猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

文字の大きさ
93 / 195
1章【真実編】

第92話・ブチギレ

しおりを挟む


──ズドンッッ!!


俺の頭上で、巨大な衝撃波が発生する。
幼女の拳とオーガの持つ杖。2つが衝突した事で生まれた衝撃波は、大気を揺らす轟音となって地上に響き渡った。

幼女とオーガの戦闘。

それは最早、俺の目で追える次元のものではない。
⋯⋯だが、それでも尚、一つだけハッキリと言える事がある。
“どちらが有利で、どちらが不利か”という疑問についだ。


「──おじ~ちゃ~ん?年の瀬には勝てんかね~?」

「ハァ⋯ハァ⋯、黙れ⋯!!」


空中で仁王立ちをする幼女を、オーガは睨み付ける。
その気迫に応じる様に、オーガの周囲に金色の稲妻が走った。
しかし、怒りの形相とは裏腹に、彼の光背こうはいはエネルギー消耗を示すかの様に点滅をする。

俺は、心の中で確信をした。
無論、戦闘内容自体は、とても俺が把握できるモノではない。
⋯だが、2人の戦いに一瞬の膠着状態が生まれるたび、オーガだけは消耗の色を濃くしている。

そして、対する幼女は常に余裕の笑みがあった。
⋯となると、


(──幼女の勝ち、だな)


自信を持って、胸を張って、神に誓って、そう言い切れる。
⋯おっと。ここでの神は、あのオーガだったけか。誓うのは、幼女にでもしておこう。


「⋯今日のトコは、見逃してもいいけど。どうする?」

「抜かせ。貴様がこのワシに触れるなど、結局は叶わぬ事なのじゃ。そして此方は、眈々と反撃の時を待てば良いだけの話。その時が来るまで、幾年月でも待ってやろうぞ」

「残念だけど、仮に何兆年経ったとしてもアナタが反撃するタイミングなんて来ないよ。私のアナタとの“差”が埋まる事がないからね♪」

「⋯ふん。なんとでも言うがいい。貴様が吐く言葉の全てが、
“負け惜しみ”である事には変わりの無い事じゃ。を使い、何を企んでいるのか知らぬが──」


その時、オーガは唐突に俺へ視線を向けた。
何やら幼女とレスバを繰り広げていたらしいが、急激に表情を変えて俺を見ている。

⋯いや、そんな渋い顔でこっち見んなし。


「──アルノヴィア⋯貴様、まさか⋯?!」

「言ったでしょ。覚悟は出来ているって」

「クッ⋯、させん、絶対にさせんぞぉッ!!!」


酷く焦燥を浮かべた表情で、オーガは幼女へ突進する。
再び戦闘を開始した2人を見上げながら、地に立つ俺は思う。
『あのオーガ、能力ありきの戦い方だな』と。

確かに、奴は“自分への攻撃を別世界へ転送する能力”とやらのお陰か、傷の一つも負っていない。⋯⋯だが、“それだけ”だ。
本当にそれさえ無ければ、どうにでもなりそうな気がする。

体力の底も見えたし、攻撃も単調で大味。
『相手に打たせて反撃』という戦闘方っぽいが、それも『攻撃を無効化できる能力があるから』という点に依存している⋯。


(⋯⋯大体だが、オーガという奴について理解してきたぞ)


ざわざわざわ。
心の中で潮騒(しおさい)の音が騒がしく反響する。

⋯⋯はは、成程。
本当に、魔物ってのは血の気が多いモンだなあ。


「──アナタとの因縁も、時期に終わる!」

「アーリィィーアーーッッッ!!!」


空高く、オーガの怒号が轟く。
緋色と金色の2色が、オーロラの様に煌めく中で──⋯



NOW  LOADING⋯



「⋯──クソッ⋯、だあー!クソがァ!!」


額に聳(そび)える、1本の角。
漆黒の角と、同じく漆黒の肌を持つ、がいた。

凄まじい苛立ちに表情を歪め、音速をゆうに超える爆速で空を飛ぶこの男の正体は、何を隠そう『魔王』である。


「アイツ⋯先走りやがってコノ⋯!!」


まさにブチギレ。
彼のあまりの怒りは、巨大な魔力の渦を生み出し、周囲に大規模な被害を及ぼしていた。

大山脈に大海原。
全てを“突き破って”飛行するその様子は、魔王という肩書きに恥じぬ力の振る舞い方⋯⋯だが。

そんな男の背後に、唯一。
馬鹿げた速度と、そして莫大な魔力の奔流をものともせずに、同行する物がいた。


「──全く持って、同感でございます。あんのクソガキ、どんな風に殺してやりましょうか⋯??四肢を捻り千切り、胴には全身の穴から爆破魔法をブチ込み、生首だけにして未来永劫を生き長らえさせ⋯⋯」

「ちょ待てって、グレンデル。何が『同感』だよ。お前って、時々めっちゃ怖いコト言うよな?まじチビりそうになるから⋯やめて?」

「失礼しました」


大きく湾曲した2本角。
グレンデルと呼ばれた男は、素っ気なく謝罪をする。一応は『上司と部下』という立場がある2人だが、部下の暴言に流石の上司も引き気味な様子。

そんなギャグの様なやり取りの最中にも、周囲への被害は増す一方であった。


「──やれやれ。兎に角、今は⋯⋯」


そこまで言い、魔王は正面を見る。
その視線の果てしなく先。星廻龍と偽神オーガ、そして猛紅竜がいる場所へと、彼らは速度を上げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...