許婚様は私がお好きらしい。

はるの美羽都

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コスプレ撮影会の様子

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   さて、私と許婚様のクラスは端と端の距離なので、ちょっと早歩きして急がねば。
「あっ!」
ありましたわ!『コスプレ撮影会』会場。
ひょこっと気付かれないように覗くと、許婚様がファンクラブの方たちと代わる代わる、撮影されていました。
ウフウフ。許婚様は困っている様子ですが、年に2度のファンサービス(もう1つは体育祭)なので、ここは1つ頑張っていただきたいですわね。
それにしても……ファンが多過ぎますわ!
途切れぬ長蛇の列に整理券……改めて、許婚様のファンの数に驚かされますわね。
本当、許婚様お一人でも余裕勝ち出来そうですわ……
いや、うちには井栗いぐりくんが居るんですもの!彼なら、何とか頑張ってくださるはずよ!
あら、許婚様が去って行ったわ。何故かしら?列はまだあるのに……
数分後、また違うお衣装を身にまとった許婚様が現れましたわ!
なんということでしょう!この衣装も、許婚様にとってもお似合いですわ……
何だか着せ替え人形みたいな許婚様が可愛く思えますが、この格好良さに惚れない女子はいらっしゃらないかと……
素晴らしい戦略ですわね。この衣装担当の子にお会いしたいぐらいですわ!
後で許婚様にお伺いしましょう。素敵な目の保養をありがとうと、お礼をお伝えたいです!
ウフウフ。陰から覗いているなんて、隠れファンみたいで楽しいですわ。
許婚様、最初からずっと同じポーズなのかしら?全くポーズが変わりませんわ。
それでも、素敵ですから誰も何も言わないのでしょう。
あら……許婚様、サインまでされているではありませんか!
何というお得感!これはファンからすれば、家宝モノですわ!
私も写真部に、生写真やブロマイド製作を依頼して、サインして販売した方が良いのかしら……
でもそれって、違反になるのかしら?
私があれこれ考えて悩んでいると、気付いた時には許婚様がいらっしゃいませんでした。
どちらへ行かれたのでしょうか。見失ってしまいました……

どうしましょう!と焦っていると、背後から
「オイ、何をしている」
「ぴゃぁっ!!」
「ぷっ」
「り、怜さんではありませんか!瞬間移動か何か、されたのですか!?」
「クッ……ははは!まさか。お前がこちらを覗いているのは知っていた。そろそろ見回りの時間だと思って、抜けてきたんだ」
「そ、そうだったのですか……バレてないと思っていましたのに!まだまだ、修行が足りませんね」
「修行してどうするんだ、今後もそんな隠れて覗くことなんてあるのか?」
「あ、あるかも知れないじゃないですか!万が一の為に、ですわ」
「ククク……そうか、それなら努力するんだな……」
「もう、怜さんったら笑い過ぎですわよ!」
「だって、桜の行動が面白くて……可愛いからいけないんだぞ」
許婚様が笑ったところ、初めて見たような……
あっても微笑むくらい(かすかなので、あまり分かりませんが雰囲気で)なので、声に出して笑う許婚様が見られてレア感、満載でとても嬉しいですわ!
私がウフウフしていると、許婚様は「どうした?」と分かっていらっしゃらない様子。
「うふふ。許婚様が初めて、私の前で声に出して笑ってくださったので、とても嬉しいんです」
「そ、そうか……」
「もっと、感情的になってくださいな!その方が私も、もっと嬉しいので」
「しかし、今更そんな……」
「ならば、せめて私の前だけでも!」
「う……ぜ、善処する」
「はい、お願いいたします!」
「さ、見回りの時間だ。行こうか、お姫様」
「!?」
びっくりしていると、許婚様も顔を赤くしてうつむいている。
許婚様なりに頑張ってくれているのは、とても大きな進歩ですわ!
「はい、喜んで!」
ウフウフしていると、許婚様は「また、締まりのない顔をしているぞ」と優しく注意してくださいました。
しかし、それは仕方のないことなのです。
嬉しいのですから、もっとウフウフさせてくださいな。




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