猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第110話・穏便に済ませよう

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「──だから、な? 今回の件については、俺達ゃ関係ねぇんだって」
  
 机に片肘を付き、魔王ゼルは掌に顔を乗せる。
 呆れ気味に溜息を着いた彼は、気怠げな表情を正面の老人に向けた。

「関係ないだと? 魔王にも冗談が言えるとは驚きだ。
 神だ、悪魔だ、猛紅竜だなどと、“今の話”をこの私に信じろとでも言いたいのか?」
「あ? なんだよ、分かってんじゃねえか」
「このッ、貴様ァ⋯⋯!!」

 ブチ抜かれたアーチ窓を背景に、エスキラの額に青筋が入る。 
 次の瞬間には拳を突き出す勢いのエスキラだったが、彼もまた人類のトップの1人。
 一度の歯軋りで感情を抑え込んだ後、彼は改めて魔王へと向き合った。

「──ほざくなよ? あれだけの被害を出しておきながら、『人類との戦いは望んでいない』だと?
 そちらから仕掛けてきておいて、黙って見逃すとでも思っているのか⋯⋯!!」
「いや、だから、そもそも俺達は何も──
 ⋯⋯チッ。あぁクソが。下手(したて)になって聞いてりゃあ、テメェこの野郎」
「まぁ~まぁ! “穏便に済ませよう”って言ったでしょ!
 2人とも子どもじゃないんだから、ね?」

 エスキラと魔王の間に、幼女が割って入る。
 長い付き合いがあるゼルはさておき、この場に見合わない存在にエスキラは口を噤んだ。
  酷く困惑する様子のエスキラは、額を覆ってため息をつく。
 魔王と幼女。両者を交互に見比べたエスキラは、静かに煙草へ火を付ける。
 そして1口だけ吸った後に、ようやく口を開いて疑問を投げかけた。

「⋯⋯この際、その小娘が何者なのかは問わん。
 だが、魔王ゼルよ。仮に貴様の話が真実であるならば、我々人類に協力を求める理由は何だ?」
「ハッ、やっと“話し合い”ができるな。いいぜ、答えてやる。
 まずは訂正からだ。俺ら魔王軍お前ら人類が『協力する』ってのは間違いだぜ。
 この話は、あくまでも『休戦』の申し入れだ。
 俺達が事を終わらせるまで、お前らは静か~にしてくれればいい。ここまでは分かるな?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。⋯⋯⋯⋯むう。
 その話を、私に信用させる程の証拠は?」
「──それに関しては、私から話すよ。
 と言っても、ここでどうこう説明をするよりかは、“実際に見た方が早い”っていう提案な訳だけど」
「実際に⋯⋯? まさか、貴様らの根城に顔を出せとでもいうのか!?」

 そのまさかだよ。と、幼女はエスキラに笑みを浮かべる。
 “莫迦莫迦しい”という台詞を放ちそうになるエスキラだったが、それに先んじて魔王が口を開いた。

「お前が信用するかしないのか、ぶっちゃけそれはどうでもいい。
 いざとなったら、人類を潰した後に俺らは行動を始めればいいワケだしな。
 ⋯⋯だが、お前も上に立つモンなら分かんだろ?
 互いに手間は取りたくねぇ身だし、ここは一つ“仲良しごっこ”をしようじゃねえの」
「⋯⋯く、見通してくれる」

 クールかつ不敵な笑みの魔王に対し、エスキラは煙草を吹かす。
 ちりちりと微かな音だけが聞こえる部屋の中で、魔王と幼女は静かにエスキラの返答を待った。




「⋯⋯では、段取りから聞かせて貰おうか──⋯」
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