猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【錬金術の街編】

第35話・和解

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「「「⋯⋯⋯⋯⋯」」」


ギルドマスター、ゼクス数名が見届ける中、銀槍竜とシルビアの戦いは加速していた。試合が始まってから、およそ20分と少し。現状として、銀槍竜の先制点獲得から試合は拮抗状態。

消耗の色こそ無いものの、どちらも決定打が無い。
試合時間は一応無制限だが、戦いが激化すればガバンは強制的に切り上げようとするだろう。

─勝ちたい─

純粋に、シルビアはそう思っていた。
それは銀槍竜も同じだが、ゼクス達が試合を見届けている以上、シルビアの方が意思は強いだろう。しかし今は拮抗状態、そして先制点を取られている。

では、どうするべきか。


「──はッ!」


─流れがないなら、作ればいい─
 
超速一閃。
僅かな掛け声を発し彼女が繰り出したのは、常人ならば目で追う事すら不可能な速度での斬撃。人の身でありながら、スポーツカーのソレに匹敵する速度で迫るシルビア。

馬鹿げた速度で放たれた横斬り払いを、僅かに姿勢を低くする事で躱したのは1匹の魔物。出現から僅か数ヶ月で特別監視個体に認定されたその魔物に付けられた名は─⋯


「銀槍、竜ね⋯⋯」


1人呟くシルビアの額には、一筋の汗が流れている。
銀槍竜が姿勢を低くした瞬間、彼に隠れていた一本の槍を捉えたからだ。

加速をしきっている手前、回避が出来ない。
つまり、被弾を免れない状況だった。ここまで頭を使う魔物など経験が無かったというも大きいが、シルビアが冷や汗を流した原因はそれだけではない。

自分らが今、戦闘を行っている場所は特別訓練所と呼ばれ、その地面には特殊な魔法が施されている。それは、物資の強度を上げる魔法であり、簡単に地面が崩れない様になっている訳だ。

つまるところ、何を言いたいのかと聞かれれば、

『全力で踏み込みを行い、自身が出せる最速』での斬撃を『その場を動かずに躱す事が前提』の反撃で返された事に、シルビアは驚いているのだ。

仮に、銀槍竜が大きく飛び退いたのだったら分かる。
行った踏み込みで、今から繰り出させる攻撃がどういったモノか理解し、咄嗟に距離を取ったと解釈できるからだ。

⋯⋯だが、その銀槍竜は1歩も動いていない。
という事は、銀槍竜とって今の斬撃は『万が一当たっても問題ない』もしくは『絶対に躱せる』という自信があったという事。


「おっと、危ねぇ危ねぇ」

「⋯⋯⋯⋯」


銀槍竜が設置していた槍は、勢い余るシルビアに突き刺さる前に消滅した。もし槍が消えていなかったら、今頃喉元にでも刺さって辺り一面血の海。絶命は免れなかっただろうと、シルビアの額に新たな冷や汗が流れた。


「⋯⋯久し振り」

「ぉん?」


刹那のやり取りの後、静寂の中でシルビアは言った。
それは独り言の様な、喋り掛けているかの様な言い方で、それを聞いていた銀槍竜は不思議そうな顔でシルビアを見た。


「久し振りに、死の感覚を思い出したわ」

「⋯⋯そうか、感想は?」


シルビアの台詞に、銀槍竜は冗談っぽく返す。
しかし、彼の額には先程のシルビアと同様に冷や汗が流れていた。原因は、振り向いたシルビアの雰囲気が大きく変化していたからだ。

『コイツ、ヤバい』という感覚は、誰にもあるだろう。
テュラングルの様な圧倒的な魔力を放っている場合に限らず、普通の人間同士でも、相手がどんな感情を持っているかはある程度の理解ができる。

怒っていれば、表情や身体に何かしらの力みが生じている。

悲しんでいれば、覇気が無くなり気力を感じられない。

では、今回銀槍竜がシルビアに感じた『ヤバさ』はなにか?
死を目の当たりにした生物は、少なからず動じるだろう。それは恐怖心であったり、逆に復讐心であったり。

銀槍竜は、たった今仕掛けた攻撃がシルビアにとって死に直結するモノだと理解していた。それがトラウマになる様な相手では無いと知っての判断だったが、動揺は誘えるだろうと思っていた。

⋯⋯しかし、


「最ッ──高⋯⋯!」


シルビアは、恍惚の表情で構えを直した。
動揺していないどころか、逆に枷を外してしまったのだ。死を目の当たりにして、怒りも恐怖も発さない。

実力では上である銀槍竜が『ヤバい』と思う、この上ない理由がそれであった。振り向い時の表情が、その瞳が、彼女の異常性を物語っていた。


「死ぬ、ってこんな感じだったわね⋯⋯」

「⋯⋯アンタ中々の人間だよ、シルビア」


迫る決着に、両者は大きく踏み込む。
戦いの愉悦に嗤う1人。そして同じく、嗤うのは対峙する1匹。起爆の瞬間は、直ぐに訪れた──⋯



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(このシルビアという女、真面目な冒険者かと思っていたが⋯⋯)


ちゃんと壊れているな、うん。
自分が死ぬって状況だったというのに、感想が『最高』だなんて。⋯⋯イイね、好きになった。

真面目な戦いは確かにイイ。
戦略を練ったり、前もって準備しておいたり、相手を自分のペース誘導したり。確実に勝ちたいなら、俺だってする。

⋯だが、1番はやっぱりだ。
後も、先も、何も考えない。今、その瞬間だけを⋯!


「はァッ!!」


シルビアが攻撃手段に選択したのは、磨き上げたであろう太刀の技ではなく、拳での殴打だった。気迫の籠った声と共に放ったソレは、コンクリートすらも容易に打ち砕ける威力だろう。


「ガォアッ!!」
 

目には目を、拳には拳を。
シルビアが真正面から堂々と来るなら、俺もそうしよう。真っ向から打ち勝ってこそ、本当の勝利だ。


──ズドンッッ!!


最大速度で衝突した2つ拳は、周囲に大きな衝撃波を生んだ。
それは特別訓練場の端で見物している者達まで届き、如何に激しいぶつかり合いだったのかを、身を持って体感させた。


「~~ッッて!」

「うッ⋯⋯フフ⋯!」


巨大な衝撃波を生んだ、拳同士の衝突。
当たり前だが、その衝撃波の原因となった拳が無事な筈もなく、俺は指が内側に曲がって出血。シルビアも同様に、拳が血塗れの状態だ。

しかし、勝負でいうなら俺の勝ちってところか。
俺の被害は指の負傷程度だが、シルビアは拳から肘の付近まで流血している。恐らくだが、骨もイっている感じだろうな。

魔物である俺ならまだしも、人間なら痛みで悶絶、もしくは気絶していてもおかしくない負傷。それを一瞬の悶えで済まし、直ぐに笑みを浮かべれるのは、流石って所だな。


「⋯~っと、うし」

「⋯無茶苦茶ね」


ん?何かしたか俺?
指が変な方向に曲がってたから、少し強引に戻したくらいだが。骨がめっちゃ鳴ってたのもあるが。


「まあいいわ、続けましょ」

「あぁ続けよう⋯⋯と、言いたい所だが」


初手の寸止めで1点、さっきの槍で1点、今ので1点。
これで試合は終了って訳だ。残念だが、また今度って事で。

まぁ俺も勝負を続けたいのはあるが、今は荷降ろしと虎徹回収を優先したいし。一旦、クールになるぜ。


「⋯残念」

「それは同感だ。⋯⋯まぁ次の機会に、な」


負傷した腕を抑えているシルビアに回復を施し、俺はガバン達の方へ向かった。回復した時、シルビアは初め驚いていたが『そういえば報告書に書いてあったわね』と呟いて1人で納得していた。⋯⋯そんな細かい事も調べられてるのか。


「⋯いやいや、予想以上の実力。素晴らしい」

「あ、いやまぁ⋯⋯どうも」


ガバン達の所へ着くと、彼は激励と共に拍手をしてきた。
他の冒険者達のリアクションは様々だが、ヴィルジールとサンクイラちゃんはなんか撫でてくれた。

犬じゃないんだからやめてくれと言おうとしたが、これが案外心地良い。大人なら、許容も大事だな。


「シルビア君も納得してくれたかね?」

「まぁ、ね」


うむ、シルビアとは仲良くやって行ける気がする。
他の冒険者達は⋯⋯


「フン⋯⋯」

「ケッ⋯⋯」


コイツら本当にさぁ⋯⋯
銀髪とメガネ君さぁ⋯⋯

まぁいいか、深い付き合いになる訳でも無いし。
文句を言ってこないってことは、一応信用してやるって事と受け取っておこう。


「⋯さて、この銀槍竜という戦力の増強だけで補って欲しいとは言わん。報酬は勿論の事、補給用魔力石の配布、ここベルトンでの装備強化の無償化を、存分に駆使して欲しい。⋯無茶を承知で頼む。王都を、そしてそこに住まう人々を救ってくれ⋯!」


深々と頭を下げるガバンを、冒険者達は黙って見ていた。
手厚い補償に聞こえるが、彼らがこれから向かうのは戦場であり、いくら金を積まれても、待遇を良くされても許容できない範囲というものはある。

各々不満はあるものの、それでも誰1人辞退しないのは、人々の命が掛かっているからだった。数十、数百ではなく、数千の命が、自分達の技量にかかっている⋯⋯
 
⋯⋯成程な。
1人でも人員が欲しい訳だ。


「銀槍竜、君にも無茶を強いるが⋯⋯」

「問題ない。俺は戦うのが好きだし、例の約束もあるしな」


米が手に入り、1ヶ月の鍛錬の成果が試せる。
寧ろ、願ってもない好機。運命に感謝だな。


「それじゃあ、俺は用事あるしここら辺で」

「む、用事?出発は明日だが⋯⋯一体何処へ?」
  
「心配には及ばないぜ、この街に用事があるんだ」


⋯そう、異☆世☆界☆観☆光!──⋯



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「と、言うわけで!」

「⋯アタシ達まで付き合う必要あったの?」


試合後、軽い会議の後に解散した俺(達)はベルトンの街へと繰り出していた。例のごとく外套を身に付けている俺、ヴィルジール、サンクイラちゃん、シルビア。うーむ、バランスのとれたメンバーだな。

一応、他の冒険者達も数人来た。
1人は黒髪の男の子。男の子っていっても、歳は俺と同じくらいか。20歳中盤ってトコだな。

⋯⋯意外だったのが、銀髪男も来た事か。


「オメェ、おもしれェヤツだな。今度俺とも喧嘩しようぜ」  

「⋯考えとく」
   

割と普通に接せるのも意外だったが。
同族嫌悪ってタイプなのか?まぁいい。口は悪いが、そこまで嫌味ったらしい奴ではないし、仲良くなったら楽しそうだ。

名前はソールっていうらしい。


「ねぇ、誰から回復魔法とか教わったの?」

「んー、知り合い。というか、変人。⋯⋯というか、知らない人」

「えぇ⋯⋯」
  

この黒髪の青年はシュレン。
歳が近いっぽいから親近感が沸くかと思ったが、どちらかと言うと弟タイプだな。顔立ちは中性的で、日本人寄り。

先程からしつこく誰から魔法を教わったか聞いてくる。
好奇心が旺盛な奴だが、嫌いにはなれない雰囲気だな。

⋯にしても、誰から魔法を教わったのか、なんて難しい質問してくるな。バルドールはその日にあって、その日にサヨナラした人だし、実質他人だな。うん、知り合いではない。


「シュレンもそこら辺にしときなさい」

「えー」

「えー、じゃない」


いい加減リアクションに疲れていた俺の様子を気付いたのか、シルビアが控えめに釘を指してくれた⋯んだが、なにそのやり取り?親子か何かですか?それとも姉弟?微笑ましいんですが。これじゃ後方腕組み竜になっちゃう。


「それで?これからどうする。メシでも行くか?」

「何言ってんだ、酒だろ酒ェ!」


うーむ⋯⋯異世界ご飯か、それもイイなぁ。
だがしかし、まずはやらなきゃならん重要事項が2つほどある。盛り上がってるとこ悪いが、一旦街を出るぜ─⋯



  








「⋯─クエッ!」

「やっだ!何このコ!?」

「きゃー!可愛いー!」


重要時効その1、虎徹と荷物の回収。
女子ウケしそうな見た目だなとは、前々から思っていたがここまでとは。黄色い悲鳴がさぞ心地良いだろうな、虎徹よ。

おー、よしよし。
長い間置き去りにして悪かったな、頭に乗せてやるから許せ。


「お"?なんだァ、そのチビモコはァ?」

「エ"ッ!?」

「近寄るなバカっ、このコが怖がってるでしょう!?」


その通りだシルビア。
ソールみたいな巨漢に、綿菓子サイズの虎徹が覗き込まれたんじゃ、びっくりしちまうよな。あっちいけソール!しっしっ!


「いいじゃねェかよ、これでもガキは好きなんだぜェ⋯」

「グェヤッ!」

「⋯⋯ほう」

 
あ、やばい。
虎徹が変な声出してソールに噛み付いた。初めて虎徹のそんな声聞いたな⋯ってそうじゃない。このままでは虎徹が焼き鳥にされてしまうのでは⋯?

いかん、それだけは阻止する。
⋯⋯阻止するとして、なんか焼き鳥食べたくなってきたな。タレも良いが、俺は塩派だな。


「威勢のいいヤツだ、将来有望だぜこいつァ」

「キュルル⋯⋯」


すげぇ、虎徹って威嚇できるのか。
毛が、毛が逆立っとるわ。普段からモコモコだのに、逆立っているせいでより綿菓子になってる。⋯カワイイ。


「しっかし、ハイフォーゲルときたか」

「⋯⋯?」


女性陣にもみくちゃにされている虎徹を眺めながら、ヴィルジールは渋い顔をしていた。ハイフォーゲルとは虎徹の種族名の事だが、はて?何か問題でも⋯⋯


「ま、詳しい話はお前の用事を済ませてからだな。次はなんだ?まだあるんだろ?」

「ん、まぁな。次は資金の確保だ」

「資金?魔物が金なんて、使い方わかんのかよ?それにアテは?あんのか?」


⋯⋯舐めんな(`ᾥ´)



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「「「テュラングルの鱗?!?!」」」

「⋯⋯そうだ」


耳を塞ぎなら、俺は返答した。
錬金術の街といえど飯屋や服屋など普通にあるらしく、適当に案内された質屋にて俺はテュラングルの鱗を提出した。まぁアイツめっちゃ強いし、素材は高級なんだろうなーとは思っていたが⋯⋯ここまでのリアクションとはな。


「お、オイオイにいちゃん?ウチは一介の、ただの質屋だ!持ってこられても⋯⋯」

「そこをなんとか、な?裏市場とかでなら言い値で売れる代物だぜ?」


おいヴィルジール、サラッと何言ってんだ。
魔物である俺がするのも変だなと、アンタに取引を任せたはいいが、それじゃあ裏市場とか行った事ある様な物言いだな。冒険者なのにそんなトコ行ってもいいのかよ。


「いや⋯!無理に買わなくてもいいよオジサン!ぼ、僕に売ってよ!」

「まだあるの?!これで全部!?」


ひ、ひえぇ。
そんなに血相を変えるモノなのか、コレ。クールキャラとみていたシルビアもシュレンもすんごい眼差しじゃん。

アレだ、おもちゃ売り場に来た子どもだ。
目をキラッキラにしてしてるのは、龍の鱗なんて物騒な素材だが。冒険者に需要あるか?装備とかに使うのかな⋯⋯


「⋯分かった!買い取ろう!⋯だが、ウチとしても出せる金額は限度がある。つまるところは─⋯」



 







 

「⋯─3枚か、思ったより余ったな」


結局、6枚あった鱗の内、半数の買取という事で話はまとまり、合計1000万ゼルが俺の手元へと入ってきた。
  
1000万ゼル、

1000万ねぇ、いっせんまん⋯⋯⋯⋯


   


「1000万ッッ!?!?!??」

「うお、どうした急に」


金受け取った瞬間から頭ん中真っ白だったが、ようやく追い付いた。1000万、大金⋯⋯ぼっ、煩悩が止まらねぇ。何に使う?酒?食い物?いいや、もっと有効的な使い道があるだろ俺。

そう、アレとかソレとか⋯⋯
ちょ、ちょっとくらいやましいコトにもいいかも⋯⋯うへへ。


「やだ、魔物なのにオッサンみたいな顔してるわよ銀槍竜」

「沢山お金貰ったから、変なコト考えてるんじゃないんですか?」
 
「⋯本当にオッサンじゃないの、ソレ」


女性陣のぬるい視線を意に介する事なく、妄想を加速させていく俺。平常心を取り戻す頃には、いつの間にか何処かの飯屋の座席に座らせられていた。

いや、本当にいつの間にかだったな。
例えるなら、意識を失っていた間に運ばれていた様な⋯?

⋯⋯そういえば、首の後ろが痛い気がする。
気のせいか?⋯⋯まぁいいが。


「「「で、」」」

「ん⋯?」

「テュラングルはどのくらい強かった?」「ギフェルタの件ってホント?」「まだ鱗余ってるでしょ?」「とっとと喧嘩しようぜ」「注文どうします?」

「⋯⋯⋯⋯1人ずつ、ゆっくりと、質問してくれ。あとシュレン、注文はオススメを頼む」


⋯そうだ、そうだった。
俺はかなりイレギュラーな存在で、冒険者達にとっては疑問だらけだろう。そりゃあ質問したい事も沢山あるんだろうなと想定していたのを忘れていたぜ。

連続して話す、話される事はマシンガントークとか言われてるが、今のは大砲だったな。全員が席に着くなり、ドッと抱えていたであろう疑問をぶつけてきやがった。

⋯まぁ何人かは変化球だったが。
兎に角、後々質問されるのも面倒だし、このタイミングで話せるだけ話しとくか。


「じゃあ俺から聞かせてもらうぜ」


初手はヴィルジールか。
テュラングルの強さについての質問とは、中々いいトコ突いてくるな。俺としても、凄かった経験は誰かに語りたいものだしな。


「アイツとの出会いは」

「待った、『アイツ』?テュラングルを『アイツ』って呼んでるワケ?」

「話を遮るなシルビア、呼び方なんてどうでもいいだろ」

「⋯⋯続けるぞ」


それから俺は、今まで経験してきた様々な出来事を話した。
リーゼノールでシャルフ・ガムナマールと戦った事も、テュラングルとの激戦の事も、ギフェルタで違法ギルドの退治に貢献した事も。

⋯正直、こうして話していると、自分がどれだけ人肌に飢えていたか察せる。まぁ人間として生活した時は、そこまでオープンな性格ではなかったが。

ただ、こうやって同じ机で同じ飯を食っていると、なんとなく心地良い。たまには、こーゆーのも悪くないか。


(⋯⋯そう言えば、前世で死ぬ直前もこんな風に皆で飯を食ってたな)

「酒!もっと持ってこいやァ!」

「アンタ呑み過ぎよ!この店を潰す気!?」

「「「ハハハ!!」」


⋯⋯やれやれ、どんな世界でも人の世は良いもんだな。
飯は美味いし、未知の技術には興奮する。多少、不便な事もあるが、それを引っ括めても俺はこの世界を気に入っている。

もっと、もっともっとこの世界を冒険したい。
⋯全部が片付いた暁には、お金利用して世界一周とかも悪くないな。それまでに、どんな魔物や悪い冒険者に出会っても追い返せる様な力を身に付けておくかね。

⋯フフ、童心に返った気分だ。
遠足を明日に控えている様な、心底ワクワクしているあの。


「いい所だな、ここは」

「でしょ!このお店、僕のオススメなんだよね~──⋯」



NOW  LOADING⋯




〖おまけっ!〗


へいへい、久し振りぃ!僕だせぃ!
ここ最近、アカシは鼻歌ばっかりだったから僕も少し覚えたよぅ!

お気に入りは⋯⋯れ、れーなー好きな⋯⋯なんだっけ?
まぁ忘れちゃったからいいや。フリーバーとかいうヨーガク?

ズンチャン♪ズンズンチャン♪

と、まぁ冗談はどっかに置いておいて。
今日も今日とて、おまけやってこ~!


─シルビアと銀槍竜の決着直後、冒険者サイド─


「⋯む?彼ら、切り上げたように見えるが⋯⋯」

「3点先取なんだろ?なら銀槍竜の勝ちだ、ガバン」

「ヴィルジール君達には彼らの攻防が見えていたのかね?」

「⋯⋯逆に見えていないのに審判をしていたのか?」


なんか人間達が話してるなー⋯って、ちっっこ!
この髭もじゃの人ちっこ!前見た人間とソックリだし⋯⋯もしかして、この街ってこんなのだらけなの!?

まさか、この街は呪われていたりして⋯
いやだっ!僕はもじゃもじゃになりたくないっ!


「君達から見て、銀槍竜はどうかね?信用に足る実力だったかね?」

「⋯少なくとも、試合とはいえシルビアさんを完封した事実がありますし、僕は実力を認めますね」

「確かに悪くはねェ⋯⋯が、まだまだ本気じゃねェ様子だぜ」  

「ふーむ、では今度はソール君が直接相手になってみるかね?」


もっ、もじゃもじゃの僕なんて!
こんなプリティー()でキュート()なのに、台無しになるぅ!

そして人間にこう呼ばれるんだ、
『髭もじゃ竜』って!うわぁぁぁあ!


「ほう、ギルドマスター様もイイ事言うじゃねェえか。いいぜ、次は俺が⋯⋯」

「いや、今度にしろソール。⋯今はコレで充分だ」
 
「あ"ッ?んだよヴィルジール」

「今度にしろってだけだ。お前と銀槍竜との勝負を否定している訳じゃない」


いや、ちゃんと考えろ僕。
この街には髭もじゃじゃない人間もいる⋯⋯という事は、つまり、この髭もじゃは、人間の個体差によるもの?

もしくは、そーゆー種族とか?
人間に近いけど、ちょっとだけ違うみたいな。


「⋯⋯ケッ、仕方ねェなァ」

「悪いな、後でなんか奢るぜ」
   

むう、人間って変な生き物。
僕達魔物は、環境とか住んでる場所によって見た目とかが変わったりするけど、それはかなり大幅な変化だし。

寒いトコに住んでたら、凍えないように全身の体毛が多くなるとか。⋯⋯( ゜∀ ゜)ハッ!分かった!このちっこい人間は寒いトコロで産まれたんだ!そうに違いない!

いやぁ、また賢くなっちゃいましたなぁ僕。
えへへ。


「あーあ、完敗だわ」

「よく言うぜ。テメェだって本気じゃなかったクセに」

「いやいや。試合の範囲内で、出せる力は出し切ったつもりよ」


(⋯ったく、銀髪の言う通りだ。よく言うぜシルビア)

〖おつかれー、流石僕(の身体)なだけあるねぇ〗

(はいはい、凄いよお前は)
  
〖むっ!ちゃんと褒めて!〗

(スンゴーーーイ。パチパチパチ)


きぃー!棒読みだ!
もうアカシキライ!家出するっ!⋯⋯あっ、出来なかった。

でも無視するからいいもん。
今度からアカシがピンチになっても手貸さないもんねー!


「⋯─心配には及ばないぜ。この街に用があるんだ」


⋯⋯用?


(そう、異☆世☆界☆観☆光!)

 〖えっ、ナニソレ。楽しそう!〗


観光!ゴハン!
やったー!アカシ大好き!ちゅー!

やっぱり流石僕の身体の宿主なだけあるね、僕が求めている物をよく理解しているよウンウン。


「街へ、か。⋯では」
   
「分かってる。ちゃんと外套は着ていくから、いちいち言わないでくれ」

「うむ。近い内に君がソレを着なくてもいいよう、住民達には説明しておこう」

「助かる。⋯⋯じゃあ、今から街に行く訳だが─⋯」

  

─質屋退店後─
      

(いっせんまん、いっへんまんへん⋯⋯グヘヘ)

〖ちょっとアカシ!しっかりしてよ!〗


もう、完全に思考停止しちゃって。
人間はコレと引き換えに物とかを貰ったりするらしいけど、こんな紙切れになんの価値があるんだろう?

人間には食べ物を分け与えるって考えが無いのか!薄情だな!僕にはあるもんね!もしも僕が1匹のグレイドラゴンで、アカシも別のグレイドラゴンだとして、アカシがお腹減ってたらゴハンあげるもん!⋯⋯あ、あと虎徹くんにも!


「銀槍竜、ちょっと銀槍竜!⋯⋯ダメだわ、このコ」

「ったく、魔物のクセに金に目が眩むなんて⋯⋯」

「コレじゃあ埒が明かねェ。メンドクセェし、オトしちまおう」

「⋯オトすったってどうやってする気なのよ?」


全くもう、人間ってホント変わった生き物⋯⋯
って、なにその手刀の構えは。ヴィ、ヴィルジールさん?確かヴィルジールさんだったよね?

僕、身体動かせないから避けれないよ?
えっ、あっ⋯⋯ちょ、痛いのはヤだよ?!


「そいッ!」


うぎゃあっ!!いったぁーーい!
⋯⋯あっ、アカシ気絶した。うそでしょ、確かに痛かったケド、そんな?

一撃かつ、正確に意識を奪う技⋯⋯
人間、なんて巧妙なんだ⋯⋯
 

「うっそ、本当に気絶したの?」

「⋯⋯どうやらその様ですねぇ」

「さっきまで本気で戦ってたアタシがバカみたいじゃない⋯⋯」  
 
アカシもボーッとしちゃって!
僕が後でお説教しなくちゃね。そんなんじゃ自然界で生きていけないよって!

⋯まぁ自然界でお金とやらに目が眩むなんて有り得なさそうだけど。


「マァ、いいだろ。とっとと運んじまおう。⋯今日はヴィルジールの奢りだぜ~」

「はぁ、お前1人分だけだからな?⋯ったく、コイツの酒の飲みっぷりときたら、いくら金あっても足んねぇぜ」

「えっ、僕もヴィルジールさんの奢りのつもりだったんですが⋯⋯」

「えっ?」

「私も」

「アタシも」

「⋯⋯⋯ちくしょう(小声)」

 
⋯⋯ウググ、まだ痛むなぁ。
って、おっとと!今日のおまけはここまでっ!

それじゃあ!バイバイっ!










⋯⋯あー、痛い痛い。
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バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

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