猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

文字の大きさ
126 / 195
1章【地獄のスパルタ訓練編】

第125話・飛拳 I

しおりを挟む
「──行くぜ」  

 アインの、その一言。  
 そこから、戦いは始まった。
 
「ッ!」        

 俺は息を呑む。    
 瞬き1回にも満たない間に、アインが目の前まで接近していたからだ。
 踏み込みすら大して行わかなったというのに、恐ろしい脚力である。
 ⋯⋯だが、見える。
 凄まじい速度の前蹴りだが、今なら余裕を持って躱せる。
 十分に反応出来るし、存分に思考も出来る⋯⋯!!

「⋯⋯、」

 左脚を軸に身体を逸らし、前蹴りを躱す。
 そう⋯⋯まるで、飛んできた紙飛行機を避ける様に。
 あぁ、本当に、色んな事がよく感じ取れる。

「油断すんな!」
「ん、」
 
 アインは、突き出した右脚を即座に地に付ける。
 前蹴りという攻撃から、大股の踏み込みという状態に変更した様だ。
 ⋯⋯となると、俺とアインの位置からして次に打ってくるのは──
  
「フッ!」
「おっと、」

 やはり、前掃腿それか。
 本来は大きな予備動作が必要な技だが、流石は魔王幹部。
 動きの切り替わり時に、全くが見えないぜ。
 
──バチンッッ!!

 足の薙ぎ払いをバク転で回避しつつ、尻尾を打ち込む。
 防御や回避をして、そこから反撃に転じる⋯⋯。それでは間に合わない。
 同時だ。“守”と“攻”を同時にこなさなければ、アインには届かない。
  ⋯⋯いや、正確には──

「んっんー、惜しいなァ」

 それでも、届くかどうかだ。
 事実、アイツは俺の尻尾を片手で受け止めた様だし。
 だが、焦りは無い。俺だって、今が当たる程アインが温(ぬる)い相手では無い事を知っている。
 蒼炎をモノにして尚、俺にとってアインは格上だ。
(──俺の戦い方は、。なら、やるべき事は一つしかないな)
 徹底した接近戦の継続。そこに“勝ち筋”がある筈だ。
 断言できる。特に、アインの様な格上が相手ならば。
 
「──ッ!」

 低く、深く。俺は肉薄する。
 顎の真下に地面を感じる程の低位置。そこから、俺は次の一手を繰り出すべく動いた。
 左の拳を固め、勢いそのままに突っ込み、そして、
 
「ぬァッ!」

 掛け声と共に、
 左拳を引く動きで注意を逸らし、右肩の突進(タックル)──。
 ⋯⋯はは。流石に、擦りくらいするかと思ってたぜ。

「ホォ、面白い技だな?」

 俺の右肩を、アインは右膝で受け止める。
 思い切り衝突したというのに、彼は片足でその場に留まっていた。体幹が強い⋯⋯という次元の話では無いな。
 まぁ問題無い。攻撃に使ったのは肩だけで、どっちの拳もまだフリーだ。

「せいッ」
「お、」

 ガクンと、アインの身体が傾く。
 俺が右肩を右側に動かし、アインの右膝を弾いたからだ。
 これで、即座には距離を取れなくなった筈。隙ありだ。
(──と、云うワケでもないか)
 アインが弾かれた勢いを利用し、その場で回転。
 それと同時に、俺はアインの回転と同じ方向・同じ速度で動く。
 僅かに目を見開くアインに、俺はすかさず拳を突き出した。

「⋯⋯いいねェ!」

 片足立ちの状態で、アインは上体を後ろに逸らす。
 躱されてしまったが、俺は気分良よく口角を上げた。
 恐らく先程のアインは、俺に弾かれた力を利用して回し蹴りを打つ気だった。⋯⋯と、俺は察知した。
 以前のギルルと戦闘では、アインのフィギュアスケーターみたいな回転蹴りが印象的だったからな。
 仮に打たれてしまっては厄介だし、自ら動いて回転を潰す手を打ったってワケだ。
 まぁ賭けだったが、上手く読みが当たってよかったぜ。
 そんな不安定な体勢では、回避する動きにも制限があるだろうしな⋯⋯!!
 
「──あぁン?」

 金属生成を行い、アインの全身を固定する。
 眉を顰(ひそ)め、あからさまに嫌そうな顔を浮かべるアイン。
 フフ。いざ攻撃を食らうとなると、魔王幹部でも──

「フンッ!!」
「⋯⋯!?」  

 アインを覆っていた金属が、粉々に破壊される。
 最大硬度で拘束したつもりだったんだが⋯⋯。金翔竜の時といい、自信無くすぜ。

「⋯⋯一手、遅れたな?」

 拘束を解除したアインは、大きくバックステップする。
 不敵な笑みを浮かべる彼に対して、俺は静かに口を開いた。

「──いや、こっからだ」
「⋯⋯ホォ?」
「⋯⋯⋯⋯。」

 ──俺は、“物理格闘が主軸”だ。
 だからこそ、相手は接近戦での俺に注意を払う。   
 特に、俺が徹底的して距離を詰めてくる場合なら、きっとこう考えるだろう。

『近距離では厄介だ』。
『距離を取った方が有利に戦える』。
『距離が取れれば、厄介では無くなる』。
 
 ⋯⋯俺は、相手の慢心や油断を狙い、それを利用する事で、どんな強敵だろうが倒してきた。

「⋯⋯!!」

 アインの表情が変わる。
(拘束は無理だった。だが“時間稼ぎ”は出来たぜ⋯⋯!!)
 そう。こうして、拳に最大魔力を溜める時間が確保出来た。

「はぁッ!!」

 飛拳炸裂。
 アインに向けて、高速の蒼炎の魔力弾を撃ち出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...