親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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テスト期間編。

142話『愚者 4』

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※ナナリー視点です。ナナリーの過去話だよ!





私は……私は、愚かだった。



前世で好きだった乙女ゲームのヒロインになれた事で、

私は自分が特別なんだと、思い込んでいたの。



前世での私は、学校で虐めを受けていた。

理由は、お姉ちゃんがとても珍しい病気で、

病気がうつるって言う理由で虐められていたの。


お姉ちゃんが亡くなって、

生前やっていたゲームを私が引き取ることになったわ。

ゲームのタイトルは『聖霊の白乙女』。



ゲームは本当に面白かった。

私はどんどんハマり込んで、そのゲームが大好きになっていた。

ほとんど王子ルートばかりだったけど、30週以上はやったと思う。

もちろんベリアル王子のルートも、ジョシュア君のルートも。

ケヴィン君のルートはやっていないと思う。



もともと学校で邪険にされていた私は、ゲーム好きだと知られて

虐めも、もっと酷くなってしまったわ。



追い詰められた私は、本当に辛かったの。

誰も、私を必要としない。

誰も、私に優しくしない。

こんな世界なら生きている意味はないって思うようになって……。


私は、全校集会でグラウンドに集まる全校生徒達の前で、

学校の屋上から飛び降りたの……。





そして私は、転生した。





私が記憶を取り戻したのは、学園に入学する半年前だった。



転生したこの世界で記憶が戻る前の、私の家は母子家庭だったわ。

娼婦だった母の働くお店で、呼び子として働いていたの。


そこで初めてお父様に出会った。最初は、お客様だと思ったわ。

お父様は、私と母を迎えに来ていた。

正妻が亡くなったから呼びに来たって話だったわ。



でも、母は行くのを躊躇ためらった。

貴族でもなんでもない自分には似合わないって。

私は母を説得したけれど、母は頷かなかった。


お父様は、私だけでも引き取るって言ってくれた。


『こんな生活から抜け出せるのならそれでいいじゃない』


私はそんな軽い気持ちで、お父様の後についていったの。



母の嫌がる理由が私には分からなかったから……。





それから、引き取られた後の私の生活は一変したわ。

綺麗なドレスに、たくさんの食事、

清潔なベッドで寝れる日々を過ごしていた。



名前も、ただの庶民のナナリーから

ナナリー・ランゲスっていう爵位もちの貴族になったんだもの。

私は、幸運だと自分でも自惚れていたの。



私は、貴族のマナーや常識が分からないから、

たびたびお屋敷でも失敗を繰り返した。



私の態度や言葉使いは貴族としては使ってはいけないと言われて……。

家庭教師にいろいろ学ばされ、作法だけは2ヶ月でなんとか形になったの。



でも貴族として生きていくには、貴族のマナーや常識も必要だった。

どうしようか父や家庭教師は悩んでいるみたいだったわ。


それから3ヶ月後、私に不思議な現象が起きたの。


興味本位で調理場に足を運んだ時に、驚いたシェフが手に怪我を負ったの。

私は泣きながら、一所懸命に謝ったわ。

私の涙は、小さな白い光の粒になって、傷を負ったシェフの手に散った。

すると、みるみる傷が癒えていったの。

シェフは大変驚き、私に感謝していたわ。



起こった奇跡に驚いたコックと私は、この事をお父様に話したの。

星教会で魔力測定という魔法の道具があって、

私には魔法の適正があることが分かったの。


しかも、とても珍しい白魔法の使い手だった。


ここでも私は、自分が選ばれた存在なのだと思っていたわ。

何をするにも自信が沸いてきて、

お屋敷でのお勉強も成績がぐんぐん伸びていった。



そして、ランゲス家に引き取られてから半年たったある日、

私の目の前に小さな妖精が現れた。


「やっと、見つけたわ」


目の前を飛び回る小さな妖精は、

ピンクがかった金の髪に赤い大きな瞳、緑の小さなワンピースに

背中からはトンボの羽のようなものが生えていたわ。



「白き乙女。私は貴女を待っていたの」



ふんわりと笑い、私の周りをキラキラと飛び回る妖精。



その姿を見ていたら、私の記憶に変化が生じたの。

頭痛と目眩がして、私は頭を抑えた。



「貴女は、ヒロイン。

 この世界に選ばれし者」



妖精の言葉がゆっくりと頭に染み入るように響く――。


「私は―――ヒロイン。ヒロインのナナリー・ランゲス!!」



「そう。あなたは、ヒロイン」



今思い出したら、ニッコリと笑う妖精リリン

少し不気味だったように思うわ。



「私と一緒に、幸せを掴みましょう!」



妖精の、そのセリフは私が前世で遊んでいたゲーム、

『聖霊の白乙女』に出てくる妖精リリンのセリフだった。



私はその時、前世の全ての記憶を取り戻した―――。 





そのあと、私の不思議な能力を王宮の偉い人に伝えたお父様は、

王宮からたくさんの荷物を持って来ていたの。

そして、私を学園に通わせると言ったわ。



こうして、私は王立オリジム学園に入学することが決まったの。


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