猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

文字の大きさ
79 / 195
1章【真実編】

第78話・久し振りだね

しおりを挟む


超火力を誇る、蒼白い爆発の直後。
バルドールは、自身の周囲に張っていた魔力結界を解除する。
焦土と化した荒野には黒煙が立ち込め、数十m先の光景すら見えない状態だった。

──しかし。

バルドールには、精度の高い魔力感知がある。
例え目視が不可能な状況⋯。仮に、両目を失明した場合でも、感知の範囲内であれば情報の把握はできるのだ。

そして、そんな彼だからこそ。
視界を黒煙が覆っていようと、銀槍竜とヴィルジールがどうなったのかを知っているのである。


「なんのマネだ?」


彼の口から、真っ先に出た言葉はコレだった。
腰に手を当て、片眉を吊り上げるその様子は、彼が大きな疑問に直面している事を意味していた。


「⋯⋯今のは、やりすぎだ」


徐々に晴れる黒煙の中から、銀槍竜が現れる。
彼は、両腕をクロスさせ防御の構えを取っているものの、その全身の殆どが焼け焦げていた。

かつて、火龍の王と呼ばれるテュラングルを仕留めた魔法は、現在の銀槍竜にも効果は大きかったのだ。


「⋯⋯ん?」


──だ が。
ほんの数秒が経った時、銀槍竜の肉体に大きな変化が起きる。
まるで、その身体に傷など無かったかの様に、全身が超回復を見せたのである。

それは、銀槍竜自身ですら意識せずに行った回復だった。
即ち、コレは単なる『肉体の自然回復』であり、本人も初めて知った【炎装えんそう形態】への移行によって発動する『1つの能力』なのであった。


「ただでさえ硬い上に、ダメージを与えても即回復⋯。お前、ホント面白いヤツだな」

「⋯すげぇ。すげぇけど、今はそれどころじゃないぜ。アンタまさか、ヴィルジールを殺す気だったんじゃないだろうな?」

「んん~どうだかな?⋯マァ、そいつの技量ならば死にはしない威力にしたつもりだな」


黒煙が晴れ、銀槍竜の背後にヴィルジールが現れる。
バルドールが魔法を使用した瞬間、銀槍竜が咄嗟にヴィルジールの前に飛び出した事で生まれた状況だった。


「──銀槍竜」

「何も言うな。何も言わなくでくれ、ヴィルジール。⋯俺は、アンタが分からなくなった」


目元を片手で覆い、銀槍竜はヴィルジールから数歩離れる。
ヴィルジールは、彼に言葉をかける訳でも無く、ただその後ろ姿を眺めていた。


「──で、どうする?」


バルドールは、腕を組んで尋ねる。
銀槍竜はヴィルジールから離れ、バルドールも両者と距離がある状態。この状況下での3人の位置関係は、まさに絶妙なバランスで成り立っていた。

つまり、、という具合なのである。

  
「⋯やめだ」


その時、銀槍竜が【炎装】を解除する。
結果、バルドールとヴィルジールの視線は彼へと向いた。


「『やめ』だと?俺は腹を斬られてるんだぜ?黙って見逃すには、事態が重過ぎる気がしねぇか?」

「ヴィルジールを見ろ、もう動ける身体じゃない。十分にやり返しただろ?」

「⋯ふん。まぁ、仮にそっちはいいとして、だ」


バルドールは、腕組みを解く。
それと同時に一歩踏み込み、彼は戦闘態勢へと移った。


「──俺とお前の決着は、まだだろう?」

「⋯勘弁してくれないか?アンタの強さは本当に凄いと思うが、今は興が冷めちまって⋯⋯」

「おい⋯⋯何を勝手に話を進めてんだ?」


ヴィルジールの額に、青筋が入る。
2人の会話を黙って聞いていた彼だったが、完全に除け者にされている事に気が付き、純粋な怒りが湧いてきたのだった。


「銀槍竜を狩るのはこの俺だ。バルドールっつったか?テメェを殺すのも俺だ。邪魔すんなら、どっちもブチ殺すぞ!!」

「おいおい。1人だけ欲張ってんじゃねえぞ、ボク。ワガママなお年頃か?」

「2人共、やめろって言ってんだろ⋯ッ!!」


表情が強ばり始める3人は、再び構えを取る。
銀槍竜は【炎装】を再発動し、バルドールは両手を銃の形に。
そして、ヴィルジールは緋黒の両剣を振り上げ⋯

焦土と化した荒野に、三つ巴が生まれた──⋯










「⋯──お楽しみ中に悪いけど、今日はここまで」


突然の声に、3名はピタリと動きを止める。
その、よく澄んだ声の主は、幼い少女であった。

白いワンピースと、同じく美しい白髪を靡かせる彼女の姿は、あまりにこの場に相応しく無い。⋯だが、そんな事など、彼ら3人からすればどうでもよかった。

年の程、8歳にも満たないであろうその少女⋯⋯いや幼女は、宙に浮いていたのだから。


「き⋯君は⋯⋯」

「やぁ、銀槍竜。久し振りだね♪」


フワリと銀槍竜の前に降り立ち、幼女は笑みを浮かべる。
状況の意味不明さに、バルドールとヴィルジールは、見守る事しかできなかった。


「突然だけど、今から私に着いてきてもらうね」

「⋯今から?何の用が──」

。今は、それだけ伝えておく。⋯⋯兎に角、急ぐよ」


銀槍竜に手をかざし、幼女は彼を浮かび上がらせる。
真剣な表情の幼女を見て、銀槍竜は思う。

──もう、なのか──

と。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...