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7.フロンティア開発編
9.孤児院の功績を称えることのススメ
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客間でややボロボロのソファーを勧められ、俺とシルフェさんが座り、向かい側に神父様が腰を下ろす。リーゼ、シンバとパリーは俺たちの座るソファーを囲むように立ったまま控えている。
「神父様。時間をつくっていただき感謝申し上げます」
シルフェさんは、リーゼがシルフェさんの弟子になったこと、リーゼは才能があるので、きっとよい魔法師になることを説明した。そして、捨て子だったリーゼを神父様が拾って育てたことを聞き、リーゼの近況報告と育ての親に、魔法師の師匠としてあいさつに来た、と今日訪問した理由を告げた。
「こうして、ここを出た子供が、無事に、そして立派に育っていることを知ることができ、私の方こそ、感謝いたします」
神父様は、リーゼの面倒をみている俺たちに頭を下げてきた。
孤児院の運営が厳しく、面倒のみられる人数が限られている。12歳になる春に年長の子供たちを孤児院から出さないとならない。その年齢で放り出されても、退去する子供たちの半分はまともな暮らしができないことは分かっているが、どうしようもないそうだ。そうしないとさらに小さい年代の子供たちを引き取ることができず、見殺しにしてしまうことなる。
リーゼの事も他の子たち同様に、ちゃんと生きているか心配していたが、魔法師の恰好をして現れたのでびっくりしたこと、などを神父様は語る。
俺は、目でリーゼに合図をした。リーゼはテーブルに金貨50枚入った袋をおいた。
神父様はその大金に驚いていた。
「子供は国の活力じゃ。神父殿よ。リーゼは、この先、魔法師として名を成すじゃろう。そのぐらいの才がある。彼女が今ここおるのは、この孤児院の功績じゃ。これは些少だが、リーゼの生をつなぎとめた礼として納めていただきたい。どうか受け取ってくれぬかのう。それと、もし年長の子供で行き先がない者がいて、希望するのであれば、我が領地で仕事を世話することもできますぞ。この国にこだわらなくてよろしければ、だがな」
俺は自分の領地は、まだ開発の余地があり、仕事もたくさんもある。外国ではあるが、本人の努力次第で裕福に暮らせる道もある。リーゼが魔法師として独り立ちしたら、リーゼに移住希望者の面倒をみさせることもできる、と続ける。
「我の目に留まるまで、リーゼは息を殺して生きてきた。魔法師としての大いなる才能がありながらじゃ。それは、本人にとっても、国にとっても損失じゃ。ここを巣立った子たちが、このまま、スラム街の犯罪者になるか、娼婦になるか、じゃと、せっかく神父殿が苦労して、子供たちを育てても、また捨て子が生まれ、悲しい連鎖が続いてしまうのう」
俺は、今アリア王女に力を貸しているのも、異国のことであるが、国を富ませ、リーゼのような才能があっても機会に恵まれない不幸が少しでも減ってほしいと願ってのことだ、と付け加えた。
俺の話に、耳を傾けていた神父様は、希望者がいて、同じ境遇だったリーゼが面倒をみてくるということならば、と納得し、俺が、領地に連れていってよいと思える子らがいたら、面談してやってほしいと頼んできた。
神父様は、俺の喜捨があまりに高額で、強盗に襲われないともかぎらないため、こんな大金は受け取れないといってきた。聖職者なのに欲のないことだ。生臭坊主などではなく、きっと本心で子供たちの将来を憂いている老人なのだろうと思った。
リーゼの方向いて、俺は命じた。
「リーゼよ。毎月金貨3枚ずつ、1年半に分けて、お前がこの孤児院にとどけるのじゃ。届けに伺った日は、神父殿の仕事を手伝った後に帰ってくるがよい」
もうすぐ孤児院を去らねばならぬ年長の子供たちは12名いるとのことだ。全員が、リーゼの事を知っていた訳でもなかった。しかし、彼女が、この孤児院出身であること、そして、めったにいない魔法師様のタマゴであること、その才を俺が見出し、高名な師匠をつけてもらい大事にされていることを聞き、全員が俺の領地で仕事をすること希望してきた。
その噂を聞きつけた、親はいるが、貧しくて食事を満足に与えられず、しばしば、孤児院に世話になっている年長の子供たち23名も俺の領地で、仕事をさせてほしいという申し出が神父さんを通じてあり、俺は承諾した。
ただし、1日3食の食事の提供は保証するが、真面目に労働することを念押ししておいた。
『これで、エクス・ゲファルナート魔法王国の人口が35名増えたのう。主殿よ』
『そうだな。そのうち、魔法陣をはって、自由に行き来できるようにして、孤児院ごと首都エクスに引っ越してくるのもありだな』
この子供たちの適性を見極め、リーゼのような魔法師、軍官そして内官ごとの専門教育を施し、国を回す官僚組織の基礎をつくろうと俺は心に決めた。
「神父様。時間をつくっていただき感謝申し上げます」
シルフェさんは、リーゼがシルフェさんの弟子になったこと、リーゼは才能があるので、きっとよい魔法師になることを説明した。そして、捨て子だったリーゼを神父様が拾って育てたことを聞き、リーゼの近況報告と育ての親に、魔法師の師匠としてあいさつに来た、と今日訪問した理由を告げた。
「こうして、ここを出た子供が、無事に、そして立派に育っていることを知ることができ、私の方こそ、感謝いたします」
神父様は、リーゼの面倒をみている俺たちに頭を下げてきた。
孤児院の運営が厳しく、面倒のみられる人数が限られている。12歳になる春に年長の子供たちを孤児院から出さないとならない。その年齢で放り出されても、退去する子供たちの半分はまともな暮らしができないことは分かっているが、どうしようもないそうだ。そうしないとさらに小さい年代の子供たちを引き取ることができず、見殺しにしてしまうことなる。
リーゼの事も他の子たち同様に、ちゃんと生きているか心配していたが、魔法師の恰好をして現れたのでびっくりしたこと、などを神父様は語る。
俺は、目でリーゼに合図をした。リーゼはテーブルに金貨50枚入った袋をおいた。
神父様はその大金に驚いていた。
「子供は国の活力じゃ。神父殿よ。リーゼは、この先、魔法師として名を成すじゃろう。そのぐらいの才がある。彼女が今ここおるのは、この孤児院の功績じゃ。これは些少だが、リーゼの生をつなぎとめた礼として納めていただきたい。どうか受け取ってくれぬかのう。それと、もし年長の子供で行き先がない者がいて、希望するのであれば、我が領地で仕事を世話することもできますぞ。この国にこだわらなくてよろしければ、だがな」
俺は自分の領地は、まだ開発の余地があり、仕事もたくさんもある。外国ではあるが、本人の努力次第で裕福に暮らせる道もある。リーゼが魔法師として独り立ちしたら、リーゼに移住希望者の面倒をみさせることもできる、と続ける。
「我の目に留まるまで、リーゼは息を殺して生きてきた。魔法師としての大いなる才能がありながらじゃ。それは、本人にとっても、国にとっても損失じゃ。ここを巣立った子たちが、このまま、スラム街の犯罪者になるか、娼婦になるか、じゃと、せっかく神父殿が苦労して、子供たちを育てても、また捨て子が生まれ、悲しい連鎖が続いてしまうのう」
俺は、今アリア王女に力を貸しているのも、異国のことであるが、国を富ませ、リーゼのような才能があっても機会に恵まれない不幸が少しでも減ってほしいと願ってのことだ、と付け加えた。
俺の話に、耳を傾けていた神父様は、希望者がいて、同じ境遇だったリーゼが面倒をみてくるということならば、と納得し、俺が、領地に連れていってよいと思える子らがいたら、面談してやってほしいと頼んできた。
神父様は、俺の喜捨があまりに高額で、強盗に襲われないともかぎらないため、こんな大金は受け取れないといってきた。聖職者なのに欲のないことだ。生臭坊主などではなく、きっと本心で子供たちの将来を憂いている老人なのだろうと思った。
リーゼの方向いて、俺は命じた。
「リーゼよ。毎月金貨3枚ずつ、1年半に分けて、お前がこの孤児院にとどけるのじゃ。届けに伺った日は、神父殿の仕事を手伝った後に帰ってくるがよい」
もうすぐ孤児院を去らねばならぬ年長の子供たちは12名いるとのことだ。全員が、リーゼの事を知っていた訳でもなかった。しかし、彼女が、この孤児院出身であること、そして、めったにいない魔法師様のタマゴであること、その才を俺が見出し、高名な師匠をつけてもらい大事にされていることを聞き、全員が俺の領地で仕事をすること希望してきた。
その噂を聞きつけた、親はいるが、貧しくて食事を満足に与えられず、しばしば、孤児院に世話になっている年長の子供たち23名も俺の領地で、仕事をさせてほしいという申し出が神父さんを通じてあり、俺は承諾した。
ただし、1日3食の食事の提供は保証するが、真面目に労働することを念押ししておいた。
『これで、エクス・ゲファルナート魔法王国の人口が35名増えたのう。主殿よ』
『そうだな。そのうち、魔法陣をはって、自由に行き来できるようにして、孤児院ごと首都エクスに引っ越してくるのもありだな』
この子供たちの適性を見極め、リーゼのような魔法師、軍官そして内官ごとの専門教育を施し、国を回す官僚組織の基礎をつくろうと俺は心に決めた。
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