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運よく人気が払われたのを見計らって、車を降りる。黒々とした金属の扉から外に出ると、すっかり日が落ち辺りは暗くなっていた。
「キィー!」(気持ちいーい!)
「あー、外の空気だぁ…」
夜とはいえすっきりとした外気にあたってホッとする。同じ気持ちなのか、おはぎもスイスイと忙しなく飛び回った。
受付へ帰還の報告をササッと済ませ(時間帯のせいか、人数がめっきり減っていた)、街へと向かう。閉門には間に合いそうだというので一安心だ。
来た時は爽やかな日差しの中進んだ森の小道も、今はすっかり真っ暗で不気味だ。これからギルドに行ってドロップアイテムを売り払うんだろうか。そう考えていると、リヒャルトが疲れた顔を俺に向けた。
「おい。迎えを待つのも面倒だ。さっさと例のすてるすもーどで屋敷まで乗せていけ」
「は?いや、検問どうするんだよ」
「そんなの、コウモリにでも何でもなって飛び越えればいいだろうが」
「ダメだっつーの!」
どうやらギルドへは寄らず、まっすぐ帰るようだ。
リヒャルトが疲れているのもわかる。というか正直、大賛成なのだが(俺もはやく帰りてーよ)、流石に街への不法侵入は憚られた。
「ほら、こっち側はあんまり人いないじゃん。大人しく並ぼうぜ」
「チッ」
ダンジョンを行き来する人しか来ないせいか、幸い検問の列はまばらだ。
無事に通過して街へと入ると、今度はイアニスにちょいちょいと手招きされる。糸目顔もお疲れ気味だ。
「シマヤさん、こっちこっち。向こうの通りを抜けた区間は人気がないよ」
そう言ってあまり治安のよろしくなさそうな暗い路地へ案内される。お巡りさん(こちらでは検兵さんが警察に当たるらしい)に思いっきり怪しまれるムーブだが、俺たちは車に乗りたいだけなので今は見逃して欲しい所。それはそれでよろしくないけどね!
使われていない納屋のはずれで、人が来ないかを見張ってもらいながら車を出す。
「ステルス運転モードへ移行します。車外へ出るときは安全を確認しましょう」
「寝る。着いたら起こせ」
「ハイハイ」
「ねぇ、そのかーなびの操作、ちょっとやってみてもいいかい?」
「ハイハイどうぞ」
たどたどしく画面を操作するイアニスの横で、リヒャルトが秒で夢の中に入っていった。はやい。まるで部活終わりの高校生である。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
「おっ、できた。本当に簡単なんだね…」
「なぁ。お屋敷に着いてもさ、その後どうやって降りればいいんだ?」
「あー…」
ブロロロとアイドリング音が流れる中、俺とイアニスはどうやって人目につかないよう降りるかを考えていない事に気がついた。
「帰ったら話をつけて、今後は馬車どめを開けといて貰おうか。そうすればクルマでまっすぐ帰ってこられるね」
「き、今日は?」
「うーん今日は……一緒に御者に怒られようね」
その後。敷地内の馬車どめで突然沸いて出た車に、レダート家の御者さんと馬が仰天して騒ぎになってしまった。
最後の最後にそんな大迷惑をかけつつ、チーム・サンカヨウは無事レダート邸へ帰還するのだった。
ーーー
朝、目覚めるとレダート邸のベッドの中。
宿屋の物より上質で清潔な寝床をぬくぬくと堪能しながら、王都の街の音をきく。どこか遠くで鐘の音がなっており、カッポカッポと石畳を打つ蹄の音が通り過ぎていく。
「にゃーーぉ…」
「ギギーッ!」(あっちいけー!)
そして同じ部屋の窓辺では、パメラちゃん・野良猫のすがたとおはぎの上げる声が。
見ると、1匹の茶斑ニャンコが尻をフリフリして、窓枠にぶら下がるおはぎにロックオンしている。それにおはぎがギーギーと抗議し、やかましいモーニングコールと化していた。
「あー…、おはよう、パメラちゃん。やめてくださいね…」
「ン~」
俺は心地よいベッドから出て窓辺に近寄り、パメラちゃんをよしよしする。正確には近所の道端で死んでいた野良猫なので複雑だが、目を細めて満足気にゴロゴロする様はとてもそうとは思えない。
パメラちゃんは挨拶ができて気が済んだのか、トコトコとドアの隙間から出て行った。
「おはぎも、おはよう」
「キィッ、ギィー!」(あいつコワイよ!)
「耳の穴を守っとけば大丈夫だろ」
多分…と心の中で付け足して、身支度にとりかかる。
ギドーホッグ達は、イアニス曰く「動かせる状態の日が経っていない死体」なら生きていない宿主でも操る事ができるそうだ。パメラちゃん達の普段の宿主は現在ネズミではなく、路上で事切れていた猫の親子になっている。ボロボロで汚れていた身体をイアニスが綺麗に整え傷を癒やしたので、見た目はただの不健康そうな猫ちゃんだ。
今日はダンジョンアタックを始めて8日目。折り返し地点だ。
様子見の初回アタックを経てペースを決めた結果、ダンジョン内で一泊してオーガを3回、アラクネを2回倒して帰還するという方針になった。
一度10階まで行って、アラクネを倒す
↓
4階セーフティエリアまで戻り一泊
道中はミノタウロスやグールを中心にドロップアイテム集め
↓
再び10階までの攻略後、魔法陣で帰還
…という流れだ。
一見こんな事して大丈夫かと心配になるペース配分だが、何とかなった。初めよりも行き帰りに時間がかからなくなったのと、リヒャルトが魔法をセーブせずにぶっ放すようになったからだ。
初回の様子見でさえ圧倒的な活躍を見せたリヒャルトだったが、彼はあれでも力を温存していたのだった。今や愛用の魔法の杖を手に本気モードで、オーガやアラクネを氷漬けにしている。
「そんな杖持ってたんだな」
「そうだ。私の実力を思い知ったか」
「私の実力、なんで出し惜しみしてた?」
「貴様は馬鹿か。最初から捨て身の全力など出すわけないだろう」
そう言ってふんぞり返るリヒャルトは、出し切る戦闘をするせいか帰る頃には決まってフラフラだ。特にアラクネは一撃で仕留めないとまずい相手なので、氷柱攻撃の威力も凄まじくなる。
その結果まともに歩けなくなる程に消耗するのだが(魔力切れという状態らしい)、車や魔法陣で安全に帰れるので問題ないと。
そう考えると、1日目はその為の様子見でもあったのか。
「こんなヘロヘロになって…… まさか寿命削れたりしてないだろうな?」
「安心して。ただ魔力が空になっているだけだよ。きちんと元どおり回復すれば、身体に害は出ないからね」
イアニスがそう言うので、そんなものかと納得しておいた。確かにレダート邸で一晩明かすとケロッとしている。
「ところでシマヤさんはずっとスキルを使い続けているのに、魔力切れを起こさないね」
「そうだなぁ。俺にはこれがあるから…」
助手席の前でカタカタしているハニワを指差す。こいつが無ければ、俺もリヒャルトのように重い二日酔い状態に陥っていたかもしれないのか。感謝だ。ハニワは今日もニカニカ笑ってる。
「魔石を元に魔力を回復させるマジックアイテムか……しかも無制限に繰り返し使えると。世に出たらとんでもない事に……」
「いやいや、この車限定の機能だから!」
「貴様以外には役に立たんというわけだ。…ところでこのふざけた顔は何だ。貴様の趣味か?」
「違うわ」
全く失礼な。あえていや、面白半分に送りつけてきた弟の趣味だ。
「キィー!」(気持ちいーい!)
「あー、外の空気だぁ…」
夜とはいえすっきりとした外気にあたってホッとする。同じ気持ちなのか、おはぎもスイスイと忙しなく飛び回った。
受付へ帰還の報告をササッと済ませ(時間帯のせいか、人数がめっきり減っていた)、街へと向かう。閉門には間に合いそうだというので一安心だ。
来た時は爽やかな日差しの中進んだ森の小道も、今はすっかり真っ暗で不気味だ。これからギルドに行ってドロップアイテムを売り払うんだろうか。そう考えていると、リヒャルトが疲れた顔を俺に向けた。
「おい。迎えを待つのも面倒だ。さっさと例のすてるすもーどで屋敷まで乗せていけ」
「は?いや、検問どうするんだよ」
「そんなの、コウモリにでも何でもなって飛び越えればいいだろうが」
「ダメだっつーの!」
どうやらギルドへは寄らず、まっすぐ帰るようだ。
リヒャルトが疲れているのもわかる。というか正直、大賛成なのだが(俺もはやく帰りてーよ)、流石に街への不法侵入は憚られた。
「ほら、こっち側はあんまり人いないじゃん。大人しく並ぼうぜ」
「チッ」
ダンジョンを行き来する人しか来ないせいか、幸い検問の列はまばらだ。
無事に通過して街へと入ると、今度はイアニスにちょいちょいと手招きされる。糸目顔もお疲れ気味だ。
「シマヤさん、こっちこっち。向こうの通りを抜けた区間は人気がないよ」
そう言ってあまり治安のよろしくなさそうな暗い路地へ案内される。お巡りさん(こちらでは検兵さんが警察に当たるらしい)に思いっきり怪しまれるムーブだが、俺たちは車に乗りたいだけなので今は見逃して欲しい所。それはそれでよろしくないけどね!
使われていない納屋のはずれで、人が来ないかを見張ってもらいながら車を出す。
「ステルス運転モードへ移行します。車外へ出るときは安全を確認しましょう」
「寝る。着いたら起こせ」
「ハイハイ」
「ねぇ、そのかーなびの操作、ちょっとやってみてもいいかい?」
「ハイハイどうぞ」
たどたどしく画面を操作するイアニスの横で、リヒャルトが秒で夢の中に入っていった。はやい。まるで部活終わりの高校生である。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
「おっ、できた。本当に簡単なんだね…」
「なぁ。お屋敷に着いてもさ、その後どうやって降りればいいんだ?」
「あー…」
ブロロロとアイドリング音が流れる中、俺とイアニスはどうやって人目につかないよう降りるかを考えていない事に気がついた。
「帰ったら話をつけて、今後は馬車どめを開けといて貰おうか。そうすればクルマでまっすぐ帰ってこられるね」
「き、今日は?」
「うーん今日は……一緒に御者に怒られようね」
その後。敷地内の馬車どめで突然沸いて出た車に、レダート家の御者さんと馬が仰天して騒ぎになってしまった。
最後の最後にそんな大迷惑をかけつつ、チーム・サンカヨウは無事レダート邸へ帰還するのだった。
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朝、目覚めるとレダート邸のベッドの中。
宿屋の物より上質で清潔な寝床をぬくぬくと堪能しながら、王都の街の音をきく。どこか遠くで鐘の音がなっており、カッポカッポと石畳を打つ蹄の音が通り過ぎていく。
「にゃーーぉ…」
「ギギーッ!」(あっちいけー!)
そして同じ部屋の窓辺では、パメラちゃん・野良猫のすがたとおはぎの上げる声が。
見ると、1匹の茶斑ニャンコが尻をフリフリして、窓枠にぶら下がるおはぎにロックオンしている。それにおはぎがギーギーと抗議し、やかましいモーニングコールと化していた。
「あー…、おはよう、パメラちゃん。やめてくださいね…」
「ン~」
俺は心地よいベッドから出て窓辺に近寄り、パメラちゃんをよしよしする。正確には近所の道端で死んでいた野良猫なので複雑だが、目を細めて満足気にゴロゴロする様はとてもそうとは思えない。
パメラちゃんは挨拶ができて気が済んだのか、トコトコとドアの隙間から出て行った。
「おはぎも、おはよう」
「キィッ、ギィー!」(あいつコワイよ!)
「耳の穴を守っとけば大丈夫だろ」
多分…と心の中で付け足して、身支度にとりかかる。
ギドーホッグ達は、イアニス曰く「動かせる状態の日が経っていない死体」なら生きていない宿主でも操る事ができるそうだ。パメラちゃん達の普段の宿主は現在ネズミではなく、路上で事切れていた猫の親子になっている。ボロボロで汚れていた身体をイアニスが綺麗に整え傷を癒やしたので、見た目はただの不健康そうな猫ちゃんだ。
今日はダンジョンアタックを始めて8日目。折り返し地点だ。
様子見の初回アタックを経てペースを決めた結果、ダンジョン内で一泊してオーガを3回、アラクネを2回倒して帰還するという方針になった。
一度10階まで行って、アラクネを倒す
↓
4階セーフティエリアまで戻り一泊
道中はミノタウロスやグールを中心にドロップアイテム集め
↓
再び10階までの攻略後、魔法陣で帰還
…という流れだ。
一見こんな事して大丈夫かと心配になるペース配分だが、何とかなった。初めよりも行き帰りに時間がかからなくなったのと、リヒャルトが魔法をセーブせずにぶっ放すようになったからだ。
初回の様子見でさえ圧倒的な活躍を見せたリヒャルトだったが、彼はあれでも力を温存していたのだった。今や愛用の魔法の杖を手に本気モードで、オーガやアラクネを氷漬けにしている。
「そんな杖持ってたんだな」
「そうだ。私の実力を思い知ったか」
「私の実力、なんで出し惜しみしてた?」
「貴様は馬鹿か。最初から捨て身の全力など出すわけないだろう」
そう言ってふんぞり返るリヒャルトは、出し切る戦闘をするせいか帰る頃には決まってフラフラだ。特にアラクネは一撃で仕留めないとまずい相手なので、氷柱攻撃の威力も凄まじくなる。
その結果まともに歩けなくなる程に消耗するのだが(魔力切れという状態らしい)、車や魔法陣で安全に帰れるので問題ないと。
そう考えると、1日目はその為の様子見でもあったのか。
「こんなヘロヘロになって…… まさか寿命削れたりしてないだろうな?」
「安心して。ただ魔力が空になっているだけだよ。きちんと元どおり回復すれば、身体に害は出ないからね」
イアニスがそう言うので、そんなものかと納得しておいた。確かにレダート邸で一晩明かすとケロッとしている。
「ところでシマヤさんはずっとスキルを使い続けているのに、魔力切れを起こさないね」
「そうだなぁ。俺にはこれがあるから…」
助手席の前でカタカタしているハニワを指差す。こいつが無ければ、俺もリヒャルトのように重い二日酔い状態に陥っていたかもしれないのか。感謝だ。ハニワは今日もニカニカ笑ってる。
「魔石を元に魔力を回復させるマジックアイテムか……しかも無制限に繰り返し使えると。世に出たらとんでもない事に……」
「いやいや、この車限定の機能だから!」
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