猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第118話・連続

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──パァンッッ!!

 高い破裂音の直後、俺の拳が音の“発生源”を。 
 先手必勝だと速攻で仕掛けたものの、あの野郎。
 素早いだけあって、やっぱり反応速度もピカイチだぜ。
 その反応速度に比例した、回避行動までの時間の短さ。なにより、そこからの回避速度が尋常ではない。
 いやマジで。単なる回避行動の、しかも初動の時点で音速を超えるとか、流石に笑っちまう。

「──あーっ、思い出した 思い出した。そいつアレだ。
 確か、『金翔竜(きんしょうりゅう)』って名前だ」

 後ろで見守るティガから、そんな言葉が聞こえてくる。
 金翔竜。まぁ見るからにって感じだが、銀槍竜より強そうな名前で羨ましいなぁ。
 ⋯⋯待てよ? そういえば、幼女が『君の個体名が変わったらしい』って言ってた気がする。    
 そう、確か⋯⋯猛紅竜だとか。
 偶然なんだろうが、名に“紅”が入るとはな。嬉しいぜ。

「キュルアァァ──ッッ!!」
「⋯⋯っと、」

 いかんいかん、今は相手に集中しなければ。
 金翔竜は現在、上空を旋回して俺への攻撃タイミングを測っている状態か。
 やるべき事は行動パターンの分析と⋯⋯。そうだな、攻撃力も把握しておきたい所だ。
 折角だし、一撃くらいなら貰っておくかね。

「スゥ──⋯ッ」

 息を、深く吸い込む。
 防御の構えを取った俺に対し、金翔竜は高速で旋回。
 前方45°程度の上空から、急激に加速を始めた。
(──やはり速い。直撃まで、あと2秒くらいか⋯⋯)
 十分だ。2秒もあれば、致命傷を避けつつ威力を測る体勢を整えられる。
 といっても、その2秒は普通の人間でいう2秒だがな。
 意識を集中させれば、たった2秒は俺の中で4秒にも10秒にも増幅させれる。
 ⋯⋯はは、コレも魔王城での特訓の賜物だな。
 
「⋯⋯ふぅ」

 さて集中だ。
 胴体は当然として、頭部と脚部への直撃も避けたい所だな。
 しっかし、ただの様子見で片腕を犠牲に⋯⋯というのもナンセンスか。
 ──どれ。ここは1つ、をするかね。
 
「キュルアッッ!!」
「────。」

 金翔竜の、速度を翼の先端に乗せた攻撃。
 すれ違いざまに放ってきたソレに対し、俺は即座に立ち位置を変更する。
 金翔竜の翼での殴打が、俺の胸元に当たる様に。
 そして──

「ほっ、と⋯⋯」

 殴打された方向へ、。 
 その結果、俺は吹き飛ばされるでも、鎖骨が折れるでも無く、その場で縦に一回転するだけで留まった。
 武術の中では、“化勁(かけい)”と呼ばれる技に当てはまるだろうか。
 
「キュルルッ!?」
「⋯⋯面白ぇ芸当だなァ」

 金翔竜とティガが、それぞれの反応を見せる。
 ティガは兎も角、金翔竜は攻撃に対応された事に加えて、その対応法について困惑している様子だ。
 まぁ速さが自慢の魔物だし、攻撃が回避されるなんてシチュエーションは頭に無かったのだろう。
 回避方法に関しては、何が起こったかすら理解して無さそうな表情だ。

「──見くびんなよ? 確かにお前は速いが、攻撃の動きは直線的で判断しやすいんだ。
 目で追えないからと言って、攻撃に対応出来ないとは限らないんだぜ!」

 ドヤッ! と、俺は金翔竜に言ってみせる。
 ふへへ。事実しか言ってないつもりではあるが、相手の動揺を見ると少し強気になってしまうなぁ。

「キュルルァァッ!!」
「来いッ!」

 再び飛翔する金翔竜に、今度は攻撃の構えを取る。
 金属生成により、背後に銀槍を無数に作成。
 音速飛行中の金翔竜を狙い、操作魔法にて一斉に飛ばした。

「──おいおい、待て待て」
「⋯⋯ティガ?」

 不意に、後ろからティガが声を掛けてくる。
 俺の隣に並んだティガは、首を横に振りつつ呆れ顔を浮かべていた。
 
「初めに言ったろ? 『技を伸ばす』ってよォ」
「いや⋯⋯だって今のアイツに飛拳は当たんないし⋯⋯
 せめて動きが鈍った瞬間か、行動範囲を限定したタイミングじゃないと⋯⋯」
「ほら、ソレだぜソレ。俺はこうも言ったよな?
 『技ってのは、いずれ“そういう技”としか認識できなくなる』って。
 まぁ、お前の場合は、技が出来たてだから“別の使い方”が浮かばねぇのも分かるが⋯⋯」
「別の⋯⋯?」

 ハテナを表情に浮かべる俺に、ティガは金翔竜を指差す。
 驚異的な運動能力で銀槍を回避する姿は、凄腕パイロットが搭乗する高性能の戦闘機の様だ。
 描く軌跡に美しささえ覚えてしまう所だったが、直後のティガの行動で俺は目を覚ます事となる。

──ボッッ!!

 ティガが、唐突に拳を突き出す。
 顔面直撃は辛うじて躱せた俺であったが、追加で打たれた脇腹への一発が命中。
 その場に、膝から崩れ落ちる事となった。

「ガハッ⋯⋯?!」
「──分かったか?」
「な、何が⋯⋯」
「分かったかッ!?」

 分かってたまるか! という言葉すら出せず、俺は蹲(うずくま)る。
 今のは効き過ぎる。衝撃で、肋骨は勿論、骨盤辺りもヒビいってそうだ。
 一体、俺は何を間違えたんだ⋯⋯!?

「うし、立てるな。じゃあもう1度だ。
 お前が間違える度に、俺が一発殴る。それでいくぞ」
「えぇ⋯⋯」

 くそう。何をどうすればいいんだ。
 取り敢えず、金属生成を解除した方が良さそうだが⋯⋯。
 いやでも、対空能力に関しては、単発の飛拳より銀槍の質量攻撃の方が向いているんだよなぁ。
 ⋯⋯といっても、金翔竜の運動能力が相手じゃ、☾操作(フーへ)☽の精度じゃ追い付けないのもあるか⋯⋯?
 
「キュルルルァ──ッッ!!」
「く⋯⋯」

 こんな時に、金翔竜め調子に乗りやがって。
 こちとら、ティガの腹パンで死にそうだっつーの!!
 攻撃するには飛拳しか無さそうだが、単発系の攻撃じゃ⋯⋯ウグッ。
 やっぱり打たれた所が痛てぇ。こんなんじゃロクに集中もできないぜ⋯⋯

──キュンンッッ!!

 急加速。
 負傷箇所を押さえる俺を見て、金翔竜が動く。
 ここぞとばかりに迫り来る金翔竜に、俺は咄嗟に防御の構えを取った。
 刹那、全身に衝撃が響き渡る。
 俺より大きな図体と、圧倒的な速度。それを活かした突撃技は、恐ろしい程の威力であった。

 ──質量×速度×敵意=攻撃力──

 全身で受けた俺は、派手に吹き飛ばされた。
 分かってはいたが、マトモに食らうとここまでのダメージになるのかよ⋯⋯!!
 防御した両腕が、骨が見える程にひしゃげてるぜ⋯⋯ッ。
 ちぇ。温存⋯⋯というか、これナシで乗り切りたかったが、背に腹はかえらないってヤツだな。
 
「⋯⋯⋯⋯はぁ」
 
 メラメラと、俺の二本角に蒼炎が灯る。
 首筋に沿って肩へと、肩から広がり肘へと。背を駆け抜け、紅と蒼は全身を包み込む。
 ──炎は全身に滾(たぎ)り、そして拳へと装備された。
 
「ふッ!!」

 吹っ飛ばされる体勢から、地面に脚を突き出す。
 急停止した俺の眼前に、僅かに遅れて金翔竜が到着する。  
 突然姿が変化した俺に、目を大きく見開く金翔竜。
 だが、次の瞬間に思考が追い付く隙を与えず──

「はァッ!!」

 一撃。
 胴体へ向けて、正拳突きを放った。
 
「キュルオッ!?」

 咄嗟に。といった様子で、金翔竜が防御を行う。
 ふむ、流石の反応速度だな。ギリギリだが、上手く防がれてしまった様だ。
 オマケに、四枚もある翼を全て重ねる事で、胴体へのダメージを大きく軽減したらしい。
  
「⋯⋯ン?」
「キュルルオォ────ッッッ!!」

 吹き飛ぶ直前の金翔竜が、妙な行動を取る。
 飛ばされる方向と同じ方へ、自身も加速して見せたのだ。
(受けた衝撃に対して、“抵抗”ではなく“同調”した⋯⋯?
 被ダメージを減らす行動としては、最適解だが──)
 先の俺の行動を模倣したのか、本能的にその答えに辿り着いたのか⋯⋯。
 いや、どっちでも構わないか。
 ここは魔王が住む領域。その程度、野生の魔物だろうが出来なくては。

「──さぁ、紅志。見せ所だぜ?」

 いつの間にか背後にいたティガは、腕を組んで笑う。
 言われるまでもないと笑って返した俺は、再び金翔竜へと向き合った。

「キュルルアァアアァァ────ッッッ!!!」
「────。」

 猛る金翔竜を正面に、俺はふと自身を見る。
 ティガに受けたパンチの跡は治っているが、思い出すだけで痛みの感覚に襲われる程だ。
 ただあの時から、少しだけ疑問が残っていた。
(──向こうは不意打ちで、俺の回避は遅れた⋯⋯)
 
 本来、ティガの攻撃を俺が避けれるなど、有り得無い事だ。
 2発目が当たったのを鑑(かんが)みるに、当てる気はあった筈。
 であるならば、なぜ初撃は回避できたのか?
 答えは、唯1つ。“回避させた”。

「ふッ!!」

 飛拳。
 蒼い魔力の弾丸が、拳の形となって打ち出される。
 銀槍を遥かに凌駕するその速度は、確実に金翔竜を捉えて直進した。

「キュアァッ!?」

 自身を捉え、迫る攻撃。
 金翔竜は、激しく動揺した様子をみせる。
 だが、敵もさる者。間一髪で回避を行い、翼の先端を掠める程度の被害に抑えた。
 ──が、そこまでが此方の想定通りである。

「はァァッ!!」

 再度、飛拳。
 より強い力で踏み込み、打ち出す。
 より早い速度で迫る攻撃に、金翔竜はますます混乱した。
 そして選択。回避を捨て、俺へと突撃を開始した。
 ⋯⋯成程。相打ち覚悟という訳らしい。

──バチィィンッッ!!

 金翔竜の突進と、俺の飛拳。
 真正面から衝突した二つは、大きな衝撃波を生んだ。
 そして、その直後。蒼色の余波を突き抜けて、金翔竜が姿を現す。
 直撃し、全身に重傷を負ったにも関わらず、金翔竜の闘志は消えていなかった。
 いや寧ろ、だからこそ、か。
 最後まで諦めず、限界を超えて勝利に執着する──。
 
「⋯⋯来いよ」
「キュルルルルァアアァァァ────ッッ!!」

 美しいな、魔物は。
 戦い、そして勝つ。それこそが、魔物の生存本能だ。
 生きる。生きた。生きていた。その証を示し、認められてこそ、初めて生存していたと云える。

 来いよ、金翔竜。
 俺達は、魔物だ。

「「────ッ!!」」

 迫る金翔竜に、俺は拳を引く。
 大地に根を張る様に、脚を置いて腰を落とす。
 相手の、さらにその先。地平線まで打ち抜く意思を持ち、前へと一歩踏み込む。
 加減は許されない。相手が全力で向かってくるならば、こちらもまた全力でゆく。
 それが、命のやり取りをする者達に課せられた、ただ一つの責任なのだから。

「はッッ!!」
「キュルル──」

 飛  拳  、三  度。

 全力で打った一撃は、蒼の光線となり金翔竜を貫く。
 俺の僅か上空を通過し、金翔竜は地面に激突した。
 最期まで闘志を燃やし続けたソイツは、ゆっくりと目を瞑る。
 鮮やかな血雨が草原に散る中で、俺は静かに拳を握り締めた。

「──ティガ」
「おう、なんだ?」
「感謝する」
「⋯⋯あァ、よくやった。折角だ、飯にしようぜ」

 ティガに肩を叩かれ、俺は金翔竜へと振り返る。
 無論、あのまま放置する訳にもいかない。
 命のやり取りを終えた後。そこからは、自然の摂理だ。
 弱肉強食。勝った方が食い、負けた方が食われる。
 敵を糧とし、自己を高める。
 責任では無い、義務では無い。これは摂理そのものだ。

「──まぁ、そうだな。飯ィ食いながら、反省会とでもいこうか」
「あぁ。ティガのお陰で、色々気付かされたぜ。
 まずは飛拳の使い方からだな──⋯」



  ⋯──本日の鍛錬成果。
 金翔竜との実戦により、飛拳の使用用途の拡大に成功。
 使用魔力を抑え、威力・射程・速度が減少する代わりに、連続使用に向いた飛拳。
 大きな魔力を込め、一撃の威力・射程・速度に重きを置く飛拳。
 二種の飛拳を学習した。

 今後、更なる成長の可能性がある──
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