親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

192話『合流 2』

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パイプテントの席にマリエラが追加された。



私の左右は、ベリアル様とナナリーで埋まっていたので

マリエラは私の向かいの席に腰掛けた。

ナナリーの向かいに座っているコンラート様は

若干緊張して背筋を伸ばしている。



隣国の姫であるマリエラに対して、コンラート様は苦手意識でもあるのかな?

騎士家の子供だからって、姫を大切にしろとか言われて育っているとか?

ありえそう……。



マリエラがここにいる経緯を確認すると、

自分がお世話になっている領が大変な時期に

のほほんと学園に通うなんて出来ないということだった。



もともとは違う理由でコルニクス家に戻り、砦に視察しに行ったら

砦の異変にいち早く気づいて、義父に連絡したんだとか。

ハイライト王国の実父にも連絡を入れて、対処を急がせているようだった。



この事件が解決したら、いろいろと国家間で話し合いを設けるらしい。

それまではマリエラはお世話になっているコルニクス家に協力しつつ

領に留まり、ハイライト国王との連絡をとり続けているのだとか。

「それだと、マリエラはコルニクス家にいなくてもいいの?

 手紙でやり取りをしているのなら、行き違いになったりするんじゃない?」



とナナリーが疑問を投げかけた。

それは私も思ったけれど、

他国に自国の連絡手段をそう簡単に話すわけ無いのよナナリー。



ちょっと考えれば、[どこに居ても連絡のやり取りを行える手段]なら、

調教した鳥にでも手紙を持たせればいい。

鳥には国境とか関係ないしね。

あとは、魔法的な何か。 魔道具の線もあるけれど。



マリエラはワザとらしいため息をついて、ナナリーの問いかけに返す。



「それを話すわけ無いでしょ。

 貴女の、その無自覚で聞いてくるところが本っ当に厄介よね」



マリエラの返しに不服なのか、ナナリーは唇を尖らせている。

「ナナリー、マリエラはハイライト王国の姫です。

 自国の不利になることは話せないと言っているんですよ」



とりあえず、フォローしといた。

私のフォローに、ナナリーは「なるほど!」と頷いている。

本当に無自覚で聞いたのね……。



そのあと今度は私達がここにいる理由や目的をマリエラに話した。

もちろん、コルトの街で起こったことも含めて教えたよ。



「エミリア達の目的は分かったわ。

 今日はこのまま、ここの陣で休んで行くといいわ。

 みんなのテントはナナリーに案内してもらって。

 明日、私も一緒に砦に向かうから。

 お父様達にこの事も含めて、話してくるわね」


そう言ってマリエラは席を立った。

マリエラの言葉に従って、私達はテントに向かった。



テント前で見張りをする兵士に挨拶をして入る。

テントの中では、折りたたみ式の台に薄いマットが敷かれた寝台が6つに、

火鉢が2つ焚かれていた。

火鉢のおかげか、テントの中は思ったより暖かい。



寝台には、寝息を立てるマリク君の隣に、横になって丸まる形で

リーテ様が静かに眠っていた。



荷物を置いて、2人の無事を確認する。

触ったら起きそうだったので、顔を覗いて顔色を確認。

マリク君はよさそう。



マリク君の顔を覗き込むナナリー。

顔が緩んでる……!? 



ま、まぁ、イケメンの寝顔なんてレアだもんね。

なんといっても、マリク君は生粋のエルフだし。

このメンバーの中では一番の美人だ。


リーテ様はそうとう疲れているのか、ちょっとだけ顔色が悪い気がした。

心配そうにコンラート様も顔を覗き込んでいる。



私はリーテ様を起さないように、右手だけに万能治癒を発動させる。

私の万能治癒は魔力も疲労も回復できるので便利なのだ。



コンラート様は、私が変な事をしないのか鋭い視線で見張っている。

そう、警戒しなくてもいいのに……。



横になって丸まっているリーテ様の背中に触れるか触れないかの常態で

万能治癒を送り込む。



―パチッ……



ん?



帯電していたのか、静電気が起こってしまった。

リーテ様もコンラート様も気づいていない様なので、

そのまま万能治癒をかけ続ける。



しばらくすると、リーテ様の頬が健康的な桃色に染まってきた。

私のやり取りを監視するように見ていたコンラート様は、

リーテ様の顔色が良くなったのを確認するとホッとした表情で

隣の寝台に腰掛けてリーテさんを見つめていた。



ちなみにベリアル様はテント内を興味深そうにウロウロしていたよ。

2人が起きるまで暇だったので、私は起きている3人に声をかけて

料理を作っている兵士さんのところに行くことにした。



もちろん、ベリアル様も一緒にね。


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