猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第130話・理由。

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 ──ふと、俺は思った。
 魔力感知って、一体なんだろうかと。
 いや正確には、仕組み自体はある程度理解している。
 コウモリやイルカの様な動物に備わっている、“エコーロケーション”と呼ばれる能力に似たモノだ。
 “波”を発し、その反響によって周囲の情報を認識するという⋯⋯まぁ兎に角、そんな感じだ。
 重要なのは、展開した魔力感知の“魔力の波”は、反響して自分に戻ってくる点である。
 戻ってきた波は、獲得した情報を感知を展開した者の脳内まで運んでくる訳なのだが⋯⋯
 それは、“1度体外に放った魔力が、再び体内に戻って来る”という流れで成り立っているのではないだろうか?
 つまり、俺の目標の一つである“魔力の循環”に、極めて酷似したロジックで完成した能力であるとも言える。
 そうなると、曖昧で闇雲な努力をするより、魔力感知の育成に重きを置くべきだと気が付いた訳だ。

「──と言う事で、に指導を頼みたいんだが⋯⋯
 どうだ? アインヘルムは用事があるみたいだし、ティガやギルルも得意そうじゃないしな」

 目の前の龍に向け、俺は提案をする。
 10メートルはある全身は紅い鱗で覆われ、その立ち姿だけで大型の要塞を思わせる迫力だ。
 四つの脚で地に立ち、長い首を畝(うね)らせ、後方に伸びた大小合わせて四本ある角は、荒々しく、猛々しく──。
 二枚の巨翼を閉じたソイツは、荘厳な顔付きで視線を俺へと落とした。
 ⋯⋯いや。顔付きに関しては、いつもと変わらないか。

「どうしても! ってワケじゃないし、まぁ出来ればでいいんだが⋯⋯どう? ダメ?」
「ふむ、ならばグレンデルはどうだ? 彼奴も、魔力の扱いには長けているぞ」
「⋯⋯ムリ。今はちょっと、ビミョーな関係なんだよ。
 その内どうにかするつもりだけど⋯⋯。う~ん⋯⋯」
「──マァ、お前に事情があるならば無理強いはせん。
 それに、我も今は暇を持て余している身。折角だ、付き合ってやろう」
「本当か!?」

 返答を聞いて、俺は歓喜した。
 思わず飛び跳ねる俺に対して、紅い龍──テュラングル──は、呆れた様に溜息をついた。
 
「よせ、はしたないぞ。貴様は子どもではないだろう」
「ドラゴンとしてなら、まだまだ子どもだぜ!」
「ぬお!? よせっ、我に引っ付くな! 首に抱き着くな!」
「ふひひ。ヤならヤで、無理矢理引き剥がしていいんだぜ~。
 エェ? オトーチャン~」
「誰が誰の父親だと!? やめろっ、離せ貴様!!」

 も~ホント、流石ドラゴンの王だな。
 オール⋯⋯合格点を超えるオールウェイズ⋯⋯レベルの高いオールウェイズを合格点⋯⋯ええと、まぁいいや。
 取り敢えず、欲しいリアクションくれるから好きだ。
 
「──なんか、こうしてるとアレだな」
「む、アレとはなんだ?」
「ほら、俺とアンタが初めて会った日にさ。戦っただろ?
 それで、俺が最後の一撃を入れる直前には、こんな風にアンタの首にしがみついていたなって」
「⋯⋯ふはは。そうだったな、しかと覚えているぞ。
 お前の根気と執念には、我も驚かされたものだ」

 静かに笑うテュラングルから、俺は降りる。
 やはり、コイツは好きだ。
 威張らず、強がらず、素直な遣(や)り取りしてくれる奴というのは、案外少ないもんだしな。
 どれ、魔力感知について色々学ぶつもりだったが⋯⋯もう少し、思い出話に華を咲かせるのもいいかもな。

「──気になって事があるんだが、聞いてもいいか?」
「ウン? なんだ?」
「リーゼノールでの一件の後、テュラングルは何処に行ったんだ? ギフェルタで再会した時も、『忙しい』って言ってたし⋯⋯」
「フム。そうか、気になるか。⋯⋯まぁ、以前と違い、もう何かを伏せて話す必要も無いだろう。
 質問には、出来るだけ答えてやるぞ──⋯」

  

 ⋯──ドラゴン族を束ねる者として、我はアリアや彼女の仲間と共に、オーガが作り出した軍勢と戦っている。
 数多の宇宙、数多の“世界”でな。
 アリアが力を失い、戦いが始まったのが約5万年前。
 その当時から、我らは戦いを続けていたが⋯⋯無尽蔵に湧き続けるオーガの黒い軍勢に、皆は疲弊し始めた。
 ある時点からアリアの仲間⋯⋯“転生者達”の参戦が起点となって、戦いの中に僅かな余裕が生まれたのだ。
 そこでアリアが提示したのが、“戦力に表裏を付ける”という案だ。
 確か⋯⋯なんといったか⋯⋯?
 あぁそうだ、“ローテーション”だ。
 表が疲弊すれば裏が。裏が疲弊すれば表が。
 そういった形で、戦闘を途切れさせる事無く継続させる作戦に至ったのだ。
 
 つまり、お前と出会った日は、我は丁度回復に務めていた頃という事になる。
 ⋯⋯まぁ、その回復期間というのが、我は3年でな。
 、リーゼノール周辺を拠点としていたのだが⋯⋯
 我は、寛ぐというのが苦手でな。退屈のあまり、付近に感じた強い魔力に思わず飛び付いてしまったのだ。
 だが、恥ずかしい話、我は自身がどれ程まで疲弊しているか理解していなかった。
 あの日、あの男に味わったモノは、間違いなく“敗北”なのだろう。
 無論、いずれは仮を返すつもりではあるが。

 まぁ、兎に角だ。
 回復期間でこの星に帰ってきたとはいえ、我にはドラゴンの王としての役割もある。
 お前との勝負を終えた直後も、それは同じだった。
 頼られる事や やるべき事が無数にあったので、仕方無くその場を後にした訳だ──⋯
 


「⋯──すまないと思っている。決着は、いずれ付けようぞ」
「テュラングル⋯⋯。あぁ、勿論だ⋯⋯!」
「ウム。その為には、貴様は更に強くならねばならぬがな。
 我の魔力も、ある程度の回復を果たした。今であれば、貴様は我の一息で灰にできてしまうぞ?」
「⋯⋯ハッ! あながち、冗談でもなさそうだぜ。
 だが、次にやる時、勝つのは俺だ。それまでに、アンタは誰にも負けんなよ」
 
 俺の台詞に、テュラングルなニヤリと笑う。
 ⋯⋯多分、俺もアイツと同じ顔をしているのだろう。
 魔物として? ドラゴンとして? 男として? 理由はなんだっていい。
 俺とテュラングルに、戦う意思があるのならば。
 
「──では、貴様も負ける事の無い様、直々に鍛えてやる。
 ただし、着いて来れないなら置いてゆく。弱音を吐くなら痛みで黙らせる。分かったな?」
「上等だ。頼りにしてるぜ、王様」
「⋯⋯フッ」

 テュラングルは、周囲を燃え盛る炎で取り囲む。
 不敵で悪い笑みを浮かべる彼は、両の巨翼を広げた。
 圧倒的な存在感と威圧感を放つその龍に、俺は真正面から向き合うのだった。
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