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ごめんなさい
しおりを挟む翌日───
とりあえず、今日は仕事を休んだ。
幸い、今日中に急いでしなければならない仕事はないし、仕事があっても誰かに回せるから気にするなと上司に言われたので、休むことに。
推し様は仕事に出掛けた。
「ヨシ。そろそろ、やりますか」
荷造り開始。
推し様は反対してたけど、やっぱり離れた方がいいに決まってる。
多少は貯金してたから、そのお金を引っ越し代と当分そこで住むお金に充てる。
傷付きたくないし、傷付いて欲しくない。その危害を加えるのが一体、どんなことなのかは分からないけど離れることによって、それが防げるなら私は辛くても離れるよ。
所詮、推し様を拝むほど大好き過ぎるファンの一人にしか過ぎないし……
上司に連絡して、明日もお休みすることに。
今日のうちに、不動産屋に行って早く手続きをしてしまおう。
不動産屋には事情があり、すぐに住める家を探していると話すと、いくつか部屋を紹介してくれた。
その中で金額や生活のことも考えて、気になった部屋を見に行き、即決して手続きをした。
引っ越し業者にも少し無理を行って明日、来てもらえることになった。
今日も明日も、推し様は帰りが遅い。
これ幸いと思い、残りのものも荷造りした。
「これで、問題ないわね」
後はバレないようにすれば、完璧。
引っ越しの荷物は推し部屋に移動したので、推し様が部屋を開けない限りバレることはない。
その翌日───
推し様は仕事で早くに家を出た。思っていた時間よりも早く出たので、私は最終チェックをしながら引っ越し業者を待った。
そして、引っ越し業者に来てもらい荷物を運び出してもらった。
「捜さないでください……っと」
置き手紙も書けた。テーブルにそっと置き、忘れ物がないかチェックをして、私は玄関のドアを閉め鍵を掛けて……ドアポケットへ鍵を入れた。
「さよなら……そして、ごめんなさい……っ」
自分の新しい家に着き、引っ越し業者のスムーズな作業のお陰で早く終わった。
「ありがとうございました」
引っ越し業者が帰り、どっと疲れが来た。
まだ布団を敷いていないフローリングに仰向けになり、ぼーっとしていた。
「推し様……」
帰ったら、私が居ないことに気付いて怒るかな。
置き手紙、ちゃんと読んでくれるといいな……
てか、今日はちゃんと休もう。
推し様と離れたんだから、これで平和がやってくる。
誰も傷付かない。
心穏やかに静かに過ごせる。
これで良かったんだ。これで……
「えっ、なん、で……」
次から次へと涙が溢れてくる。
あの頃の、いつもの生活に戻るだけ。それだけなのに、こんなにも寂しくて悲しくて苦しくて、辛いなんて……
こんなになるなら、あの時にちゃんと断れば良かったのかな?
そうすれば私と推し様は出逢うことも、付き合うこともなかったのに。
どこかで選択を間違えた?
分からない……
私は推し様を好きになっちゃ、いけなかったの……?
想うだけでもダメなのかなぁ。
苦しいよ、辛いよ、もう分かんないよ……
その日の夜。私は泣きじゃくりながら、いつの間にか眠っていた。
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