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1章【地獄のスパルタ訓練編】
第118話・連続
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──パァンッッ!!
高い破裂音の直後、俺の拳が音の“発生源”をすり抜けた。
先手必勝だと速攻で仕掛けたものの、あの野郎。
素早いだけあって、やっぱり反応速度もピカイチだぜ。
その反応速度に比例した、回避行動までの時間の短さ。なにより、そこからの回避速度が尋常ではない。
いやマジで。単なる回避行動の、しかも初動の時点で音速を超えるとか、流石に笑っちまう。
「──あーっ、思い出した 思い出した。そいつアレだ。
確か、『金翔竜(きんしょうりゅう)』って名前だ」
後ろで見守るティガから、そんな言葉が聞こえてくる。
金翔竜。まぁ見るからにって感じだが、銀槍竜より強そうな名前で羨ましいなぁ。
⋯⋯待てよ? そういえば、幼女が『君の個体名が変わったらしい』って言ってた気がする。
そう、確か⋯⋯猛紅竜だとか。
偶然なんだろうが、名に“紅”が入るとはな。嬉しいぜ。
「キュルアァァ──ッッ!!」
「⋯⋯っと、」
いかんいかん、今は相手に集中しなければ。
金翔竜は現在、上空を旋回して俺への攻撃タイミングを測っている状態か。
やるべき事は行動パターンの分析と⋯⋯。そうだな、攻撃力も把握しておきたい所だ。
折角だし、一撃くらいなら貰っておくかね。
「スゥ──⋯ッ」
息を、深く吸い込む。
防御の構えを取った俺に対し、金翔竜は高速で旋回。
前方45°程度の上空から、急激に加速を始めた。
(──やはり速い。直撃まで、あと2秒くらいか⋯⋯)
十分だ。2秒もあれば、致命傷を避けつつ威力を測る体勢を整えられる。
といっても、その2秒は普通の人間でいう2秒だがな。
意識を集中させれば、たった2秒は俺の中で4秒にも10秒にも増幅させれる。
⋯⋯はは、コレも魔王城での特訓の賜物だな。
「⋯⋯ふぅ」
さて集中だ。
胴体は当然として、頭部と脚部への直撃も避けたい所だな。
しっかし、ただの様子見で片腕を犠牲に⋯⋯というのもナンセンスか。
──どれ。ここは1つ、アレをするかね。
「キュルアッッ!!」
「────。」
金翔竜の、速度を翼の先端に乗せた攻撃。
すれ違いざまに放ってきたソレに対し、俺は即座に立ち位置を変更する。
金翔竜の翼での殴打が、俺の胸元に当たる様に。
そして──
「ほっ、と⋯⋯」
殴打された方向へ、同時に身体を動かす。
その結果、俺は吹き飛ばされるでも、鎖骨が折れるでも無く、その場で縦に一回転するだけで留まった。
武術の中では、“化勁(かけい)”と呼ばれる技に当てはまるだろうか。
「キュルルッ!?」
「⋯⋯面白ぇ芸当だなァ」
金翔竜とティガが、それぞれの反応を見せる。
ティガは兎も角、金翔竜は攻撃に対応された事に加えて、その対応法について困惑している様子だ。
まぁ速さが自慢の魔物だし、攻撃が回避されるなんてシチュエーションは頭に無かったのだろう。
回避方法に関しては、何が起こったかすら理解して無さそうな表情だ。
「──見くびんなよ? 確かにお前は速いが、攻撃の動きは直線的で判断しやすいんだ。
目で追えないからと言って、攻撃に対応出来ないとは限らないんだぜ!」
ドヤッ! と、俺は金翔竜に言ってみせる。
ふへへ。事実しか言ってないつもりではあるが、相手の動揺を見ると少し強気になってしまうなぁ。
「キュルルァァッ!!」
「来いッ!」
再び飛翔する金翔竜に、今度は攻撃の構えを取る。
金属生成により、背後に銀槍を無数に作成。
音速飛行中の金翔竜を狙い、操作魔法にて一斉に飛ばした。
「──おいおい、待て待て」
「⋯⋯ティガ?」
不意に、後ろからティガが声を掛けてくる。
俺の隣に並んだティガは、首を横に振りつつ呆れ顔を浮かべていた。
「初めに言ったろ? 『技を伸ばす』ってよォ」
「いや⋯⋯だって今のアイツに飛拳は当たんないし⋯⋯
せめて動きが鈍った瞬間か、行動範囲を限定したタイミングじゃないと⋯⋯」
「ほら、ソレだぜソレ。俺はこうも言ったよな?
『技ってのは、いずれ“そういう技”としか認識できなくなる』って。
まぁ、お前の場合は、技が出来たてだから“別の使い方”が浮かばねぇのも分かるが⋯⋯」
「別の⋯⋯?」
ハテナを表情に浮かべる俺に、ティガは金翔竜を指差す。
驚異的な運動能力で銀槍を回避する姿は、凄腕パイロットが搭乗する高性能の戦闘機の様だ。
描く軌跡に美しささえ覚えてしまう所だったが、直後のティガの行動で俺は目を覚ます事となる。
──ボッッ!!
ティガが、唐突に拳を突き出す。
顔面直撃は辛うじて躱せた俺であったが、追加で打たれた脇腹への一発が命中。
その場に、膝から崩れ落ちる事となった。
「ガハッ⋯⋯?!」
「──分かったか?」
「な、何が⋯⋯」
「分かったかッ!?」
分かってたまるか! という言葉すら出せず、俺は蹲(うずくま)る。
今のは効き過ぎる。衝撃で、肋骨は勿論、骨盤辺りもヒビいってそうだ。
一体、俺は何を間違えたんだ⋯⋯!?
「うし、立てるな。じゃあもう1度だ。
お前が間違える度に、俺が一発殴る。それでいくぞ」
「えぇ⋯⋯」
くそう。何をどうすればいいんだ。
取り敢えず、金属生成を解除した方が良さそうだが⋯⋯。
いやでも、対空能力に関しては、単発の飛拳より銀槍の質量攻撃の方が向いているんだよなぁ。
⋯⋯といっても、金翔竜の運動能力が相手じゃ、☾操作(フーへ)☽の精度じゃ追い付けないのもあるか⋯⋯?
「キュルルルァ──ッッ!!」
「く⋯⋯」
こんな時に、金翔竜め調子に乗りやがって。
こちとら、ティガの腹パンで死にそうだっつーの!!
攻撃するには飛拳しか無さそうだが、単発系の攻撃じゃ⋯⋯ウグッ。
やっぱり打たれた所が痛てぇ。こんなんじゃロクに集中もできないぜ⋯⋯
──キュンンッッ!!
急加速。
負傷箇所を押さえる俺を見て、金翔竜が動く。
ここぞとばかりに迫り来る金翔竜に、俺は咄嗟に防御の構えを取った。
刹那、全身に衝撃が響き渡る。
俺より大きな図体と、圧倒的な速度。それを活かした突撃技は、恐ろしい程の威力であった。
──質量×速度×敵意=攻撃力──
全身で受けた俺は、派手に吹き飛ばされた。
分かってはいたが、マトモに食らうとここまでのダメージになるのかよ⋯⋯!!
防御した両腕が、骨が見える程にひしゃげてるぜ⋯⋯ッ。
ちぇ。温存⋯⋯というか、これナシで乗り切りたかったが、背に腹はかえらないってヤツだな。
「⋯⋯⋯⋯はぁ」
メラメラと、俺の二本角に蒼炎が灯る。
首筋に沿って肩へと、肩から広がり肘へと。背を駆け抜け、紅と蒼は全身を包み込む。
──炎は全身に滾(たぎ)り、そして拳へと装備された。
「ふッ!!」
吹っ飛ばされる体勢から、地面に脚を突き出す。
急停止した俺の眼前に、僅かに遅れて金翔竜が到着する。
突然姿が変化した俺に、目を大きく見開く金翔竜。
だが、次の瞬間に思考が追い付く隙を与えず──
「はァッ!!」
一撃。
胴体へ向けて、正拳突きを放った。
「キュルオッ!?」
咄嗟に。といった様子で、金翔竜が防御を行う。
ふむ、流石の反応速度だな。ギリギリだが、上手く防がれてしまった様だ。
オマケに、四枚もある翼を全て重ねる事で、胴体へのダメージを大きく軽減したらしい。
「⋯⋯ン?」
「キュルルオォ────ッッッ!!」
吹き飛ぶ直前の金翔竜が、妙な行動を取る。
飛ばされる方向と同じ方へ、自身も加速して見せたのだ。
(受けた衝撃に対して、“抵抗”ではなく“同調”した⋯⋯?
被ダメージを減らす行動としては、最適解だが──)
先の俺の行動を模倣したのか、本能的にその答えに辿り着いたのか⋯⋯。
いや、どっちでも構わないか。
ここは魔王が住む領域。その程度、野生の魔物だろうが出来なくては。
「──さぁ、紅志。見せ所だぜ?」
いつの間にか背後にいたティガは、腕を組んで笑う。
言われるまでもないと笑って返した俺は、再び金翔竜へと向き合った。
「キュルルアァアアァァ────ッッッ!!!」
「────。」
猛る金翔竜を正面に、俺はふと自身を見る。
ティガに受けたパンチの跡は治っているが、思い出すだけで痛みの感覚に襲われる程だ。
ただあの時から、少しだけ疑問が残っていた。
(──向こうは不意打ちで、俺の回避は遅れた⋯⋯)
何故、躱せた?
本来、ティガの攻撃を俺が避けれるなど、有り得無い事だ。
2発目が当たったのを鑑(かんが)みるに、当てる気はあった筈。
であるならば、なぜ初撃は回避できたのか?
答えは、唯1つ。“回避させた”。
「ふッ!!」
飛拳。
蒼い魔力の弾丸が、拳の形となって打ち出される。
銀槍を遥かに凌駕するその速度は、確実に金翔竜を捉えて直進した。
「キュアァッ!?」
自身を捉え、迫る攻撃。
金翔竜は、激しく動揺した様子をみせる。
だが、敵もさる者。間一髪で回避を行い、翼の先端を掠める程度の被害に抑えた。
──が、そこまでが此方の想定通りである。
「はァァッ!!」
再度、飛拳。
より強い力で踏み込み、打ち出す。
より早い速度で迫る攻撃に、金翔竜はますます混乱した。
そして選択。回避を捨て、俺へと突撃を開始した。
⋯⋯成程。相打ち覚悟という訳らしい。
──バチィィンッッ!!
金翔竜の突進と、俺の飛拳。
真正面から衝突した二つは、大きな衝撃波を生んだ。
そして、その直後。蒼色の余波を突き抜けて、金翔竜が姿を現す。
直撃し、全身に重傷を負ったにも関わらず、金翔竜の闘志は消えていなかった。
いや寧ろ、だからこそ、か。
最後まで諦めず、限界を超えて勝利に執着する──。
「⋯⋯来いよ」
「キュルルルルァアアァァァ────ッッ!!」
美しいな、魔物は。
戦い、そして勝つ。それこそが、魔物の生存本能だ。
生きる。生きた。生きていた。その証を示し、認められてこそ、初めて生存していたと云える。
来いよ、金翔竜。
俺達は、魔物だ。
「「────ッ!!」」
迫る金翔竜に、俺は拳を引く。
大地に根を張る様に、脚を置いて腰を落とす。
相手の、さらにその先。地平線まで打ち抜く意思を持ち、前へと一歩踏み込む。
加減は許されない。相手が全力で向かってくるならば、こちらもまた全力でゆく。
それが、命のやり取りをする者達に課せられた、ただ一つの責任なのだから。
「はッッ!!」
「キュルル──」
飛 拳 、三 度。
全力で打った一撃は、蒼の光線となり金翔竜を貫く。
俺の僅か上空を通過し、金翔竜は地面に激突した。
最期まで闘志を燃やし続けたソイツは、ゆっくりと目を瞑る。
鮮やかな血雨が草原に散る中で、俺は静かに拳を握り締めた。
「──ティガ」
「おう、なんだ?」
「感謝する」
「⋯⋯あァ、よくやった。折角だ、飯にしようぜ」
ティガに肩を叩かれ、俺は金翔竜へと振り返る。
無論、あのまま放置する訳にもいかない。
命のやり取りを終えた後。そこからは、自然の摂理だ。
弱肉強食。勝った方が食い、負けた方が食われる。
敵を糧とし、自己を高める。
責任では無い、義務では無い。これは摂理そのものだ。
「──まぁ、そうだな。飯ィ食いながら、反省会とでもいこうか」
「あぁ。ティガのお陰で、色々気付かされたぜ。
まずは飛拳の使い方からだな──⋯」
⋯──本日の鍛錬成果。
金翔竜との実戦により、飛拳の使用用途の拡大に成功。
使用魔力を抑え、威力・射程・速度が減少する代わりに、連続使用に向いた飛拳。
大きな魔力を込め、一撃の威力・射程・速度に重きを置く飛拳。
二種の飛拳を学習した。
今後、更なる成長の可能性がある──
高い破裂音の直後、俺の拳が音の“発生源”をすり抜けた。
先手必勝だと速攻で仕掛けたものの、あの野郎。
素早いだけあって、やっぱり反応速度もピカイチだぜ。
その反応速度に比例した、回避行動までの時間の短さ。なにより、そこからの回避速度が尋常ではない。
いやマジで。単なる回避行動の、しかも初動の時点で音速を超えるとか、流石に笑っちまう。
「──あーっ、思い出した 思い出した。そいつアレだ。
確か、『金翔竜(きんしょうりゅう)』って名前だ」
後ろで見守るティガから、そんな言葉が聞こえてくる。
金翔竜。まぁ見るからにって感じだが、銀槍竜より強そうな名前で羨ましいなぁ。
⋯⋯待てよ? そういえば、幼女が『君の個体名が変わったらしい』って言ってた気がする。
そう、確か⋯⋯猛紅竜だとか。
偶然なんだろうが、名に“紅”が入るとはな。嬉しいぜ。
「キュルアァァ──ッッ!!」
「⋯⋯っと、」
いかんいかん、今は相手に集中しなければ。
金翔竜は現在、上空を旋回して俺への攻撃タイミングを測っている状態か。
やるべき事は行動パターンの分析と⋯⋯。そうだな、攻撃力も把握しておきたい所だ。
折角だし、一撃くらいなら貰っておくかね。
「スゥ──⋯ッ」
息を、深く吸い込む。
防御の構えを取った俺に対し、金翔竜は高速で旋回。
前方45°程度の上空から、急激に加速を始めた。
(──やはり速い。直撃まで、あと2秒くらいか⋯⋯)
十分だ。2秒もあれば、致命傷を避けつつ威力を測る体勢を整えられる。
といっても、その2秒は普通の人間でいう2秒だがな。
意識を集中させれば、たった2秒は俺の中で4秒にも10秒にも増幅させれる。
⋯⋯はは、コレも魔王城での特訓の賜物だな。
「⋯⋯ふぅ」
さて集中だ。
胴体は当然として、頭部と脚部への直撃も避けたい所だな。
しっかし、ただの様子見で片腕を犠牲に⋯⋯というのもナンセンスか。
──どれ。ここは1つ、アレをするかね。
「キュルアッッ!!」
「────。」
金翔竜の、速度を翼の先端に乗せた攻撃。
すれ違いざまに放ってきたソレに対し、俺は即座に立ち位置を変更する。
金翔竜の翼での殴打が、俺の胸元に当たる様に。
そして──
「ほっ、と⋯⋯」
殴打された方向へ、同時に身体を動かす。
その結果、俺は吹き飛ばされるでも、鎖骨が折れるでも無く、その場で縦に一回転するだけで留まった。
武術の中では、“化勁(かけい)”と呼ばれる技に当てはまるだろうか。
「キュルルッ!?」
「⋯⋯面白ぇ芸当だなァ」
金翔竜とティガが、それぞれの反応を見せる。
ティガは兎も角、金翔竜は攻撃に対応された事に加えて、その対応法について困惑している様子だ。
まぁ速さが自慢の魔物だし、攻撃が回避されるなんてシチュエーションは頭に無かったのだろう。
回避方法に関しては、何が起こったかすら理解して無さそうな表情だ。
「──見くびんなよ? 確かにお前は速いが、攻撃の動きは直線的で判断しやすいんだ。
目で追えないからと言って、攻撃に対応出来ないとは限らないんだぜ!」
ドヤッ! と、俺は金翔竜に言ってみせる。
ふへへ。事実しか言ってないつもりではあるが、相手の動揺を見ると少し強気になってしまうなぁ。
「キュルルァァッ!!」
「来いッ!」
再び飛翔する金翔竜に、今度は攻撃の構えを取る。
金属生成により、背後に銀槍を無数に作成。
音速飛行中の金翔竜を狙い、操作魔法にて一斉に飛ばした。
「──おいおい、待て待て」
「⋯⋯ティガ?」
不意に、後ろからティガが声を掛けてくる。
俺の隣に並んだティガは、首を横に振りつつ呆れ顔を浮かべていた。
「初めに言ったろ? 『技を伸ばす』ってよォ」
「いや⋯⋯だって今のアイツに飛拳は当たんないし⋯⋯
せめて動きが鈍った瞬間か、行動範囲を限定したタイミングじゃないと⋯⋯」
「ほら、ソレだぜソレ。俺はこうも言ったよな?
『技ってのは、いずれ“そういう技”としか認識できなくなる』って。
まぁ、お前の場合は、技が出来たてだから“別の使い方”が浮かばねぇのも分かるが⋯⋯」
「別の⋯⋯?」
ハテナを表情に浮かべる俺に、ティガは金翔竜を指差す。
驚異的な運動能力で銀槍を回避する姿は、凄腕パイロットが搭乗する高性能の戦闘機の様だ。
描く軌跡に美しささえ覚えてしまう所だったが、直後のティガの行動で俺は目を覚ます事となる。
──ボッッ!!
ティガが、唐突に拳を突き出す。
顔面直撃は辛うじて躱せた俺であったが、追加で打たれた脇腹への一発が命中。
その場に、膝から崩れ落ちる事となった。
「ガハッ⋯⋯?!」
「──分かったか?」
「な、何が⋯⋯」
「分かったかッ!?」
分かってたまるか! という言葉すら出せず、俺は蹲(うずくま)る。
今のは効き過ぎる。衝撃で、肋骨は勿論、骨盤辺りもヒビいってそうだ。
一体、俺は何を間違えたんだ⋯⋯!?
「うし、立てるな。じゃあもう1度だ。
お前が間違える度に、俺が一発殴る。それでいくぞ」
「えぇ⋯⋯」
くそう。何をどうすればいいんだ。
取り敢えず、金属生成を解除した方が良さそうだが⋯⋯。
いやでも、対空能力に関しては、単発の飛拳より銀槍の質量攻撃の方が向いているんだよなぁ。
⋯⋯といっても、金翔竜の運動能力が相手じゃ、☾操作(フーへ)☽の精度じゃ追い付けないのもあるか⋯⋯?
「キュルルルァ──ッッ!!」
「く⋯⋯」
こんな時に、金翔竜め調子に乗りやがって。
こちとら、ティガの腹パンで死にそうだっつーの!!
攻撃するには飛拳しか無さそうだが、単発系の攻撃じゃ⋯⋯ウグッ。
やっぱり打たれた所が痛てぇ。こんなんじゃロクに集中もできないぜ⋯⋯
──キュンンッッ!!
急加速。
負傷箇所を押さえる俺を見て、金翔竜が動く。
ここぞとばかりに迫り来る金翔竜に、俺は咄嗟に防御の構えを取った。
刹那、全身に衝撃が響き渡る。
俺より大きな図体と、圧倒的な速度。それを活かした突撃技は、恐ろしい程の威力であった。
──質量×速度×敵意=攻撃力──
全身で受けた俺は、派手に吹き飛ばされた。
分かってはいたが、マトモに食らうとここまでのダメージになるのかよ⋯⋯!!
防御した両腕が、骨が見える程にひしゃげてるぜ⋯⋯ッ。
ちぇ。温存⋯⋯というか、これナシで乗り切りたかったが、背に腹はかえらないってヤツだな。
「⋯⋯⋯⋯はぁ」
メラメラと、俺の二本角に蒼炎が灯る。
首筋に沿って肩へと、肩から広がり肘へと。背を駆け抜け、紅と蒼は全身を包み込む。
──炎は全身に滾(たぎ)り、そして拳へと装備された。
「ふッ!!」
吹っ飛ばされる体勢から、地面に脚を突き出す。
急停止した俺の眼前に、僅かに遅れて金翔竜が到着する。
突然姿が変化した俺に、目を大きく見開く金翔竜。
だが、次の瞬間に思考が追い付く隙を与えず──
「はァッ!!」
一撃。
胴体へ向けて、正拳突きを放った。
「キュルオッ!?」
咄嗟に。といった様子で、金翔竜が防御を行う。
ふむ、流石の反応速度だな。ギリギリだが、上手く防がれてしまった様だ。
オマケに、四枚もある翼を全て重ねる事で、胴体へのダメージを大きく軽減したらしい。
「⋯⋯ン?」
「キュルルオォ────ッッッ!!」
吹き飛ぶ直前の金翔竜が、妙な行動を取る。
飛ばされる方向と同じ方へ、自身も加速して見せたのだ。
(受けた衝撃に対して、“抵抗”ではなく“同調”した⋯⋯?
被ダメージを減らす行動としては、最適解だが──)
先の俺の行動を模倣したのか、本能的にその答えに辿り着いたのか⋯⋯。
いや、どっちでも構わないか。
ここは魔王が住む領域。その程度、野生の魔物だろうが出来なくては。
「──さぁ、紅志。見せ所だぜ?」
いつの間にか背後にいたティガは、腕を組んで笑う。
言われるまでもないと笑って返した俺は、再び金翔竜へと向き合った。
「キュルルアァアアァァ────ッッッ!!!」
「────。」
猛る金翔竜を正面に、俺はふと自身を見る。
ティガに受けたパンチの跡は治っているが、思い出すだけで痛みの感覚に襲われる程だ。
ただあの時から、少しだけ疑問が残っていた。
(──向こうは不意打ちで、俺の回避は遅れた⋯⋯)
何故、躱せた?
本来、ティガの攻撃を俺が避けれるなど、有り得無い事だ。
2発目が当たったのを鑑(かんが)みるに、当てる気はあった筈。
であるならば、なぜ初撃は回避できたのか?
答えは、唯1つ。“回避させた”。
「ふッ!!」
飛拳。
蒼い魔力の弾丸が、拳の形となって打ち出される。
銀槍を遥かに凌駕するその速度は、確実に金翔竜を捉えて直進した。
「キュアァッ!?」
自身を捉え、迫る攻撃。
金翔竜は、激しく動揺した様子をみせる。
だが、敵もさる者。間一髪で回避を行い、翼の先端を掠める程度の被害に抑えた。
──が、そこまでが此方の想定通りである。
「はァァッ!!」
再度、飛拳。
より強い力で踏み込み、打ち出す。
より早い速度で迫る攻撃に、金翔竜はますます混乱した。
そして選択。回避を捨て、俺へと突撃を開始した。
⋯⋯成程。相打ち覚悟という訳らしい。
──バチィィンッッ!!
金翔竜の突進と、俺の飛拳。
真正面から衝突した二つは、大きな衝撃波を生んだ。
そして、その直後。蒼色の余波を突き抜けて、金翔竜が姿を現す。
直撃し、全身に重傷を負ったにも関わらず、金翔竜の闘志は消えていなかった。
いや寧ろ、だからこそ、か。
最後まで諦めず、限界を超えて勝利に執着する──。
「⋯⋯来いよ」
「キュルルルルァアアァァァ────ッッ!!」
美しいな、魔物は。
戦い、そして勝つ。それこそが、魔物の生存本能だ。
生きる。生きた。生きていた。その証を示し、認められてこそ、初めて生存していたと云える。
来いよ、金翔竜。
俺達は、魔物だ。
「「────ッ!!」」
迫る金翔竜に、俺は拳を引く。
大地に根を張る様に、脚を置いて腰を落とす。
相手の、さらにその先。地平線まで打ち抜く意思を持ち、前へと一歩踏み込む。
加減は許されない。相手が全力で向かってくるならば、こちらもまた全力でゆく。
それが、命のやり取りをする者達に課せられた、ただ一つの責任なのだから。
「はッッ!!」
「キュルル──」
飛 拳 、三 度。
全力で打った一撃は、蒼の光線となり金翔竜を貫く。
俺の僅か上空を通過し、金翔竜は地面に激突した。
最期まで闘志を燃やし続けたソイツは、ゆっくりと目を瞑る。
鮮やかな血雨が草原に散る中で、俺は静かに拳を握り締めた。
「──ティガ」
「おう、なんだ?」
「感謝する」
「⋯⋯あァ、よくやった。折角だ、飯にしようぜ」
ティガに肩を叩かれ、俺は金翔竜へと振り返る。
無論、あのまま放置する訳にもいかない。
命のやり取りを終えた後。そこからは、自然の摂理だ。
弱肉強食。勝った方が食い、負けた方が食われる。
敵を糧とし、自己を高める。
責任では無い、義務では無い。これは摂理そのものだ。
「──まぁ、そうだな。飯ィ食いながら、反省会とでもいこうか」
「あぁ。ティガのお陰で、色々気付かされたぜ。
まずは飛拳の使い方からだな──⋯」
⋯──本日の鍛錬成果。
金翔竜との実戦により、飛拳の使用用途の拡大に成功。
使用魔力を抑え、威力・射程・速度が減少する代わりに、連続使用に向いた飛拳。
大きな魔力を込め、一撃の威力・射程・速度に重きを置く飛拳。
二種の飛拳を学習した。
今後、更なる成長の可能性がある──
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スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
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バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
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