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フィアナ、冒険者ギルドに向かう
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大恐慌を起こした実技の授業。
その後の授業(歴史と算術でした)ではスヤリスヤリと眠りに落ち、隣の席のエリンちゃんにツンツンつつかれて起こされること多数。
午前中の授業が終わり、ようやく待ちに待った昼食の時間がやってきました。
(なんか色々失敗してしまいましたが、まだ取り返せます!)
(一緒に学食に行って、そこから華麗なる私のトーク力で話題を広げてみせます。おかずの交換だってしちゃいます!)
そんな意気込みと共にクラスメイトをお昼に誘う私ですが、
「ねえ、私とお昼ご飯を――」
「ヒィィィィィ、魔王!? どうか、お許しを!」
「ねえ、私とお昼ご飯に――」
「模擬戦なんてやりません! 許して~!!」
なぜかサササッと逃げられる始末。
何人かに話しかけてみましたが、クラスメイトの反応は似たようなもので。
(ど、どうしてこうなった!?)
どれもこれもカカシ爆破事故のせいです。
昼休みが始まるなり、頼みの綱のエリンちゃんまで、ひっそりと姿を消してますし……、
「うう……、マティさんの嘘つき!」
私は涙目で、とぼとぼ学食に向かうのでした。
***
そんなこんなで、食堂に到着。
エリシュアンの学食は、裕福ではない地方貴族や、平民が主に利用しています。
(こうなったら作戦変更です)
(次は、私と同じ――1人でいる人を狙います!)
上手く行かなかった原因を考え、私は1つの結論に至りました。
すでに出来上がっているグループに入るのは困難。
私と同じ、ボッチ飯の人を狙えば、きっと友達になれるはずです。
私が歩くと、サーッと人が捌けていきます。
その風景、まるでモーゼの奇跡。
まるで嬉しくありません。すでに心が折れそうですが、私は負けじと獲物を探してテーブルの周りを練り歩きます。
(むぅ。この時期じゃ、すでにグループが出来上がってますね……)
しばし歩き回ること数分。
ついに私は、1人でもぞもぞ食事を摂る学生を発見──そのままロックオン。
ササッと近づき隣に座り、ニコッと笑みを浮かべながら、
「隣の席、良いですか?」
「ヒィィィィ、魔王だぁぁぁぁ!」
(嘘ぉ! クラス外にまで知れ渡ってる!?)
悲鳴をあげられ、逃げられてしまいました。
笑みを浮かべたままフリーズする私。
あたふたと逃げ出した生徒は「これでお許しを!」などと言いながら、私にプチトマトを献上していき、
「ぷ、プチトマトはいいので、私と少しだけお話を――」
「コロッケだけはお許しを~!!」
すたこらさっさと姿を消してしまいました。
(これ、絶対ろくでもない噂が広がってますね!?)
脳内で、セシリアさんが「さいっこうに、1方的で、フルボッコでしたわ!」と目を輝かせながら、あちこちで話して回っている姿を幻視します。
それとも今日の授業でお披露目した魔法のせいでしょうか。
(伝承の魔王も、紛らわしい魔法を使わないで下さい!)
魔法の規模で言えば、エリンちゃんの魔法の方がよっぽどすごいのに。
「う~ん、メテオの魔法を披露したのは失敗だったかもしれませんね……」
食事を口に運びながら、私は1人反省会を始めます。
「隕石が駄目なら、コンセプトを変えてみましょうか。派手さよりも、うっとりする感じ――魔法の美しさであれば、あれとかいいかもしれませんね。よし、決めました。次は学園ごと氷の彫像に変えるニブルヘイムの魔法で――(ぶつぶつ)」
「ギャー、魔王さまの怒りを買ってしまった~!?」
「どうか怒りをお鎮め下さいまし!」
私の呟きを聞きつけ、通りすがりの生徒が真っ青になります。
気がつけば私のお皿には、デザートの山がお供えされており……、
「なんか思ってたのと違う!!」
私は学園生活のままならなさに、頭を抱えるのでした。
***
そうして気がつけば、1日が終わろうとしていました。
1日が、終わろうと、していました……!
(た、大変です!)
(友達はおろか、結局まともにクラスメイトとお話すら出来てません!)
私が、エリシュアン学園に入ったのは友達を作るためです。
当初の計画では、放課後は友達と一緒に街に出かける予定だったのに、現実は教室でぽつんと1人ぼっち。
このままでは、1人悲しい学園生活が始まってしまいます。
(まだです!)
エリシュアン学園では、生徒の自主性を重んじて部活動を推奨していました。
それだけでなく、在学中の冒険者活動も推奨しています。
学費や名誉のため、生徒の中には冒険者として活動することに積極的な者も大勢いました。
エリシュアンにおいて、生徒たちの間で上位の冒険者ライセンスは、ある種のステータスのように扱われていました。
「私も、冒険者デビューします! どうにかパーティーを組んで、数々の難敵を打ち破って、死線をくぐり抜けて、徐々に心を縮めて――お友達になります!」
様々な苦楽を共にし、数々の死線をくぐり抜けた先にあるパーティーには、きっと友情が芽生えていることでしょう。
(少なくとも会話はできるはず!)
「いざ、冒険者ギルドへ!」
そう決意した私は、颯爽と街にくり出すのでした。
その後の授業(歴史と算術でした)ではスヤリスヤリと眠りに落ち、隣の席のエリンちゃんにツンツンつつかれて起こされること多数。
午前中の授業が終わり、ようやく待ちに待った昼食の時間がやってきました。
(なんか色々失敗してしまいましたが、まだ取り返せます!)
(一緒に学食に行って、そこから華麗なる私のトーク力で話題を広げてみせます。おかずの交換だってしちゃいます!)
そんな意気込みと共にクラスメイトをお昼に誘う私ですが、
「ねえ、私とお昼ご飯を――」
「ヒィィィィィ、魔王!? どうか、お許しを!」
「ねえ、私とお昼ご飯に――」
「模擬戦なんてやりません! 許して~!!」
なぜかサササッと逃げられる始末。
何人かに話しかけてみましたが、クラスメイトの反応は似たようなもので。
(ど、どうしてこうなった!?)
どれもこれもカカシ爆破事故のせいです。
昼休みが始まるなり、頼みの綱のエリンちゃんまで、ひっそりと姿を消してますし……、
「うう……、マティさんの嘘つき!」
私は涙目で、とぼとぼ学食に向かうのでした。
***
そんなこんなで、食堂に到着。
エリシュアンの学食は、裕福ではない地方貴族や、平民が主に利用しています。
(こうなったら作戦変更です)
(次は、私と同じ――1人でいる人を狙います!)
上手く行かなかった原因を考え、私は1つの結論に至りました。
すでに出来上がっているグループに入るのは困難。
私と同じ、ボッチ飯の人を狙えば、きっと友達になれるはずです。
私が歩くと、サーッと人が捌けていきます。
その風景、まるでモーゼの奇跡。
まるで嬉しくありません。すでに心が折れそうですが、私は負けじと獲物を探してテーブルの周りを練り歩きます。
(むぅ。この時期じゃ、すでにグループが出来上がってますね……)
しばし歩き回ること数分。
ついに私は、1人でもぞもぞ食事を摂る学生を発見──そのままロックオン。
ササッと近づき隣に座り、ニコッと笑みを浮かべながら、
「隣の席、良いですか?」
「ヒィィィィ、魔王だぁぁぁぁ!」
(嘘ぉ! クラス外にまで知れ渡ってる!?)
悲鳴をあげられ、逃げられてしまいました。
笑みを浮かべたままフリーズする私。
あたふたと逃げ出した生徒は「これでお許しを!」などと言いながら、私にプチトマトを献上していき、
「ぷ、プチトマトはいいので、私と少しだけお話を――」
「コロッケだけはお許しを~!!」
すたこらさっさと姿を消してしまいました。
(これ、絶対ろくでもない噂が広がってますね!?)
脳内で、セシリアさんが「さいっこうに、1方的で、フルボッコでしたわ!」と目を輝かせながら、あちこちで話して回っている姿を幻視します。
それとも今日の授業でお披露目した魔法のせいでしょうか。
(伝承の魔王も、紛らわしい魔法を使わないで下さい!)
魔法の規模で言えば、エリンちゃんの魔法の方がよっぽどすごいのに。
「う~ん、メテオの魔法を披露したのは失敗だったかもしれませんね……」
食事を口に運びながら、私は1人反省会を始めます。
「隕石が駄目なら、コンセプトを変えてみましょうか。派手さよりも、うっとりする感じ――魔法の美しさであれば、あれとかいいかもしれませんね。よし、決めました。次は学園ごと氷の彫像に変えるニブルヘイムの魔法で――(ぶつぶつ)」
「ギャー、魔王さまの怒りを買ってしまった~!?」
「どうか怒りをお鎮め下さいまし!」
私の呟きを聞きつけ、通りすがりの生徒が真っ青になります。
気がつけば私のお皿には、デザートの山がお供えされており……、
「なんか思ってたのと違う!!」
私は学園生活のままならなさに、頭を抱えるのでした。
***
そうして気がつけば、1日が終わろうとしていました。
1日が、終わろうと、していました……!
(た、大変です!)
(友達はおろか、結局まともにクラスメイトとお話すら出来てません!)
私が、エリシュアン学園に入ったのは友達を作るためです。
当初の計画では、放課後は友達と一緒に街に出かける予定だったのに、現実は教室でぽつんと1人ぼっち。
このままでは、1人悲しい学園生活が始まってしまいます。
(まだです!)
エリシュアン学園では、生徒の自主性を重んじて部活動を推奨していました。
それだけでなく、在学中の冒険者活動も推奨しています。
学費や名誉のため、生徒の中には冒険者として活動することに積極的な者も大勢いました。
エリシュアンにおいて、生徒たちの間で上位の冒険者ライセンスは、ある種のステータスのように扱われていました。
「私も、冒険者デビューします! どうにかパーティーを組んで、数々の難敵を打ち破って、死線をくぐり抜けて、徐々に心を縮めて――お友達になります!」
様々な苦楽を共にし、数々の死線をくぐり抜けた先にあるパーティーには、きっと友情が芽生えていることでしょう。
(少なくとも会話はできるはず!)
「いざ、冒険者ギルドへ!」
そう決意した私は、颯爽と街にくり出すのでした。
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