猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

文字の大きさ
194 / 195
1章【暗黒討伐編】

第193話・「嘘」

しおりを挟む
 ──全くセラフめ、滅茶苦茶強いじゃねーか。
 ハッキリ言って、俺の予想の遙か上をいってやがったぜ。
 ⋯⋯これは、温存とか言って勿体ぶる余裕は無さそうだな。

「ふ──ッ!!」

 蒼炎を爆裂させ、周囲を包む金色の魔力を吹き飛ばす。
 炎装形態の出力を大きく上げた俺は、クロスさせた両腕での防御を解き、地面に着地した。
 
「ふむ⋯⋯。今の一撃を無傷で耐え切るか」
「無傷ではねーよ。ちょっと皮膚がヒリヒリしてるわ」

 軽いストレッチをしつつ、両脚を肩幅に広げる。
 目を閉じて息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き出した。

──ドンッッ!!

 全身に纏う蒼炎。その姿が変わる。
 肩甲骨辺りから二本の火柱が立ち上がり、先端の炎のうねりはぐるりと廻って腰の辺りへ帰還。
 背中に二つの蒼炎の輪が完成すると同時に、俺の背後に蒼炎の輪が浮遊した。
 揺らめく影から目測するに、サイズはおよそ1m程だろう。
 仁王襷におうだすきの様な二つの炎輪に加え、背後に浮かぶ大きな炎輪。
 計三つの炎の輪からなるこの形態こそ、今の俺の最高到達点である。

「──成程。素晴らしい力だな」
「⋯⋯⋯⋯。」

 動じない、か。
 先程の、❨ギルディオン❩とか言った一撃⋯⋯。随分と魔力を消費した筈だが、あの余裕は一体どこから⋯⋯?
 能力を強化した俺と対峙してすら、殺気の無い態度と声色を維持している理由は⋯⋯

「──問う、燗筒かんとう 紅志あかし。お前が求める世界とはなんだ?」
「⋯⋯はあ、求める世界だって?」

 なんだ、急に。攻撃の為の時間稼ぎか?
 ⋯⋯いや、魔力を溜めている様な気配は無い。少なくとも、派手な攻撃を準備しているとかでは無さそうだ。
 もしや、戦いの最中に本気で相手の理想を尋ねているのか?
 だとしたら、本当にコイツの思考が読めなくなってくるんだが⋯⋯。
 あぁ、もう面倒だ。取り敢えず答えるだけ答えて、仕掛けてきたらそん時に対応すればいいや。

「俺が求める世界は⋯⋯。──色んな風景があって、色んな出会いがあって、旅がしたいと思える世界だな」
「ふむ、実に素晴らしい。お前が求めるのは美しい世界、という訳だな?」
「美しいかどうかは気にしないけど⋯⋯。まぁそんなトコかな」

 ⋯⋯マジでなんだ、コイツ?
 ついさっきまで戦っていた奴とは思えない程、微塵の闘気も感じられ無いぞ。
 なんなら、このまま友達にでもなれそうな雰囲気だが⋯⋯

「紅志よ。オーガ様は創世神だ。お前の望む風景、お前の望む出会い、お前の望む世界を創造出来る御方である」
「⋯⋯⋯⋯。⋯⋯はあ、」
「この戦いから降りろ。そうすれば、決して手出しはせん。我らと共に、新たな世界を──」

──ギュオオオオオンンッ!!!

 あぁ、そう。分かった。〘火威矛ビーム〙撃つわ。
 御託はいい。頼むから俺の前から消えてくれ。何もかも気に食わないからさ。
 与えれば着いてくると、お前らは本気で思っているのかよ。
 ⋯⋯あぁ。いや、実際にそうなんだろうな。

「──お前らが太古の魔大戦で負けた理由、分かったよ」
「なに⋯⋯?」

 紅い魔力の残滓の向こうから、影が浮かび上がる。
 丸盾を正面に構えたセラフが姿を現し、不快感を顕にした表情を此方に向けた。

「人間が⋯⋯我らを理解するなど⋯⋯笑止。あの戦争を知らぬ貴様が語るな⋯⋯」
「いいや、理解出来るぜ。お前らは、人間に与えるだけ与えた。⋯⋯それだけしかしなかった」
「なんだと⋯⋯? 貴様⋯⋯」
「与えられるだけの人間は堕落する。当然だ。何もせずとも、誰かが何とかしてくれると考える様になるからな。
 創世神? ほぉ! そりゃあ大した名前だな。ソイツなら何とかしてくれると、誰だって思うだろうぜ」

 俺を睨むセラフの視線が鋭くなる。
 やはり図星か。殺すぞとでも言わんばかりの眼力だ。

「甘えに甘えさせ、縋りに縋らせた。お前らの元には人々が押し寄せた事だろうなぁ。
 だが、だから人間に化けた“悪魔”とやらに かぁんたんに隙を見せ、そんで結局負けた」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯!!」
「“彼らなら何とかしてくれる”と、お前らが人間に与え続け、縋り寄らせたんだぞ?」

 だが⋯⋯与えるだけでは、人間は成長しない。
 自らの意志で進まず、自らの足で歩まず、自らの目的地へと辿り着く事は無いだろう。

「──人間は弱い生き物だ。故に集団で生活し、それぞれの欠点をそれぞれが補って生きている。
 誰かが発想し、誰かが型を作り、誰かが素材を集め、誰かが作成する。そうやって、それぞれが自分の能力を発揮し合って物事を達成し、人間は進歩してきた。
 全てを与えられて歩みを止めた人間は、進歩なんてしないんだよ。ただ、英雄だの神だのに縋り付くだけだ」

 俺の台詞に、セラフは俯く。
 何かを考えている様な表情だが、俺の言葉に心が揺らいでいるとかであって欲しいな。

「莫迦な⋯⋯。神が創造し、与えたものより、人間が進化の過程で生み出すものの方が有益だと? そんな筈が無い。オーガ様は──」
「あぁっ、オーガの話を聞き飽きたからいい。ただ、一つだけ訊きたい事があるなら──寧ろお前がコッチに来ないか?」
「こ⋯⋯!! この⋯⋯ッ!!」

 豹変ってやつだな。おー、こえー。
 だが⋯⋯本性が知れたお陰で、俺も戦いやすくなったぜ。

「ふう⋯⋯。人間、一つ教えておいてやろう。この戦いを始める前から、俺は貴様に称賛の言葉を掛けていたな?」
「ん? あぁ、それがなんだよ?」
「あれは、全て嘘だ」

 ⋯⋯だろうな。気付いていたさ。
 主を殺そうとしている奴を、お前みたいなのが許す筈が無かったんだよ。
 今になって事実を言われた所で⋯⋯別に⋯⋯なんとも⋯⋯

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。⋯⋯セラフ」
「なんだ。泣くか、人間」
「⋯⋯お前は、可哀想な奴だな」
「なんだと? 何が言いた──」

──ズンッッ!!

 一歩踏み込み、俺は構えた。
 セラフの疑問には、答えてやる必要は無いだろう。
 ⋯⋯いや。俺は答えたくない。きっと傷つけてしまうから。
 アイツは、卑怯な手段で自分達を殺した連中と、同じ手段で俺を揺さぶろうとした。⋯⋯確信があったんだろう。
 “自分を殺した手段なら、人間相手には必ず通用する”と。
 セラフ自身が、嘘によって揺さぶられ、嘘によって殺された過去があるからこそ、俺にもそれを⋯⋯。
 本当に、なんて哀れな奴なんだ。

「──かかって来いよ、セラフ。真正面からぶっ潰してやる」
「⋯⋯!! ⋯⋯ほざくな」

 ランスと丸盾を構え、セラフが呟く。
 決着の時は、そう遠くなさそうだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...