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砦終了~新入生編
216話『ポアソン サイド 3』
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※ポア回続きます。
謎の男たちを埋め終わったポアソンはアスタロットの次の行動を静かにまつ。
先ほどの会話で、相手の目的を知っている風に答えたアスタロット。
真意を確かめたポアソンに返ってきた答えは、
「そんなことより鳥肉を入れる袋を下さい」だった。
今食べるでもなく、持ち帰るようだ。
アスタロットが鳥の入った皮袋を背負い、ポアソンに向き直って言った。
「さて、ご飯が取れたので戻りますよ」
ご飯が取れたので?
ポアソンにはアスタロットの行動が読めない。
「アスタロット様、どうか、これだけは答えてください。
貴方の目的はさっきの男達じゃないんですか?」
「違いますよ。
さっきの者達はたまたま出合っただけです。
まさかこんなところで人に出くわすなんて思ってませんでしたね」
たまたま出合った相手に向かっていきなり短剣を投げさせたの?
そんな疑問がポアソンを襲ったが、
相手はベリアル陛下とエミリア様を狙っていた相手だ。
きっと、アスタロット様はその事を知っていたのだ。
ポアソンはそう思うことにした。
「しかし、アスタロット様は
男達の目的を知っていると言ってたような……?」
「そんなもの知りませんよ。
彼らが何者であったとしても、私には検討もつきません。
私はこの鳥を狩りに来たのですから。
ああ、ちなみにこの鳥はこの辺りにしか生息していないのですよ。
とてもおいしいので、貴方達にも分けてさしあげましょう」
「・・・・・・」
ポアソンは言葉を失った。
本当なのか、冗談なのか、アスタロットの言葉は分からない。
そもそも、アスタロットが魔族領を出たところを見た記憶はないのに
なぜにおいしい鳥の生息地を知っているの? である。
これいじょう聞いてもはぐらかされるだけ無駄だと悟ったポアソンは、
アスタロットに従うだけだった。
アスタロットとポアソンは来た道を行きと同じ速度で戻った。
戻ってはいるけれど、少しずつ北西に向かっている?
とポアソンは何となく気づく。
しばらくすると、川のせせらぎ、そして滝の音が聞こえてきた。
森を抜けて開けた河原に到着したようだ。
「ポアソン。あそこを見てください」
立ち止まったアスタロットがポアソンに指し示す。
ポアソンの心境は今度は魚か? である。
すこしゲンナリしながらも、ポアソンは差された場所に目を向けた。
そこには、見覚えのある少女が傷だらけで倒れていた。
見覚えのある赤い髪がゆらゆらと穏やかな川の流れでたゆたっている。
近づいて確認しても、やっぱり見覚えのある少女だ。
名前は確か……
「彼女は、リー……―」 「ポアソン、待ちなさい」
アスタロットが手で止める。
その手は口元で人差し指を立てている。
何がダメだったのか? ポアソンには理解できないが、
ここは従っておくほうがいい。
それくらいは今までの経験上分かっていることだ。
何か意味があって止められたのだと。
そう思うことにして、ポアソンは少女の生死の確認を取った。
口元に手を当てて、呼吸を確認する。
「生きてる。小さいけれど、呼吸もある」
ポアソンの言葉に、頷いくアスタロット。
ゆっくりと近づいてきた。
外傷は、左腕と左の顔半分の火傷がとにかく酷い。
炎症を起した部分からはブツブツとした発疹が見える。
コルトの街で流行っていたあの病と同じ症状だった。
川の水に晒されていたおかげだろうか?
発疹が冷やされていたおかげで破裂は今のところ押えられている。
これは、ここで始末しておいたほうがいいのでは?
とポアソンは思った。
この少女はさっきの男達と確実に関係がある。
この場所は男達が居た場所からそんなに離れていないのも理由だ。
それに、この少女とは幾度と無く衝突しているのもある。
また襲い掛かってこられても厄介だ。
そう思い、そっと短剣を取り出す。
「さぁ、ポアソン。彼女をこちらへ。
早く治療しなければ、間に合わなくなります」
「アスタロット様、この子を助けるんですか?」
「そう言っています」
「この少女は危険だって!
ベリアル陛下が大切にしている人の命を
狙っている可能性があるんですよ!?」
「それは、人違いですよ」
人違い?
ポアソンにはそうは思えなかった。
「何を根拠に人違いなんですか?」
ポアソンは納得のいく答えを求めた。
返答次第では、直ぐにでも少女の首を掻っ切る体制だ。
「貴方の聖霊通信で陛下を見失った場所はここから遠くはないでしょう?」
アスタロットのまるで見てきたかのようなその言葉に
ポアソンは酷く動揺した。
そう、一度だけ、1時間ほどだけ、1週間ほど前にベリアル陛下とエミリア様に
つけていた聖霊に通信妨害が起こった。
状況を確認するために急いで駆けつけたが、
複数の兵士に囲まれ無事な姿を確認できたので、何かしらの干渉を、
例えばだが、星霊の干渉、ベリアル陛下が魔法を行使したなどの干渉を
受けたのだとその時は思っていたのだ。
その時に、彼女達の全員の動向を見逃したのだ。
似た姿の少女が2人――……
その片方現在目の前にいて、陛下たちの傍にもいた。
もし、彼女達が入れ替わっていたのだとしたら――?
「ポアソン、大丈夫です。
この子は貴方や陛下、陛下の大切にされている女性に
危害を加えるような子ではありませんよ。
私が保証しましょう」
アスタロットがこの少女は無害だと言う。
では、現在、ベリアル陛下やエミリア様の近くにいるのはいったい――?
ポアソンは今までに感じた事にない焦りが襲った。
もしも、陛下達に危害を加えようとしていた女性が、今ここにいる人物と
入れ替わっているのだとしたら……?
(行かないと! 陛下とエミリア様が危ない!!)
ポアソンは、焦燥に駆られて、その場から駆け出そうとしたのだった――
謎の男たちを埋め終わったポアソンはアスタロットの次の行動を静かにまつ。
先ほどの会話で、相手の目的を知っている風に答えたアスタロット。
真意を確かめたポアソンに返ってきた答えは、
「そんなことより鳥肉を入れる袋を下さい」だった。
今食べるでもなく、持ち帰るようだ。
アスタロットが鳥の入った皮袋を背負い、ポアソンに向き直って言った。
「さて、ご飯が取れたので戻りますよ」
ご飯が取れたので?
ポアソンにはアスタロットの行動が読めない。
「アスタロット様、どうか、これだけは答えてください。
貴方の目的はさっきの男達じゃないんですか?」
「違いますよ。
さっきの者達はたまたま出合っただけです。
まさかこんなところで人に出くわすなんて思ってませんでしたね」
たまたま出合った相手に向かっていきなり短剣を投げさせたの?
そんな疑問がポアソンを襲ったが、
相手はベリアル陛下とエミリア様を狙っていた相手だ。
きっと、アスタロット様はその事を知っていたのだ。
ポアソンはそう思うことにした。
「しかし、アスタロット様は
男達の目的を知っていると言ってたような……?」
「そんなもの知りませんよ。
彼らが何者であったとしても、私には検討もつきません。
私はこの鳥を狩りに来たのですから。
ああ、ちなみにこの鳥はこの辺りにしか生息していないのですよ。
とてもおいしいので、貴方達にも分けてさしあげましょう」
「・・・・・・」
ポアソンは言葉を失った。
本当なのか、冗談なのか、アスタロットの言葉は分からない。
そもそも、アスタロットが魔族領を出たところを見た記憶はないのに
なぜにおいしい鳥の生息地を知っているの? である。
これいじょう聞いてもはぐらかされるだけ無駄だと悟ったポアソンは、
アスタロットに従うだけだった。
アスタロットとポアソンは来た道を行きと同じ速度で戻った。
戻ってはいるけれど、少しずつ北西に向かっている?
とポアソンは何となく気づく。
しばらくすると、川のせせらぎ、そして滝の音が聞こえてきた。
森を抜けて開けた河原に到着したようだ。
「ポアソン。あそこを見てください」
立ち止まったアスタロットがポアソンに指し示す。
ポアソンの心境は今度は魚か? である。
すこしゲンナリしながらも、ポアソンは差された場所に目を向けた。
そこには、見覚えのある少女が傷だらけで倒れていた。
見覚えのある赤い髪がゆらゆらと穏やかな川の流れでたゆたっている。
近づいて確認しても、やっぱり見覚えのある少女だ。
名前は確か……
「彼女は、リー……―」 「ポアソン、待ちなさい」
アスタロットが手で止める。
その手は口元で人差し指を立てている。
何がダメだったのか? ポアソンには理解できないが、
ここは従っておくほうがいい。
それくらいは今までの経験上分かっていることだ。
何か意味があって止められたのだと。
そう思うことにして、ポアソンは少女の生死の確認を取った。
口元に手を当てて、呼吸を確認する。
「生きてる。小さいけれど、呼吸もある」
ポアソンの言葉に、頷いくアスタロット。
ゆっくりと近づいてきた。
外傷は、左腕と左の顔半分の火傷がとにかく酷い。
炎症を起した部分からはブツブツとした発疹が見える。
コルトの街で流行っていたあの病と同じ症状だった。
川の水に晒されていたおかげだろうか?
発疹が冷やされていたおかげで破裂は今のところ押えられている。
これは、ここで始末しておいたほうがいいのでは?
とポアソンは思った。
この少女はさっきの男達と確実に関係がある。
この場所は男達が居た場所からそんなに離れていないのも理由だ。
それに、この少女とは幾度と無く衝突しているのもある。
また襲い掛かってこられても厄介だ。
そう思い、そっと短剣を取り出す。
「さぁ、ポアソン。彼女をこちらへ。
早く治療しなければ、間に合わなくなります」
「アスタロット様、この子を助けるんですか?」
「そう言っています」
「この少女は危険だって!
ベリアル陛下が大切にしている人の命を
狙っている可能性があるんですよ!?」
「それは、人違いですよ」
人違い?
ポアソンにはそうは思えなかった。
「何を根拠に人違いなんですか?」
ポアソンは納得のいく答えを求めた。
返答次第では、直ぐにでも少女の首を掻っ切る体制だ。
「貴方の聖霊通信で陛下を見失った場所はここから遠くはないでしょう?」
アスタロットのまるで見てきたかのようなその言葉に
ポアソンは酷く動揺した。
そう、一度だけ、1時間ほどだけ、1週間ほど前にベリアル陛下とエミリア様に
つけていた聖霊に通信妨害が起こった。
状況を確認するために急いで駆けつけたが、
複数の兵士に囲まれ無事な姿を確認できたので、何かしらの干渉を、
例えばだが、星霊の干渉、ベリアル陛下が魔法を行使したなどの干渉を
受けたのだとその時は思っていたのだ。
その時に、彼女達の全員の動向を見逃したのだ。
似た姿の少女が2人――……
その片方現在目の前にいて、陛下たちの傍にもいた。
もし、彼女達が入れ替わっていたのだとしたら――?
「ポアソン、大丈夫です。
この子は貴方や陛下、陛下の大切にされている女性に
危害を加えるような子ではありませんよ。
私が保証しましょう」
アスタロットがこの少女は無害だと言う。
では、現在、ベリアル陛下やエミリア様の近くにいるのはいったい――?
ポアソンは今までに感じた事にない焦りが襲った。
もしも、陛下達に危害を加えようとしていた女性が、今ここにいる人物と
入れ替わっているのだとしたら……?
(行かないと! 陛下とエミリア様が危ない!!)
ポアソンは、焦燥に駆られて、その場から駆け出そうとしたのだった――
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