親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

文字の大きさ
136 / 231
テスト期間編。

136話『雪の星霊』

しおりを挟む
※ベリアル様視点です。



部屋の中では、神秘的な光景が広がっていた。



エミリアは美しい光の帯を纏い、両手からは魔力の翼が羽ばたく。

翼から抜け落ちた光の羽根がエレノア姫の体に触れるたび、

光の雫があたりを照らす。



その光は、とても清浄で触れるもの全てを癒す効果があることが

一目で分かった。



エミリアの頭の上。

そこに一匹の白い小鳥が両の翼を広げて輝く。



シェイドが目を細めて呟いた。




「『雪の星霊アリエだ』」





雪の星霊アリエの力を借りたエミリアはエレノア姫の症状を癒し続けている。

どれくらい時間がたっただろうか?



治療が終わったエミリアは、その場で崩れ落ちるように気を失った。

それと同時に、アリエもエミリアの三つ編みの隙間にもぐり込んで

眠りについていた。


私は、エミリアに駆け寄り抱える。



「シュゼルツ殿。別室の用意を」



「わ、わかりました! こちらへ」





別室をシュゼルツに用意してもらい、案内された部屋へ入る。

場所は、エレノア姫の隣の部屋だった。



エミリアをベッドで寝かせた後、そっと頬に触れる。

どうやら、疲れて眠っているだけのようだ。ホッと息をつく。

ピンクに色づく頬と寝息に愛しさを感じる。

静かに手を離し、布団をかけて退室した。



廊下では、シュゼルツが立って待っていた。



どうやらエレノア姫が目覚めた様で、

中では着替えと医師が往診の最中だという。

私とシュゼルツは廊下で待機する。

待機している間、シェイドにエミリアの身に起こった内容を

詳しく聞いた。



しばらくして、女性医師とサポーターがエレノア姫の部屋から出てきた。

エレノア姫の容態は安定していて、もう医師の治療は必要ないとの事だった。



医師達と入れ替わりで部屋へと入室する。



エレノア姫は起き上がり、アスカと何か喋っているようだ。

女性用の兵士のサーコートに身を包んでいる。


私は、エレノア姫に近づき声をかけた。



「エレノア姫。無理をしすぎだ。

 君が居なくなっては、悲しむ者が多いのだぞ」



「ベリアルへい……王子。

 ご心配をおかけしました。

 たった今、同じ様にアスカにも叱られてしまいました」



苦笑するエレノア姫に

体調を聞いてみると、倒れる前より良くなっているということだった。



「使い切った魔力も完全に回復しているようです。

 アスカから聞いた限り、これはエミリアの力だと聞きました」



私はエレノア姫に、先ほどエミリアに起こったことを説明する。



「エミリアが雪の星霊アリエに気に入られた。

 その力を使って、君の怪我と病を癒した。


 シェイドが言うには、アリエの力はそれほど強くはないそうだ。


 自衛や相手を傷つける力は皆無だが、他人に干渉する力だけは高い。

 特に、癒しに関しては星霊一らしい。

 清らかなる心の持ち主にしか力を貸さないらしいからな。

 ある意味奇跡の賜物だそうだ。


 星霊憑きになったエミリアの今の状態は疲労も激しいだろう。

 このまま、半日は目を覚まさないだろうな」



私の話を聞いていたエレノア姫は、ホッとしていた。

そして、エレノア姫は何か思い出したように私に問う。



「魔物は!?

 街に3匹の魔物が入り込んでいたはずです。

 私と兵士達は、必死に攻防して……。


 なんとか、1匹だけ引き離す事が出来たはずなのですが、

 引き離した魔物に不意を突かれて……」



エレノア姫の言葉に、後ろに控えていたシュゼルツが言葉を発する。



「エレノア様のおかげで、魔物を引き離すのには成功しています。

 引き離した魔物は、いまだに兵士達が攻防を繰り広げています」



沈痛な表情のシュゼルツはエレノア姫を見つめ、真撃な態度で頭を下げた。



「ご回復したエレノア様には、酷な話なのですが、

 いまだに頑張っている兵士達のため、なにとぞ力をお貸しください!」



シュゼルツの行動にエレノア姫は真剣な表情で頷いた。



「もちろんよ。それと、ベリアル王子。

 貴方にも力を貸して欲しいわ」



「分かった」



「――っそ、そんな簡単に決めてもよろしいのですか!?」



私とエレノア姫が簡単に了承をするとは思ってなかったのか、

シュゼルツは驚いていた。



「大丈夫だ。私も星霊憑きなのでな。

 その代わり、エミリアを頼む」



星霊憑きだと言う私にシュゼルツは驚いていた。

原初の星霊を除いて、全部で15柱しか居ない星霊のうち3柱が

ここに集まっているのだ驚くのも無理はないだろうな。

これも、ゲームの運命というやつなのだろうか……?



この後、持ち堪えている兵士達を助けるために、

魔物の元へ向かう手筈を整えることとなった。



他の兵達の容態を見に、部屋を出ようとしたその時だった――







「――いやあああああああああああ!!!」







外から叫び声が聞こえ、

私とエレノア姫は、急いで宿の外へと向かった。


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...