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街の規模は、ドルトナより一回り大きい、といった所だろうか。目につく宿屋は多く、行き交う人々でワイワイしている。旅人が多い街なのだろう。
そして、検問から続く大通りを進むと川に行き当たった。
おお、広い。素晴らしい開放感だ。
川幅いっぱいに湛えた水が、傾き始めた陽の光でキラキラと輝いている。流れは先ほど見た川蛇ショックの川よりだいぶ急だ。
川上から川下までぐるりと見回す。堤防は川向こうへ続く橋のかかった一部にだけ設置されていて、その他は芝生や街樹、石畳の小道、花壇が広がっている。近寄って見てみると、芝生と水辺の間には柵すらない。
見慣れない河川敷だ。景観はパーフェクトだけど、増水したらどうするんだろう。
妙な心配が頭をよぎるが、余りにも長閑な空間にどうでも良くなった。
これだよ、これ。先ほどの川辺ではおっかない川蛇くんのお陰で満喫できなかったが、ここなら気兼ねなくピクニックができてしまうぞ!
辺りにはそこそこ人がいて、談笑したり花壇に腰掛けたりしている。武装していないので、普通の街人だろう。魔物が飛び出してくる心配は無さそうだ。
俺は街樹の木陰に腰を下ろし、飲み水とミートパイを取り出してやや遅いランチを満喫した。レダート家から貰った昼食だ。
「う~ん、気持ちいいなぁ」
「シャリシャリ」
長時間運転で強張った身体を伸ばしながら、冷めたミートパイに舌鼓。おはぎも青リンゴに齧り付いてご満悦である。
宿屋探ししないとだけど、着いたばかりだし……もうちょいゆっくり休憩してもいいよな。
「魚の食える宿にしたいな」
「キィ?」(あの死体おいしいの?)
「死体って言うなや」
サワサワと水辺に吹く風を浴び、のんびりした時間を過ごす。
おはぎのブラッシングをしながら、遠くに掛かる橋に目をやる。向こうからやってくる馬車と、こちら側から渡っていく馬車がパカパカと優雅にすれ違っていった。石造りの立派な橋だ。
ザクンダ商会があるのは川の向こう側なので、自分もあの橋を渡る事になる。しかし次の目的地・ラフィードはこの先ではない。入ってきた方の門へ戻って、さらに南東方面へ向かうのだ。
ひとしきり休憩した後、今日泊まる宿屋を求めて街の散策にでた。
川沿いの小道をしばらく歩いてから、目についた広場と屋台に足が吸い寄せられる。ヤマメよりも一回り大きい魚が串焼きで売られていて、早速購入した。味は良くも悪くも裏切らない、ヤマメの味だ。もうちょい塩が欲しい。強欲を承知で言えば、七味マヨが欲しい。
目についた店やマーケットを軽く物色するも、王都で買い物は済ませているので特に買うものは無し。おはぎの野菜を買ったくらいだ。
途中、もはや見慣れた竜と曲剣のマークが掲げられた看板を発見。ゾナドフの冒険者ギルドだ。
といっても、ギルドカードの有効期限までまだ一月近くあるので用は無い。二階建ての立派な建物をスルーした。
この国にいる間は、まだ考えなくても良いだろう。
ミスラー皇国はきな臭い国らしいのでなるべく長居はしたくない。キーストリア王国に入ったら、ギルドで依頼を探すとしよう。
少し行くと、宿や装備屋が軒を連ねる通りに出た。どの宿屋も活気があり、やはり旅人の人口が高いのだと感じる。そして看板に掲げられた名前が皆ヘンテコだ。どの街でもそうなんだな。
従魔OKの宿屋を尋ねると教えてもらえたので、そこにする。
その名も「キマイラのたんこぶ亭」。
室内におはぎを入れるのは、やはり断られてしまった。外の従魔を繋ぐ厩へ、との事。宿屋の多くは飯屋も兼任している。ここも例に漏れずそうだったから、これは仕方ない。
「野良猫に気をつけろよ」
「ギッ」
駄々をこねるかと思ったおはぎだが、不満そうながらも受け入れた。ドルトナで一度経験したからだろうか。
この調子で、魔物除けの野宿も許してもらいたいが…。
「ギィギィ、ギィッ!」
…どうやら、魔物除けでむりやり追い払われるのが気に食わないらしい。
魔物だもんな。
キマイラたんこぶに料金を払い、結構お高めな一人部屋を確保。夕飯代も渡しながら尋ねてみると、魚料理が出るようだ。よしよし。
すぐ裏手にある厩は従魔用であるためか中々立派で頑丈な屋根があり、土の床には水飲み桶が幾つも置かれている。他に生き物の姿はなく、おはぎの貸し切りだ。
「キィ…」(もう行くの…?)
「仕方ないだろ。しっかり休まないと、車を動かせないんだからな」
「キィーィ」(おはぎも死体食べたい)
逆さにぶら下がったおはぎが恨めしそうに言うが、俺は呆れ返った。
さっき屋台で買った俺の焼き魚をつまみ食いしてたくせに、まだ食うのかね君は。しかもアイテムボックスにトマトがまるまる残ってるの、知ってんぞ。
「死体って言うな!いいじゃん、他に誰もいないし。お前ものんびりしろって」
「キィ~」(ちぇ~)
「また明日な」
ドルトナの時と違ってポツンと1匹きりだから、寂しいのだろう。
だがあいつもこれまで野生で生きてきたのだ、それくらい辛抱してもらわんとな。
宿に戻って、がやがやと賑わう食堂へ。
お待ちかねの夕飯は、魚の香草焼きと山盛りベイクドポテトだった。ライムの輪切りが添えられた魚はホクホクで香ばしく、脂身の薄いサーモンといった味がする。ハーブの味付けも相性バッチリで、屋台の魚より美味かった。
ドカ盛りのポテトをスープで流し込んで、ご馳走様でした。
食事が終わったので、部屋へと戻る。
一息ついた事だし、イアニスから受け取ったスクロールを確認しよう。ベッド脇の机にガサガサと並べていく。
入っていたのは「身体強化」「認識阻害」「麻痺」「魔物除け」「火魔法攻撃」「雷魔法攻撃」「風魔法防御」「土魔法防御」「水魔法回復」が3枚。そして「クリーン」「火おこし」「目眩し」が5枚だ。
かなり用意してくれていた。…けれど、認識阻害とクリーン以外はあまりピンとこないな。
身体強化…確か、歩くのが楽になったやつだ。副作用が怖いな。
魔物除け。おはぎが不機嫌になるな。
目眩し。聞くところによるとこれは閃光弾のようなもので、こっそり逃げるには向かないらしい。ドルトナでも購入したが、未だに使ったことがない。
クリーン。神。なんぼあっても助かる。
火おこしと麻痺。これは何度か使った。
王都をウロついて探したが、マッチのような手軽な着火剤は見つけられなかった。このスクロールが普及しているようだ。
麻痺はラスタさんからも貰ったが、横に並べて見ると描かれてる魔法陣も紙質も全く別物だった。方や魔境のドロップアイテム、方やお店の市販品。
効果の違いがありそうだな。
そして、認識阻害。これは目眩しの上位互換だ。範囲は狭いが、見えないし聴こえなくなるという優れもの。王都で使ったので、もう2枚しかない。
ところがこのスクロール、犯罪防止のために購入者・枚数に制限があるらしい。イアニスが持っていたのは貴族様だからだ。
こんな風に、他人に渡しちゃって良かったのか…?
最後に、属性魔法。
攻撃とか回復とかあるから、ファイアーボールがドーン!と出たりするのだろうか。火事になりそう。
勿体ないが一度使ってみないと、どういう威力と効果なのか分からないな。
満足したのでスクロールたちを元の包みへしまい込み、寝支度に取り掛かる。宿屋のベッドは久しぶりだ。
ぬくぬくと就寝。
そして、検問から続く大通りを進むと川に行き当たった。
おお、広い。素晴らしい開放感だ。
川幅いっぱいに湛えた水が、傾き始めた陽の光でキラキラと輝いている。流れは先ほど見た川蛇ショックの川よりだいぶ急だ。
川上から川下までぐるりと見回す。堤防は川向こうへ続く橋のかかった一部にだけ設置されていて、その他は芝生や街樹、石畳の小道、花壇が広がっている。近寄って見てみると、芝生と水辺の間には柵すらない。
見慣れない河川敷だ。景観はパーフェクトだけど、増水したらどうするんだろう。
妙な心配が頭をよぎるが、余りにも長閑な空間にどうでも良くなった。
これだよ、これ。先ほどの川辺ではおっかない川蛇くんのお陰で満喫できなかったが、ここなら気兼ねなくピクニックができてしまうぞ!
辺りにはそこそこ人がいて、談笑したり花壇に腰掛けたりしている。武装していないので、普通の街人だろう。魔物が飛び出してくる心配は無さそうだ。
俺は街樹の木陰に腰を下ろし、飲み水とミートパイを取り出してやや遅いランチを満喫した。レダート家から貰った昼食だ。
「う~ん、気持ちいいなぁ」
「シャリシャリ」
長時間運転で強張った身体を伸ばしながら、冷めたミートパイに舌鼓。おはぎも青リンゴに齧り付いてご満悦である。
宿屋探ししないとだけど、着いたばかりだし……もうちょいゆっくり休憩してもいいよな。
「魚の食える宿にしたいな」
「キィ?」(あの死体おいしいの?)
「死体って言うなや」
サワサワと水辺に吹く風を浴び、のんびりした時間を過ごす。
おはぎのブラッシングをしながら、遠くに掛かる橋に目をやる。向こうからやってくる馬車と、こちら側から渡っていく馬車がパカパカと優雅にすれ違っていった。石造りの立派な橋だ。
ザクンダ商会があるのは川の向こう側なので、自分もあの橋を渡る事になる。しかし次の目的地・ラフィードはこの先ではない。入ってきた方の門へ戻って、さらに南東方面へ向かうのだ。
ひとしきり休憩した後、今日泊まる宿屋を求めて街の散策にでた。
川沿いの小道をしばらく歩いてから、目についた広場と屋台に足が吸い寄せられる。ヤマメよりも一回り大きい魚が串焼きで売られていて、早速購入した。味は良くも悪くも裏切らない、ヤマメの味だ。もうちょい塩が欲しい。強欲を承知で言えば、七味マヨが欲しい。
目についた店やマーケットを軽く物色するも、王都で買い物は済ませているので特に買うものは無し。おはぎの野菜を買ったくらいだ。
途中、もはや見慣れた竜と曲剣のマークが掲げられた看板を発見。ゾナドフの冒険者ギルドだ。
といっても、ギルドカードの有効期限までまだ一月近くあるので用は無い。二階建ての立派な建物をスルーした。
この国にいる間は、まだ考えなくても良いだろう。
ミスラー皇国はきな臭い国らしいのでなるべく長居はしたくない。キーストリア王国に入ったら、ギルドで依頼を探すとしよう。
少し行くと、宿や装備屋が軒を連ねる通りに出た。どの宿屋も活気があり、やはり旅人の人口が高いのだと感じる。そして看板に掲げられた名前が皆ヘンテコだ。どの街でもそうなんだな。
従魔OKの宿屋を尋ねると教えてもらえたので、そこにする。
その名も「キマイラのたんこぶ亭」。
室内におはぎを入れるのは、やはり断られてしまった。外の従魔を繋ぐ厩へ、との事。宿屋の多くは飯屋も兼任している。ここも例に漏れずそうだったから、これは仕方ない。
「野良猫に気をつけろよ」
「ギッ」
駄々をこねるかと思ったおはぎだが、不満そうながらも受け入れた。ドルトナで一度経験したからだろうか。
この調子で、魔物除けの野宿も許してもらいたいが…。
「ギィギィ、ギィッ!」
…どうやら、魔物除けでむりやり追い払われるのが気に食わないらしい。
魔物だもんな。
キマイラたんこぶに料金を払い、結構お高めな一人部屋を確保。夕飯代も渡しながら尋ねてみると、魚料理が出るようだ。よしよし。
すぐ裏手にある厩は従魔用であるためか中々立派で頑丈な屋根があり、土の床には水飲み桶が幾つも置かれている。他に生き物の姿はなく、おはぎの貸し切りだ。
「キィ…」(もう行くの…?)
「仕方ないだろ。しっかり休まないと、車を動かせないんだからな」
「キィーィ」(おはぎも死体食べたい)
逆さにぶら下がったおはぎが恨めしそうに言うが、俺は呆れ返った。
さっき屋台で買った俺の焼き魚をつまみ食いしてたくせに、まだ食うのかね君は。しかもアイテムボックスにトマトがまるまる残ってるの、知ってんぞ。
「死体って言うな!いいじゃん、他に誰もいないし。お前ものんびりしろって」
「キィ~」(ちぇ~)
「また明日な」
ドルトナの時と違ってポツンと1匹きりだから、寂しいのだろう。
だがあいつもこれまで野生で生きてきたのだ、それくらい辛抱してもらわんとな。
宿に戻って、がやがやと賑わう食堂へ。
お待ちかねの夕飯は、魚の香草焼きと山盛りベイクドポテトだった。ライムの輪切りが添えられた魚はホクホクで香ばしく、脂身の薄いサーモンといった味がする。ハーブの味付けも相性バッチリで、屋台の魚より美味かった。
ドカ盛りのポテトをスープで流し込んで、ご馳走様でした。
食事が終わったので、部屋へと戻る。
一息ついた事だし、イアニスから受け取ったスクロールを確認しよう。ベッド脇の机にガサガサと並べていく。
入っていたのは「身体強化」「認識阻害」「麻痺」「魔物除け」「火魔法攻撃」「雷魔法攻撃」「風魔法防御」「土魔法防御」「水魔法回復」が3枚。そして「クリーン」「火おこし」「目眩し」が5枚だ。
かなり用意してくれていた。…けれど、認識阻害とクリーン以外はあまりピンとこないな。
身体強化…確か、歩くのが楽になったやつだ。副作用が怖いな。
魔物除け。おはぎが不機嫌になるな。
目眩し。聞くところによるとこれは閃光弾のようなもので、こっそり逃げるには向かないらしい。ドルトナでも購入したが、未だに使ったことがない。
クリーン。神。なんぼあっても助かる。
火おこしと麻痺。これは何度か使った。
王都をウロついて探したが、マッチのような手軽な着火剤は見つけられなかった。このスクロールが普及しているようだ。
麻痺はラスタさんからも貰ったが、横に並べて見ると描かれてる魔法陣も紙質も全く別物だった。方や魔境のドロップアイテム、方やお店の市販品。
効果の違いがありそうだな。
そして、認識阻害。これは目眩しの上位互換だ。範囲は狭いが、見えないし聴こえなくなるという優れもの。王都で使ったので、もう2枚しかない。
ところがこのスクロール、犯罪防止のために購入者・枚数に制限があるらしい。イアニスが持っていたのは貴族様だからだ。
こんな風に、他人に渡しちゃって良かったのか…?
最後に、属性魔法。
攻撃とか回復とかあるから、ファイアーボールがドーン!と出たりするのだろうか。火事になりそう。
勿体ないが一度使ってみないと、どういう威力と効果なのか分からないな。
満足したのでスクロールたちを元の包みへしまい込み、寝支度に取り掛かる。宿屋のベッドは久しぶりだ。
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