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フィアナ、試験中にテロリストに遭遇する
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【???サイド】
緊張した面持ちの少女2人が、王都の中をひっそりと歩いていた。
少女たちの名前は、カトリーナとレイラ――スロベリア演習で、セシリアを嵌めようとムカデをけしかけた少女たちである。
「アレシアナさまも、随分と無茶を言いますわ」
「まったくです。あの人間の弱点を探ってこいなんて――」
カトリーナたちは、フィアナの弱点を探れとアレシアナに命じられていたのだ。
フィアナをこっそり尾行しながら、カトリーナたちは真顔になる。
見ている目の前で、フィアナが精霊魔法のかかったアクセサリの真贋を暴き出したからだ。
弱点どころか、完全無欠ぶりがますます明らかになる始末。
「ねえ、フィアナさんの故郷って――」
「考えるのはやめなさいレイラ。私たちは役目を遂行するのみよ」
故郷について聞かれ、笑顔でドラゴンがよく取れる場所――などと、フィアナはあっけらかんと言い放つ。
その言葉は、普通に考えるなら、ただの冗談なのだが……、これまでのフィアナの行動を考えれば、ひょっとしたらひょっとするのかもしれない――なんて考えてしまう2人であった。
「弱点、弱点――」
「お勉強が苦手なのは事実みたいですが……」
「とは言えそれは皆が知ってるわ。正直、だからどうしたって話なんですよね――」
なにせ本人が、大の勉強嫌いを公言しているのだ。
授業中、スヤスヤと眠るフィアナのことを起こすエリンの姿は、きっと何人ものクラスメイトが目撃していることだろう。
弱点、それは暴かれて困る秘密でなくてはならない――例えばセシリアの「虫嫌い」のように。
なんの成果も上げらねまま、時は過ぎていく。
分かったことと言えば、王都レガリアの中でも、フィアナの知名度はすっかり上がっているという事実ぐらいで、
「ねえ、たぶんフィアナさんに弱点なんて――」
「考えるのはやめなさい、レイラ。私たちは役目を遂行するのみよ」
ヒソヒソとそう言い合う2人であったが、
「ねえ。あの3人、とても仲が良いと思いませんこと?」
「それがどうしたと――あっ!」
「そう。見て下さいまし、あの幸せそうな顔――固い友情。それ事態は素晴らしいことですわ――だけどもそれは、時として弱点になると思いません?」
悪い顔で笑うカトリーナ。
その推測は、実のところ的を射ており、
「つまり、フィアナさんを倒す鍵は――」
「人質。これに間違いありませんわ」
そう結論を出す2人であった。
学園に戻り、カトリーナたちは速やかにアレシアナに調査結果を報告する。
実のところアレシアナは、大して期待していなかったが、
「なるほど。人質ですか――」
自信満々に告げたカトリーナを見て、アレシアナは思案を巡らせる。
友情――実のところアレシアナにとって、それはまるで理解できない感情だった。
他人とは、所詮はどこまでいっても他人。利用するか、利用されるか――それだけの存在だ。そんな他人のために、自身を危険に晒すなどあり得ないのだ。
「アレシアナ様、どうかあの方に口添えを!」
「分かっておりますわ。これであの方は、あなたたちを重用して下さるはず――貴重な情報、感謝しますわ!」
アレシアナは、カトリーナたちを安心させるようにそう微笑む。
しかし退室していくカトリーナたちを見るアレシアナの瞳は、ひどく冷ややかであった。
「果たして、あの方がこれで満足して下さるか――」
とはいえ他に弱点らしい弱点が思いつかなかったのも事実。
アレシアナは部屋にあった魔導具を操作し、教頭相手に通話を繋ぐ。
そうして、一部始終を報告したところで、
「人質、ですか――」
教頭の第一声は、感情の読めないそんなもの。
やっぱり駄目か――こんな下らない情報。こんなものを報告するぐらいなら、まだ別の弱点をでっちあげたほうがマシ――そんな冷めた感情を抱くアレシアナとは裏腹に、
「なるほど、面白いですね」
教頭の反応は、そんなもので。
「面白い、ですか?」
「ええ。世の中にはね、本当に友情こそが第1だと信じる愚か者いるのですよ。友情、努力、勝利――そんな素敵な未来を、本気で信じるカモがね」
「はあ……」
ピンと来ない様子で頷くアレシアナ。
「君もね。覚えておくと良い――世の中には、2種類の人間しかいない。利用する奴と、利用される奴――もっとも君は、もう手遅れかもしれませんけどね」
「ええ、そうですね」
「良い子です。病気の妹を助けたければ、君は、黙って私に従うしかないのですから――せいぜいこれからも、私の役に立って下さいね」
「…………はい」
シリウス教頭は、上機嫌でそんなことを言い放つ。
「例の計画は、予定通りエレナ学園長不在のテスト中に実行します。君の方も、準備をしっかり進めておくように」
「かしこまりました」
アレシアナは、無表情のまま黙って頷くのであった。
そんな密約が交わされていることを知る由もなく、
「大変です!? 寝たら綺麗サッパリ、歴史の記憶がありません!!」
「なんで、そんな清々しい顔をしてますの!?」
「寝たら忘れる……。なら解決策は簡単? 寝なければいい」
「エリンちゃん、落ち着いて!? なんで杖を取り出したの!?」
とある宿では、そんなやり取りが行われていたとかいないとか。
※※※
【フィアナサイド】
そうして楽しい週末が終わり、ついに期末試験の日がやって来てしまいました。
前日まで、お友だちとテスト対策合宿までやって、これで準備は万全!
……かというと、勿論そんなことはなく――、
「ゴミを無くそうレガリア遷移、537年! ええっと、次は……」
「その意気ですわ!」
「うぅ、話しかけないで。頭から年号が飛んでいく――」
エリンちゃんお手製の暗記ノートを抱えて、私は、う~んと唸っていました。
(ここまでしてもらって、落第なんてなっては顔向けできません!)
(今の私は、年号を覚えるだけのマシーン!)
机の周りに集まる私たちを見て、
「騒がしい――」
教室に入ってきたアレシアナさんが、眠たそうな目でそう言い机に向かっていきます。
その目には見間違いでなければ、微かな隈ができており、
「アレシアナさんも一夜漬け仲間ですか!!」
謎のシンパシーを感じて、話しかける私なのです。
「え? いえ、違うけど……」
「残念ながら、アレシアナさんは学年でも1位常連の超エリートですわ。……あなたが、そんなに疲れた顔をしてるのは、珍しいですわね」
「放っておいてちょうだい」
私たちが話しかけると、露骨に迷惑そうな顔で顔を逸らされてしまい、
「すみません、お邪魔しました――」
私は、すごすごと席に戻るのでした。
そうして、ついに試験の時間になりました。
(やります!)
目指すは、合格点。
なんとしてでも夏休みを死守するのです!
腕まくりをして、気合いとともに答案用紙と向き合う私ですが、
ガラガラガラガラ!
教室の扉が、乱暴に開け放たれました。
さらには扉から、覆面を被った大勢の人間がなだれ込んできます。
「この教室は、我々、スカーレットムーンが占拠する!!」
覆面の男は、自信満々でそう宣言しました。
(い、いったい何事ですか!?)
覆面男たちは、手に魔法銃を持っています。
どうやら魔導具の1種のようで、本当に弾を射出できるようで、
「な!? これは、いったい何の――」
「黙って手を挙げろ! 撃ち殺されたいか!!」
困惑した様子の教師に、リーダー格の男が威嚇射撃を1発。
魔法銃の威力は本物のようで、1撃で簡易結界が貼られた窓ガラスをぶち破りました。
粉々になったガラス片が、教室の中に飛んできて、
「「「キャー!?」」」
悲鳴が上がり、たちまち大恐慌に陥る教室内。
「な、なんですかあなたたち。ここは王立魔法学園、こんな事をして――」
1人の生徒が、我に返ったようにそう立ち上がりましたが、
「おっと、下手なことはしない方がいい。すでに学園には、魔封じの結界が貼ってある――お前たちは袋の鼠も同然だ」
「おい、人質には傷つけるなよ。1人1人が、大切な金蔓なんだからな」
悔しそうに唇を噛む少女。
一方、リーダー格の男が、銃をこれ見よがしに見せびらかす仲間を、そう諌めました。
そんな一連のやり取りを見て、
(こ、これは――テロリストが襲撃してきて、有耶無耶にしちゃえ大作戦!)
(なんて、大胆な!!)
私は、感動に打ち震えていました。
緊張した面持ちの少女2人が、王都の中をひっそりと歩いていた。
少女たちの名前は、カトリーナとレイラ――スロベリア演習で、セシリアを嵌めようとムカデをけしかけた少女たちである。
「アレシアナさまも、随分と無茶を言いますわ」
「まったくです。あの人間の弱点を探ってこいなんて――」
カトリーナたちは、フィアナの弱点を探れとアレシアナに命じられていたのだ。
フィアナをこっそり尾行しながら、カトリーナたちは真顔になる。
見ている目の前で、フィアナが精霊魔法のかかったアクセサリの真贋を暴き出したからだ。
弱点どころか、完全無欠ぶりがますます明らかになる始末。
「ねえ、フィアナさんの故郷って――」
「考えるのはやめなさいレイラ。私たちは役目を遂行するのみよ」
故郷について聞かれ、笑顔でドラゴンがよく取れる場所――などと、フィアナはあっけらかんと言い放つ。
その言葉は、普通に考えるなら、ただの冗談なのだが……、これまでのフィアナの行動を考えれば、ひょっとしたらひょっとするのかもしれない――なんて考えてしまう2人であった。
「弱点、弱点――」
「お勉強が苦手なのは事実みたいですが……」
「とは言えそれは皆が知ってるわ。正直、だからどうしたって話なんですよね――」
なにせ本人が、大の勉強嫌いを公言しているのだ。
授業中、スヤスヤと眠るフィアナのことを起こすエリンの姿は、きっと何人ものクラスメイトが目撃していることだろう。
弱点、それは暴かれて困る秘密でなくてはならない――例えばセシリアの「虫嫌い」のように。
なんの成果も上げらねまま、時は過ぎていく。
分かったことと言えば、王都レガリアの中でも、フィアナの知名度はすっかり上がっているという事実ぐらいで、
「ねえ、たぶんフィアナさんに弱点なんて――」
「考えるのはやめなさい、レイラ。私たちは役目を遂行するのみよ」
ヒソヒソとそう言い合う2人であったが、
「ねえ。あの3人、とても仲が良いと思いませんこと?」
「それがどうしたと――あっ!」
「そう。見て下さいまし、あの幸せそうな顔――固い友情。それ事態は素晴らしいことですわ――だけどもそれは、時として弱点になると思いません?」
悪い顔で笑うカトリーナ。
その推測は、実のところ的を射ており、
「つまり、フィアナさんを倒す鍵は――」
「人質。これに間違いありませんわ」
そう結論を出す2人であった。
学園に戻り、カトリーナたちは速やかにアレシアナに調査結果を報告する。
実のところアレシアナは、大して期待していなかったが、
「なるほど。人質ですか――」
自信満々に告げたカトリーナを見て、アレシアナは思案を巡らせる。
友情――実のところアレシアナにとって、それはまるで理解できない感情だった。
他人とは、所詮はどこまでいっても他人。利用するか、利用されるか――それだけの存在だ。そんな他人のために、自身を危険に晒すなどあり得ないのだ。
「アレシアナ様、どうかあの方に口添えを!」
「分かっておりますわ。これであの方は、あなたたちを重用して下さるはず――貴重な情報、感謝しますわ!」
アレシアナは、カトリーナたちを安心させるようにそう微笑む。
しかし退室していくカトリーナたちを見るアレシアナの瞳は、ひどく冷ややかであった。
「果たして、あの方がこれで満足して下さるか――」
とはいえ他に弱点らしい弱点が思いつかなかったのも事実。
アレシアナは部屋にあった魔導具を操作し、教頭相手に通話を繋ぐ。
そうして、一部始終を報告したところで、
「人質、ですか――」
教頭の第一声は、感情の読めないそんなもの。
やっぱり駄目か――こんな下らない情報。こんなものを報告するぐらいなら、まだ別の弱点をでっちあげたほうがマシ――そんな冷めた感情を抱くアレシアナとは裏腹に、
「なるほど、面白いですね」
教頭の反応は、そんなもので。
「面白い、ですか?」
「ええ。世の中にはね、本当に友情こそが第1だと信じる愚か者いるのですよ。友情、努力、勝利――そんな素敵な未来を、本気で信じるカモがね」
「はあ……」
ピンと来ない様子で頷くアレシアナ。
「君もね。覚えておくと良い――世の中には、2種類の人間しかいない。利用する奴と、利用される奴――もっとも君は、もう手遅れかもしれませんけどね」
「ええ、そうですね」
「良い子です。病気の妹を助けたければ、君は、黙って私に従うしかないのですから――せいぜいこれからも、私の役に立って下さいね」
「…………はい」
シリウス教頭は、上機嫌でそんなことを言い放つ。
「例の計画は、予定通りエレナ学園長不在のテスト中に実行します。君の方も、準備をしっかり進めておくように」
「かしこまりました」
アレシアナは、無表情のまま黙って頷くのであった。
そんな密約が交わされていることを知る由もなく、
「大変です!? 寝たら綺麗サッパリ、歴史の記憶がありません!!」
「なんで、そんな清々しい顔をしてますの!?」
「寝たら忘れる……。なら解決策は簡単? 寝なければいい」
「エリンちゃん、落ち着いて!? なんで杖を取り出したの!?」
とある宿では、そんなやり取りが行われていたとかいないとか。
※※※
【フィアナサイド】
そうして楽しい週末が終わり、ついに期末試験の日がやって来てしまいました。
前日まで、お友だちとテスト対策合宿までやって、これで準備は万全!
……かというと、勿論そんなことはなく――、
「ゴミを無くそうレガリア遷移、537年! ええっと、次は……」
「その意気ですわ!」
「うぅ、話しかけないで。頭から年号が飛んでいく――」
エリンちゃんお手製の暗記ノートを抱えて、私は、う~んと唸っていました。
(ここまでしてもらって、落第なんてなっては顔向けできません!)
(今の私は、年号を覚えるだけのマシーン!)
机の周りに集まる私たちを見て、
「騒がしい――」
教室に入ってきたアレシアナさんが、眠たそうな目でそう言い机に向かっていきます。
その目には見間違いでなければ、微かな隈ができており、
「アレシアナさんも一夜漬け仲間ですか!!」
謎のシンパシーを感じて、話しかける私なのです。
「え? いえ、違うけど……」
「残念ながら、アレシアナさんは学年でも1位常連の超エリートですわ。……あなたが、そんなに疲れた顔をしてるのは、珍しいですわね」
「放っておいてちょうだい」
私たちが話しかけると、露骨に迷惑そうな顔で顔を逸らされてしまい、
「すみません、お邪魔しました――」
私は、すごすごと席に戻るのでした。
そうして、ついに試験の時間になりました。
(やります!)
目指すは、合格点。
なんとしてでも夏休みを死守するのです!
腕まくりをして、気合いとともに答案用紙と向き合う私ですが、
ガラガラガラガラ!
教室の扉が、乱暴に開け放たれました。
さらには扉から、覆面を被った大勢の人間がなだれ込んできます。
「この教室は、我々、スカーレットムーンが占拠する!!」
覆面の男は、自信満々でそう宣言しました。
(い、いったい何事ですか!?)
覆面男たちは、手に魔法銃を持っています。
どうやら魔導具の1種のようで、本当に弾を射出できるようで、
「な!? これは、いったい何の――」
「黙って手を挙げろ! 撃ち殺されたいか!!」
困惑した様子の教師に、リーダー格の男が威嚇射撃を1発。
魔法銃の威力は本物のようで、1撃で簡易結界が貼られた窓ガラスをぶち破りました。
粉々になったガラス片が、教室の中に飛んできて、
「「「キャー!?」」」
悲鳴が上がり、たちまち大恐慌に陥る教室内。
「な、なんですかあなたたち。ここは王立魔法学園、こんな事をして――」
1人の生徒が、我に返ったようにそう立ち上がりましたが、
「おっと、下手なことはしない方がいい。すでに学園には、魔封じの結界が貼ってある――お前たちは袋の鼠も同然だ」
「おい、人質には傷つけるなよ。1人1人が、大切な金蔓なんだからな」
悔しそうに唇を噛む少女。
一方、リーダー格の男が、銃をこれ見よがしに見せびらかす仲間を、そう諌めました。
そんな一連のやり取りを見て、
(こ、これは――テロリストが襲撃してきて、有耶無耶にしちゃえ大作戦!)
(なんて、大胆な!!)
私は、感動に打ち震えていました。
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