王道学園と、平凡と見せかけた非凡

壱稀

文字の大きさ
40 / 66

40話

しおりを挟む
哀留side

俺が危うく蓮達に殺されそうになっている間に、松江からルール変更の放送がされた。



『今から、皆川による救済処置をとるでー』 


……救済処置?
はて、皆川先輩=救済って言葉が結び付かないぞ?
逆に、破壊じゃね?


俺が思わずそう呟けば、蓮とカナたんも頷いてくれた。
ですよねー。


でも、こっちの疑問などスルーし放送は続く。

そして、マジやめろ馬鹿野郎!と叫んでしまうようなルール変更になっていた。
いや、途中何回も叫んで「聞こえねぇだろド阿呆!」と、蓮に口を手で抑えられました。
その時、鼻も一緒に抑えられたのは偶然だと思いたい。
わざとダメ!!死んじゃう!!





さてさて、まず。
救済処置は、「逃走者」へ。

白か黒の布を巻かれた者は、その後捕獲場所へ連れて行かれ、時間終了までそこから動けないー……だったが、
ここで皆川先輩がその布を外せる権利を持つことになった。

布を外すって事は……
すなわち、再び「逃走者」として復活出来ると言う事。


…て事はさ、布巻いても巻いても外されれば意味ないし。
せっかく今、捕獲場所に集めている奴等も、皆川先輩の手で脱出可能。


下手すりゃ、ふり出しに戻る……






ナニソレ、馬鹿なんじゃねーの?(真顔)





それを止める(阻むには)、皆川先輩をタイムリミットの時間までに足止めするか、本人に捕獲した証の布を巻くしかない…



「……えーー…その2択かよ」


それも、どっちもあの人に接触しないと行動に移せない。
えー………と、思わず遠い目をしていると、

『あ、でもそうやとさすがに可哀想すぎやから、捕獲場所に集めんでも時間終了時点でのチームカラーの色数で勝敗決めるからなー、ほな!』


と言う、軽やかな松江の声でブツリと放送が終わった。



えー………


えー…………


えー……………


え「えーえーうるせぇよ」バシンッ



バイオレンスです。

蓮さんバイオレンス過ぎます!
突然後頭部を、容赦なくぶっ叩かれました!
てか、優しさが足りません。いや、元々優しさがありません!!


「バカかお前は!現実逃避したいじゃないか!させろや!」


めちゃくちゃめんどくさい!てか、皆川先輩怖い!!もう走りたくない(本音)!という現実から逃げても良じゃないか!

そう後頭部を擦りながら振りかえると、



「逃避した所で、現実は変わんねぇだろ。逃げてんじゃねぇよ」











……

やだナニコレ。
男前な台詞ほざきやがった。


これを俺なんかが言ったら、「ぷーくすくす」と笑われ、「キャラ違うし。勘違い乙」と合掌されるだろう。

だがしかし、蓮は顔が良いからこんな台詞言っても「流石です」で済む。
寧ろ、惚れるやつ増えるだろう。



もう、お前それ以上イケメン率上げてどうすんの?競争してんの?
1位になったらなんかメダルでも貰えんの?参加賞の飴とかないの?
…というジト目で見上げたら、


「とりあえず、愛染先輩に連絡つけるぞ。捕獲場所に居る奴等をどうするか決めないとー…」


軽やかにスルーされた。

え、俺空気ですか?
気配消してないぜ?


なんだか悲しくなった俺は、ぐすりと鼻を啜りながら蓮の服の裾を両手でぎゅうっと掴んだ。





そして、

 






それを力の限り引っ張った。



伸びろ伸びろ伸びろ伸びろ伸びろ…!!!



せめてもの抵抗だ。
どいつもこいつも好きかってしやがって。
俺は体力がないんだよ。
「…おい」
これから、更に走って魔王を阻めと?
ふざけんな、町人が魔王に対抗できるとおもってんのか?
勇者連れてこい勇者を!
「テメェ、」
あぁ、だめか。勇者だけじゃ敵わないから仲間をー………


あ。


ぐいぐいきゅうぎゅうと、蓮の上着の裾を伸ばしていた俺は、そこであることに気づいた。
あ、決して蓮が鬼の形相で俺を見下ろしていることに気づいたんじゃないよ。
むしろ、それは気づいちゃいけないよ。

とりあえず、伸びきってベロンってなった裾を見たカナたんが冷めた目しているけど、結果オーライとして。


俺は、蓮とカナたんに閃いた提案をする。


「魔王には勇者をぶつけよう!」



これを聞いた2人が、仲良く首をかしげた姿がなんだか可愛くて、俺は笑いを堪えるのに必死だった。

(その堪えた顔があまりにも不細工すぎて2人が、引いたのはまた別の話だ)






哀留side end









雪羅side



『ほな!』


ブツリと切れた放送に、俺は髪をかきむしった。


(やってくれんじゃねーか、あのオレンジ野郎)



奴の事だ、どうせ自分がつまんねぇからって変更したルールなんだろう。
こうなれば、全員が皆川に集まる。

「逃走者」は、解放されたくて。
それを追う奴等は、それを阻むために。


「…チッ」


どうすっかなぁ…
タイムリミットまで、此処でこうして捕まえた奴等を留まらせ見張っているか…

手っ取り早く皆川を潰して、他を時間までに狩るか…


まぁ、俺としてはよくぞここまでこの場に留まって居られたなー…と、自分を誉めてやりてぇくらい我慢はしたと思うが…


そろそろ、暴れても問題はねぇだろ…?




…と。
とりあえず、捕まえた奴等は逃げらんねぇように潰しておくか…と、ゆらりと奴等に近付こうかとした時、



「せっちゃぁぁぁぁぁぁあぁあん!!」


「……」





…忘れもしねぇこの耳障りな声は、あのくそチビ。

声がした方へ視線だけを向ければ、案の定こちらに走ってきている。
その後ろには、水沢達がノロノロと付いて来てやがる。
…俺は目をスッと細め、奴に向き直り両手を広げてやる。
いわば、「俺の胸に飛び込んでこい」的なヤツだ。(←自分で言っててイラっとしたが)


それを見たチビは、一瞬目を見開いたようだったが笑みを深めて速度を上げて向かってきた。


その距離が少しずつ縮まり…



5…4…3…2…


1…


「せっ、せっちゃん!そんなに俺に会いたかっ…」





ザッ
ビュン!!

ズザザザザー…




「………おや?」

「人生のまぐれを、此処で全部使い果たしたな…」


「チッ!!」


「………カナたん、感心してないで俺を労って!蓮、俺のまぐれは湯水のように沸き出るんだよ!まだいける!(←?)てか、せっちゃん舌打ち違う!!俺に謝ってぇぇぇえ!!!」




地面にずしゃりと寝ながらチビが叫ぶ。

チッ、マジで何なんだテメェは!!




両手を広げた所に走り寄ってきたチビに、俺は距離が0になった瞬間…

広げていた腕を脇に締め、右手に拳を作りチビの腹めがけて突き上げた。

が、それを寸前で避けて、チビはスライディングの如く地面に滑りやがった。


信じらんねぇ…


苦虫を噛んだように顔をしかめ、下に居るチビを見ながら舌打ちする。
「せっちゃん酷い!暴力反対!!俺の胸キュンを返せ!」やらなんやら騒いでいるが、当たり前だろが。
テメェが俺にした仕打ち(トランシーバー事件)の鬱憤くらい、その身に受けろってんだ!


……
しかし、さっきのこいつの動体視力はどうなってんだ?
まさか俺の攻撃が避けられるとは思わなかった…
もしかして、本当は強いのを隠しているのかー…?
と、まだ地面に転がっているチビに、探るように視線を向けると、



「…やべぇ、マジ今のはあたったらリバース確実だった。哀奈に言われた通りに格闘技習ってて良かったー…………
あれ?なんだろう、「平凡フラグが立った!!」って、ク◯ラが立った並のテンションで幻聴が聞こえた。ヤダナニコレ怖い!!」


…………

怖ぇのはテメェだ。



ブツブツと独り言と、キョロキョロと挙動不審に周りを窺いだしたチビ…
あぁ、さっきのは水沢が言った通りに、まぐれを使い果たしたんだろう、と。俺はそう結論付けた。
どうでもよくなった、が正しい。



「あー…、で?何で来た」


そして、面倒くさくなった俺は水沢に視線を向ける。
もはや、このチビとの会話は不可能だ。
…だが、俺のその問いに答えたのは奴だった。


「せっちゃんせっちゃん。いい作戦を思い付いたんだよ!」


キラッキラと目を輝かせ迫って来たチビに、「気持ちわりぃ!」と顔面をガッと掴んだのは仕方がねぇ…

マジでキモい。




雪羅side end








皆川side
(放送終了後)



はは、首尾は上場だな。


俺が伝えた変更を、松江が放送を使い参加者に知らせた。
「逃走者」にとっては有利なルールになり、それを追う側は油断のできない状況になった。
反応は様々で、「逃走者」達は更にやる気を出し殺気だってきた。
追う側…今この場に居る唯達は苦々しく俺を睨んでいる。
あぁ、唯以外の2人がだけどな。
「余計なことをしやがって…」と言う様子がありありと伝わってくる。

はっ、楽しくして何が悪いんだか。

不敵に笑んで鼻で笑ってやる。


すると…やはりと言うかなんと言うか、1人だけ変わらない奴が居た。


「つまり、東がキーマンだから!東を捕まえればいいんだろ!?」


「…うん~、まぁ止めなければならないのは確かだけどぉ~…」


本音を言えば、俺に唯を近づけたくない葉桜だろうが、結局俺が「逃走者」を解放していくんだから、その意見に反対はないらしい。

しかし、キーキーと喚くようにがぜんやる気を出した唯が、俺に執着するのが気にくわないらしい。
嫉妬深い目で俺を睨んでいる。

だが、そんな余裕無いと思うけどな…


俺はこの機会を更に楽しくするために、やらなければならないことがある。


「さてと、じゃあ俺は捕獲場所に居る奴等を解放してこないとな」


「「チッ!」」


これを先ずやらなければ、このルールにした面白みがない。
それを分かっていたのだろう、唯のナイト2人が即座に舌打ちをした。


そして。
それをきっかけに、「逃走者」も動き出した。

「はっ、これで思う存分潰せるなぁ」

「抜け駆けはなしだろ」

「ばっか野郎、早いもん勝ちだろうが!」

例え捕まっても救済処置がある。
これで奴等の枷は完全になくなった。


「くっそが!!」

「唯ちゃん、後ろに下がって!」

「嫌だ!俺が東を捕まえるんだ!!

…お前らどけぇぇぇ!!!」


うぉぉおぉぉお…!!!
と、再び起こった乱闘を後目に、俺はその場に背を向けた。

おそらく他の奴等もこの場か…あるいは哀留の方へと集まり、お互い時間終了まで最後の狩りあいをするだろう。

それに遅れをとるわけにはいかないからなぁ…

さっさとやってしまおうと、ここから近い捕獲場所へと俺は足を向けた。


…しかし、松江の奴。
余計な事を付け加えたな。
あれで、気づく奴は気づく…


果たして誰が「あの事に」気づくか。どちらが勝利を手にするか…




これから起きるであろう出来事に期待した俺は、その時気を緩めていた。

だから、
俺の後を付けていた奴が居た事に……気づかなかった。





(気づいたのはもう少し後)





next
 
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

学園ものに転生した悪役の男について

ひいきにみゐる
BL
タイトルの通りにございます。文才を褒められたことはないので、そういうつもりで見ていただけたらなと思います。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

かつらぽーん

うりぼう
BL
かつらがぽーんと吹き飛ぶ。 王道学園物と見せかけた普通の学園もの。 一人の生徒を生徒会の連中その他が気に入り、親衛隊連中が色々と嫌がらせをしている。 そんな騒動の最中の話。 ※王道とみせかけた普通学園 ※親衛隊あり

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

処理中です...