猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【暗黒討伐編】

第191話・最後の壁

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『折を見て、紅志のトコにオーガを引き摺り出すよ♪』

 この戦いが始まる前、幼女に言われた言葉だが⋯⋯。
 今の所、地上にオーガが現れそうな雰囲気は感じられない。
 宇宙空間の様子は俺じゃ確認出来ないし、幼女からの連絡も無いしで、緊張感だけが高まってくる。
 持ち場とかは決められていないので、取り敢えず戦場全体を反時計回りに駆けているが⋯⋯
 周囲の戦闘音は落ち着きつつあるので、少なくとも地球での戦いは終結に向かっているのだろう。

「「──オオオオオォォーーーーッッ!!!」」
「おっ、」

 素早く飛び退く。直後、俺が居た地面が巨大な黒い足によって砕き割られれた。
 巨大黒異人コクト2体による襲撃だ。
 全長は約10m程度だろうか? 先程の巨大アルマと比べて、随分とかわいいサイズに見える。
 炎装を使うまでもないな。温存するという意味でも、こんな相手にエネルギーを消費するのはよしておこう。
 
「フ──ッ!」

 右脚に力を込め、一息に加速する。
 巨大黒異人コクト達は、足元を忙しく見渡しながら困惑する仕草を始めた。
 その様子を横目に、俺は左肘で頬を突っつく。黒く巨大な、黒異人コクトの頬を。

「オオオオオアッ!?」

 “いつからそこに!?”とでも言うかの様に、巨大黒異人コクト──黒巨人と呼ぶか──は驚愕する。
 と、その時。もう片方の黒巨人が、俺を潰そうと拳を突き出してきた。
 黒巨人(A)の肩から飛び降りて拳を躱すと、黒巨人(B)の顔面に勢い良く直撃。
 衝撃によって黒巨人(A)がよろめき、地響きを鳴らして地面に倒れ込んだ。
 
「へァハハw」

 おマヌケな光景に、ヘンな笑いを零しつつ着地する。
 黒巨人(A)が動けない隙に、俺は黒巨人(B)に狙いを絞った。
 コチラを踏み潰そうと、右足を高く浮き上がらせる黒巨人。
 俺は即座に飛拳を放ち、反対の左足へと命中させてバランスを崩した。
 前のめりに倒れてくる黒巨人に対し、俺は自身の尻尾を振り上げる。
 そして黒巨人の顔面が、真正面まで落下してきたその瞬間。
 尻尾を強く振り下ろし、それの勢いを利用して、姿勢を大きく後ろへ逸らした。

──ズドドドッ!!

 顎、人中、眉間を、連続前蹴りにて打ち抜く。
 申し分の無い手応えと共に、黒巨人の顔が高速で遠ざかる。
 前のめりに倒れつつあった黒巨人だが、蹴りの衝撃によって弧を描いて後ろ向きに倒れ込んだ。

「オオオオオオオーーッッ!!!」

 ここで黒巨人(A)が起き上がり、背後から迫って来る。
 振り向きながら確認すると、ローキックを放つ動作に入っていた。
 う~む、見事なフォームだな⋯⋯って、俺はサッカーボールじゃねぇっての!

「ふッ!!」

 右で上段回し蹴りハイキックを打ち出し──そして空を切る。
 ミスしたワケではない。
 真の目的は、回し蹴りの要領で身体を捻り、それをバネにして放つ⋯⋯

「ふんッッ!!」
 
 尻尾での打撃である。
 敢えて言うなら⋯⋯上段回し尻尾打ちハイテイルウィップといった所だろうか?
 まぁ細かい事はいい。
 黒巨人のローキックと衝突した尻尾での打撃は、いとも簡単に──まるで野球ボールに様に、巨大な足を打ち返した。
 グワン! と、キックが弾かれた衝撃で全身を半回転させる黒巨人。このまま転倒した所に追撃でトドメを⋯⋯
 っと、黒巨人(B)が立ち上がろうとしているな? まとめてやってしまおう。

「「オオオオオオオオオアーーーーッッ!!!」」

 地団駄を踏む様に足を動かし、黒巨人達は俺を狙う。
 踏み付けの雨を、くるりひらりと優雅に(?)躱して後退しながら、二体の黒巨人を誘導。
 二体が縦並びになったタイミングで、俺は軽く跳ね上がった。
 そして体内の魔力を操作し、頭に聳(そび)えた矩手に曲がる二本角に充填を開始する。
 紅色の魔力が激しくほとばしる双角。その中央の空間へと角から魔力をチャージし、極小の火球を生成。
 それと同時に息を大きく吸い込み、俺は“準備”をした。
 んん、一体なんの“準備”かって? そりゃあ当然、決まっているだろう。
 全男子のロマン。それを放つ為に必要な──“技名叫び”の準備だせ!!

「「オオオオオオオオアアーーーーッッ!!」」
「スゥゥ⋯⋯ッ!!」

 魔力、チャージ完了。
 視界良好、目標捕捉、焼肉定食、発射確認、オールクリア!
 くらえっ! 必殺っ! 

「〘火威矛ビーム〙ッッ!!」

──ギュオオオオオオンッッッ!!!!

 美しい音色を奏で、紅色の魔力砲が発射される。
 白を芯に、外側にかけて紅色に煌めくその魔力砲は、何を隠そうビームである。
 一直線に解放された高密度魔力は、直径3m程の極太ビームとなって黒巨人達へ突き進む。
 そして正面の黒巨人の頭部に放った眩いソレが、徐々に薄れていった、その時──。
 正面の一体と、後方にいたもう一体。頭部が首の付け根から消失した黒巨人達が姿を表した。

「フォウっ! 月の代わりに打首獄門っ!!」

 イカしたセリフを放ち、イケてるポーズをキメてみる。
 俺の背後で黒巨人がズシンと倒れ、砂煙を舞い上がらせた。
 ムフン。自尊心というか、自己肯定感というか⋯⋯。これは流石に自惚れてしまうなぁ、ウンウン。
 アインとの新技開発の時に考案して以降、ずうっと研究していた技だ。出来栄えは上々だぜ。
 単に魔力を打ち出すだけでは、使用エネルギーの割に威力がしょぼいので改良をしてみたが⋯⋯
 うむうむ、悪くない。
 魔力をチャージする際に、右の角と左の角とで火球に魔力を注ぎ込む位置を少しズラす。
 その結果、完成した火球の内部では魔力が高速回転している状態になる。
 そして、発射したビームが加速すると共に、回転の勢いは指数関数的に増してゆく⋯⋯と。
 螺旋状に渦巻きながら突き進む高密度魔力が、目の前の敵を削る様に粉砕するというサイキョーの技だぜ。

「──良い技だった」
「⋯⋯!!」

 何処からか聞こえた声に、俺は即座に身構る。
 声色と台詞で察せられた強者感には、思わず震えてしまいそうだ。
 ⋯⋯何処にいる。右か、左か、上か、前か、後ろか⋯⋯。

「──技の主である、お前自身の肉体も魔力も。よく練り上げられてある。称賛しよう、大した人間だ。
 ⋯⋯いいや、“人間だった者”という表現の方が適切か」
「傍観が趣味なのか? 言っておくが、皮肉を言っているつもりならやめとけよ? 俺、文面だけだとそーゆーの理解できないタイプだから」

 ⋯⋯さて、言いたい事があるなら直接に言いに来いと、遠回しに伝えてみたが⋯⋯。
 兎に角、警戒レベルはマックスとして、すぐに魔力の操作が出来る様に備えおくか。
 後は、攻撃された時の対処法と、迎撃の備えを──

「ふぅんッッ!!」

 突如、背後から呼気が聴こえる。
 素早く振り返る俺だったが、声の主を認識するよりも早く、微かな衝撃と共に鋭い激痛に襲われた。
 痛みの出処へ目をやると、金色に輝くランスの──涙の形をした──矛先が脇腹に突き刺さっていた。

「ぐうう⋯⋯ッ!!」

 確かに痛い。⋯⋯だが、それよりも。
 突き刺されたという事実に、一瞬だが気が付けなかった方が問題だ。
 このランス、切っ先の鋭さが異常過ぎるぞ⋯⋯!! 

「甘いな。戦場において、奇襲は戦術の──」
「がああアッッ!!!」

 問  題  無  い  ッ !!
 奇襲は戦術の基本。そんな事は百も承知だぜ!!

「ぐぬああッ!!」
「む⋯⋯!?」

 傷の拡大も構わず前進し、右肘を突き出す。
 ランスを引き抜いた相手が大きく飛び退いた事で、手応えはあまり無かったが⋯⋯
 ハッ。戦場で高説垂れるような奴の顔面に、擦り傷を付けられたのは悪くない気分だ。
 予測した通り、背後からの攻撃に警戒をマックスにしておいて正解だったぜ。 

 “姿を現さない敵は、大抵が死角から攻撃してくる”。

 魔王城で、ティガとの鍛錬と実体験から俺が学んだ教訓だ。
 ティガ曰く、“慎重な奴は徹底している”という訳らしい。
 そういう連中は、相手が此方を目視出来ていなくても、攻撃の際は真上や背後といった死角から攻めてきやすいという。
 そして彼の言った通り、魔王領域で出会った姿を消せる系の魔物は、攻撃の時はほぼ必ず俺の視野の外から仕掛けてきた。
 ⋯⋯フフ、これも経験の賜物だな。
 目の前のコイツも、例に紛れず死角から攻撃してくれた。
 真正面から攻撃されていたら、逆に驚愕して致命傷を食らっていたかもしれないな。

「⋯⋯ふん、ぬかったわ」

 右頬の傷を撫で、血を拭う男。⋯⋯というより、青年。
 四枚二対の暗黒の翼、各部位に纏う純白の鎧、腰当てからなびく真紅色のローブ。
 右手に握られた金色のランスと、左手に握られた閉じた瞳の様な丸い大盾──。
 何よりの特徴が、純白で艶のある髪の毛といった所か。
 “天神”セラフ、会うのは二度目だが⋯⋯。こうして見ると、真っ黒な肌色と純白の髪色とのギャップで風邪引そうだな。

「良い反応だった。お前程の転生者は、俺も見た事が無い」
「⋯⋯そりゃどうも」

 やったぁ、嬉しい。なんて言う訳ないが⋯⋯ちょっと嬉しいのは事実だな。
 まぁそれはいいとして。
 コイツ、さっきからなんか妙に掛けてくる台詞が優しいな。
 皮肉ではないのか⋯⋯? 調子狂うな⋯⋯

「──では、始めるとしようか。全力で迎え撃とう」 
「⋯⋯⋯⋯んんん、分かった」

 兎にも角にも、やるっきゃない。
 相手は神将だ、俺も油断する訳には行かないな。
 分析開始、戦闘用意。炎装形態に移行⋯⋯!!

「ふうぅ⋯⋯」

 息を深く吐き、俺は構えた。
 右脚を前に踏み込み、左脚は伸ばして加速に備える。
 右拳を固めて脇を締め、左手は即座に防御出来る様に身体の手前にフリーに配置した。

 対するセラフは、丸い大盾を正面に構える。
 共にランスも真正面に切っ先を向け、迎撃の用意が整った様だ。

「「⋯⋯⋯⋯。」」

 静寂。
 刹那、起爆。

 俺の右拳はセラフの丸盾に衝突し、激しい衝撃波を戦場に轟かせたのだった
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