猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【暗黒討伐編】

第187話・火炎

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 ──あれは、魔王城で鍛錬していたある日の事だった。
 俺はふと、テュラングルがどんな能力や技を持っているかを本人に尋ねてみた事がある。
 そして、いくつかの技を実際に披露してもらったのだが⋯⋯
 “火龍の王”と自ら名乗るだけあって、やはり炎系の攻撃技の迫力は凄まじいものだった。
 その中でも目を奪われたのが、ドラゴンという存在における代名詞。火炎ブレスである。

「〘紅炎プロミネンス〙? それって、太陽のアレか?」
「らしいな。マァ、あくまでそう喩えられているだけだが」
「へえ⋯⋯。俺って火を吹くのが苦手なんだけどさぁ? テュラングルの技を見ると、やっぱロマンを感じるよ」
「ウーム、そうか? これでも、全盛期には遠く及ばぬ威力なのだがな⋯⋯」
 
 焦土と化した大地を眺めながら、テュラングルは言う。
 小さい街くらいなら、一瞬で火の海に出来るであろう威力と範囲だというのに。なにが『全盛期には~』だ。
 アンタが目標の一人である俺に、嫌味でも言っているのか?

「──紅志よ。炎を吹くのが苦手、と言ったな? 課題点を具体的に挙げてみろ」
「課題点を? いやぁ、急だな⋯⋯」

 何が苦手って、そりゃあ魔力の操作がなぁ。 
 足の中指だけ曲げてみる様な感じで、難しいというか⋯⋯。
 例えるなら、“魔力の神経”的なのが喉や口には少ない感覚があるんだよな。
 角から撃つビームに関しては、うなじとか後頭部とかを魔力が流れてく感じだし⋯⋯

「やっぱり、“魔力を口で操作する”っていう点が難しいな」
「成程。──さては貴様、魔力操作・炎の生成・発射を、全て口で行おうとしているな?」
「えっ? もしかして、間違ってるのか⋯⋯?」
「可能なら肺の辺り⋯⋯。難しいのなら、腹か鳩尾みぞおちの辺りで炎を生み出せ。炎装を体内で発動する感覚だ。
 喉は、体内で生成した炎を加速する為に使え。そして口は、それを発射する為の文字通り発射口という認識でいい」

 な、なるほど、勘違いしていたな⋯⋯!!
 “口から”火を吹くという点に固執し過ぎて、今までちっとも考えが至らなかったぜ。
 よし。そうと分かれば、肺や腹で炎を生成すれば──って、ちょっと待てよ??
 炎装は、発動時に肉体の外側が魔力で強化され、それの更に外側が炎上しているから、身体が焼けない訳だが⋯⋯

「⋯⋯なぁ、テュラングル? 体内で炎を作ったら、臓器とか焼肉になっちゃうんじゃないか?」
「ウン? ⋯⋯あぁ、そうか。そうだろうな」
「『俺の場合は』⋯⋯?」

 訊いてみると、どうやら“種族による違い”があるとの事。
 火龍とは生まれつき強靭な肉体を有していて、自分が生み出す炎に自分自身が焼かれる心配は無いらしい。
 だが、それでも成熟した個体になるまでは、炎を吹くたびに灼熱による激痛に身体の内側から襲われるのだとか⋯⋯。
 まぁそれはいいとして、つまりは「火龍ではないお前の身体は、火を吹く事への耐性が無い」のだと言う。
 
「──じゃあ、って事は、そうか⋯⋯。俺は、火を吹くのには向いてないって事だよな⋯⋯」

 ガックリと、大きく肩を落とす。
 テュラングルみたいな火炎ブレスは、俺には出来ない様だ。
 ⋯⋯ちぇ、カッコイイと思ったんだけどなぁ。凄く残念だ。
 
「何を落ち込んでいるのだ、紅志。貴様は言ったな? 炎を吹くのがであると」
「⋯⋯ん?」
「苦手というだけならば、多少は吹く事が可能なのだろう?
 ならば、少なからず炎への肉体耐性は身に付いている筈だ。
 それどころか、口内のみで炎を生成する技量もあり、今までの鍛錬によって造られた強靭な肉体もあるではないか。
 何を肩を落とす事がある? たかが灼熱による痛みなどは、これまで通り気合いで堪えればいいだけの話。
 ううん? ならば、後は練習あるのみではないのか?」
「テュラングル⋯⋯!! そうだ、そうだよなぁ!!」

 そうだとも!! やれば出来る男だぜ俺はよう!!
 しゃあッ⋯⋯なんかやる気めっちゃ出てきたーー!!



 ──なんて、意気込んだはいいものの。
 俺の火炎ブレス、まだまだ未熟なんだよなぁ。
 龍の姿をしたリゼさんが、黒い触手に襲われてるのが見えて急いで駆け付けたまではいいけど⋯⋯

『よく来てくれたぞ、紅志!! リゼが防壁を再構築するまでの数秒を稼ぐのだ!!』

 なんか、頭の中にテュラングルの声が入ってくるんだけど。
 というか、そんな事より。俺も炎は吐ける様になったけど、初実戦で火龍の王の炎を受け止めるって無理じゃね??
 テュラングルがブレスを撃ってたから、思わず俺もブレスを用意しちゃったけどさ。
 マジで俺が数秒を?? リゼさんが氷の防壁を作り直すまでの数秒を?? 俺が?!?

「「──ガルオオォオオオアアァァァァァァアアアアーーーーーーッッッッッ!!!!!!」」

 困惑しつつ、目一杯に炎を吐き出す。
 太陽の名を冠したテュラングルの技に対して、俺のは単なる火炎放射だ。
 尋常じゃない出力差が、ブレスの向こう側からでも伝わってくるぜ⋯⋯ッ。
 これはヤバい。早くなんとかならないと、黒焦げになる!!

「オ"オ"オ"オ"オ"ーーーーッッ!!!!」

 火炎の挟み撃ちを食らっている巨人が、雄叫びを上げる。
 多分、アルマとかいうあの赤毛のハゲだろうが⋯⋯。アンタそんなに大きかった? 成長期かしら。

『──紅志よ、あと一押しだ! 踏ん張るのだぞ!』

 えっ、ちょっ──
 ぐわああああ!! あづい"い"い"い"い"!!
 上げ過ぎ 上げ過ぎ!! テュラングル!! ブレスの勢い上げ過ぎだって!!
 まともに目も開けられないぞ!! 開けたら絶対に眼球ごと蒸発するだろうから!!

『紅志さん! あと少しです! 堪えて!』

 リゼさん分かったからああ!! 今ちょっと話し掛けないで下さいいい!!!
 熱がマジやばいって!! テュラングルの炎もそうだけど、それとかち合う為に出力全開にしてる俺の炎がァ!!
 身体が内側から燃え上がる様な──ってか、実際に燃えてる痛みがァァ!!

「──ガルォオオオオオァァアーーーーッッ!!!」

 次の瞬間、テュラングルが吼えた。
 刹那、アルマの頭部と共に俺の炎は一瞬にして掻き消され、凄まじい熱気に全身が包まれる。
 それも、炎装状態で強度が上がっている俺の皮膚が黒焦げになり、一息に剥がれていく程の熱気が。
 しかし、それと同時に。
 凍える様な冷気が、正面から発せられている事にも気が付いた。

「よく耐え切りました。我々の勝利です」

 静かに目を開くと、そこにはリゼさんの後ろ姿があった。
 そしてその先には、頭部が消し飛んだアルマと、此方に向かって羽ばたくテュラングルが。

「──よくやってくれた。正直、我は攻撃を中断する気でいたのだが⋯⋯」
「いいって、役に立てたんなら何よりだから」
「お二人共、申し訳ありません。この私が不覚を取ったばかりにご迷惑を⋯⋯」

 謝るリゼさんの背を、テュラングルが翼でさする。
 彼女だって最善を尽くそうとしていたんだ。謝る必要は全く無いだろう。⋯⋯問題は、

「あの黒いドラゴン、一体誰なんだ? リゼさんに嫌がらせしている様にしか見えなったが⋯⋯」
「ウム、その認識で正しい。彼奴の名はヴァルソルといって、我とリゼに因縁があるのだ」
「因縁。それって?」
「⋯⋯マァ、その件はいずれ、な。──お前は、やるべき事をやってこい」

 ううむ、はぐらかされてしまった。
 かなりワケありの様子だが、こんな時に嫌がらせされる程の因縁ってなんだろうか。
 もしかすると、恋に敗れた腹いせに⋯⋯とかだったりして。

「ハッ。まさか、な⋯⋯」

 さーて、切り替え切り替えっと。次は何処に向かおうかね。
 本隊より少し遅れて前進していたお陰で、戦場全体が浮かび上がって地面に落下したを回避出来たたものの⋯⋯
 戦場がぐっちゃぐちゃになったせいで、誰が何処にいるかが分からなくなったぜ。
 戦闘が激しかったからテュラングルは見つけられたが⋯⋯
 
「──テュラングル。ヴィルジールを見かけなかったか?」
「ウン? 否、見ていないが⋯⋯。リゼ、お前はどうだ?」
「恐らく、北側の戦場かと。紅志さんのご友人との事でしたので、ポン、コウ、ツーを護衛に向かわせましたが⋯⋯」
「なに? あのバカ三匹組を? 確かに実力はある連中だが、護衛がまともに務まるとは思えんな⋯⋯」

 ぽ、ポンコツ? ひでぇ名前の奴らだな。
 ドラゴンの王であるテュラングルが、シンプルに『バカ』と表現する程の連中がいるのかよ。
 ⋯⋯まぁリゼさんの判断だし、テュラングルも実力はあるって言ってるし、ある程度の信頼は出来るのだろうが⋯⋯

 取り敢えず、北側の戦場に向かうとするかね。
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