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生徒会長という名の権限
しおりを挟む私のクラスの出し物は、カフェに決まりました。
メイド喫茶という定番の出し物も候補として挙がっていましたが、メイド服を着るというのはハードルが高いという理由でちょっと可愛らしい、オシャレなカフェの店員さん衣装を作ることに決まりました。
ちなみに私と井栗くんも、カフェのホール担当ですわ。
毎年、文化祭での出し物や屋台で競い合い、優勝したクラスには、日帰りでファンタジーランドに貸し切りで招待されるそうです。
”貸し切り”というところが、ポイントですわね!
自分たちのクラスにだけ、特別に開けてくださるのでテンションと気合いが入るのは、間違いナシですわ☆
「一緒に頑張ろうね、綺羅ちゃん」
「ええ、そうね!井栗くん」
************
「今……なんて言った」
「えっ?だから、私のクラスはカフェをやることになったの」
「カフェ?」
「えぇ!」
「桜、お前は厨房だろうな」
「いえ、ホールです」
「はぁ!?ホール!?」
「えっ、何かいけないことでも?」
「いけないに決まっているだろう!メイドみたいなヒラヒラした格好をして、他の男になど……」
「あの……怜さんが思っているような、そんな格好ではありませんわよ?」
「は……?」
「ちょっとオシャレで可愛い格好にするって、服飾担当の子が張り切っていましたわ!予算内で出来るようにって」
「しかし、ただでさえお前……」
「はい?」
「こんなに可愛いのに、そんな格好したら……クソッ」
ボソボソ言っていても聴こえていますが、ここは聴こえなかったことにして華麗にスルーですわ。
「私もやってみたいんですの!素敵な想い出作りの為に」
「ぐっ……想い出作りの為と言われれば……強く反対は、出来ないな……」
「ということは……!」
「とりあえず、仮で許可する。が、服装でダメなところがあれば即刻、桜は厨房に入ること。いいな?」
「むぅ!嫌です!」
「何?」
「そんな生徒会長の権限をフルに使うだなんて、やり方が汚いですわっ!」
「な……!やり方が、汚い……!?」
「そうです!どんな格好でも、私は絶対にホールをやりますからね!怜さんが怜さんなら、私にも考えがありますからっ!」
もう、ここでいいです!また明日!と一方的に告げて、私は家まで走って帰りました。
きっと許婚様は私の突然の反撃に、呆気に取られていたと思います。
だって、酷いじゃないですか。私の楽しみを想い出を、生徒会長の権限で奪うだなんて。
流石にファンクラブの会員の皆様からも、たくさんのブーイングが飛んで来ると思いますけど?
許婚様は、私に自由をくださらないのですか?私の自由は、結婚してからなのですかーーー!?
私は許婚様が何を思ってそう言ったのか、理解出来なかった。
今までの言動は、私のことを好いているが故のことだったと、後で知ることになるのです。
しかし、そこまであれこれ言わなくてもよろしいのでは?と思ってしまいます。
私も、許婚様のことはお慕い申し上げておりますが、そこまでして縛ろうとは思いませんもの。
だから、もっと寛容になっていただきたいですわ。
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