親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

170話『援軍到着 4』

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「まずは、こちらの地図を見てください。

 地図を使って、説明していきます」



机に広げられていた地図に目を通すと、王都からコルト、

コルトからコルニクス領の国境砦そしてハイライト王国が描かれている。


砦から西にあるハイライト王国には赤い印でバツがいくつも描かれている。

そのバツ印はだんだんとドルステン王国まで続き、

現在私達がいる、コルトまで続いていた。


このバツ印が『何か』で、その『何か』がドルステン王国に入ってきた。

という認識もできる。

『何か』はきっと今回の事件に関係のある魔物だろうか。

それともバツ印は、その被害にあった村や街だったら……?



私は緊張した面持ちで、コンラート様に視線を向ける。

コンラート様は頷き、詳しく説明してくれた。



「このバツ印は今回の事件に関わる魔物から被害にあった村や街の印です」



やっぱり……。



「私は、母と父の命令で退学申請書を提出後、直ぐに

 砦に向かうように言われました。


 父に連れられて王都からコルニクス領まで休みつつゆっくり馬で進み、

 10日程で国境砦に着きました。

 それが、今から7日程前のことです。


 その時の私は、これから向かう砦での生活には

 不安と不満しかありませんでした。 


 しかし、砦に着いてから父と私は妙な空気を感じ取りました。


 砦に勤務している500人以上いる兵士のうち、動いていたのは

 たったの半数以下だったのです。


 外で見張りをする兵士に言われ、馬を砦から遠ざけた位置に繋ぎ、

 父と私には口と鼻を布で覆うように言われました。


 砦の中は酷いものでした。

 兵士のほとんどは床にせっていて……。


 父は砦の者に詳しく話を聞いて、王都にすぐに戻って行きました。


 私は、病の原因である魔物の群れがどこから来て、どこに向かったのかを

 動ける兵士と共に調べていました。

 それが、この地図です」



コンラート様の話を皆、深刻な表情で聞いていた。



「王都でザンラート、そしてコルトからの使者から話を聞いた私達は

 急いで討伐隊を編成してこの街まで来たのだ」



マリー副団長が付けたしで教えてくれた。

ザンラートというのは騎士団長のことだ。

コンラート様のお父様である。



「エミリア、ベリアル王子」



お母様に名前を呼ばれて、私とベリアル様はお母様に顔を向ける。



「貴女達にお願いがあるの」



意を決したお母様が、一呼吸置いてから言葉を発する。



「あなた達には、ナナリーさんを連れて

 国境砦まで行ってほしいの」



「護衛として、うちのコンラートとリーテを連れて行ってくれ」



お母様とマリー副団長の言葉に、息を呑んだ。



「私が行っても大丈夫でしょうか?」



正直不安だった。

まだ学生の身分である自分が国境砦に向かうということは、

砦の救護班として向かうということだ。


「治癒魔法の使い手で、状態段階3の症状の者を一人で癒せるのは

 貴女しかいないわ。

 癒しの力だけなら、ナナリーさんも引けをとらないしね。

 あとはナナリーさんのサポートをしてくれる人物も一緒に。

 これは、ナナリーさんの希望の子でもいいわ。

 ベリアル王子は、エミリアの護衛として。

 コンラート君とリーテさんは、ナナリーさん達の護衛として

 着いて行ってもらうわ」



「僕からも、お願いするよエミリア。

 砦で頑張っている兵士たちを、癒してあげて。

 それにもしかしたら……」



今まで黙っていたエドワード兄からもお願いされてしまった。

後半、小声で何かを囁いていたけれど、聞き取れなかった。


私は、自分の両手を見つめる。



(本当に、私の手で救えるのだろうか……)



私の頭の上から小さな白い小鳥がパタパタと下りてきて、

両手に収まった。


小鳥は、こちらをじっと見つめてポージングした。



「『大丈夫なのである』」



可愛いVの字でアピールするアリエ様の言葉にクスリと笑いが出てきた。



「わかりました。

 国境の砦に向かいます」



「必ずエミリア様達を守り通すと誓います」



私の決意とリーテ様の掛け声で、部屋にいる全員が頷いてくれた。




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