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1章【暗黒討伐編】
第194話・“蒼炎” VS “天神”②
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『真大経典・第六章︰ 砂浜』
五匹の「狼」を連れ、男は夜の海岸に辿り着く。
北へ歩き続けた旅。その終着点は、冷たい風が吹く闇の世界であった。
男の横に並び、一匹の「狼」が尋ねる。“求めるものは見つかったのか”と。
少し俯き、男は考える。“見つからなかった。我らの旅は無意味であった”。
それを言葉にしようとした時だった。
ひゅうと風が吹き、男の足元に新たな「狼」が現れる。
老いたその「狼」は言った。“真実が正義とは限らず、偽りが悪であるとは限らない”と。
老いた「狼」は、五匹の 「狼」の群れへと歩を進める。
歓迎するでもなく、しかし憎悪を向けるでもなく、老いた「狼」に五匹の「狼」は身を寄せた。
ただ一人、男は夜の風に吹かれる。
闇の向こうを見つめながら、男は小さな火を焚いた。
NOW LOADING⋯
「❨神器解放❩──“祝福の愛脚”」
セラフが、新たに神器を解放する。
白鳥の翼を模した足の鎧が金色に輝き、セラフの周囲を広範囲に包み込んだ。
翼が広がる様に増す輝きに、彼と対峙する銀竜が見蕩れかけた──次の瞬間。
眩い光が一瞬にして収束し、セラフを中心として空気が急激に張り詰めた。
その要因は、光が収まると同時にセラフの魔力が全回復し、更には彼が極限の集中状態に入った事が所以である。
「道理で⋯⋯。大技をポンポン撃てたワケだ」
銀竜は苦笑いし、首を横に振る。
“祝福の愛脚”の能力は、周囲の魔力の強奪であったのだ。
それも、大気中からは無論の事、地中は愚か黒異種や黒異人からも根こそぎである。
「愛」とは「共に育む物」。植物に喩えるならば、「栄養となる存在」と「それを与える存在」が必要。
そう考えたセラフが、前者を魔力、後者を自身として神器を創造した結果、“祝福の愛脚”は生まれた。
集めた「栄養」を「神器」に与え、良く実った甘美な果実を自身が「収穫」するのである。
「──決着だ。貴様を殺せば、それで我らの勝利が確定する」
「あぁ、そうだな。『俺を殺せば』、な」
視線を交差させつつ、銀竜は冷静に状況を分析する。
チラリと手の平の蒼炎を見やり、銀竜は自分の容態を確認した。
炎輪形態では、魔力感知が極端に性能制限されるが故の行動である。
(俺からは魔力を奪わなかった⋯⋯? いや、ある程度の雑魚や自然物からしか吸収出来ない感じか)
自身の魔力が減っていない事に安堵し、銀竜は改めて踏み込んで構える。
接近攻撃の態勢を取る銀竜に対して、セラフは丸盾を正面に構え、その右脇からランスを出して刺突の用意をした。
直後、疾走。
“カウンターを狙っている”という銀竜の予想は外れ、セラフが轟速で間合いを潰す。
即座にこれに反応した銀竜は、逆に自身がカウンターを仕掛けるべく待ち構えた。
そして接触の時。突き出されたランスが銀竜の顔面に迫り、その切っ先が眉間に押し当てられ──
「むッ!!」
突き刺さる直前、セラフは驚愕する。
ランスを押し込む勢いとほぼ同じ速度で、銀竜が上半身だけ後方へと逸らしたのだ。
武術でいう“化勁”。敵の攻撃に直撃した瞬間、攻撃の方向性に同調する事でダメージを低減させる技である。
「ふッ、」
イナバウアーの体勢から、銀竜は左足刀をランスの右横へと当てる。
刹那。三日月を描く様に足を振り下ろし、ランスを地面へと叩き付けた。
ガクンと姿勢が崩れたセラフに合わせ、追撃に入る銀竜。
足元のランスを踏み台にして跳ね上がり、右膝で飛び蹴りを繰り出した。
しかし最強神将セラフ、ここで素早い反応を見せる。
──ボゴォンッッッ!!
丸盾から、紅色の大爆発が発生する。
❨災厄を打ち返す護盾❩の能力、“受けた衝撃の反転”である。
つい先程の舌戦の最中に銀竜が撃った〘火威矛〙を、セラフは盾の能力によって吸収していたのだ。
「チッ⋯⋯!」
舌打ちをしつつ、爆発の黒煙から飛び出す銀竜。
僅かに遅れ、黒煙の中から一つの影が空高く飛び上がった。
その影に向け、銀竜は『飛拳』──拳で放つ魔力弾──を撃ち込む。
違和感に気付いたのは、次の瞬間だった。
手応えの薄さを感じ、粉砕した物体へと目を凝らした銀竜が目撃したのは──不死身の神器・“聖なる慈槍”であった。
「⋯⋯⋯⋯!!」
すぐさま、立ち込める黒煙へと視線を戻す銀竜。
人影が揺らめき、黒煙が吹き飛ぶ。
金色に煌めく光がセラフを包み、羽衣の如く姿を変えた。
「❨神器回帰❩──“魔を屠る弓”」
“その技”は、セラフが持つ最大火力の一撃だ。
❨星を撃ち抜く❩を❨明日へと向かう道❩によって放ち、“祝福の愛脚”の能力を付与。
周囲の魔力を喰らいながら巨大化し、眼前の敵の一切合切を殲滅する最凶の技である。
「これで終わりだ⋯⋯!!」
目を見開き、セラフが矢を引く動作に入る。
正面から銀竜が駆けてくるが、矢を射る速度の方が圧倒的に早い。──そう判断した時だった。
何を考えたか。銀竜はその脚を止め、そのまま瞳を閉るという謎めいた行動に出た。
戸惑いによって、僅かに発射が遅れるセラフ。
だが、技を放った時点で勝利が確定する状況だ。
❨断罪の閃撃❩。数多の敵を打ち砕いてきた技が、竜の身体を持っただけの人間に対処出来る筈が無い。
セラフは軽く息を吸い、極限まで弓と神経を絞った。
意識を尖らせ、ただでさえ広範囲の技であるにも関わらず、銀竜という芯を見据える。──そして、
「ほっ、と」
「──?」
突然、それは起こった。
「──ハッ、上手く成功したぜ」
目の前に、
銀竜が、
居た。
──ガッッ────ツンンッッッ!!!!
強烈なアッパーが、セラフの下顎をかち上げる。
あまりの衝撃に、魔力で形成した技が消滅した。
❨断罪の閃撃❩、不発。
銀竜の一撃を受けたセラフは、受け身を取る余裕も無いまま地面に落下する。
最強神将が、大地に背を付けた。
五匹の「狼」を連れ、男は夜の海岸に辿り着く。
北へ歩き続けた旅。その終着点は、冷たい風が吹く闇の世界であった。
男の横に並び、一匹の「狼」が尋ねる。“求めるものは見つかったのか”と。
少し俯き、男は考える。“見つからなかった。我らの旅は無意味であった”。
それを言葉にしようとした時だった。
ひゅうと風が吹き、男の足元に新たな「狼」が現れる。
老いたその「狼」は言った。“真実が正義とは限らず、偽りが悪であるとは限らない”と。
老いた「狼」は、五匹の 「狼」の群れへと歩を進める。
歓迎するでもなく、しかし憎悪を向けるでもなく、老いた「狼」に五匹の「狼」は身を寄せた。
ただ一人、男は夜の風に吹かれる。
闇の向こうを見つめながら、男は小さな火を焚いた。
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「❨神器解放❩──“祝福の愛脚”」
セラフが、新たに神器を解放する。
白鳥の翼を模した足の鎧が金色に輝き、セラフの周囲を広範囲に包み込んだ。
翼が広がる様に増す輝きに、彼と対峙する銀竜が見蕩れかけた──次の瞬間。
眩い光が一瞬にして収束し、セラフを中心として空気が急激に張り詰めた。
その要因は、光が収まると同時にセラフの魔力が全回復し、更には彼が極限の集中状態に入った事が所以である。
「道理で⋯⋯。大技をポンポン撃てたワケだ」
銀竜は苦笑いし、首を横に振る。
“祝福の愛脚”の能力は、周囲の魔力の強奪であったのだ。
それも、大気中からは無論の事、地中は愚か黒異種や黒異人からも根こそぎである。
「愛」とは「共に育む物」。植物に喩えるならば、「栄養となる存在」と「それを与える存在」が必要。
そう考えたセラフが、前者を魔力、後者を自身として神器を創造した結果、“祝福の愛脚”は生まれた。
集めた「栄養」を「神器」に与え、良く実った甘美な果実を自身が「収穫」するのである。
「──決着だ。貴様を殺せば、それで我らの勝利が確定する」
「あぁ、そうだな。『俺を殺せば』、な」
視線を交差させつつ、銀竜は冷静に状況を分析する。
チラリと手の平の蒼炎を見やり、銀竜は自分の容態を確認した。
炎輪形態では、魔力感知が極端に性能制限されるが故の行動である。
(俺からは魔力を奪わなかった⋯⋯? いや、ある程度の雑魚や自然物からしか吸収出来ない感じか)
自身の魔力が減っていない事に安堵し、銀竜は改めて踏み込んで構える。
接近攻撃の態勢を取る銀竜に対して、セラフは丸盾を正面に構え、その右脇からランスを出して刺突の用意をした。
直後、疾走。
“カウンターを狙っている”という銀竜の予想は外れ、セラフが轟速で間合いを潰す。
即座にこれに反応した銀竜は、逆に自身がカウンターを仕掛けるべく待ち構えた。
そして接触の時。突き出されたランスが銀竜の顔面に迫り、その切っ先が眉間に押し当てられ──
「むッ!!」
突き刺さる直前、セラフは驚愕する。
ランスを押し込む勢いとほぼ同じ速度で、銀竜が上半身だけ後方へと逸らしたのだ。
武術でいう“化勁”。敵の攻撃に直撃した瞬間、攻撃の方向性に同調する事でダメージを低減させる技である。
「ふッ、」
イナバウアーの体勢から、銀竜は左足刀をランスの右横へと当てる。
刹那。三日月を描く様に足を振り下ろし、ランスを地面へと叩き付けた。
ガクンと姿勢が崩れたセラフに合わせ、追撃に入る銀竜。
足元のランスを踏み台にして跳ね上がり、右膝で飛び蹴りを繰り出した。
しかし最強神将セラフ、ここで素早い反応を見せる。
──ボゴォンッッッ!!
丸盾から、紅色の大爆発が発生する。
❨災厄を打ち返す護盾❩の能力、“受けた衝撃の反転”である。
つい先程の舌戦の最中に銀竜が撃った〘火威矛〙を、セラフは盾の能力によって吸収していたのだ。
「チッ⋯⋯!」
舌打ちをしつつ、爆発の黒煙から飛び出す銀竜。
僅かに遅れ、黒煙の中から一つの影が空高く飛び上がった。
その影に向け、銀竜は『飛拳』──拳で放つ魔力弾──を撃ち込む。
違和感に気付いたのは、次の瞬間だった。
手応えの薄さを感じ、粉砕した物体へと目を凝らした銀竜が目撃したのは──不死身の神器・“聖なる慈槍”であった。
「⋯⋯⋯⋯!!」
すぐさま、立ち込める黒煙へと視線を戻す銀竜。
人影が揺らめき、黒煙が吹き飛ぶ。
金色に煌めく光がセラフを包み、羽衣の如く姿を変えた。
「❨神器回帰❩──“魔を屠る弓”」
“その技”は、セラフが持つ最大火力の一撃だ。
❨星を撃ち抜く❩を❨明日へと向かう道❩によって放ち、“祝福の愛脚”の能力を付与。
周囲の魔力を喰らいながら巨大化し、眼前の敵の一切合切を殲滅する最凶の技である。
「これで終わりだ⋯⋯!!」
目を見開き、セラフが矢を引く動作に入る。
正面から銀竜が駆けてくるが、矢を射る速度の方が圧倒的に早い。──そう判断した時だった。
何を考えたか。銀竜はその脚を止め、そのまま瞳を閉るという謎めいた行動に出た。
戸惑いによって、僅かに発射が遅れるセラフ。
だが、技を放った時点で勝利が確定する状況だ。
❨断罪の閃撃❩。数多の敵を打ち砕いてきた技が、竜の身体を持っただけの人間に対処出来る筈が無い。
セラフは軽く息を吸い、極限まで弓と神経を絞った。
意識を尖らせ、ただでさえ広範囲の技であるにも関わらず、銀竜という芯を見据える。──そして、
「ほっ、と」
「──?」
突然、それは起こった。
「──ハッ、上手く成功したぜ」
目の前に、
銀竜が、
居た。
──ガッッ────ツンンッッッ!!!!
強烈なアッパーが、セラフの下顎をかち上げる。
あまりの衝撃に、魔力で形成した技が消滅した。
❨断罪の閃撃❩、不発。
銀竜の一撃を受けたセラフは、受け身を取る余裕も無いまま地面に落下する。
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