猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第94話・確認

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 “魔王の城”。
 意外にも、そこは豪華絢爛な場所ではなく、寧ろ廃墟の様な雰囲気が漂っている。
 辺り一帯が暗く、昼間だというのに夜より深い闇に覆われていた。
 文字通り、不気味という表現が似合う所だ。
 
「あの⋯⋯」

 声が、周囲の暗闇に消えていく。
 一人、広間の中心にポツンと立たされいる俺は、辺りを見渡す。
 これといって目立つ物も見当たらないが、一つだけ気になる物があった。
 正面にある大階段の最上部、その先に置かれる玉座だ。
 言ってしまえばただの椅子なんだが⋯⋯。得体の知れない禍々しさがある。

「⋯⋯ん?」

 ふと、俺は目を細める。
 大階段の下部の所に人の影──らしき物──が見えたからだ。
 胡座をかく様な体勢の影には大きな角が生えており、人間では無い事を物語っていた。
 そして、その影の少し上。また別の影が出現している事に、俺は気が付く。
 手すりに寄り掛かり、腕を組んでいる様子の影には、同じく大きな角が生えている⋯⋯。
 と、そこまで認識した時だった。
 更にもう1つの影が、大階段の最上部付近で揺らいだのは。
 
「──あ、あのう⋯⋯?」
「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」」」

 ジロリ。
 声を発した俺に、複数の視線が突き刺さる。
 凄まじい威圧感に押し潰されそうになりつつ、俺は勇気を出して言葉を続けた。

「そもそも、事情がよく分かってないんですけど⋯⋯。
 まず、今ってどういう状態なんです⋯⋯?」
 
 しーん⋯⋯と、静寂が広がる。
 俺を見つめる者達は、質問に答える訳でも無視をする訳でも無く、ただじっと此方を眺めていた。
 不思議な事に、“奴ら”からは全く魔力を感じないが⋯⋯これだけは断言出来る。
 この場の全員が、俺なんか指先一つで消せる存在である、と。

「──君を保護してから、私は“この場所”を目指して歩いていたワケじゃない」

 俺の後方。
 広間への入口から、幼女が入ってくる。
 俺は安堵感が表情に出ぬよう堪えたが、いつの間にか自ら幼女へと歩み寄っていた。

「⋯⋯えっと、それで?」
「私が目指していたのは、魔王の魔力感知の範囲内だ。
 そして、ついさっき、やっとって感じだね」

 此方へ歩いてくる幼女は、事情の説明をする。
 どうやら、魔力感知の範囲に入る事で、向こう側から来てくれるのを待っていたらしい。
 オーガとて、魔王を相手に派手な立ち回りは出来ない様だったし、幼女としては作戦勝ちといった所か。
 
「──そういえば、アレンはどうなったんだ?」
「⋯⋯村に飛ばしておいたよ。こんなトコに連れてくる訳にもいかないからね。
 大丈夫。片が付いたら、ちゃんと治しにいくよ」
「そうか。⋯⋯両親に事情を説明してやらなくちゃな」

 ⋯⋯⋯⋯うむ。
 息子のあんな姿を見て、ショックを受けない親はいないだろう。
 いつか、話せる事は全て話して、丁寧に謝罪をするべきだ。

「それで。俺は何をすれば──」
「戻ったぞ」

 その瞬間。
 風切り音を立てて、俺の真横に“何か”が飛来した。
 
「「「おかえりなさいませ、魔王様」」」

 一糸乱れぬ動きで、男達が片膝をつく。
 彼ら全員に大きな角が生えており、先程の影である事が容易に理解できた。

「人前だ。堅いのはよせよ」
「「「失礼しました、魔王様」」」
「言ったそばから⋯⋯」

 魔王──ゼルだったか?──は、頭をポリポリと掻く。
 幼女に続いて広間に入って来た彼は、真っ直ぐと大階段を登り、玉座へ腰を下ろした。
 ⋯⋯成程、“王の座”とはよく言ったもんだ。魔王の存在感が、座った途端に上がったぞ。

「──さて、自己紹介はしたぞ。
「⋯⋯あ。紅志(あかし)です。燗筒(かんとう) 紅志(あかし)。24⋯⋯ぁいや、25歳です。
 以前は普通のサラリーマンとして働いていて、今はグレイドラゴンとして過ごしてます」
「おう。後半の説明は要らなかったが⋯⋯まぁいい。
 ──詳細はアリアから聞いているか?」
「はい⋯⋯」
 
 魔王の問に、俺は聞いた話を伝えた。
 オーガと幼女・魔王との因縁や、俺の出生から今までした経験の真実。
 そして、それは全て、俺にオーガを倒せる力を身に付けさせる為に仕組んでいたという事を。
 しかし、話を聞き終えた際の魔王の表情は、どうも浮かない様子。
 
 ──間違った説明をしてしまった──

 その考えに至った途端。
 全身から、血の気が引いていった。
 
「その通りだ。いや、よく理解している」
「⋯⋯あの」
「だが、だ。本来の話なら 、まだその時期では無いハズだ。
 ⋯⋯何故、このタイミングだった。──アリア?」

 視線を幼女へ移し、魔王は肘を着く。
 腰に両手を当て、幼女は得意げなカオで説明を始めた。

「あなたも、私も。このコの成長速度を見誤っていたんだよ。
 凄いよ、彼は。もう“訓練”を始めてもいいくらいに」
「ヘえ? 確かにソイツの成長ぶりに興味があったが、そこまでか?」
「そこまで、だよ」
「⋯⋯面白い。だが、一つだけ確認だ。
 実際に“訓練”を始めてもいいか、俺自身の目で確かめたい」

 ⋯⋯訓練ってなんだ?
 まさか、俺の自己努力でオーガを倒せる様になれって話なのかよ!? 聞いてねー!
 力を分け与えるとか、強力な武器をくれるとか、そういう感じのを考えてたわーー!!
 オンリーなのね! 俺の頑張りオンリーで、オーガを倒せってワケなのね!
(⋯⋯ってなのを、直接言えたらなぁ)
 くそう。あんなヤバそうな相手に、言える訳がないぜ。

「──じゃあ、紅志」
「はい?」
「アレ、見せてあげてよ」
「あぁ⋯⋯分かった」

 ごうッ。
 そんな音を響かせて、広間が紅色に照らされる。
 ⋯⋯ううん。どうやら、さっきの“蒼い炎”は見当たらないな。
 自分でもよく分からないが、あの力を上手く使えたら飛躍的に成長出来る気がするんだよな⋯⋯

「ホォ、こいつぁすげえな。
 その若さでなら、将来的な可能性はとんでもねぇぞ?」
「ど、どうも⋯⋯」

 どうやら、お墨付きってワケらしいな。
 ここは素直に喜んでおくべきか。無理だな。そんなテンションじゃないな。

「──いいだろう、気に入った。
 紅志お前、今回の一件が終わったらウチに来いよ。歓迎するぜ」
「え、あ⋯⋯あはは。前向きに検討しときますね⋯⋯」

 うん、絶対にやだ。
 どさくさに紛れて、逃げおおせてやるぜ。

「ぃよっし! そうと決まれば早速だ!
 まずは、魔力の操作から──」
「待て待て、アリア。先に、“ウチのやつら”を紹介させろ」
「おっと、失礼♪」
「──ったく。⋯⋯おい、お前ら 」

 魔王の合図と共に、3人の男達が俺へ振り向く。
 そして、本能が直感した。


 
 コイツらはヤバい、と。
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