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記憶と状況理解とゲーム知識。
9話『魔王は実は暇だった。2』
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※ベリアル様視点です。
光る魔法陣を見つめる。
魔力反応からして、とても不安定だった。
この魔力の波動を感じるのは初めてではない。
30年ほど前にも似たような魔力を感じた。
あのとき感じた感傷は今もふつふつと自分の中に残っている。
そう感じたときには、体が勝手に動いていた。
魔力に指で触れる。
『憎悪憎悪迷憎悪タス ケ テ憎悪迷憎悪悲妬憎悪愛憎悪憎悪悲憎悪愛憎悪憎悪
憎悪悲憎悪愛ドウ シ テ。憎悪助憎悪憎悪迷憎悪ナ ゼ愛憎悪憎悪迷ナゼ
愛憎悪憎悪迷憎悪憎悪愛憎悪愛憎悪憎悪妬憎悪愛憎悪愛憎悪悲愛憎憎悪愛憎悪
憎悪助憎悪妬憎悪憎悪迷悲タ スケテ。憎悪迷憎悪助憎悪憎悪迷憎悪悲憎悪ド
憎悪憎ウ シテ悪悲憎悪妬憎悪愛憎悪愛憎悪悲憎悪悲妬憎悪愛憎悪憎悪悲憎
助憎悪憎悪愛憎悪憎悪憎悪愛憎悪妬憎悪―――――――――――タ スケテ』
ズキンッと頭痛がした。
「……痛っ」
―――――驚愕した。
これほどまでに人は、憎悪を溜め込めるのか。
魔力にこもっていた想いは、狂気と歪んだ愛憎だった。
きっと、この魔力の持ち主も自分自身を止められないのだろう。
愛する気持ちに嫉妬がまざり、憎む気持ちに自分自身への自己嫌悪。
自分の初めて感じる感情に困惑し悲しむ。
そして、誰かに、助けを求めていた。
初めてだった。
以前感じた魔力の波動とは大違いだった。
憎悪や嫉妬は同じ。
しかし、以前感じた魔力は自己愛と憎い他人への殺意だった―――。
ぜんぜん違うのに同じに感じた。
だから、この魔力を持つ人物を確かめてみたくなった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
魔法陣をくぐり、転移した場所を確認する。
そこは、薄暗い地下のような場所だった。
目の前で顔色を悪くした少女を見つめる。
燃えるような夕日色の髪、健康的な白い肌、今にも泣きそうな大きな薄紫の瞳。
儚さのある可憐な少女だと思った――。
魔法陣を起動したということは、なにか願いがあるのだと勝手に思った。
でも、目の前の少女からは、先ほどのような狂った魔力反応はなかった。
疑問に思いながらも声をかける。
話しかけた少女はとても理知的で、魔法陣に使った魔力の持ち主だとは
思えなかった。(まさかの憑依体質か?)
彼女は何か考え込みながら、百面相していた。
魔力の反応からは絶望や脅えが窺えた。
だから、「誰」だ なんて聞いてしまった。
3ヶ月分の魔力に込められた想いは、そう簡単に消えるようなものではない。
人格が変わったか、心に何らかの変化がなければ、
ここまで劇的に人は変われない。
いくら、表面を繕ったところで、魔力の質までは誤魔化せないからだ。
そして、彼女が姿勢を正して、まっすぐに見つめてきた。
「これから、お話しすることは、信じられない事かもしれません。
それでも、いいですか?」
私は、彼女がとても、強かな人だと思った。
そして、私は彼女の話を聞いた―――――――。
エミリア嬢の話は、とても興味深いものだった。
読むと読者の願ったとおりの展開になる書物の話では、
彼女は悪役令嬢なる人物だという。
(書物の名前はゲームというらしい。)
書物の主人公であるヒロインのナナリー嬢をいろんな男性と結ばせるという
なんとも意味不明な話ではあったが……。
はーれむエンド?とかいう内容はそれこそ酷いものだ。
みんな仲良くなんて現実にはありえないだろう。
だが、彼女の話す姿は真剣そのものだった。
魔力からも嘘は感じ取れない。
それに、書物の展開は最後に必ずエミリア嬢が死ぬのだ。
主人公と関係ない場面でも、ナナリー嬢が使った呪詛返しは
なぜか、エミリア嬢に飛んでいくらしい。
そもそも、ただの[悪戯をする呪い]で人が死ぬわけがないのだ。
もし、エミリア嬢に呪いが飛んでいくのを知っている者の犯行だとしたら?
そして、その犯人とナナリー嬢が裏で繋がっていたとしたら?
だが、そんなことありえるのだろうか?
この書物のナナリー嬢は、本当にエミリア嬢のことを……?
「前世の物語の君は、嵌められたんじゃないのか?」
そう言ってエミリア嬢を見て後悔した。
心に鈍い痛みが起きた。
しまった!と思った。
でも、私の表情を見たエミリア嬢はなぜか嬉しそうに笑った。
ホッとした。笑った彼女を見て、ホッとしたのだ。
自分の心の中に起きた痛みの原因は何かわからないが。
彼女の笑顔を見た瞬間に痛みは消えた。
彼女の謝りを受け入れる。
感情が表情に出ないようにするので必死だった。
それから、意識を切り替えた彼女は強かった。
背筋を伸ばし、姿勢を正して
決意の眼差しをこちらに向けている。
私は、この子の決意の結末を見たくなった。
願いの話は実に、彼女らしいと思ってしまった。
会って話して15分ほどしか経っていないのに。なぜだろう?可笑しいな。
本当は、悪魔の取引とか願いとか魔力が足りないとか関係ないのだ。
加護の代償なんてないし、魔力も必要ない。
私を守護する星霊は闇の化身シェイド。
闇の微聖霊を飛ばして、ナナリー嬢とエドワード王子にくっつけておけば
呪いくらい弾くだろう。
まぁ、物理干渉や精神干渉は知らんが。
私には、この2人にそこまでする義理は無い。
話を聞いた限り、現時点でエドワード王子は婚約者のエミリアを蔑ろにしている。
ナナリー嬢も婚約者がいる男性達を侍らせている。
正直言って、私はこの2人を好きにはなれない。
エミリア嬢にも加護を与えるのは簡単だ。
でも、それはなぜかしたくなかった。
だから、彼女の近くに居れるように、策を巡らせた。
「私直々に護衛しよう。光栄に思うがいい」
私は悪魔じゃない。
だから―――
純粋にエミリア嬢の力になりたいと思った。
光る魔法陣を見つめる。
魔力反応からして、とても不安定だった。
この魔力の波動を感じるのは初めてではない。
30年ほど前にも似たような魔力を感じた。
あのとき感じた感傷は今もふつふつと自分の中に残っている。
そう感じたときには、体が勝手に動いていた。
魔力に指で触れる。
『憎悪憎悪迷憎悪タス ケ テ憎悪迷憎悪悲妬憎悪愛憎悪憎悪悲憎悪愛憎悪憎悪
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ズキンッと頭痛がした。
「……痛っ」
―――――驚愕した。
これほどまでに人は、憎悪を溜め込めるのか。
魔力にこもっていた想いは、狂気と歪んだ愛憎だった。
きっと、この魔力の持ち主も自分自身を止められないのだろう。
愛する気持ちに嫉妬がまざり、憎む気持ちに自分自身への自己嫌悪。
自分の初めて感じる感情に困惑し悲しむ。
そして、誰かに、助けを求めていた。
初めてだった。
以前感じた魔力の波動とは大違いだった。
憎悪や嫉妬は同じ。
しかし、以前感じた魔力は自己愛と憎い他人への殺意だった―――。
ぜんぜん違うのに同じに感じた。
だから、この魔力を持つ人物を確かめてみたくなった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
魔法陣をくぐり、転移した場所を確認する。
そこは、薄暗い地下のような場所だった。
目の前で顔色を悪くした少女を見つめる。
燃えるような夕日色の髪、健康的な白い肌、今にも泣きそうな大きな薄紫の瞳。
儚さのある可憐な少女だと思った――。
魔法陣を起動したということは、なにか願いがあるのだと勝手に思った。
でも、目の前の少女からは、先ほどのような狂った魔力反応はなかった。
疑問に思いながらも声をかける。
話しかけた少女はとても理知的で、魔法陣に使った魔力の持ち主だとは
思えなかった。(まさかの憑依体質か?)
彼女は何か考え込みながら、百面相していた。
魔力の反応からは絶望や脅えが窺えた。
だから、「誰」だ なんて聞いてしまった。
3ヶ月分の魔力に込められた想いは、そう簡単に消えるようなものではない。
人格が変わったか、心に何らかの変化がなければ、
ここまで劇的に人は変われない。
いくら、表面を繕ったところで、魔力の質までは誤魔化せないからだ。
そして、彼女が姿勢を正して、まっすぐに見つめてきた。
「これから、お話しすることは、信じられない事かもしれません。
それでも、いいですか?」
私は、彼女がとても、強かな人だと思った。
そして、私は彼女の話を聞いた―――――――。
エミリア嬢の話は、とても興味深いものだった。
読むと読者の願ったとおりの展開になる書物の話では、
彼女は悪役令嬢なる人物だという。
(書物の名前はゲームというらしい。)
書物の主人公であるヒロインのナナリー嬢をいろんな男性と結ばせるという
なんとも意味不明な話ではあったが……。
はーれむエンド?とかいう内容はそれこそ酷いものだ。
みんな仲良くなんて現実にはありえないだろう。
だが、彼女の話す姿は真剣そのものだった。
魔力からも嘘は感じ取れない。
それに、書物の展開は最後に必ずエミリア嬢が死ぬのだ。
主人公と関係ない場面でも、ナナリー嬢が使った呪詛返しは
なぜか、エミリア嬢に飛んでいくらしい。
そもそも、ただの[悪戯をする呪い]で人が死ぬわけがないのだ。
もし、エミリア嬢に呪いが飛んでいくのを知っている者の犯行だとしたら?
そして、その犯人とナナリー嬢が裏で繋がっていたとしたら?
だが、そんなことありえるのだろうか?
この書物のナナリー嬢は、本当にエミリア嬢のことを……?
「前世の物語の君は、嵌められたんじゃないのか?」
そう言ってエミリア嬢を見て後悔した。
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でも、私の表情を見たエミリア嬢はなぜか嬉しそうに笑った。
ホッとした。笑った彼女を見て、ホッとしたのだ。
自分の心の中に起きた痛みの原因は何かわからないが。
彼女の笑顔を見た瞬間に痛みは消えた。
彼女の謝りを受け入れる。
感情が表情に出ないようにするので必死だった。
それから、意識を切り替えた彼女は強かった。
背筋を伸ばし、姿勢を正して
決意の眼差しをこちらに向けている。
私は、この子の決意の結末を見たくなった。
願いの話は実に、彼女らしいと思ってしまった。
会って話して15分ほどしか経っていないのに。なぜだろう?可笑しいな。
本当は、悪魔の取引とか願いとか魔力が足りないとか関係ないのだ。
加護の代償なんてないし、魔力も必要ない。
私を守護する星霊は闇の化身シェイド。
闇の微聖霊を飛ばして、ナナリー嬢とエドワード王子にくっつけておけば
呪いくらい弾くだろう。
まぁ、物理干渉や精神干渉は知らんが。
私には、この2人にそこまでする義理は無い。
話を聞いた限り、現時点でエドワード王子は婚約者のエミリアを蔑ろにしている。
ナナリー嬢も婚約者がいる男性達を侍らせている。
正直言って、私はこの2人を好きにはなれない。
エミリア嬢にも加護を与えるのは簡単だ。
でも、それはなぜかしたくなかった。
だから、彼女の近くに居れるように、策を巡らせた。
「私直々に護衛しよう。光栄に思うがいい」
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だから―――
純粋にエミリア嬢の力になりたいと思った。
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