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恐怖
しおりを挟む推し様と離れて暮らし始めて、早2週間。
何事もなく、平和な日常を過ごしている。推し様と離れることは心が痛むけれど、危害を加えられない為にも選択したことは、間違っていないことを祈りたい。
推し様グッズも一緒に持ってきているから一応、寂しくはない。
だけど、本物の推し様は私を抱き締めてくれる。推し様の温もりが、こんなにも落ち着いて癒されるなんて……
辛い。悲しい。寂しい。仕事なんて、もう頑張れない。
ご飯だって、コンビニかスーパーの惣菜やお弁当だし。
食べない日もある。栄養ドリンクやゼリーで、栄養補給して倒れないようにしてるって感じ。
「痩せた?」「ちゃんと食べなきゃ駄目だよ」「何かあった?」って、いろんな人に言われたけど、推し様のことやストーカーのことなんて……とても言えない。
でも、推し様と離れて暮らしてるから大丈夫なハズ。
そう思っていた私が甘かった。
まさか、そのストーカーさんが私の居場所を知っていたなんて───
「はぁ……仕事、終わったぁ~」
久しぶりに、まぁまぁな残業をした。休みの日は、いろんな意味で家に引きこもりたいから残業して片付けた。
「とりあえず、コンビニ行こ……」
明日は、ネットスーパーで買い物して届けてもらおう……
コンビニに寄って、アパートのエントランスに入ろうとした時
「あの……」
「はい?」
「小泉 美華さんですか?」
「えっ……そう、ですけど……」
誰……!?見たことない小柄の女性。
どこかで会ったこと……ハッ、もしかして……!
「みや様の、ストーカーさん……ですか?」
「ストーカーだなんて酷い言われようね!私、ストーカーなんかじゃないわよ!」
そう言うと、果物ナイフのような物を取り出して
「みや様は私のモノよ!さっさと別れなさいよッ!」と、発狂した。
「あの……別れ、ましたけど…」
「嘘つきッ!みや様はあなたの抱き心地が最高だって言って、別れないって……結婚するって言ったのよッ!?」
「だっ、抱き!?」
ちょっと推し様ーーッ!?変な誤解を与えないでよ!抱き心地って、抱き枕みたいで良い肉付きをしてるってことでしょう!?
何をその、誤解するような言い方を!?
「どうやって、虜にしたのよ!?私のみや様にッ!!」
「いや、あの……誤解です!」
「誤解?何の誤解よッ!」
「みや様が言った“抱き心地”というのは、そっちではなく“抱き枕みたい”な肉付きをしている、という意味の“抱き心地”なんです!」
「はぁ~~!?そんなわけないでしょ!」
「本当なんですって!だって、私たちまだキスもしてないんですからッ!」
「は……?」
ストーカーさんは、ぽかんと口を開けて言葉を失っていた。
「う、嘘よ!あんたの言うことなんか、信じないわ!」
「ほ、本当だって……何もしてない!」
「嘘よ嘘よ嘘よーーッ!みや様は私のモノなんだから、返しなさいよッ!」
怒り狂ったストーカーさんは私に目掛けて、ナイフを刺そうと走ってきた。
どうしよう、逃げなきゃ……でも、体が言うこと聞かない。
動かないし、声も……出ない。助けを、誰かに助けを……
そんな時───
「 小鳥遊 結李を殺人未遂で逮捕!」
「危ないねぇ、お嬢ちゃん」
「オイッ!離せ、バカ野郎!」
「俺たち、警察なんだけど?」
「口の聞き方に気を付けろ」
「ちょっと!?まだ、あの女に用があるんだから離しなさいよッ!」
「俺らは、お嬢ちゃんに用があるから。ほら、乗った乗った!」
一体、何が起きてるの……!?
パトカーが走り去った後、私はいつの間にか力が抜けて、地面にぺたりと座っていた。
そして、恐怖心のあまり震えていた。
小刻みに震える体を、少しでも早く治まるように大事に抱き締めた。
こんな時、推し様が居たら───
ストーカーさんが捕まってホッとしたのか、何なのか……今頃、涙が溢れてきて泣いた。
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