猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【真実編】

第90話・覚悟。

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「⋯凄い」

 
無意識に出たのは、そんな言葉だった。
たった今、俺を操作した幼女は、即座に金属の生成を行った。
突然の“攻撃”に対して、それを“防御”をする為だ。

だが、本来であれば、“それ”は不可能な筈だった。
先程の“攻撃”が、どんな範囲や威力だったのかは分からない。

──ただ。

少なくとも、1を防ぐなんて、本来の俺であれば絶対に無理なのだ。


(──ん、おっけい。全員無事だね)

「一体何が──。⋯いや、何をしたんだ?アリア」

(君の能力を、私が使わせてもらった⋯。と言っても、魔力の『出力』や『変換速度』については、私の技術だけどね)

「⋯ははっ。何言ってるか分かんねー⋯」

 
空を見上げ、俺は溜息をつく。
天井があった筈のそこには巨大な風穴が空いており、その中心には一柱の金属がそびえ立っていた。村の上空まで伸びたその柱が、傘の様に村を覆う事で先の攻撃を防いだのである。

擬人化状態で生み出したというのに、普段の竜の姿より金属の生成量が多いとは。何がどうなってんだか⋯⋯。


(──考え事は後。まずは、この家を出よう)

「⋯スマン。俺が道草したばっかりに⋯」

(いや、見つかったのは私のミスだ。君に入るにあたって、私は自身を『最小化』した。その時に、村の周囲へ貼っていた結界の能力も弱まっちゃってね)

「⋯⋯⋯。⋯本当に悪かった」


罪悪感に押し潰されながら、俺は家を出る。
アレン一家を含めて、村の人々は全員が無事な様子であった。 
⋯⋯だが、突然の出来事に、混乱が広がっていくのを感じる。 

村の空を覆う謎の金属を指差し、目を見開く村の住民。
ただ事では無い現象に、武器を持って飛び出してくる冒険者。
それぞれが、動揺に突き動かされながら走り回っている。


「⋯くそ。全部俺のせいだ⋯」

(今は嘆かないで。全員ちゃんと無事だから、これからはやるべき事をやるよ⋯!!)

「⋯そうだよな。そうするしか無いに決まってる⋯ッ!!」

(うん、よく言ったっ)


──今は、やれる事をやれ、燗筒かんとう 紅志あかし
兎にも角にも、状況の把握をしない事には解決には至れない。
今後の対応については、現状の確認を済ませてからだ。


「敵は、やっぱりオーガの手下か?」

(⋯いや。それにしては、攻撃を受ける際に感じたエネルギーが強大過ぎた。⋯⋯あまり考えたくないけど、もしかすると──)

「おいッ!!」


その時、背後から此方へ叫ぶ声が響く。
振り返ってみると、そこには俺を手招く冒険者の姿があった。
他の村人達の避難誘導をしているのを見るに、『お前も早く逃げろ』と言いたいのだろう。


「やっぱり、冒険者って覚悟決まってんなぁ⋯」

(ね。この状況で、よく冷静な判断ができるものだよ)

「⋯でも、どうする?このままだと、無理にでも連れてかれそうだぞ?」

(うーん、そうだねぇ⋯。ここは1つ、私に任せて)


幼女がそう言うと、俺の身体が動き始める。
なにやら、考え方があって俺を操作しているらしいが⋯はて?
まぁ幼女の事だし、俺が疑問を浮かべた所で無意味なのだろうが⋯っと。人差し指に魔力が集中していくのを感じるな。

まさかとは思うが、あの冒険者を気絶させる気なのか?
俺の身体でそんな事されたら、悪評が⋯⋯


「──きゃあッッ!!」

 
その時、突如として甲高い悲鳴が響く。 
アレンの家から聞こえた声は、恐らく彼の母親のものだろう。
一体、何事だろうか⋯?ついさっき攻撃を防いだ時には、一家全員無事だった筈だが⋯。


──バタンッッ!!


扉を蹴飛ばして現れたのは、アレンの両親。
そして、父親の腕の中で大量に血を流しているアレンだった。


(そんな⋯ッ!?確実に守れた筈だった!!)

「あぁ、俺も見ていた。一体、何が⋯」


アレンに駆け寄り、俺は回復魔法を施す。
どういう訳か、腹部に刺し傷が生まれていたが⋯。

取り敢えず、傷を塞ぐ事には成功した。


「──あ、アレン君。君は魔法が使えるのかい⋯?」

「あ⋯。⋯えぇ、少しだけ。傷は塞いだので、あとは──」


刹那、極大の魔力が上空に現れる。
⋯⋯いや。正確には、『魔力の様な“何か”』が正しいだろう。
明確に、魔力とは異なる力を感じるが⋯他の呼称を考える暇も無い。今は、この魔力の主を確認しておくべきだな。


(──そうだね。良い判断だ)
 
「一応質問なんだが、この魔力の主に心当たりは?」

(⋯⋯⋯⋯あるよ)


⋯そうだろうな。
考えたく無かったが⋯まさか、いきなりとはな。


「──出てくるのじゃ、アルノヴィア。無辜むこの民が死ぬ事になるぞ」


天空から、老人の声が響き渡る。
今思えば、なんかムカつく声をしている野郎だぜ。


「あなた達は早く避難を。奴の用事があるのは、俺達なんで」 
   
「俺“達”⋯?」

「アレン君、何を──」

「早く行ってくれッ!!」


アレンの両親を怒鳴りつけ、俺は2人に両手を向ける。
浮遊魔法を使い、投げる様に近くの冒険者に受け渡してから、俺は再び空を見上げた。


「──よぉ、オーガ。このクソジジイ」

「⋯!?お前は!!」


俺と目が合ったオーガは、大きく目を開いた。
⋯ハハ、マヌケな顔してやがるぜ。

なぁ、幼女?


(──ふふ、そうだね)    

「⋯⋯アルノヴィア。貴様、そやつの中にいるな?最近、その男の居場所が認識できなくなっていたが⋯成程な」


徐々に降下してくるオーガは、此方を見下ろす。
雲の隙間から差す光が当たって、神々しく見えるな⋯⋯って、アイツはそもそも神だったか。 

⋯まぁいい。
今すぐにでも、あのツラをブン殴ってやるぜ⋯!!


「──ワシの転生者を、どうやってそそのかしたのかは知らぬが⋯無駄な足掻きじゃぞ」

(⋯ハッ。好き勝手言っちゃって⋯)


グン、と。
俺の身体から、圧迫感が抜けていく。どうやら、元の幼女の姿に戻る気らしい。


「──アナタ、また老けたわね」

「⋯⋯アリア⋯ッ!!」


元の姿に戻った幼女に対し、オーガは露骨に顔を顰(しか)める。
数多くの皺が刻まれた顔が、更に揉みくちゃになった表情だ。
笑える事この上ナシだぜ。


「⋯フン、まぁよいわ。──時に、紅志よ」

「なんだ」

「オヌシ⋯失望させてくれるなよ。何を騙されているのじゃ?
どんな言葉を掛けられ、どんな台詞に惑わされて、その女についているのかは知らぬが⋯⋯」

「うっせ!!いきなり平和な村に攻撃する爺さんよりは、マシに決まってんだろ!!ボケジジイ!」


オーガを指差す俺の隣で、幼女はシシシと笑う。
自分でいうのもなんだが、よくもまぁ会って2回目の老人に対してここまで暴言が吐けるもんだ。マジで、反射的というか、本能的な嫌悪感があるぜ。


「──そうか。では、与えてやった“力”は返してもらおう」


オーガは、俺に向けて手を伸ばす。
何をしようとしているのかは直ぐに察したが、ここは敢えて静観しておこう。⋯⋯いや。一言だけ、言っておこうか。
 

「「やってみろ」な♪」

「なんだと⋯?」


俺と幼女の言葉に、オーガは片眉を吊り上げる。
その直後、金色に発光を始めたオーガの右手から、俺に向けて眩い光が照射された。

──そして。

スポットライトの様な光に照らされる俺を見て、オーガは更に額へ皺を寄せる。どうやら、気付いたようだ。


「力の回収が出来ぬ⋯。精神の支配も⋯⋯!?アルノヴィア!
貴様、何をしたッッ!!」

「──覚悟、だよ」

「何だと⋯?!」

「もう、貴方とは相容れない。それを理解した。⋯⋯だから、
“貴方を殺す覚悟”をしたんだ」
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