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一章 悪役令嬢のフラグを避けましょう

7歳の誕生日

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『スキアー、起きろ。そろそろ侍女たちが来るぞ』
「ん・・・おはよう、モナク」

あれから半年が経った。
モナクのお陰で国の水不足はほぼ解決した。
モナクが姿を見せて王宮で「我が主の命により雨を恵んだ」と進言したものだから、大いに喜んだ国王から沢山のお礼の品も貰った。
両親、兄達には「心優しい子ですね」と褒められた。
・・・本当はモナクの独断なんだけどね。
モナクが雨まで降らせられるなんて知らなかったし。
カプ姉からの視線は相変わらず痛い・・・
そして・・・

「おはようございますスキアー様」
「「「「おはようございます」」」」
「おはようマリアンヌ!みんな!」

いつもの挨拶。
そして、マリアンヌが侍女たちの代表のように前に出て、丁寧に包装された包みを渡してきた。

「・・・?」
「スキアー様、7歳のお誕生日おめでとうございます」
「・・・あっ!忘れてた・・・」

ありがとう。とはにかみながら包みを受け取った。
ちょっとくすぐったい気分だな・・・

「開けて良い?」
「勿論でございます」
「・・・わぁ!」

リボンを解いた箱の中には、私の濡羽色の髪によく映えそうな真っ白で小さな薔薇の髪飾りが入っていた。

「可愛い・・・っ!」
「お気に召して頂けましたか?」
「うん、勿論っ!マリアンヌ、着替えをお願いできる?」
「はい、ただいま。」

他の侍女たちは持ち場に戻り、部屋にはマリアンヌと私だけになる。
実は2ヶ月ほど前、私の食事に毒が入っていたのだ。
銀製の食器だからと油断していた。
私が血を吐いて倒れた後、モナクが実態化し大妖精の権限を使って『真実の精霊  ヴェリタ』を呼び寄せたらしい。
ヴェリタは全ての嘘が通じない訳ではなく、人の言葉が真実かどうかが分かる精霊だ。
毒を盛ったと睨まれた一人の侍女の真実をめぐって裁判が起こり、そこでヴェリタの力を借り大勝したらしい。
その後兄達やモナクの怒りに触れたその侍女の家は、家族ごとモナクの力で燃やし尽くされたらしい(兄達もノリノリだったと聞いた)
罪悪感はするけど、あまり同情はしない。

その後、家族と話し合って侍女たちは朝の挨拶以外あまり近づけない事にした。
でも、私が「マリアンヌの事は本当に信頼している」と言ったから、マリアンヌは一人私の本来の侍女として私の世話をしてくれている。

「今日はこの髪飾りを使いたいの!お願い出来る?」
「はい。勿論でございますスキアー様」

マリアンヌが私は大好きだ。
私がもし今、日本人だった時のように男だったら今すぐ求婚してるくらい!
少し癖毛なスカーレット色の髪を下で結んでおり、整った清楚な顔立ち。
貴族の出で、求婚される可能性が高いだろうと噂されている彼女だが、私のことを大層可愛がってくれている。
モナクにも物怖じせずに意見を言える唯一の他人だ。

「出来ました、スキアー様」
「ありがとうマリアンヌ!大好き!」
「まぁ!ふふ、ありがとうございますわ」
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