親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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学園生活開始~学園祭。

35話『5ヶ月間の想い』

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魔王ベリアル様は、魔法陣に佇んでいる。

白いシャツに首元には金の装飾。シャツのボタンも金色で真ん中の数箇所

しか止められていない。チラ見えする褐色の肌が艶かしい。

ズボンは黒で裾が短く、足首が見えている。ペタンコの部屋靴は白だ。

白銀色の髪はうっすらと濡れていて、長い髪を一つに纏めている。



(ラフな格好も素敵すぎるー!)



じゃない!



「ベリアル様!?」



カーラとメーデも驚いているが、事前説明を思い出したのか

声はあげない。 



あれ? 私の侍女達、優秀すぎぃ!?



「ふむ。試運転をしていなかったのを思い出してな」



ベリアル様、すっごい笑顔で言い訳してる。



「どうやら、成功したようだ。やったな! エミリア嬢」



やったな! じゃねーよ。

何してくれちゃってるんですか魔王さま!?

仮にも私、婚姻前の女の子だよ!?

婚姻前の女性の部屋を訪れる意味わかってる!?



もしくは、私は女性として見られてない!?

ちょっと悲しくなってきた……。



「どうしたエミリア嬢。 何を落ち込んでいる?」



「いえ……」



ベリアル様は不服そうだ。

一緒に喜んでもらえると思っていたのだろうか?



「エミリア様。一応僕もいるんで。

 ベリアル様はちゃんと、エミリア様のことを女性として見ていますよ」



耳元でボソっと囁かれた声にびくついた。

い、いたんだね、ポアソン君……。



侍女達とポアソン君は、ベリアル様の紅茶を用意して

さっさと待機室に入って行った。

ポアソン君の言葉に顔が赤くなる。



勝手に向かいのソファーに座ったベリアル様は

用意された紅茶を飲んでこちらを見た。



「エミリア嬢。 ひとつ聞きたい」



「何でしょうか?」



ベリアル様は、学園に居たときと同じ不機嫌をまとっていた。

あれ? 機嫌もどったんじゃないの?



「君は、いつもあんな茶番に付き合っていたのか?」



茶番というのは、私が転ばせたかどうかのアレかな?



「そうですね。彼女達の中では大体は私のせいなので。

 その場に私が居なくても全部、私のせいにされます。

 今回は、レヴァンヌ様に助けていただけて、良かったですね」



「エミリア嬢。 なぜ、すぐに否定しなかったのだ?」



なぜかって? 

どうせ言い訳だとか言われてややこしくなるからさ。



「必要ございませんでしたでしょう?」



「な、何を言っているんだ」



ベリアル様は困惑しているようだ。

私は笑いながら言う。



「私が否定しても聞き入れてもらえません。

 それならば、真実を知ってくださる方からの言葉のほうが

 あの方達には効くのですよ」


「笑うな!」  「っ!?」



ベリアル様の叱咤が飛ぶ。



「エミリア嬢。そこは、笑ってはいけない。

 笑いどころではないんだぞ?! それを、理解しているのか?!」



「そ、そんなこと……」



分かっている――。



「分かっているのなら、何故笑える?

 拒否しなかったのではない。あれは、あきらめているだけだろう?

 真実を知るものがいた? 助けてもらってよかった?

 ふざけるな! 次は、味方がいるかどうかわからないんだぞ!?

 そんな風に笑っていい問題ではない!!」



ズキンッと胸が痛んだ。



そんなの、だって―――。



「しょうがないじゃない!」



私は、胸のうちの言葉が涙と一緒にあふれ出した。



「私だって、私だって分かってる! 最初は必死に否定したわ!

 でも、誰も信じてくれなかった! 何度も信じてって言った!

 でも、無駄だった! 意味が無かった! ――」



否定しないんじゃない無駄だと分かったから―――。



「ナナリーが階段で突き落とされそうになったのだって私のせい!

 私はちょうど誰とも一緒にいなかった! 味方なんて居なかった!

 私はやってないって!ちゃんと言った! ちゃんと言ったの!!」



私の婚約者だった人にまでも裏切られて―――。



「私が否定しても、やっかみや嫉妬って陰口も叩かれる!

 私は上流貴族の令嬢だからって! 権力が大きいからって!

 私、知らない! 権力なんて使ったことない! ――」



涙と一緒にあふれ出す言葉は止らなかった。



「どうしろっていうの!?

 泣いても、誰も味方なんて居なかった!

 それなら、冷静のふりしていれば、真実を知る人が少なからず居た!

 だから、私は何も言わなくなったの!

 さ、最近なんて、私の味方をしてくれる人も少なくなった。

 でも、言わなくても、信じてくれる人だけは少なからずいた!

 嫌われるのなら、嫌ってくる奴なんかどうでもいいって!

 私も思うようにって! でも――でも――。」



私は、あきらめて、逃げていただけ―――。





「大丈夫。

 エミリア嬢。 私は、君の味方だ。」





ベリアル様は、そっと近寄って抱きしめてくれた。



「ふぇ、ふぇえええええええええん」



本当は、信じてほしかった―。

誰でもいいから、味方だよって言ってほしかった――。



私は、5ヶ月ぶんの思いのたけを全部 吐き出し、泣き続けた。





この時、待機室にいるポアソン君と侍女達は、によによしてました。

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