猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【真実編】

第91話・“会いたかった”

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⋯──貴方は、私にとって友だった。
共に人々を見守り、この先の未来でも隣に立っていて欲しい。
昔の私は、そう思っていた。

⋯⋯だけど、貴方は違った。
『あの大戦争』で“魔族”に敗北し、長い眠りについた貴方は、目が覚めてから、ずっと心の奥深くで滾らせていたんだ。

神に変わって、世界を統べていた私への、

永き戦争を終えて尚、この世に蔓延はびこる魔族への、

──そして、

今まで守ってきた、守る価値など無かった人間への、復讐を──⋯





「⋯──私は、私なりに努力していたつもりだった。どうしたら、また貴方と平和に世界を見守れるのかと。どうしたら、貴方が元に戻ってくれるのかと」

「フン、下らん⋯⋯」

「そう。下らなかった。そんな淡い希望を持つなんて、下らなかったんだよ。⋯⋯だから、もう、迷わない事にした」


白く美しい長髪をなびかせ、幼女はオーガを見る。
『大戦争』だとか『魔族』だとか、詳しい事情は分からないが、一つだけ理解した事がある。

あのオーガという老人、以前は良い奴だったのだろう。
文脈から察するに、魔族という存在から人間を守っていたが、後に敗北⋯。それが原因で、長い眠りにつく事になった。

次に目覚めた時、『大戦争』は終わっていたが、未だ『魔族』は健在だったのを知って落胆。そんでもって、オーガが眠りについてからは、この幼女が世界を統治(?)していた⋯と。

⋯しかし、そこまではいいとして。
『今まで守ってきた、守る価値など無かった人間』という台詞が解せないな。後になってから、『思っていたより人間って醜いな』とでも感じたのか?


「──色々、気になる?」

「そりゃな。⋯⋯けど、それを聞くのが、今じゃない事は分かってる」


徐々にドラゴンの姿に戻り、俺は首を左右に捻る。
この時、軽くストレッチをしながら、俺はに気付いた。
⋯⋯しかし、この状況。他の考え事に頭を使う場合ではない。
詳細の確認は後として、今は目の前の事態に全神経を尖らせておこう。


「──場所を変えたいね⋯。紅志、私の肩に捕まって」

「分かった」


幼女に言われ、俺は彼女の肩を掴む。
⋯といっても、幼女の肩は極めて小さく、全身を握るような形になるワケだが。


「飛ぶよ。しっかり捕まっててね⋯!!」


次の瞬間。
手の中の幼女に僅かな力みを感じると共に、景色が一変する。
例えるなら、新幹線の窓から見る外の景色の様に。『総て』が横へと伸びていく光景が、俺の視界を埋めつくした。


「う、うおお⋯ッ!!」

「離しちゃだめだからね!」


音割れる風を感じる中、俺は必死に幼女を掴む。
大の大人が情けないなんて指差されても、文句は言えないな。
⋯まぁそんな事より、今の関心が向く先はこの幼女だ。

結構な力で握ってしまっているが、ピクリともしない。
表面に柔らかさはあるが、一定以上に力を加えると、身体の中心に鋼の芯でも入っているかの様な手応えになる。

直感的に、『傷を負わせるのは不可能』と感じさせられるぜ。


「──あ、あひひっ!ニギニギしないで!くすぐったい!」

「あぁ、悪い。つい⋯」


ふむ、くすぐったいとかは感じるんだな。
⋯⋯って、こんな事してる場合じゃないか。まぁ『幼女がいるし』と考えれば、不思議と神が相手だろうが安心するな。


「──逃がすと思うか?」


ひらり。
純白のローブを揺らして、俺と幼女の正面にオーガが現れる。
間違いなく音速以上で飛んでいた幼女に、こうも簡単に追い付くとは⋯。流石カミサマだ。


「逃げてたワケじゃないよ。やるなら、広い場所の方がいいからね」

「ほう⋯?貴様、このワシと戦う気か」


──シャン。


無数の鈴がなった様な音色が響く。
その直後、眩い光に包まれたオーガの背に、金色こんじきの美しい円が形成された。後光そのものを形作った様なソレは、俺の記憶が正しければ『光背こうはい』という名前があった筈だ。

俺の目で見ても“超”がつく程の繊細な模様があるが、どうやら光背自体が魔法陣になっているらしい。⋯といっても、どんな効果があるかまでは分からないがな。

簡単な魔法なら、魔力感知と魔法陣を見れば大体の効果や能力が察せる。⋯だが、『アレ』については、模様が細すぎて魔法と認識するのも難しい次元だ。


「──そっちこそ、私とやる気なの?確かに私の攻撃は、アナタへ届かない。⋯けど、アナタの攻撃も、私は打ち消せるし、仮に当たっても対してダメージにはならない⋯。そうなると、大事になるのは“戦闘能力の差”だ」

「ふむ。その通りじゃ。つまりは、『諦めさせる』事が勝敗になる訳じゃな。より狡猾に先手を取り続け、『相手の闘志を削りきる』⋯と」

「ふふふ⋯」


幼女は、緋く潤うオーラを纏う。
まるで蜃気楼の様に揺らめき、それでいて豪炎の如き熱気を放つソレは、『魔力』と表現するにはあまりに異質だった。


「──速度、筋力、頭の回転。全てにおいて、私の方が上だ。 
そして、1番それを理解しているのは、オーガ⋯⋯アナタでしょう?」

「⋯ふむ、確かにな。じゃが、アルノヴィア。貴様は過ちを犯した。そこの──」

「紅志の事?大丈夫だよ。この子はちゃんと守るし、その上でアナタと戦うから」

「⋯⋯それは、このワシを相手に、『片手間でも充分』と聞こえるが⋯?」

「正解っ♪」


豪ッッ。
爆音が響き、衝撃波が生まれる。

そして、俺は気が付いた。 
いつも間にか地面に立ち、周囲に結界が張られている事に。


(⋯手出は無用ってワケか。まぁそうだろうな⋯)


溜息を零しつつ、俺は空を見上げる。
アリアとオーガ。2人の戦いは、だった。

雨の日の水溜まりの水面の様に、円形の衝撃波が生まれては、次に生まれた衝撃波がソレを打ち消す⋯。到底、今の俺が手出し出来る次元では無い。

──だが。

やはり、『この感覚』は好きだ。
圧倒的格上というものを見せ付けられた時、どうしようもなく湧いてくる『欲望』が。


(いつか、絶対にあの次元に追い付いてやる⋯ッ!!)


胸の内で疼く“焔”を抑え、俺は立ち尽くす。
ただ、緋と金が炸裂し続ける、空を見上げながら。



NOW  LOADING⋯



一方その頃、混乱止まらぬ村の人々の中で。


「──うぅ⋯ッ!」

「こら、アレン!」


アレンは、無理やり立ち上がる。
猛紅竜の回復のお陰で、確かに傷は完治している。⋯⋯だが、傷を負った際の痛みのショックによって、未だ意識の回復は済んでいなかった。


「⋯アレン。貴方、どうしてをしたの?私の見間違いじゃなければ⋯⋯」

「⋯母さん」


母の言葉を遮り、アレンは遠くを見る。
その視線は、猛紅竜とアルノヴィアが飛んで行った方向へと続いていた。


「──母さん、父さん」

「「⋯⋯?」」

「愛してる」


そう言い残し、アレンは飛び立つ。
未だ、数秒程の浮遊しか出来なかった彼を突き動かすモノは、たった一つ。


──みんなを、助けなくては──


と。

手を伸ばし、何かを叫ぶ両親に、アレンは振り向かない。
真っ直ぐと前を見つめて、彼は強く拳を握りしめた。


「──会いたかったよ。『金焔竜』」
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