかりきったことを、とリヒャルトにすげなく返される。リヒャルトは氷属性と闇属性の魔法使い。イアニスは風属性を持っているが、専ら従魔の力を借りる戦い方をするらしい。
俺の内なるRPG脳がわっくわっくと活性化しだした。ジョブは「魔法使い」と「テイマー」か。……前衛がいない。もちろん、俺には無理だ。俺は車で頑張るのだ。
「ほうほう、そうだったのか…。じゃあ、これから魔法の杖とかの店に行ったりする?」
「ん、杖?…リヒーはもう持ってなかった?」
「ある。余計な物を新調する気はない」
「買い物はこの位かな。後は情報集めだけど……どうかした?残念そうな顔して」
イアニスは肩を落とす俺に首を傾げるが、何でもないと首を振る。
ファンタジーの武器や防具を見てみたい、とは言い出せなかった。またリヒャルトにどやされそうだ。
ギルドや二人の馴染みの店で話を仕入れた結果、アラクネの糸が値下がりしているという情報は無かった。どうやらゴーレムコア(ゴーレムのドロップアイテムだ)が良いお値段になっていた時期はもう過ぎてしまったらしく、今ではいつも通りの相場となっているらしい。
ギルドの依頼を張り出す掲示板には、確かに「ダンジョンでの素材採取、コア×20」や「魔石・小×30」といった依頼内容がわんさとあった。どれもドルトナのギルドでは無かったものだ。
街での用を終えると、寄り道もせず早々に帰って仕入れたものを確認し、配分していく。当日は俺も貰い物の「麻痺」のスクロールなどを持っておかねば。ポーションとかもあったから、それも確認しないと。
……え、今やれ?見せてって?ここイアニスの部屋だけど、こんなとこに車出していいんすか?「誰も見てないから大丈夫」て、そうじゃなくて……ここ室内ぞ?!
というわけで、俺が魔境で譲り受けたスクロールや上級ポーション、解毒薬等が彼らに委託(使ったらあとで代金を払い、使わなかったらそのまま返してもらう)される事となり、ダンジョンに挑む準備は整った。
明日は街の開門と共に、1回目のアタック開始だ。
「貴様は……こんな物を一体どうやって手に入れたのだ…」
透明な青い薬液の入った小瓶を摘み上げて、リヒャルトが顔を顰めている。その上級ポーションは、二人に2本ずつ渡っている。
実はそれ以外にも一本だけ「エリクサー」なる物も持っているのだが、これは内緒だ。本当にヤバい時に出そう。
「別に犯罪とかじゃないからな、言っとくけど。俺のスキルで頼み事を引き受けて……その報酬として受け取ったの!」
「これらを報酬でポンと渡せるとしたら、高位貴族かA級冒険者って所だけど……」
イアニスが探るように言うが、俺は頑として明かす気はなかった。魔境で暮らしている事が世間に知れれば、ラスタさんの穏やかなリタイア生活を脅かしかねない。
そも彼らに告げる必要のないことだしね。知り合いならいざ知らず。
「うぅむ。シマヤさんは我が家の伝手で仕事先を紹介、なんて言うけど……既に中々の伝手をお持ちなのでは?」
イアニスが苦笑して発する台詞に、俺は曖昧に返事をする。
魔境のラスボスと元勇者が伝手か…。ホワンホワンホワ~ン、と彼らとの記憶を辿る。
『小麦粉も頼む。あ、できれば小麦の苗も欲しい。育つか試したいんだ。塩・胡椒と砂糖もぜひ』
『服を忘れるでないぞ、油も、くれーぷもだぞ!』
…そうだった。あの時は、割と必死でお駄賃代わりの財宝を断ったのだ。ひょっとして、いいお得意先なのか?あの人たち。
出現するのはゴブリンやゴーレムといった人型魔物たちで、上階へ登るごとに半人半魔の厄介な魔物が現れるらしい。
どの階も迷路のように入り組んでおり、人喰いの宝箱や落とし穴を始めとしたトラップが存在する。1~4階は上へと続く大階段があって、そこが魔物の出現しない「セーフティエリア」になっているそうだ。それ以降は6、10、17、20階にいるエリアボスを倒さないとセーフティエリアにはありつけない。
俺たちの目標は10階にいるエリアボス「アラクネ」が落とす魔石と糸を集めることだ。
「アラクネの糸は魔力が宿っていて、武器と防具両方の良い素材になるんだ」
「それが高値で売れるのか。人喰いじゃない普通の宝箱とかは無いの?」
「下層は取り尽くされているよ。あるとしたら20階より上だろう。あそこは入るたびに中の構造が変化するらしい」
「そ、そうか。俺たちは行かないよな?」
「安心して。無茶はしないと約束したろ」
最上階は25階で、待ち構えるラスボスのヴィーブルを倒しダンジョンを制したのは、これまでたった2組しかいない。88年前に一度と、およそ500年前に一度。最初の踏破者たちは、先代勇者イナーフィアと肩を並べたという強者集団だったらしい。
「シマヤさん。サンカヨウで見つけた手記に『テオドラ』という人物がよく上がっていたのを覚えてる?…彼女こそ、初めてあのダンジョンを踏破したチームのリーダーなんだよ」
…そういえば、あったなぁ。ダンジョン産の魔剣に付与を施す依頼が来て、その依頼主がテオドラさんだった、と書かれていたっけ。
「なんか聞いた覚えあるなと思ったけど、テオドラって御伽話の女騎士じゃなかった?」
「あれ。よく知ってるじゃないか」
「ドルトナに同じ名前の装備屋があってさ。そこのおばちゃんが教えてくれたんだよ」
風の女神の加護を受けた英雄だ、とか何とか…。どうもその御伽話の騎士と手記に出てくるテオドラさんは同一人物らしい。
咲良さんはえらい偉人と知り合いだったようだ。
当時ヴィーブルからドロップされた巨大なダイアモンドと魔剣「オルディバラ」は、現在王家が国宝として所持しているらしい。
「ドロップアイテムって武器も出るんだ」
「2度目の踏破時には流石に出なかったようだよ、魔剣は。レアドロップといって、同じ敵でも稀に珍しいアイテムを落とすことがあるんだ」
ふーん…ジズの羽根もそうだったのかな?あれはラスタさんが数回倒して、一度しか出なかった。
ダンジョンの周囲にはギルド職員や王都の兵士が駐屯しており、そこで受付を済ませてから入れるようになる。チーム名と攻略期間を控えおくのだ。しかし、その通りに戻らなかったからといって誰かが救出に来てくれる訳ではない。挑んだからには、全て自己責任なのだった…。
俺は基本的なことを知らなかったことにふと気づいて、二人に尋ねた。
「なあ。二人はいわゆる、魔法使いってやつなのか?剣士とか斥候とかではなく」
「フン、当然だ。剣などどこにもぶら下げていないだろう」
何をわかりきったことを、とリヒャルトにすげなく返される。リヒャルトは氷属性と闇属性の魔法使い。イアニスは風属性を持っているが、専ら従魔の力を借りる戦い方をするらしい。
俺の内なるRPG脳がわっくわっくと活性化しだした。ジョブは「魔法使い」と「テイマー」か。……前衛がいない。もちろん、俺には無理だ。俺は車で頑張るのだ。
「ほうほう、そうだったのか…。じゃあ、これから魔法の杖とかの店に行ったりする?」
「ん、杖?…リヒーはもう持ってなかった?」
「ある。余計な物を新調する気はない」
「買い物はこの位かな。後は情報集めだけど……どうかした?残念そうな顔して」
イアニスは肩を落とす俺に首を傾げるが、何でもないと首を振る。
ファンタジーの武器や防具を見てみたい、とは言い出せなかった。またリヒャルトにどやされそうだ。
ギルドや二人の馴染みの店で話を仕入れた結果、アラクネの糸が値下がりしているという情報は無かった。どうやらゴーレムコア(ゴーレムのドロップアイテムだ)が良いお値段になっていた時期はもう過ぎてしまったらしく、今ではいつも通りの相場となっているらしい。
ギルドの依頼を張り出す掲示板には、確かに「ダンジョンでの素材採取、コア×20」や「魔石・小×30」といった依頼内容がわんさとあった。どれもドルトナのギルドでは無かったものだ。
街での用を終えると、寄り道もせず早々に帰って仕入れたものを確認し、配分していく。当日は俺も貰い物の「麻痺」のスクロールなどを持っておかねば。ポーションとかもあったから、それも確認しないと。
……え、今やれ?見せてって?ここイアニスの部屋だけど、こんなとこに車出していいんすか?「誰も見てないから大丈夫」て、そうじゃなくて……ここ室内ぞ?!
というわけで、俺が魔境で譲り受けたスクロールや上級ポーション、解毒薬等が彼らに委託(使ったらあとで代金を払い、使わなかったらそのまま返してもらう)される事となり、ダンジョンに挑む準備は整った。
明日は街の開門と共に、1回目のアタック開始だ。
「貴様は……こんな物を一体どうやって手に入れたのだ…」
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実はそれ以外にも一本だけ「エリクサー」なる物も持っているのだが、これは内緒だ。本当にヤバい時に出そう。
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魔境のラスボスと元勇者が伝手か…。ホワンホワンホワ~ン、と彼らとの記憶を辿る。
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【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
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イラスト: 市丸きすけ 先生
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ご購入はこちらから:
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