病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ

文字の大きさ
21 / 47

フィアナ、無事クエストを達成する

しおりを挟む
「あとは任せて」
「フィアナちゃん?」


「1発で終わらせるから」

 身体中に力が漲ります。
 それは支援魔法の効果でもあり、それ以上に……、

(ああ、これがパーティーを組むってことなんですね)

 やっぱり王都に来てよかったです。

(技を借ります――アル爺)

 私は、体内でマナを練り上げます。
 身体強化魔法──内的魔法とも呼ばれるその技術は、通常、体内のマナだけを使うものですが、

(集中、集中!)

 私はそれに加えて、大気中のマナも体内に取り込みます。
 大気中のマナも身体強化に転用することで、通常ではあり得ないレベルの莫大なマナを身体に取り込み、圧倒的な身体能力を得るという力業――ルナミリアでも使い手は、私とアル爺しか存在しない大業です。

「ここからはずっと私の番です――闘華乱舞!」
 
 イメージするのは、最強の自分です。
 1歩間違えれば身体が爆発する危険な試みですが、健康な肉体の暴力で、何度も死にそうになりながらどうにか習得に成功したのです。

「そんなものは、こけおどしだ! まさか、まだ我に勝てるとでも――」
「遺言は、それでいいですね」

 私は、魔法で剣を生み出します。
 地面を強く蹴り、一瞬でドラゴンに肉薄。そのまま剣を一閃。

「――ハア?」

 そんな間抜けな声――それがドラゴンの発した最後の言葉になりました。
 次の瞬間、ドラゴンは頭から尻尾にかけて、真っ二つになっていたのですから。


「――エリンちゃんのバフ、凄いですね」

 ドラゴンが吐き出した魔石を拾いながら、そう私は呟きました。
 生半可な刃物では、傷ひとつ付かないはずのブラッグドラゴンの鱗――それをバターのように切り裂いてしまうのですから。



***
 
 ボス部屋を出た私たちは、そのまま転移陣で入り口に戻ってきました。

 さすがにドラゴンとの死闘を経て、私もエリンちゃんもへとへとに疲れていたからです。
 私が、心地よい疲労に身を委ねていると、

「フィアナちゃん、最後のアレは何ですか!?」

 エリンちゃんが目を輝かせて、そんなことを聞いてきました。

「何って、普通に身体強化魔法をかけて斬っただけですよ?」
「普通に――斬った!?」

「むしろ驚くべきは、エリンちゃんが使ったわけの分からない魔法です! 見たことも聞いたこともありません――なんですか、アレ?」
「えへへ――奇跡、ですかね?」

 エリンちゃんも満更でもないのか、にこにこと笑いました。
 パーティーを組む前の、こそこそ周囲の様子を伺っていた内気な姿とは別人のようで――良い傾向だと思います。


「あ、そうだ。はい、エリンちゃん」

 私は、ブラックドラゴンの魔石をエリンちゃんに手渡します。

「本当にいいんですか?」
「もちろん。エリンちゃんのクエストを手伝うために来たんだし、エリンちゃんが居なかったらあいつは倒せなかったからね!」
「ありがとうございます。――この恩は必ず」

 やけに熱っぽい視線で、エリンちゃんは私を見てきます。

「恩なんて大袈裟だよ。またパーティー組もうね」
「はい!」

 私の誘いに、エリンちゃんも嬉しそうに頷き、


(やった! パーティーメンバーゲットです!)
(このままクエストを一緒に受けて、何日も一緒にお泊りする遠征にも行って、ついでに死線もくぐり抜けて――いつかは友だちになってみせます!)

 私も内心で、ガッツポーズを決めるのでした。



***

 その後、冒険者ギルドで、私たちはクエストを報告します。

「クエストクリアおめでとう、エリンちゃん!」

 パチパチと手を叩いて、受付嬢はエリンちゃんを祝います。

「えへへ、ありがとうございます」
「どう? 光魔法のきっかけ、何か掴めた?」

「はい、バッチリです!」
「へえ。あなたが、そこまで自信満々ってのも珍しいわね」

 エリンちゃんは、胸に手を当てながら、

「はい。私、自分を卑下するのは辞めたんです。私よりもずっと凄い人が、私のことを凄いって――そう言ってくれましたから」
「……?」

 こちらを見ながら恥ずかしそうに微笑むエリンちゃん。
 ちょっぴり照れるエリンちゃんも可愛くて、まさしく天使――目の保養というものです。

「それで魔石は?」
「これです!」
「……なにこれっ!?」

 エリンちゃんが取り出した魔石を見て、受付嬢はギョッと目を見開きます。

「何って?」
「ボスの魔石ですよ?」

 きょとんと首を傾げ合う私とエリンちゃん。

「――そういうことにしておくわ」

 受付嬢は、そうため息をつくのでした。

(そういうことも何も、ただの事実なんだけどな――)

 私は、受付嬢の反応を不思議に思いつつ、エリュシアンの宿舎に戻るのでした。



【冒険者ギルド視点】

 魔石――それはクエスト達成の証。
 エリンから渡されたそれを眺めながら、

「いやいやいやいや……、これ、どう見てもS級以上のモンスターじゃん」

 受付嬢――アリッサは、恐れおののいていた。
 魔石のサイズから推定すると、間違いなく推定S級――数年に1度現れ、破壊を撒き散らす災厄級モンスターと考えるのが自然。

「これを新人2人が取ってきた?」
「いや、ありえねえだろ。どっかで買ってきたんじゃねえか?」
「しかも片方は魔法すら使えない落ちこぼれだっていうんだろう? S級モンスターなんて、ここにいる冒険者が束になってかかっても秒殺されちまう」

 テーブルの上に置かれた魔石を見ながら、何人かの冒険者が囁きあっていた。

「あぁん? てめぇ、姉御がズルしたっていうのか!」
「そうだそうだ、姉御ならS級モンスターごときワンパンするに決まってる!」
「どうどう、モヒカンたち。話がややこしくなるから黙っててね」

「けっ、俺が従うのは姉御だけだ」
「フィアナちゃんに言いつけますよ?」
「すいませんでしたぁ!!」

 フィアナが聞いていたら「何で!?」と涙目になるようなやり取りをしつつ、

「資格欲しさに、闇市で買ってきた? それはあり得ないのよ」
「何でそう言い切れる?」
「だって、このサイズの魔石。入手しようとしたら間違いなく時価――それこそ何ゴールドかかるか分かったものじゃない。到底、割に合わないわ」

 受付嬢のアリッサは、集まった冒険者たちにそう説明していく。

 魔石を買うぐらいなら、教官に賄賂でも渡した方が手っ取り早い。
 そもそも2人は、地方出身の平民だったはず――金に物を言わせた解決策とは考えづらいのだ。

「そう考えると、学園ダンジョンに本当にS級モンスターが現れた。そしてあの2人は、それを倒してきた――そう考えた方が自然なのよ」
「そんな馬鹿な……」
「私も、にわかには信じがたいけど――」

 仮にそうだとしても、今度は別の疑問が出てくるのだ。
 あの2人は帰ってきた後、ケロッとした顔で「ボスを倒した」とだけ報告してきたのだ。

 冒険者ギルドは、クエストの難易度を適正に設定して提示する義務を負う。
 初心者用クエストに、S級相応のモンスターが居た……、それは高確率で死亡事故に繋がる事態であり、報告があれば、ギルドは多額の補償金を支払う必要があった。

 普通なら絶対に報告した方が得な場面なのだ。
 にもかかわらず2人は笑顔のまま、想定外のモンスターを話題に挙げすらしなかったのだ。
 そこから導かれる結論は、

「フィアナちゃんは、人知れずイレギュラーを処理してくれた? 何のために?」
「ヒャッハー! 真の強者は、功績を誇ったりしないってことッスね!」
「ヒュー! やっぱり姉御は、漢の中の漢だ!」

 喝采を挙げるモヒカン3人衆。
 一方、受付嬢は顔に手をあててじっと考え込み、

「弱みを握って損はないってこと? 次はないって脅し? いいえ、あの子は圧倒的な実力を持ちながら、伸び悩んでいたエリンちゃんのことも優しく導くお人好し。そんな腹芸を好むような子どでもない……、か」

 考えれば考えるほど、ドツボにはまっていく。


 ――まさかフィアナたちが「標準的なボス」を知らず、そもそも異変に気がついてすらいないとは、想像もしないアリッサであった。

「フィアナちゃんたちの”善意”を無駄にしないため――急いで学園ダンジョンの管理体制を見直しましょう。まずはシリウス教頭に報告して、定期的な見回りのスケジュールも見直して――ああ、死傷者が出る前で本当に良かったわ!」

 これから忙しくなるぞ、とアリッサは腕まくり。
 そうしてアリッサから、報告を受け取ったエリュシアン学園の職員室では、

「はぁ!? 例のフィアナが、単身でS級モンスターを蹴散らした!?」
「一躍、有名冒険者の仲間入りを果たした!?」
「ま~た、あいつか……!!」

 などと大騒ぎになっていたが……、



「初心者ダンジョン相手に手こずるなんて、私もまだまだですね。エリンちゃん、これから頑張りましょうね!」
「お~!」

 当の2人は、呑気にそんなやり取りをしていたとかいないとか。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...