181 / 195
1章【暗黒討伐編】
第180話・“神”魔大戦【降臨】
しおりを挟む
そんなこんなで、やって来ました最前線。⋯⋯が、10km程先に見える地点。
本隊の進軍ルートから少し逸れたその場所は、地平線までをくまなく見渡せる断崖絶壁の端っこである。
そこから見える光景は、鮮やかな閃光の点滅が大地を無数に覆っている、といったものだった。
いやもうホント、壮絶だとか異常だとか、そういうレベルの話じゃない。
空間そのものがバグっているというか、バグり散らかしているというか⋯⋯
兎に角、表現するにも言葉が足りなすぎる光景が広がっている。
魔力感知を展開しても、無数の魔力攻撃の余波が嵐となって襲ってくる始末だ。
情報を収集する能力が、情報を収集し過ぎておかしくなりそうだぜ。
「ふぅぅ⋯⋯」
頬を軽く膨らませ、ゆっくり大きく息を吐く。
頼もしい味方が集まっている場所に向かうというのに、緊張は高まるばかりだ。
仲間の攻撃の巻き添えでオダブツだなんて、本当に笑い話にならないからなぁ。
「──行くか」
意を決して、崖から飛び降りる。
200m程を自由落下した俺は、着地すると同時に炎装形態へ移行。周囲に舞い上がった砂煙を吹き飛ばして、勢いよく駆け出した。
兎にも角にも、俺が指をくわえてただ待っている訳にはいかない。
まぁそりゃあ、こっちも出来れば前線には出たくないが⋯⋯
テュラングルやヴィルジールがあの場所で戦っているのに、俺だけ日和っているなんてのも出来ないからな。
──ドンッッ!!
空気の壁を破り、更に加速する。
鮮やかに点滅する大地を先に見据え、俺は蒼炎を滾らせるのだった。
NOW LOADING⋯
「──ぬうあああッ!!」
凄まじい気迫で、ヴィルジールは黒異種に斬り掛かる。
紅志が目指す前線。その場所で、男は昂る気合いを己の武器に乗せて戦っていた。
「⋯⋯ふうむ。あの男、確かヴィルジールと言ったか」
黒角馬を斬り倒した男を横目に、テュラングルは呟く。
ドラゴン族の王ですら一目置く、ヴィルジールの働きぶり。
猪突猛進の活躍の要因は、彼が受けたセイリスによる演奏に他ならない。
「身体能力の向上」。そのバフ効果が、ヴィルジールに不足していた「一欠片」となったのである。
彼の大きな欠点は、優秀な頭の回転速度だ。優秀過ぎるが故に、それについて行けない肉体との、いわば「ラグ」が発生していた。
その結果、肉体の動きが遅過ぎる──のではなく、寧ろ逆の、「頭の回転に合わせようとするあまり、行動が早過ぎる」という事態に陥っていたのだ。⋯⋯が、
「──まとめて掛かってこいコラッ!」
それを見抜いていたティガとの鍛錬と、セイリスから受けたバフ効果によって、ヴィルジールは己の“100%”を引き出せる様になっていた。
──主な弊害として、短くも濃かったティガとの鍛錬のせいで、彼と性格が似てしまった点もあるが。
「オオアアアーーッッ!!」
「ハッ⋯⋯!!」
向かって来た黒異種を見て、ヴィルジールの口角が上がる。
見上げる程に巨大な黒異人だったが、彼の内心は穏やさを保ったままだ。
極めて調子の良い自身と、そんな自分に狙いを定める愚かな敵──。
“負ける気がしない”。そんな台詞を思い浮かべると共に、ヴィルジールの顔から邪悪な嗤いが零れた。
「うおおオオッ!!」
巨大黒異人の左足の甲に乗り、一息に駆け登る。
それと同時に、巨体へと両剣を深く突き刺し、膝へ、腰へ、腹へ。背中を走り抜け、肩まで到達し、そして頭頂部までを斬り裂いた。
轟音を立て大地に倒れる巨大黒異人。その頭に乗ったまま、ヴィルジールは息をゆっくり整える。
その後、両剣を握る自身の右手を眺めながら、彼は無意識に言葉を口にした。
「⋯⋯堪らねぇな」
両剣を握り締め、付着した血液を振り落とす。
「思考」と「肉体」の動きがリンクしただけで発揮された、驚異的なまでの戦闘能力。
自分自身のソレに驚愕しつつ、同時に、己が秘める可能性にヴィルジールは歓喜した。
『──神のご意思に背く小さき者共よ! 聞くがいい!!』
天空に響き渡る、“天神”セラフの声。
各々が空を見上げる中、ヴィルジールもまた声がした方へと頭を向ける。
雲の隙間から差す金色の光。大地に降り注ぐその極光の中に、四つの人影が揺らいだ
『我らは、神威の代行者! 世に蔓延る不遜な輩よ、貴様らは来るべき新時代には不要な存在である!
今日! ここで! 我らが力の前に滅せられるがよい!!』
“闘神”アルマが、紅白の袴を靡かせながら言い放つ。
──と、その直後。地上から突き上がる形で、桜色の電撃が四つの人影を覆った。
神将達の話に痺れを切らし、雷龍エレクが攻撃を加えたのである。
「ハハーッ! ざまぁねーなぁ!!」
「よさぬか、エレク。こういった場合は、敵であれ話を最後まで聞いてやるものだ」
「なぁにいってんだよ、びびってんのかぁ~??」
「貴様が恥をかくのだぞ⋯⋯」
威勢の良いエレクに、テュラングルが溜息をつく。
眩い桜色の閃光が静まると、そこには顔色一つ変わらない神将達の姿があった。
「えっ!」と目が点になるエレクは、すぐさま周囲のドラゴン達へと視線を移す。
おバカな子を見つめてヒソヒソと話す彼らに、エレクは思わず頬を赤くした。
「──あの神将達には、オーガと同じ能力が備わっている。
この戦いが始まる前に、何度も伝えた筈ですよ? エレク」
呆れた様子で、白銀と水色のドラゴンが降り立つ。
テュラングルと似た体躯だが、こちらの方が全体的に細身で脚が長い特徴がある。
氷の彫像の様な一対の大翼と、四本の脚や尻尾の先端を覆う氷の鎧。そして、王冠にも見える透き通った氷の角──。
真の姿となった氷月龍リゼルが、エレクへと歩み寄った。
「⋯⋯げ、リゼルねぇさん」
「『げ』とはなんですか? 貴方が話を聞いてさえいれば、こうして笑い者にならずに済んだものを⋯⋯
いいですか? よくお聞きなさい。我々ドラゴンは──」
「まぁ、そう言ってやるなリゼ。これも若さ故だ」
説教モードに入りかけたリゼルを、テュラングルが宥める。
しかし。続けて何か言おうとした彼より早く、天空から再び声が響いた。
『──刮目し! そして恐怖しろ! これが、貴様ら悪逆の徒を滅する我らの姿だ!!』
“迅神”ゼト。戦場に声を響かせた彼が、台詞を言い切った瞬間だった。
神将達を包む金色の極光の輝きが一層増し、それぞれの神将へと収束していく。
球状に変化した光は、やがて物質化し、まるで卵の殻の様に神将達を包み込んだ。
そして、六角形の欠片が無数に組み合わさった形状の殻に、大きく亀裂が入り──
「ウギャオアアアアアーーーーーーッッッ!!!」
“狂神”ギオスの咆哮によって、神将達が顕現した。
その背に、四枚二対、暗黒の翼をはためかせて。
「「「我ら、神威の代行者! 創世神オーガ様に仕えし者! 今より、愚かなる生命達に神罰を下す!!」」」
「ギャオアアッッ!!」
セラフは金。アルマは赤。ゼトは紫。ギオスは陽炎。
神将達は、神々しく煌めくオーラをその身に纏い、四枚の翼を広げる。
続けて右手を地上に向け、大地そのものを空高く浮かび上がらせた。その範囲、実に270k㎡。
流石のドラゴン達もこれには驚愕し、急いだ様子で離陸を始める。
しかし、それを嘲笑ったアルマとゼトが、今度は左手で魔力の操作を開始。浮かび上がらせた大地を外側から覆う形で、超巨大な竜巻を発生させた。
「く⋯⋯うおおお!?」
四方八方の全てが荒れ狂う中、ヴィルジールは大きめの岩石にしがみつく。
周囲では、黒異人や黒異種までも神将達による攻撃の巻き添えになっていた。
己の属性の結界を作り出す、驚異的な飛行技術で瓦礫の豪雨を躱すなど、余裕で凌いでいる様子のドラゴン達。
セシルガとセイリスは、瓦礫から瓦礫へ縦横無尽に跳ね回り、こちらもまた表情に動揺は無い。
唯一ヴィルジールだけが、現状で命の危機に瀕していた。
「──クソが、やっとあの野郎が見えたってのに⋯⋯!!」
怨敵ギオスを思い浮かべ、ヴィルジールは必死に立て直す。
取り敢えずはセシルガ達の真似をすべきだと、瓦礫の上に大股で立った。
次の瞬間。彼がいる瓦礫に、別の巨大な瓦礫が迫って来る。
大慌てで付近の瓦礫に飛び移ったヴィルジールだが、上手く掴める場所が見つけられず、今度は滑り落ちそうになる危機に。
先程まで乗っていた瓦礫が背後で粉砕される中、双剣を瓦礫に突き刺したヴィルジールはそれを全力で掴んだ。
──ふと目線を下にやると、地上は遥か彼方の場所になっていた。
「うう、チクショウがぁ⋯⋯!! こんな⋯⋯こんなところで死んでたまるかぁーーッ!!」
浮かんだ言葉を全力で。ヴィルジールは叫ぶ。
それに呼応する形で、救いの手が差し伸べられる──などという事は無い。
ここは戦場。自分に降り掛かる危機は、自分で乗り越えねばならない場所である。
「──味わうがいい! これが、我らが主の怒りだ!!」
どこからともなく、セラフの声が響く。
直後、荒れ狂う瓦礫という光景から一転。全てが、ある方向へと真っ直ぐと直進を始めた。
正しくは、人も、ドラゴンも、黒異種も、ただ“従った”だけであるが。
──総てが等しく、重力に。
「う⋯⋯おおおおお!!?」
後悔。そんな文字が、ヴィルジールに浮かぶ。
そしてそれを振り払う間も無く、大地は高速で迫ってきた。
どうするべきか、誰かに助けを求めるべきか、紅志は無事なのだろうか。
様々な思考は浮かんでくるが、一向に解決策は見出せない。
だがその事実に、慌てるか諦めるかの無意識な反応が現れるより早く、
────ッッドドドォォオオオオオオオオオォォォォーーーーーーンンッッッ!!!!!!
大地が、大地に。叩き付けられる。
砕け散った地面と共に、テュラングルやセシルガ達は大きく分断。
戦場はその姿を変え、東西南北の四つの戦地が新たに生まれたのであった。
本隊の進軍ルートから少し逸れたその場所は、地平線までをくまなく見渡せる断崖絶壁の端っこである。
そこから見える光景は、鮮やかな閃光の点滅が大地を無数に覆っている、といったものだった。
いやもうホント、壮絶だとか異常だとか、そういうレベルの話じゃない。
空間そのものがバグっているというか、バグり散らかしているというか⋯⋯
兎に角、表現するにも言葉が足りなすぎる光景が広がっている。
魔力感知を展開しても、無数の魔力攻撃の余波が嵐となって襲ってくる始末だ。
情報を収集する能力が、情報を収集し過ぎておかしくなりそうだぜ。
「ふぅぅ⋯⋯」
頬を軽く膨らませ、ゆっくり大きく息を吐く。
頼もしい味方が集まっている場所に向かうというのに、緊張は高まるばかりだ。
仲間の攻撃の巻き添えでオダブツだなんて、本当に笑い話にならないからなぁ。
「──行くか」
意を決して、崖から飛び降りる。
200m程を自由落下した俺は、着地すると同時に炎装形態へ移行。周囲に舞い上がった砂煙を吹き飛ばして、勢いよく駆け出した。
兎にも角にも、俺が指をくわえてただ待っている訳にはいかない。
まぁそりゃあ、こっちも出来れば前線には出たくないが⋯⋯
テュラングルやヴィルジールがあの場所で戦っているのに、俺だけ日和っているなんてのも出来ないからな。
──ドンッッ!!
空気の壁を破り、更に加速する。
鮮やかに点滅する大地を先に見据え、俺は蒼炎を滾らせるのだった。
NOW LOADING⋯
「──ぬうあああッ!!」
凄まじい気迫で、ヴィルジールは黒異種に斬り掛かる。
紅志が目指す前線。その場所で、男は昂る気合いを己の武器に乗せて戦っていた。
「⋯⋯ふうむ。あの男、確かヴィルジールと言ったか」
黒角馬を斬り倒した男を横目に、テュラングルは呟く。
ドラゴン族の王ですら一目置く、ヴィルジールの働きぶり。
猪突猛進の活躍の要因は、彼が受けたセイリスによる演奏に他ならない。
「身体能力の向上」。そのバフ効果が、ヴィルジールに不足していた「一欠片」となったのである。
彼の大きな欠点は、優秀な頭の回転速度だ。優秀過ぎるが故に、それについて行けない肉体との、いわば「ラグ」が発生していた。
その結果、肉体の動きが遅過ぎる──のではなく、寧ろ逆の、「頭の回転に合わせようとするあまり、行動が早過ぎる」という事態に陥っていたのだ。⋯⋯が、
「──まとめて掛かってこいコラッ!」
それを見抜いていたティガとの鍛錬と、セイリスから受けたバフ効果によって、ヴィルジールは己の“100%”を引き出せる様になっていた。
──主な弊害として、短くも濃かったティガとの鍛錬のせいで、彼と性格が似てしまった点もあるが。
「オオアアアーーッッ!!」
「ハッ⋯⋯!!」
向かって来た黒異種を見て、ヴィルジールの口角が上がる。
見上げる程に巨大な黒異人だったが、彼の内心は穏やさを保ったままだ。
極めて調子の良い自身と、そんな自分に狙いを定める愚かな敵──。
“負ける気がしない”。そんな台詞を思い浮かべると共に、ヴィルジールの顔から邪悪な嗤いが零れた。
「うおおオオッ!!」
巨大黒異人の左足の甲に乗り、一息に駆け登る。
それと同時に、巨体へと両剣を深く突き刺し、膝へ、腰へ、腹へ。背中を走り抜け、肩まで到達し、そして頭頂部までを斬り裂いた。
轟音を立て大地に倒れる巨大黒異人。その頭に乗ったまま、ヴィルジールは息をゆっくり整える。
その後、両剣を握る自身の右手を眺めながら、彼は無意識に言葉を口にした。
「⋯⋯堪らねぇな」
両剣を握り締め、付着した血液を振り落とす。
「思考」と「肉体」の動きがリンクしただけで発揮された、驚異的なまでの戦闘能力。
自分自身のソレに驚愕しつつ、同時に、己が秘める可能性にヴィルジールは歓喜した。
『──神のご意思に背く小さき者共よ! 聞くがいい!!』
天空に響き渡る、“天神”セラフの声。
各々が空を見上げる中、ヴィルジールもまた声がした方へと頭を向ける。
雲の隙間から差す金色の光。大地に降り注ぐその極光の中に、四つの人影が揺らいだ
『我らは、神威の代行者! 世に蔓延る不遜な輩よ、貴様らは来るべき新時代には不要な存在である!
今日! ここで! 我らが力の前に滅せられるがよい!!』
“闘神”アルマが、紅白の袴を靡かせながら言い放つ。
──と、その直後。地上から突き上がる形で、桜色の電撃が四つの人影を覆った。
神将達の話に痺れを切らし、雷龍エレクが攻撃を加えたのである。
「ハハーッ! ざまぁねーなぁ!!」
「よさぬか、エレク。こういった場合は、敵であれ話を最後まで聞いてやるものだ」
「なぁにいってんだよ、びびってんのかぁ~??」
「貴様が恥をかくのだぞ⋯⋯」
威勢の良いエレクに、テュラングルが溜息をつく。
眩い桜色の閃光が静まると、そこには顔色一つ変わらない神将達の姿があった。
「えっ!」と目が点になるエレクは、すぐさま周囲のドラゴン達へと視線を移す。
おバカな子を見つめてヒソヒソと話す彼らに、エレクは思わず頬を赤くした。
「──あの神将達には、オーガと同じ能力が備わっている。
この戦いが始まる前に、何度も伝えた筈ですよ? エレク」
呆れた様子で、白銀と水色のドラゴンが降り立つ。
テュラングルと似た体躯だが、こちらの方が全体的に細身で脚が長い特徴がある。
氷の彫像の様な一対の大翼と、四本の脚や尻尾の先端を覆う氷の鎧。そして、王冠にも見える透き通った氷の角──。
真の姿となった氷月龍リゼルが、エレクへと歩み寄った。
「⋯⋯げ、リゼルねぇさん」
「『げ』とはなんですか? 貴方が話を聞いてさえいれば、こうして笑い者にならずに済んだものを⋯⋯
いいですか? よくお聞きなさい。我々ドラゴンは──」
「まぁ、そう言ってやるなリゼ。これも若さ故だ」
説教モードに入りかけたリゼルを、テュラングルが宥める。
しかし。続けて何か言おうとした彼より早く、天空から再び声が響いた。
『──刮目し! そして恐怖しろ! これが、貴様ら悪逆の徒を滅する我らの姿だ!!』
“迅神”ゼト。戦場に声を響かせた彼が、台詞を言い切った瞬間だった。
神将達を包む金色の極光の輝きが一層増し、それぞれの神将へと収束していく。
球状に変化した光は、やがて物質化し、まるで卵の殻の様に神将達を包み込んだ。
そして、六角形の欠片が無数に組み合わさった形状の殻に、大きく亀裂が入り──
「ウギャオアアアアアーーーーーーッッッ!!!」
“狂神”ギオスの咆哮によって、神将達が顕現した。
その背に、四枚二対、暗黒の翼をはためかせて。
「「「我ら、神威の代行者! 創世神オーガ様に仕えし者! 今より、愚かなる生命達に神罰を下す!!」」」
「ギャオアアッッ!!」
セラフは金。アルマは赤。ゼトは紫。ギオスは陽炎。
神将達は、神々しく煌めくオーラをその身に纏い、四枚の翼を広げる。
続けて右手を地上に向け、大地そのものを空高く浮かび上がらせた。その範囲、実に270k㎡。
流石のドラゴン達もこれには驚愕し、急いだ様子で離陸を始める。
しかし、それを嘲笑ったアルマとゼトが、今度は左手で魔力の操作を開始。浮かび上がらせた大地を外側から覆う形で、超巨大な竜巻を発生させた。
「く⋯⋯うおおお!?」
四方八方の全てが荒れ狂う中、ヴィルジールは大きめの岩石にしがみつく。
周囲では、黒異人や黒異種までも神将達による攻撃の巻き添えになっていた。
己の属性の結界を作り出す、驚異的な飛行技術で瓦礫の豪雨を躱すなど、余裕で凌いでいる様子のドラゴン達。
セシルガとセイリスは、瓦礫から瓦礫へ縦横無尽に跳ね回り、こちらもまた表情に動揺は無い。
唯一ヴィルジールだけが、現状で命の危機に瀕していた。
「──クソが、やっとあの野郎が見えたってのに⋯⋯!!」
怨敵ギオスを思い浮かべ、ヴィルジールは必死に立て直す。
取り敢えずはセシルガ達の真似をすべきだと、瓦礫の上に大股で立った。
次の瞬間。彼がいる瓦礫に、別の巨大な瓦礫が迫って来る。
大慌てで付近の瓦礫に飛び移ったヴィルジールだが、上手く掴める場所が見つけられず、今度は滑り落ちそうになる危機に。
先程まで乗っていた瓦礫が背後で粉砕される中、双剣を瓦礫に突き刺したヴィルジールはそれを全力で掴んだ。
──ふと目線を下にやると、地上は遥か彼方の場所になっていた。
「うう、チクショウがぁ⋯⋯!! こんな⋯⋯こんなところで死んでたまるかぁーーッ!!」
浮かんだ言葉を全力で。ヴィルジールは叫ぶ。
それに呼応する形で、救いの手が差し伸べられる──などという事は無い。
ここは戦場。自分に降り掛かる危機は、自分で乗り越えねばならない場所である。
「──味わうがいい! これが、我らが主の怒りだ!!」
どこからともなく、セラフの声が響く。
直後、荒れ狂う瓦礫という光景から一転。全てが、ある方向へと真っ直ぐと直進を始めた。
正しくは、人も、ドラゴンも、黒異種も、ただ“従った”だけであるが。
──総てが等しく、重力に。
「う⋯⋯おおおおお!!?」
後悔。そんな文字が、ヴィルジールに浮かぶ。
そしてそれを振り払う間も無く、大地は高速で迫ってきた。
どうするべきか、誰かに助けを求めるべきか、紅志は無事なのだろうか。
様々な思考は浮かんでくるが、一向に解決策は見出せない。
だがその事実に、慌てるか諦めるかの無意識な反応が現れるより早く、
────ッッドドドォォオオオオオオオオオォォォォーーーーーーンンッッッ!!!!!!
大地が、大地に。叩き付けられる。
砕け散った地面と共に、テュラングルやセシルガ達は大きく分断。
戦場はその姿を変え、東西南北の四つの戦地が新たに生まれたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる