猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【王都編】

第46話・星の加護。

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王都クローネ、とある広場。
入り組んだ道の先にあるその広場には、滅多に人が訪れない。その理由は前述の通り、辿り着くのに一苦労するからだ。

その為、王都の一般市民ですら、この場所の存在を知っている者は数少ない。⋯⋯と、前置きはここまでとして。

その広場では現在、ちょっとした事件が発生していた。


「ばッ、莫迦なッ!?」


1歩後退りし、黒い外套姿の男は狼狽する。
正確にはこの男を含める5人の男達であるが、その点は彼らが囲んでいる相手にとって、どうでもいい事だった。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


周囲を見渡し、男達の中心にいる者は睨みを効かせる。
彼の表情には、多少の不満と疑問が浮かべられているが、その理由は2つある。

1つは、用事があるにも関わらず、足止めを食らっている現状への不満。2つ目は、何故に自分がこんな目にあっているのかという疑問だ。


(ったく、これから集会所に向かわにゃいかんってのに⋯⋯)


銀槍竜こと燗筒 紅志は、内心舌打ちをする。
つい先程に目が覚めた彼は、ヴィルジールの言っていた通り集会所へ向かおうとしていた所、襲撃にあったのだ。⋯⋯まぁ襲撃と言っても、『着いてきてください』と言われて素直に着いて行った結果がコレなのだが。


「ぜッ、☾精神支配ゼルレフト☽が効かないだと⋯ッ!?」

「そんな訳あるか!もう一度だ!」

「馬鹿を言うな!一度やって効かぬと分かった相手に──」


言い争い始めた男達を見ながら、銀槍竜は溜息をつく。
彼らの言う『ゼルレフト』という物が、何らかの魔法である事は理解していた。実際、彼らに案内されたこの広場でソレを食らったからだ。

誘導されるまま広場へ入り、中央に立った瞬間に魔法陣が起動。此方が反応する間も無く、完全に被弾したのだ。怪しげな男達と不穏な展開に、緩くは無い警戒をしていたのにもかかわらず、である。

結果としては無傷だが、魔法の発動に反応出来なかった手前、銀槍竜は内心で胸を撫で下ろす。もし今のが物理的な攻撃を発生させる魔法だった場合、ダメージは免れなかったな、と。

とはいえ、無事に済んだ事に変わりは無い。
外傷を与えないタイプの魔法だったとしても、身体に異変は見られない。男達の様子からしても、時間経過で能力が発動する様な魔法でもないらしい。


「く⋯ッ、この事がギルドマスターに知れれば、どんな処罰を受けるか分からんぞ⋯」

「か、かくなる上は⋯⋯ッ!!」


何やら覚悟を決めた様に、銀槍竜へ距離を詰める男達。
懐からを何か取り出した彼らを見ながら、銀槍竜は静かに口を開いた。


「アンタらが何者かなんて知った事じゃないが⋯⋯」

「「「!?」」」


言葉を発した魔物に、男達は目を見開かせる。
喋る魔物は初めてだったのか、それとも開口と共に銀槍竜が闘気を放ったからか⋯⋯。理由はどうであれ、男達はこの現状に動きをピタリと止めたのであった。


「アンタらが俺を殺す気なら、コッチもその気で抵抗させてもらう」


そう言い終えると同時に、銀槍竜は金属の生成を始める。
液体の様に形状を変化させる金属は、獣の唸り声にも似た不気味な音を広場に響かせた──⋯
 


NOW  LOADING⋯



一方その頃、クローネ・ギルドの集会所。
鐘の音が鳴り響く集会所内には、王都到着時に伝えられた通り、各ゼクス達が集合していた。


「お、もう集まってんな」


集合をかけた張本人であるヴィルジールは、集会所2階から下を見渡す。1階には、既に到着したゼクスメンバーの姿があり、円卓を囲んでそれぞれ時間を潰していた。


「あら」


シルビアが、階段を下りてくるヴィルジールを発見する。
直後、椅子から立とうと足に力を込めた彼女は、ほんの一瞬だけ前屈みになった。

それに際して視野も下部へと移動したが、次にヴィルジールが視界に入った時、シルビアはある事に気が付く。そして、彼女は小さく溜息を零し、浮かせた臀部でんぶを椅子へと戻したのだった。


「⋯その大きな坊やは?」


卓上へ肘を付いたシルビアは、手のひらに顎を乗せると、呆れた口調でヴィルジールへ尋ねる。彼の背にはソールが担がれており、イビキをかいていたのだ。


のやりすぎでな。⋯全く、酷い寝相の坊やだぜ」

「うィ~⋯坊やだァ?ぶっ飛ばすぞォ」

「分かった分かった。寝てろ、お前は」


おままごと⋯もとい、アルコールの大量摂取である。
魔導列車で移動していた間、満足に酒を飲めていなかったソールは、ここに来て一気に欲を解放したのだ。

王都到着時に真っ先にギルドに向かった理由も、単に集会所内で提供される酒が美味いからである。


「ホント、世話のかかる奴だな⋯」


適当な円卓を足で引き寄せ、ソールを投げ置くヴィルジール。衝撃をものともせず寝返りを打つソールを背景に、彼は他ゼクスメンバーへと号令を掛けた。


「そんじゃ、全員集まった事だし、今後の説明から入るぞ」

「⋯いや、待て」


説明に移ろうとしたヴィルジールが、軽く息を吸い込んだその時。1歩前に出たハクアが、ヴィルジールの次の言葉を遮った。


「何故、このタイミングで説明を挟む必要がある?」

「何故って⋯⋯アンタ、予定も知らずに行動するのは嫌でしょう?」


不満気な表情のハクアを、シルビアがなだめる。
シルビアはこの瞬間、不満の矛先が自身へ向くのを覚悟した。⋯⋯が、しかし、


「『予定も知らずに』⋯⋯だと?シルビア、お前聞かされていないのか?」

「⋯⋯え?」


振り返ったハクアの表情からは不満が消え、代わりに疑問で埋められているのであった。


「⋯アンタは聞かされているの?」

「あぁ。今回の迎撃戦に向け、王都ギルドマスターから挨拶がある。⋯と、俺を呼びに来たギルドの職員が言っていた」


シーン⋯と、空間が静まり返る。
『一旦集会場に集合』としか伝えられていなかったシルビアやシュレン達は、ヴィルジールへと視線を移した。

自分に集中する視線に、ヴィルジールは指で頬を掻く。
この状況に気まずさを覚えた彼は、鼻で軽い溜息をついて肩を落とした。どうやら、目の前の彼らには悪い事をしてしまったと気がついた様だ。


「いや⋯⋯まぁ、大した用事でも無いし、伝えるタイミングは適当でいいかな~⋯と?」

「ア・ン・タ・ねぇ~!」

「スマンスマン!悪かった!ごめんなさい!」

 
悪びれながらも言い訳を述べたヴィルジールの耳を、シルビアが引っ張る。膝を折り、情けない声で謝罪を行うヴィルジールを眺めながら、ハクアは顔を覆う。ここまで阿呆だとは、思ってもみなかった⋯と。


「ハァ⋯⋯もういい、ソイツはアテにならん」

「分かったわ」
  

ポイッと投げ捨てられたヴィルジールは、その場でうずくまる。
アテにならないと言われ、メンタルがやられてしまった様だ。シクシクと啜り泣く声を無視しながら、シルビア達はハクアを中心に予定の把握へと移ったのだった。


「今から、集会場3階の特別会議室へ向かう。
⋯詳しくは俺も聞かされていないが、王都のギルドマスターがわざわざ出てくる案件だ。この場の俺達だけの為、という訳ではないだろう」

「⋯僕達以外にも、誰か来るって事ですか?」

「そうだ。⋯大体の検討はつくがな」


シュレンの疑問に、ハクアは淡々と答える。
その間、完全に除け者のヴィルジールは、静かに立ち上がっていた。眉間に皺を寄せ、首を前後に撫でる彼に気が付いたのはサンクイラただ1人だった。

彼のその動作が何を示すかは、彼女には分からない。
だが、何かを深く考え込んでいるのは確かだ。⋯もしくは『何かを感じ取ろうとしている』ようにも見える。

⋯⋯と、ここまでサンクイラが思考を巡らせた時、隣にいたニナが彼女の肩を叩いた。


「いいのよ、ほっといても。バカには治療が必要なの」

「え、あ⋯⋯別にそういうワケじゃ⋯⋯」

「いいから、無視無視」 


そう言われ、サンクイラはやや強引に向きを戻される。
そして当のヴィルジールは、内心で大きく頭を捻っていた。


(⋯⋯まさか)


サンクイラの予想通り、彼は感じ取ろうとしていた。
自身の魔力感知内で動きを見せる、とある魔力の流れを。

その正体は、今まさに戦闘中の銀槍竜の魔力だった。
しかし、この王都という冒険者が無数に居る街で、ピンポイントでの魔力の判別というのは簡単では無い。

だからこそ、ヴィルジールですら魔力感知を絞る必要があったのだが⋯⋯


「兎に角、話は理解したわ。早く向かいましょ」

「おい、何しているヴィルジール。貴様もいい加減、重要性を理解しただろう」

「⋯⋯あぁ、そうだな。今行く」


ヴィルジールの集中は、途中で切れる事となった。
『考え過ぎか』と、自己納得に至った彼は、階段を上るシルビア達の後を追う。これより、銀槍竜に加勢が入る事は無かったが、問題は無かった。

ただ、この後に起こる『ちょっとした問題』を除いては──⋯
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